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交通事故で整骨院に通っていい?整形外科との違い・慰謝料への影響・治療費打ち切りを弁護士が解説

この記事の執筆・監修

執筆:松本 洋明 弁護士(弁護士歴16年・交通事故部主任/弁護士法人ブライト)
交通事故被害者の示談交渉・訴訟を担当。整骨院・接骨院への通院がある事案での施術費の協定交渉、治療費打ち切りへの対応、後遺障害等級申請を数多く手がける。

監修:和氣 良浩 弁護士(代表/弁護士法人ブライト)
顧問先140社の実名を公開する総合法律事務所を率いる代表。弁護士歴平均13年以上のチームで、交通事故被害者の賠償請求から企業法務まで幅広く対応。

この記事の結論

  • 交通事故のケガで整骨院(接骨院)に通うこと自体は可能です。ただし「初診は整形外科」「医師の同意を得る」「整形外科の受診を止めない」の3つを外すと、治療費も慰謝料も削られる方向に働きます。
  • 整骨院は医師のいる医療機関ではありません。診断・画像検査・投薬ができず、後遺障害診断書も作成できません。後遺症が残りうるケガで整骨院だけに通うと、後遺障害等級を取りに行く道が事実上閉じます。
  • 見落とされがちなのが「施術費が全額は認められないことがある」という論点です。保険会社は施術部位数や頻度を査定して減額することがあり、認められなかった差額が、あとから被害者ご本人に請求されることがあります。
  • 整骨院に通っていること自体を理由に不利益を受けそうなときは、示談前・打ち切り前に弁護士が入ると、打てる手を増やせる可能性があります。

「整骨院に通ったら慰謝料が減ると聞いたけれど、本当なのか」「保険会社に整骨院はダメだと言われた」「整形外科は待ち時間が長くて、仕事帰りに寄れる整骨院に通いたい」——このページに辿り着いた方の多くが、この3つのどれかで悩んでいます。

結論から言えば、整骨院への通院は禁止されていません。実際、当事務所がお預かりしている交通事故案件でも、整骨院・接骨院に通われている方は珍しくありません。問題は「通ってよいかどうか」ではなく、「どう通えば、あとで賠償額を削られずに済むか」です。

そして、見落とされやすい落とし穴があります。整骨院の施術費は、請求された金額がそのまま全額認められるとは限らないという点です。認められなかった分が、示談後にご本人へ請求されてしまう事態も、実務では起こります。

弁護士歴16年の松本が、交通事故と整骨院をめぐる実務を、当事務所が実際に直面した論点を交えて解説します。

整骨院への通院で保険会社ともめている方は、ご相談ください(相談は無料
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整骨院と整形外科は何が違うのか——「治療」と「施術」の決定的な差

まず、両者は法律上まったく別のものです。ここを取り違えたまま通院を始めてしまう方が非常に多いため、最初に整理します。

整形外科は医師が診療する医療機関です。診断ができ、レントゲンやMRIといった画像検査ができ、投薬もできます。一方、整骨院・接骨院にいるのは柔道整復師という国家資格者で、医師ではありません。柔道整復師法上、施術の対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷に限られ、骨折・脱臼については応急手当の場合を除き医師の同意が必要とされています。診断や画像検査、投薬は医師法上できません。

整形外科(病院・クリニック) 整骨院・接骨院
行う人 医師(国家資格) 柔道整復師(国家資格)
法的な位置づけ 医療行為(診療) 医業類似行為(施術)
診断 できる できない
レントゲン・MRI等の画像検査 できる できない
投薬・注射 できる できない
診断書の作成 できる できない
後遺障害診断書の作成 できる できない
施術内容 投薬・リハビリ・手術等 手技・電気・温熱等
診療時間 平日日中が中心のことが多い 夜間・土曜も開いていることが多い

この表のうち、賠償の場面で決定的に効いてくるのが「後遺障害診断書の作成」の行です。自賠責保険の後遺障害等級は、医師が作成した後遺障害診断書を前提に審査されます。整骨院にどれだけ長く通っても、柔道整復師はこの書面を作れません。

つまり、後遺症が残りそうなケガで整骨院だけに通うと、等級を取りに行く入口に立てないということです。むちうち(頚椎捻挫)でも14級9号が認定されれば弁護士基準の後遺障害慰謝料は110万円が目安になり、これに逸失利益が加わります。ここを落とすインパクトは小さくありません(詳しくは後遺障害14級の慰謝料相場後遺障害診断書の書き方・注意点で解説しています)。

