「ケガの原因は明らかに仕事中の事故なのに、労基署から『業務起因性が認められない』と言われた」「不支給決定通知書が届いて、生活が立ち行かなくなる」――労災認定をめぐる不支給・否認の通告は、労働者やご家族にとって大きな衝撃です。
結論から申し上げると、労基署の判断は絶対ではありません。審査請求・再審査請求・行政訴訟という三段階の不服申立手続きが法律で用意されており、実際に当初不支給とされた事案が後の手続きで認定に転じることは珍しくありません。
ただし、ただ「納得いきません」と申立てるだけでは判断は覆りません。不支給の根拠となった「調査復命書」を取り寄せ、論点を特定し、医学的証拠と職場環境の証拠を積み上げる――この順序が不可欠です。本記事では、労災事案を継続的に扱ってきた弁護士法人ブライトの実務をもとに、認定を覆すための具体的なアプローチを解説します。

1. 「労災が認定されない」状況で起きていること
1-1. 不支給決定が出るまでの流れ
労災給付は、被災労働者またはご家族が労働基準監督署に給付請求書を提出することから始まります。労基署は次の手順で調査を行います。
- 請求書・診断書・会社の事業主証明欄を確認
- 事業所への立入調査・関係者への聞取り
- 医師(労災協力医・地方労災医員)への医学的意見聴取
- 調査結果を「調査復命書」にまとめ、署長が決裁
- 支給決定または不支給決定の通知
このうち外部から見えるのは最後の通知だけで、「なぜ不支給になったのか」の具体的根拠は通知書に詳しく書かれません。「業務起因性が認められない」「業務上の事由によるものとは認められない」といった抽象的な理由が記載されるのみです。
1-2. よくある不支給・否認パターン
- 持病・既往症が原因とされる:腰痛・脳血管疾患・心疾患・精神疾患などで「もともとの疾患の自然経過」と認定されてしまう
- 業務との関連性が薄いと判断される:作業内容や勤務時間が業務起因性の認定基準(過労死ライン・精神障害認定基準等)に届かないとされる
- 事故そのものを否認される:「目撃者がいない」「カルテに事故の記載がない」として、業務中の負傷ではないと判断される
- 会社の協力が得られない:事業主証明欄が空白、または会社が「業務外の事故」と労基署に申告している
- 私的逸脱と見なされる:通勤災害で、立寄り先や経路逸脱を理由に通勤災害該当性を否認される
共通するのは、労基署が手元に持っている資料の偏りです。会社側の主張・会社が提出した書類・労災協力医の意見書が中心になり、労働者側の主張や生活実態が十分に反映されないまま結論が出ているケースが少なくありません。

2. 不支給決定後にまずやるべきこと|調査復命書の取り寄せ
2-1. なぜ「調査復命書」が決定的に重要か
調査復命書とは、労基署の担当官が調査結果を上司に復命するために作成する内部文書で、不支給決定の事実上の理由書です。ここには次のような情報が記載されています。
- 会社側から提出された資料の一覧と内容
- 関係者への聞取り結果(誰が何を述べたか)
- 労災協力医・地方労災医員の医学的意見
- 担当官が「業務起因性を否認した」具体的論理構成
- 適用した認定基準・通達
つまり、調査復命書を読まなければ「労基署が何を根拠に否認したのか」「どこを覆せば認定になるのか」が分かりません。逆に言えば、これさえ手に入れば反論の論点は明確になります。
2-2. 保有個人情報開示請求の方法
調査復命書は、行政機関個人情報保護法に基づく「保有個人情報開示請求」を労働局に対して行うことで取り寄せ可能です。被災者本人(または相続人)が請求権者となります。
- 提出先:管轄労働局の総務部総務課(労基署ではなく労働局である点に注意)
- 必要書類:開示請求書、本人確認書類、手数料300円(収入印紙)
- 期間:原則30日以内に開示決定、追加で30日延長されることあり
- 開示形態:閲覧、写しの交付(コピー代別途)、写しの送付
ただし、開示請求書の記載は「特定する事項」を正確に書かないと却下・延期されます。「○年○月○日付で○○労働基準監督署が決定した労災保険給付不支給決定に関する一切の保有個人情報」といった具体的な記載が必要で、ここで失敗するご相談を多くお受けします。
2-3. 開示された資料を読み解くポイント
- 事実認定部分:作業内容・時間・場所の記載に誤りがないか
- 会社側の主張:バックデートされた書類や事実と異なる聞取り回答がないか
- 医学的意見:労災協力医がどのような医学資料(カルテ・画像・既往症)に基づいて意見を述べたか
- 適用された認定基準:過労死ライン、精神障害の心理的負荷評価表、既存疾患の加重判断基準など
多くのケースで、会社側の言い分のみで構成された事実関係や、労働者本人が提出していない医学資料を参照していない医学的意見が見つかります。これが反論の起点になります。

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3. 業務起因性を立証するための証拠収集
3-1. 医学的証拠の補強
