交通事故でむち打ちになった場合の慰謝料は最大で通院1日につき6,000円程度、後遺障害が残った場合はそれに加えて110万円を加害者に対して請求することが出来ます。
交通事故でむち打ちになった場合の加害者に請求できる慰謝料
▶ 入通院慰謝料:通院1日あたり6,000円
▶ 後遺障害慰謝料:110万円
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級が認定された場合のみ請求することが出来ます。
この金額はおおよその目安で弁護士に依頼するかどうかなどで変わります。
むち打ちは首の痛みや手足のしびれなど様々な症状がでます。治療期間は一般的に3~6ヵ月とされており、6ヵ月を超えても症状が残るようであれば、後遺障害認定を受けて、後遺障害慰謝料と逸失利益を加害者に請求します。
交通事故でむち打ちになった場合、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」以外にも請求できる賠償金があるため、まとめてご紹介します。
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交通事故のむち打ちで貰える慰謝料
実際にむち打ちで300万円の慰謝料が認められたケースもあります。
慰謝料についての関連ページ:交通事故の慰謝料の相場、計算方法、弁護士に依頼するべきケースを解説
むち打ちでの入通院慰謝料
入通院慰謝料は病院へ行くことの精神的苦痛に対する慰謝料です。
金額は通院期間に応じて増えますが、弁護士に依頼するかどうかで大きく変わります。
弁護士に依頼しなかった場合は通院した日数×2×4,300円の自賠責基準で計算されます。
弁護士に依頼した場合は次の表の金額になります
通院期間 | 入通院慰謝料 |
---|---|
1ヵ月 | 19万円 |
2ヵ月 | 36万円 |
3ヵ月 | 53万円 |
4ヵ月 | 67万円 |
5ヵ月 | 79万円 |
6ヵ月 | 89万円 |
また、関西(近畿)にお住まいの場合は違う表の基準を使います。
表に書かれている金額はあくまで基準として加害者側に請求する金額です、実際に被害者が受け取る金額は事故の状況などで変わるため参考としてください。
むち打ちでの後遺障害慰謝料
むち打ちで半年以上通院しても手足のしびれなどの症状が残る場合、後遺障害14級が認定される可能性があります。
むちうちで後遺障害12級が獲得できる、と説明しているサイトも多いですが非常に稀なケースです。基本的には14級の獲得を目指します。
後遺障害14級が認定されると後遺障害慰謝料として
- 自賠責基準:32万円
- 弁護士基準:110万円
を加害者に請求することが出来ます。
むち打ちで慰謝料以外にもらえるお金
交通事故でむち打ちになった場合は慰謝料だけでなく
- 入通院にかかった実費
- 後遺障害が残った場合は後遺障害逸失利益
- 仕事を休んだ場合は休業補償・休業損害
を受け取ることが出来ます。
入通院にかかった実費
治療費はもちろん
- 交通費
- 診断書作成費
- その他雑費
といった費用を加害者に請求することが出来ます。
徒歩圏内であるのにタクシーで通院するなど、必要性のない費用については支払われません
後遺障害逸失利益
逸失利益というのは事故が無ければ得られたであろう将来の収入の事です。金額は被害者の収入や年齢によって決まります。
むち打ちで認定の可能性がある後遺障害14級の場合、労働能力が10年間の間5%失われたと判断されます。
そのため、仮に被害者の年収が400万円だった場合の後遺障害逸失利益は