【図解】整骨院に通ってよいかは、この4ステップで決まる

「整骨院に通ってよいか」は、通う前にどの手順を踏んだかで答えが変わります。順番を守れば、整骨院の施術費も慰謝料の算定基礎も、認められる方向に働きます。

図解:整骨院に通うまでの正しい4ステップ
STEP 1 事故直後、まず整形外科(医師)を受診する
できれば事故当日、遅くとも数日以内に。ここが遅れると「事故とケガの因果関係」自体を争われます。診断名(頚椎捻挫等)を医師のカルテに残すことが出発点です。
STEP 2 医師に「整骨院にも通いたい」と伝え、同意を得る
口頭でも構いませんが、カルテに記載してもらうのが理想です。「医師の同意なく通い始めた」という一点で施術費を否認されることがあります。
STEP 3 相手方保険会社に、整骨院に通う旨を事前に連絡する
院名・住所・通う頻度を先に伝え、一括対応(保険会社が施術費を直接支払う扱い)の可否を確認します。事後報告だと「聞いていない」を理由に支払いを止められることがあります。
STEP 4 通い始めた後も、整形外科の受診を止めない
目安は最低でも月1回。医師が症状の経過を診ていない期間は、後遺障害の審査でも「その間の症状は不明」と扱われかねません。症状固定の判断も、決めるのは医師です。

この4ステップを踏んでいるかどうかで、後の交渉の難易度がまったく変わります。逆に言えば、すでに順番を外してしまった方でも、今から整形外科を受診し直して立て直せる余地はあります。放置するほど不利になるので、早めに動くことをおすすめします。

「もう順番を間違えてしまった」という方も、立て直せるか一度ご確認ください(相談は無料
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整骨院に通うことで実際に起きる5つの不利益

「整骨院に通うと慰謝料が下がる」という説明はよく見かけますが、実際に何が起きるのかを分解すると、次の5つです。

不利益1:治療費(施術費)の支払いを早い段階で打ち切られる

整骨院への通院がある事案では、相手方保険会社が一括対応をやめる時期が早まる傾向があります。むちうちなら事故から3ヶ月前後で「そろそろ」という連絡が入ることが少なくありません。

ここで重要なのは、症状固定を判断するのは主治医であって、保険会社ではないという点です。打ち切りの連絡は「支払いを止めます」という保険会社の意思表示であって、「治りました」という医学的判断ではありません。この違いを踏まえた対応の詳細は交通事故の治療費打ち切り通告への対応で解説しています。

不利益2:入通院慰謝料の算定で、通院日数を丸ごとは評価してもらえない

入通院慰謝料は、通院期間と実通院日数をもとに算定します。ところが交渉の場面では、整骨院への通院日を「治療」として全部は数えないという主張を相手方から受けることがあります。

自賠責基準では、慰謝料の対象日数は「実通院日数×2」と「治療期間」の少ない方で計算し、日額は4,300円(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)です。弁護士(裁判)基準では、むちうちなど他覚的所見に乏しいケースは、いわゆる赤い本の別表IIで算定するのが実務の標準です。

通院期間 自賠責基準 弁護士基準
別表II
弁護士基準
別表I
3ヶ月 約34万円 53万円 73万円
6ヶ月 89万円 116万円

別表IIはむちうちなど他覚的所見に乏しいケース、別表Iは骨折など通常のケガに用います。
※自賠責基準の欄は「3ヶ月(90日)通院・実通院日数40日」を想定した概算です。「実通院日数40日×2=80日」と「治療期間90日」を比べて少ない80日を採用し、80日×4,300円で計算しています。実際の金額は通院実績によって変わります。慰謝料の3基準の違いは交通事故の慰謝料相場にまとめています。

不利益3:診断書・後遺障害診断書が出ない

前述のとおり、整骨院では診断書を作成できません。人身事故への切替えにも、後遺障害の申請にも、医師の書面が必要です。整骨院だけに通っていると、必要なタイミングで書面が用意できません。

不利益4:後遺障害等級が認定されにくくなる

後遺障害の審査では、①事故から一貫して症状が続いていること、②医師が症状の推移を診ていること、③画像や神経学的所見といった医学的な裏づけがあること、が重視されます。整骨院への通院はこのいずれも満たしません。整形外科の通院実績が薄いまま症状固定を迎えると、非該当のリスクが上がります。