業務起因性の判断は、究極的には「医学的に業務との因果関係が認められるか」に集約されます。労基署が依拠した労災協力医の意見を覆すには、主治医や専門医の意見書を取得することが不可欠です。
- 主治医への診断書・意見書の追記依頼
- カルテ開示請求(医療機関に対する個人情報開示請求)
- MRI・CT・レントゲン等の画像所見の取得と画像鑑定
- 同種疾患を扱う専門医による「医学意見書」の作成依頼
- 業務との因果関係を肯定する医学文献(論文・教科書)の収集
ブライトの実務では、「カルテに記載があるはずだから、診断書の追記をご相談しましょう」「MRI・CTの画像所見があれば書いてもらった方がいい」と主治医に具体的に依頼する手順を定型化しています。何を書いてもらうか、どう依頼するかは、医師の負担を下げる工夫が必要です。
3-2. 職場環境・作業実態の証拠
業務起因性は医学的意見だけでは決まりません。「その業務に従事すれば医学的に業務起因性のある疾患が生じうる」という業務側の事実を証拠化する必要があります。
- タイムカード・出退勤記録・PCログイン履歴(残業時間・深夜勤務の立証)
- 業務日報・作業日誌・シフト表(具体的な作業内容)
- 同僚の陳述書(作業環境・作業姿勢・ハラスメントの存在)
- 現場写真・作業環境測定結果(粉じん・有機溶剤・騒音・気温)
- 業務上の連絡記録(LINE・メール・チャットツール)
これらは会社が保管しているケースが多く、放置すると廃棄されるリスクがあります。退職している場合は元同僚への接触、在職中であれば証拠保全の手続きを検討します。
3-3. 同種事案・通達・裁判例のリサーチ
同種疾患・同種業務での労災認定例、関連する厚生労働省の通達、裁判例(国・労基署長を被告とする行政訴訟の判決)を調査し、本件と類似する判断枠組みを抽出します。これは弁護士の専門領域です。

4. 不服申立手続きの3段階
4-1. 第1段階:審査請求(労働者災害補償保険審査官)
不支給決定通知書を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に、所属労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行います。
- 形式:書面提出(口頭意見陳述の機会あり)
- 判断期間:概ね6ヶ月〜1年
- 判断者:労働局所属の審査官1名(中立性に疑問を呈する声もある)
この段階では新たな証拠の追加提出が可能で、開示請求で取り寄せた調査復命書を踏まえた反論書面と、追加収集した医学的・職場環境的証拠を提出します。
4-2. 第2段階:再審査請求(労働保険審査会)
審査請求の決定に不服がある場合、決定書送達日の翌日から2ヶ月以内に労働保険審査会(厚生労働省所管の準司法機関)に再審査請求を行います。
- 形式:書面+公開審理(本人・代理人の出席)
- 判断期間:概ね1〜2年
- 判断者:3名の審査員による合議制
- 専門医の参与意見を求めることが可能
第1段階より手続きが充実しており、複雑な医学判断を要する事案ではここで判断が覆る確率が比較的高いとされています。
4-3. 第3段階:行政訴訟(取消訴訟)
再審査請求でも認められなかった場合、再審査請求の裁決書送達日から6ヶ月以内に、国(処分庁である労基署長)を被告として地方裁判所に行政訴訟を提起します。
- 裁判所が独立した立場で業務起因性を判断
- 証人尋問・専門医の鑑定意見書を活用可能
- 判断期間:概ね2〜3年
裁判所は労基署や審査会の判断に拘束されないため、これまでの行政判断を覆す決定的な機会になります。実際、過労死・過労自殺の有名事案の多くは、行政訴訟で初めて業務起因性が認められたものです。
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5. ブライトの実例|不支給を覆した事案
事例A:60代男性/中小企業勤務(後遺障害5級まで認定)
当初、業務上の高血圧脳症によるとみられる高次脳機能障害について、労基署は業務起因性を一部しか認めず、後遺障害等級も低位のものしか認定されませんでした。ご家族が「これでは生活が成り立たない」とブライトに相談されました。
ブライトでは、まず労働局に対して保有個人情報開示請求を行い、調査復命書一式を取り寄せ。労基署が依拠した医学意見が、依頼者の癲癇発作や身体機能障害を十分に評価していないことを特定しました。
主治医に対しては、画像所見と臨床経過を踏まえた追加意見書の作成を依頼。再審査請求の段階で、後遺障害5級相当の認定を獲得しました。並行して会社側から症状固定後の部署変更・給与変更の辞令が出されたため、復職せず退職する方針で対応し、会社責任追及にも展開しました。
事例B:40代男性/IT業界(出向先での過重労働による鬱病)
地方在住の依頼者が東京の関連会社に出向し、月100時間超の時間外労働が継続。鬱病と診断され休職に至りました。会社が後から作成した「労働条件通知書」では出向先の所定労働時間が短く記載され、過労死ラインに届かないように見える状態でした。
