このページは、労災死亡と遺族補償年金の相続について、死亡事故・労災死亡事案の遺族支援を多数取り扱う弁護士法人ブライト(代表:和氣良浩弁護士)が、相続実務とリンクさせて整理した解説記事です。
📝 この記事の3秒結論
- 労災遺族補償年金は労災独自の受給順位
- 配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順
- 生計維持要件あり(同居・扶養関係)
- 年金額は給付基礎日額×日数(家族構成で変動)
- 受給者死亡時は転給で次順位者へ
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はじめに:労災死亡と遺族補償年金
業務中・通勤中の交通事故などで労災死亡となった場合、ご遺族は労災保険から「遺族補償年金」(業務災害)または「遺族年金」(通勤災害)を受給できます。これは民法の相続とは別の「労災独自の社会保障給付」であり、受給順位や金額算定が独自ルールに従います。
本記事では、労災遺族補償年金の受給ルールと相続実務を解説します。
労災独自の受給順位
労災遺族補償年金の受給順位は、労災保険法16条の2で定められています。
| 順位 | 受給資格者 | 条件 |
|---|---|---|
| 1 | 配偶者 | 事実婚も含む |
| 2 | 子 | 18歳到達後の年度末まで(障害なら55歳まで) |
| 3 | 父母 | 55歳以上または障害者(60歳まで支給停止) |
| 4 | 孫 | 18歳到達後の年度末まで |
| 5 | 祖父母 | 55歳以上または障害者 |
| 6 | 兄弟姉妹 | 18歳到達後の年度末まで、または55歳以上 |
民法の相続順位(配偶者と子→直系尊属→兄弟姉妹)とは大きく異なります。労災では「生計維持要件」が厳しく、被害者と同居・扶養関係にある人だけが受給対象となります。
生計維持要件
労災遺族補償年金の受給には生計維持要件を満たす必要があります(労災則14条)。具体的には:
- 被害者と同居していたか
- または被害者から定期的・継続的に扶養(経済援助)を受けていたか
- 収入要件:年収850万円未満が原則
例:
- 同居していた配偶者・子→受給OK
- 独立して生計を立てていた成人の子→受給NG(同居・扶養がなければ)
- 遠方に住む年金生活の両親→年金未満なら扶養関係次第で受給可能
収入の高い相続人は、民法上の相続権はあっても労災年金は受給できないことがあるので注意。
年金額の算定
遺族補償年金の年額は「給付基礎日額」×「家族構成による日数」で計算されます。
家族構成と日数:
| 遺族の人数 | 給付日数 |
|---|---|
| 1人 | 153日(55歳以上の妻または障害者は175日) |
| 2人 | 201日 |
| 3人 | 223日 |
| 4人以上 | 245日 |
例:給付基礎日額1万円・配偶者と子1名(2人)の場合
- 年金額:1万円×201日=201万円/年
- 月額換算:約16.75万円
子の年齢加算(年齢に応じた加算)も加わり、子が成長するにつれて減額されます。
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転給ルール
受給者が死亡したり、受給資格を失った場合、年金は次順位の遺族に転給されます。例:
- 配偶者が受給→配偶者死亡→子に転給
- 子が18歳到達→18歳の年度末で失権→次順位の父母に転給
- 父母が55歳到達→受給開始
転給により、長期間にわたって遺族補償年金がご遺族に支給され続けます。
一時金との選択
遺族補償年金の受給資格者がいない場合、または年金より一時金を希望する場合、遺族特別支給金(300万円)と遺族補償一時金(給付基礎日額の1,000日分)を選択できます。詳細は別記事「労災葬祭料と遺族特別支給金の相続」をご参照ください。
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損益相殺との関係
遺族補償年金を受給した場合、加害者への損害賠償請求では「損益相殺」が問題となります。
- 過去に既受領分:賠償金から控除
- 将来分:判例上、控除対象(最判平成5年3月24日)
- 慰謝料部分:損益相殺の対象外
これにより、加害者への損害賠償請求額は「逸失利益マイナス遺族補償年金(既受領分+将来分)」で計算されることになります。詳細は「損益相殺と相続放棄の相互関係」をご参照ください。
まとめ:労災年金は独自ルールで承継
労災死亡の遺族補償年金は、民法の相続とは別の独自ルールで承継されます。
- 受給順位:配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹
- 生計維持要件あり(同居・扶養)
- 年金額は家族構成で変動
- 転給ルールで長期受給可
- 加害者賠償との損益相殺に注意
ブライトでは労災と民法の両方を扱う事務所として、遺族補償年金の申請から賠償請求まで一括サポートします。
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監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表弁護士・登録番号30856)
死亡事故・労災死亡のご遺族支援を多数担当。「賠償請求権の相続」「相続放棄との関係」「労災遺族年金の損益相殺」「海外在住相続人の対応」など、賠償交渉と相続実務(戸籍調査・遺産分割・遺言)を一人の弁護士で完結できる体制でご家族をお支えしています。
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