不利益5:自賠責しか使えない事案では、120万円の枠を施術費が圧迫する

これは意外に知られていない論点です。自賠責保険の傷害による損害の限度額は120万円で、この枠には治療費・施術費・通院交通費・休業損害・傷害慰謝料がすべて合算されます。

ただし、この不利益が現実に効いてくる場面は限られます。相手方が任意保険に加入していて一括対応がなされている通常の事案では、損害の合計が120万円を超えても超過分は任意保険会社が負担するため、施術費が慰謝料や休業損害を圧迫することは通常ありません。

問題になるのは、相手方が任意保険に加入しておらず自賠責しか使えない事案や、被害者側の過失割合が大きく自賠責の枠内での回収を目指す事案です。この場合、整骨院に週2〜3回・半年通えば施術費はまとまった金額になり、その分だけ同じ120万円の枠から支払われる休業損害や慰謝料の取り分が直接減ります。相手方の保険加入状況は、通院の組み立てを決める前に必ず確認してください。

ここだけは押さえてください

整骨院に通うこと自体が悪いのではありません。整形外科の受診をやめてしまうことが、賠償の場面では一番のダメージになります。「通いやすいから整骨院だけにする」という選択が、後遺障害等級と数十万円〜数百万円の差につながることがあります。

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見落とされがちな落とし穴——施術費が「全額」認められるとは限らない

ここからは、実務では頻繁に問題になるにもかかわらず、見落とされやすい話です。

一括対応(相手方保険会社が施術費を整骨院へ直接支払う扱い)になっていると、被害者の方は窓口で支払いをしないため、「全部払ってもらえている」と思い込んでしまいます。ところが実際には、保険会社は整骨院からの請求をそのまま丸のみしているわけではありません。

保険会社が査定してくるのは、主に次の3点です。

査定される項目 保険会社の典型的な主張
施術部位の数 「診断名は頚部と腰部の2部位。5部位分の施術は認められない」
施術の頻度 「週3回は過剰。週1〜2回が相当」
施術の期間 「症状固定後の施術は賠償の対象外」

この査定によって、整骨院が請求した金額と、保険会社が認めた金額との間に差額が生じます。そして、その差額は消えてなくなるわけではありません。整骨院から見れば「未回収の売掛金」であり、施術を受けた被害者ご本人に請求されうるお金です。

示談が終わってから「整骨院から数十万円の請求書が届いた」と慌ててご相談に来られる方が、実際にいらっしゃいます。示談後だと、その分を相手方に追加請求することは原則としてできません。

【実務例】施術費の差額26万円を、ご本人の追加負担なしで精算した対応

当事務所が実際に対応した事案を、守秘の観点から事案の内容を再構成し、金額も実際のものとは変えてご紹介します(計算の構造は実際の処理と同じです)。

実務例:整骨院の施術費が3割以上減額された事案

状況:追突事故の被害者の方。整形外科と整骨院を併用して通院。相手方保険会社が一括対応をしていたため、ご本人は窓口負担ゼロで通われていました。

  • 整骨院からの施術費請求総額:96万円
  • 相手方保険会社が当初認めて支払った額:62万円(施術部位数を絞る査定)
  • 差額として宙に浮いた金額:34万円

ブライトの対応

  • ① 相手方保険会社に対し、診断名と施術内容の対応関係を整理して追加認容を求め、8万円の追加認容を得ました(施術費として認められた額は合計70万円)。
  • ② それでも残る26万円について、当事務所がご本人(依頼者)の代理人として整骨院と協議。追加認容分を示談金の中からお支払いして精算を完了する代わりに、残額については請求しないという精算合意をいただきました。
  • ③ 最終示談金112万円で合意し、そのうち8万円を当事務所から整骨院へ送金して施術費の精算を完了しました。

結果:整骨院の未回収分26万円について、ご本人の追加負担は生じませんでした。整骨院にも追加認容分をお支払いし、双方が納得できる形で精算を終えています。

※弁護士費用は上記とは別に、ご契約の報酬基準に基づいて精算します(弁護士費用特約をご利用の場合は、特約から支払われます)。上記の金額に弁護士費用は含まれていません。

※守秘義務のため事案の内容を再構成しており、記載した金額はいずれも実際の数値ではありません(計算の構造のみ実際の処理と同じです)。同様の結果をお約束するものではありません。