ブライトでは、依頼者がブライトに相談した日付・身分証明や雇用関係書類を会社に求めた日付・会社が後から労働条件通知書を送ってきた日付を時系列で並べた陳述書を作成。バックデートされた書類の信用性を弾劾しました。
並行してPCログイン履歴・健康管理時間表を証拠化し、実労働時間の立証を完了。労災認定手続を進めると同時に、出向先会社に対する損害賠償請求(慰謝料・経済的損失)と「名ばかり管理職」としての残業代請求を別契約で受任し、二本立てで対応しました。
事例C:50代男性/建設作業員(現場負傷の業務起因性争い)
業務中に重機に巻き込まれ下肢を骨折したものの、会社側が「本人の不注意による私的事故」と主張し、事業主証明欄が一部不正確に記載されたまま申請されたケースです。
ブライトでは現場の同僚2名から事故状況に関する陳述書を取得し、現場写真・作業手順書を収集。労基署への意見書提出により、業務起因性を立証しました。労災給付の認定後は、会社の安全配慮義務違反による損害賠償請求に展開しています。
6. ブライトに依頼するメリット
6-1. 着手金ゼロ・実費予納金のみで労災給付請求を引受け
労災給付請求(認定獲得)については、着手金ゼロ・実費予納金のみでお受けします。経済的に追い詰められた状態でも、初期費用の心配なく依頼が可能です。
6-2. 労災給付+会社責任追及の二本立ての請求
ブライトでは、労災給付請求と並行して会社への損害賠償請求(安全配慮義務違反)・残業代請求を別契約で受任する設計を採用しています。労災給付ではカバーされない慰謝料・逸失利益の差額・将来介護費などを会社に請求できる場合、二本立てで進めます。
6-3. 業務起因性立証ノウハウの蓄積
調査復命書の開示請求運用、主治医への診断書追記依頼の手順、職場環境証拠の収集、同種事案の裁判例分析まで、業務起因性立証のノウハウを所内マニュアル化しています。
6-4. 弁護士役割分担による品質確保
- 和氣良浩弁護士:受任可否・所内方針決定
- 松本洋明弁護士:実働(医学的証拠の収集・主治医対応・労基署対応)
- 笹野皓平弁護士:訴訟・難件の二次決裁
役割分担により、判断と実働の両面で品質を担保します。
6-5. 住所秘匿運用
会社とのトラブルや家庭事情で住所を相手方に知られたくない場合、茶封筒・差出人名のみ・郵便局留めといった配慮的な郵送運用にも対応しています。
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7. こんな方は今すぐ弁護士相談を
- 労基署から不支給決定通知書を受け取り、3ヶ月の審査請求期限が迫っている
- 会社が業務外の事故と主張していて、労基署の判断が不利になりそう
- 持病・既往症があり、業務起因性を否認されるおそれがある
- 過労死ライン・精神障害認定基準のあてはめに納得できない
- 主治医に診断書をどう書いてもらえばいいか分からない
- 調査復命書の開示請求を自分で出したが、却下・補正指示が来た
不服申立てには厳格な期限があります。不支給決定通知書を受け取ったら、まずは無料相談で論点と打ち手を確認することをおすすめします。
8. ご相談から受任までの流れ
- お電話・LINE・LPフォームからご連絡
- パラリーガルが事案概要・現在の進捗を簡単にヒアリング(約15分)
- 担当弁護士による無料相談(オンライン可・約30〜60分)
- ご依頼の場合は委任契約、即日で開示請求書の準備に着手
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9. ご相談時にお手元にあると話が早い書類
- 労災保険給付の不支給決定通知書(または進行中の請求書類)
- 診断書・診療情報提供書・お薬手帳
- タイムカード・給与明細(直近6ヶ月〜1年分)
- 労働条件通知書・雇用契約書
- 会社からの通知書・メール・LINEの履歴
10. まとめ
労基署の不支給決定は、決して終着点ではありません。調査復命書を開示請求して論点を特定し、医学的証拠と職場環境の証拠を積み上げることで、判断が覆る可能性は十分にあります。
ただし、3ヶ月という審査請求期限は短く、不支給決定後すぐに動き出さなければ間に合いません。「これは認定されるはずなのに」と感じた段階で、まずは無料相談をご利用ください。弁護士法人ブライトは労災給付の認定獲得から会社責任追及まで、一貫した戦略で被害者・ご家族を支援します。
無料相談予約はこちら(LINE・お電話・フォームでお気軽にどうぞ)
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ご相談はこの弁護士が対応します
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有本 喜英 弁護士
労災事案の実務主力。業務起因性立証・証拠保全・調査復命書開示請求の実務を担当。建設・製造業現場労災、派遣労働者、一人親方の労働者性立証、外国人技能実習生対応に強み。
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