400万円×5%×8.53(ライプニッツ係数)=170万6,000円
となります。
ライプニッツ係数とは将来の収入を一括で貰うことによって発生する利息を賠償金から引くために使われる数字です
逸失利益の計算方法について詳しくは「逸失利益とは?計算方法と職業別の具体例をわかりやすく紹介」をご覧ください。
休業補償・休業損害
交通事故によるむち打ちで仕事を休んだ場合、その分の給料に対する補償として休業補償・休業損害を受け取ることが出来ます。
どちらも給料に対する補償ですが次の表のように性質が異なります。
名前 | 支払元 | 金額 | 受け取れる事故 |
---|---|---|---|
休業補償 | 労災保険 | 給料の60% | 仕事中の事故 |
休業損害 | 加害者の任意保険 | 給料の100% | すべての事故 |
仕事中の事故の場合は表の金額に加えて休業特別支援金として給料の20%を受け取ることが出来ます。
休業補償、休業損害についてそれぞれ詳しくは「交通事故の休業補償は給料の80%?60%?満額もらう方法も解説」「休業損害は主婦・主夫や学生も貰える?弁護士が解説」をご覧ください。
そもそもむち打ち(頸椎捻挫)とは
実は「むち打ち」とは医学的に見て正式な傷病名ではありません。
日本整形外科学会はむち打ち症をこのように定義しています。
いわゆる“むち打ち症”は、追突や衝突などの交通事故によってヘッドレストが整備されていない時代に首がむちのようにしなったために起こった頚部外傷の局所症状の総称
つまり、「むち打ち」とは医学的に見て正式な名前ではなく衝撃を受けて首に怪我をしてしまった状態全般をいう言葉です。
むち打ちで整形外科を受診すると、症状に応じて
- 頸椎捻挫、頚部挫傷:首が捻挫し、痛みや肩こり、手のしびれなどの症状が出ます。
- 頚椎椎間板ヘルニア:首の椎間板が飛び刺し、神経や脊髄を圧迫することで体にしびれが出たりします。
- 頚椎症性神経根症:椎間板や骨の形が変わることで神経根が圧迫され、痛みや痺れが出ます。上を向くと痛みが強くなります。
- 脊髄損傷:もともと脊髄の圧迫が起こっている人が強い衝撃を受けた場合になることがあります。
などと診断されます。
むち打ちで特徴的なのは、後になって首などに違和感を覚えるようになり、痛みやしびれたりする点です。
交通事故に慣れている方はいらっしゃらないので、事故発生直後は緊張している状態や興奮状態にあるものです。ですので、事故現場では痛みなどを感じていなかったのに、数日たってから、首などに痛みが発生する事例をたくさんお聞きしています。
むち打ちの症状は「自覚症状」と「他覚所見」に分けられる
むち打ちの症状が出る交通事故において、示談交渉の際に「自覚症状」と「他覚所見」という言葉がよくつかわれます。
- 自覚症状:むち打ちを負った方(受傷者)が、痛みやしびれなどを自覚している症状
- 他覚所見:MRIやレントゲン写真などで客観的に証明できる症状
他覚所見があれば後遺障害認定をされやすいため、慰謝料増額の可能性が高まります。
しかし、むち打ちの場合は自覚症状しかないケースが多く示談交渉でトラブルになることが多いのです。
他覚所見がないというのはむち打ちの特徴でもあるので、症状と交通事故の因果関係を証明できれば慰謝料などの賠償金はもらえます。
決してあきらめずに対応していただきたいことと、弁護士に相談されることをおすすめします。
むち打ちの治療
事故でむち打ちとなってしまった場合の治療期間や、治療方法について解説します。
むち打ちの治療期間はどれくらい?