この事案で申し上げたいのは、「一括対応だから安心」ではないということです。誰も精算をしなければ、差額はご本人に残ります。

そして、この交渉は示談前でなければ成立しにくいという時間的な制約があります。示談金という原資が手元にあるからこそ、整骨院側も「追加分を受け取って残りは免除する」という判断ができるからです。示談後に「実は請求が来た」となってからでは、選択肢が大きく狭まります。

整骨院から請求書が届いた・示談内容に不安がある方はご相談ください(相談は無料
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出張・転勤・引越し——通院先が変わっても施術費は出るのか

「仕事の都合で月の半分は他府県にいる」「転勤が決まったが治療はまだ終わっていない」というご相談も、実務ではよくあります。

この点、通院先が複数になること自体が禁じられているわけではありません。ただし、何も伝えずに別の整骨院に通い始めると、保険会社から「聞いていない」「重複した施術ではないか」として支払いを止められることがあります。

当事務所では、こうした事案で事前に相手方保険会社と協議し、出張先の整骨院についても一括対応を継続する取り扱いを取り付けたことがあります。ポイントは次の3点でした。

やったこと 目的
出張の期間・行き先・通う院名を事前に書面で通知 「無断で増やした」という主張を封じる
主たる通院先と出張先の院で施術日が重複しないことを整理 過剰施術・重複請求の疑義を消す
出張中も月1回の整形外科受診は維持する計画を提示 医師による症状経過の記録を途切れさせない

結果として、ご本人は出張先でも窓口負担なく施術を継続できました。「先に伝える」というだけのことで、通せる範囲が変わります。事後報告になった時点で、交渉の難易度は跳ね上がります。

※守秘義務のため事案の内容を再構成しています。保険会社の対応は事案ごとに異なり、同様の結果をお約束するものではありません。

通院頻度と期間——どのくらい通うのが「適正」とされるのか

「週に何回通えばいいですか」というご質問は非常に多いのですが、これに一律の正解はありません。医学的に必要な頻度は、症状によって違うからです。

そのうえで、実務で保険会社と争いになりにくい組み立て方の目安をお示しします。

目安 理由
整骨院 週2〜3回程度 これを超えると「過剰施術」として査定される可能性が上がります
整形外科 最低でも月1回 医師による症状経過の記録を残すため。後遺障害審査で効いてきます
通院の間隔 途切れさせない 1ヶ月以上通院がない期間があると「治癒した」と主張されやすくなります

逆に、「毎日通えば慰謝料が増える」というのは誤解です。自賠責基準では実通院日数×2が治療期間を超えると頭打ちになりますし、弁護士基準でも過剰な通院は評価されません。むしろ「症状に見合わない通院」として、施術費そのものを否認される材料になります。

通院と慰謝料の関係については交通事故の治療・通院はいつから?治療費は?慰謝料はもらえる?もあわせてご覧ください。

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通勤中・業務中の事故で整骨院に通う場合——労災という選択肢

通勤途中や業務中に遭った交通事故は、自賠責・任意保険だけでなく労災保険(通勤災害・業務災害)の対象にもなります。そして、柔道整復師の施術も労災保険の療養(補償)給付の対象です。

これが効いてくるのは、相手方保険会社に治療費を打ち切られた場面です。一括対応が止まっても、労災に切り替えて療養給付を受けながら通院を継続できる可能性があります。「保険会社が止めたから通院も終わり」ではありません。

相手方の任意保険(一括対応) 労災保険(通勤災害・業務災害)
整骨院の施術 対象になりうる(査定あり) 療養(補償)給付の対象
窓口負担 原則なし 労災指定の施術所なら原則なし
打ち切りの有無 保険会社の判断で止まる 療養の必要がある間は継続
過失相殺 被害者の過失分が減額される 給付は原則として減額されない
慰謝料 支払われる 労災からは支払われない

労災を使うと慰謝料が減るという誤解がありますが、そうではありません。労災(治療費・休業補償)と、加害者への損害賠償(慰謝料等)は、二重取りにならない範囲で併用できます。どちらを先に使うかで手取りが変わることもあるため、通勤中・業務中の事故は早い段階での整理をおすすめします。詳しくは通勤・業務中の交通事故|労災保険と自賠責保険を両方使う方法で解説しています。