東京労災病院整形外科の後藤らが行った研究によると、むち打ちの治療期間は
- 追突事故:平均85.8日
- それ以外の事故:平均78.9日
とおおよそ3ヵ月前後です。むち打ちに関する様々なデータをまとめたJA共済総合研究所の研究結果をみてもおおよそ2~3ヵ月間が治療期間の目安となりそうです。
一方で、後藤らの研究によると
病型 | 平均治療日数 |
---|---|
頸椎捻挫型 | 47.7日 |
根症状型 | 96.4日 |
バレリュー型 | 140.6日 |
脊髄症状型 | 110.2日 |
と、一口にむち打ちと言っても傷病によっては治療期間が大きく変わることが報告されています。
むち打ちの病型
むち打ちの病型について簡単に説明します。
- 頸椎捻挫型:首の骨の周りや筋肉が傷ついた状態
- 根症状型:手足に繋がる神経根が圧迫されている状態
- バレリュー型:頭痛やめまいなど自律神経失調症が疑われる状態
- 脊髄症状型:脊髄や神経が傷ついている状態
むち打ちの治療方法
むち打ちの治療は整形外科と整骨院で異なります。
整骨院でのむち打ちの治療法
整骨院では注射や薬の処方などは行えないので
- 弱い電流で筋肉をほぐす
- 首を引っ張り、筋肉を緩める
- 弱ってしまった首の筋肉をリハビリで鍛える
といった治療を行います。
整形外科でのむち打ち治療
整形外科で行われる治療は、整骨院で行われる治療に加えて
- 湿布を貼る
- 痛み止めの薬を飲む
- 痛みがひどい場合は痛み止めの神経ブロック注射
を行います。整形外科では整骨院で出来ない投薬や注射といった治療を受けることが出来ます。
事故の治療における整形外科と整骨院の違いは「交通事故は整骨院と整形外科で慰謝料&治療費が変わる?」をご覧ください。
むち打ちの慰謝料で損をしないためのポイント
加害者側の保険会社は様々な理由で支払う賠償金を低く抑えようとします。
そこで、弁護士が慰謝料金額を減らさないために気を付けるべきポイントを紹介します。
症状が残っているのに治療費の打ち切りに応じない
むち打ちの場合、保険会社は3ヵ月で「これ以上治療費は支払えません」と治療費の打ち切りを提案してきます。
確かに、先ほど説明したように3ヵ月程度がむち打ちの治療期間としては一般的です。しかし、バレリュー型や脊髄症状型などの場合は治療期間が半年以上となる人も珍しくありません。
治療の終了を決めるのは医師です。相手の保険会社が治療費の打ち切りを言ってきても医師が通院の必要性を認めている場合はそのことを伝えて、通院を続けることが出来ます。
完治していないのに治療費の打ち切りを受け入れてしまうと、入通院慰謝料が減るだけでなく、症状が治りきらない可能性もあります。
後遺障害診断書を適切に作成してもらう
後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益の請求には後遺障害診断書という書類が必要です。
この書類が正確に作られていないと後遺障害が認定されず、賠償金が大きく減ってしまいます。
そのため、医師に対して症状を正確に伝える必要があります。
たとえば、手足に痺れが残っているような場合は「違和感がある」というような抽象的な表現でなく、はっきりと「痺れが残っています」と伝えましょう。
また、少し痛みが引いてきたからといって「よくなってきた」と伝えるのではなく「よくなりましたが、まだ痛みがあります」というように客観的に症状を伝えることを意識しましょう。
後遺障害が認定されない主な理由は以下の4つです。
- レントゲンなどの画像で症状が証明できない
- 通院期間が半年以下
- 通院頻度が少ない
- 症状が正確に医師に伝えられていない
交通事故によるむち打ちのまとめ
交通事故によるむち打ちの被害者の中には、双方の意見が対立し、相手方との示談交渉が全く進展しないと訴える被害者の方が非常にたくさんいらっしゃいます。
紹介してきましたとおり、むち打ちでは特に「他覚所見の有無」が、係争のポイントになります。被害者の方は苦しい思いをされていらっしゃるわけで、「他覚所見の有無」など、被害者の立場からすると、「そんなの関係ない!」と言ってしまうのも無理ありません。むち打ちは症状が落ち着くまでには長期間必要であり、後遺障害が残る可能性も十分に考えられます。
ポイント
交通事故でむち打ちになってしまい、痛みや痺れなどの後遺症に悩まされている方はお気軽にお問い合わせください。
被害者の方の相談は無料ですし専門のスタッフが丁寧に対応しますのでご安心ください。