当事務所では、労災事故部と交通事故部が同じ事務所内で連携できます。「通勤災害として扱うのか、交通事故として処理するのか」という入口の判断から、一緒に整理することが可能です。

「整骨院はもう認めない」と言われたときに取れる手

保険会社から整骨院の施術費を否認された、あるいは一括対応を打ち切ると告げられた場合、選択肢は「受け入れる」か「泣き寝入り」の二択ではありません。

選択肢 内容 向いているケース
①医師の意見書を用意して継続を求める 主治医に施術の必要性・症状の推移を書面化してもらい、保険会社に再考を求める 整形外科の受診実績がある方
②健康保険に切り替えて通院を続ける いったん自己負担(3割)で通い、示談時に相手方へ請求する 症状固定にはまだ早いと医師が判断している方
③労災に切り替える 通勤中・業務中の事故なら療養(補償)給付で継続 通勤災害・業務災害に該当する方
④症状固定として後遺障害申請に進む 治療を区切り、等級認定を取りに行く 医師も症状固定と判断している方
⑤弁護士を入れて交渉する 打ち切り時期の交渉、施術費の精算、示談金全体の増額をまとめて扱う 上記のどれを選ぶべきか判断がつかない方

なお、②の健康保険で柔道整復の施術を受ける場合、療養費の支給対象は急性の外傷性の負傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷)に限られます。慢性的な肩こりや疲労回復目的の施術は健康保険の対象外です。この点は整骨院で必ず確認してください。

どの選択肢を取るかは、症状・通院実績・相手方の対応状況によって変わります。示談交渉や保険会社対応の全体像は交通事故の示談・保険会社対応|治療費打切り・紛争解決センター(ADR)まで完全解説にまとめています。

保険会社に整骨院を否認されたら、示談する前にご相談ください(相談は無料
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整骨院の先生から弁護士を紹介されたときの考え方

整骨院・接骨院は、交通事故被害者の方と最も長く接する場所のひとつです。そのため「保険会社の対応で困っているなら、弁護士に相談したほうがいい」と、院の先生から弁護士への相談を勧められるケースがあります。

紹介そのものは、被害者の方にとって不利益なものではありません。判断のポイントは次の2点です。

  • どの弁護士に依頼するかを決めるのは、あくまでご本人です。紹介を受けたからといって、その事務所に依頼する義務はありません。複数に相談して比べていただいて構いません。
  • 整形外科の受診が抜けていないかを、その場で確認してください。紹介の時点ですでに整骨院だけの通院になっていると、立て直しに時間がかかります。

なお、当事務所は、紹介元の医療機関・整骨院・接骨院等に対して、紹介料その他の対価を支払うことは一切ありません。ご紹介の有無によって、ご相談者の方の費用や対応内容が変わることはなく、手続きが有利になったり不利になったりすることもありません。

当事務所では、ご相談時にまず通院の履歴を時系列で確認し、「今から整形外科を受診し直すべきか」「もう症状固定に進むべきか」を整理したうえで、受任の要否をお伝えしています。ご依頼いただかないほうがよい場合は、その旨も率直にお伝えします。

よくあるご質問

Q1. 整形外科に行かず、最初から整骨院に通ってしまいました。もう手遅れですか。

手遅れと決まったわけではありません。今からでも整形外科を受診し、症状を医師のカルテに記録してもらうことが最優先です。ただし、事故から受診までの期間が空くほど「事故によるケガなのか」を争われやすくなります。日を置かずに受診してください。

Q2. 整骨院に通うと、必ず慰謝料が減らされるのですか。

必ず減るわけではありません。整形外科と併用し、医師の同意を得て、保険会社にも事前に伝えていれば、通院日数として評価される余地は十分にあります。減額されやすいのは「整骨院だけ」「医師の同意なし」「保険会社に無断」の場合です。

Q3. 医師が整骨院に行くことを認めてくれません。

医師が反対する場合、医学的な理由があることが多いです(骨折の疑いがある、患部を動かすべきでない時期である等)。まずは理由を確認してください。理由に納得できない場合は、セカンドオピニオンとして別の整形外科を受診するという方法もあります。医師の反対を押し切って通うと、施術費が否認されるリスクが高くなります。

Q4. 鍼灸院・整体・カイロプラクティックはどうですか。

整骨院よりさらに慎重な判断が必要です。整体やカイロプラクティックには国家資格の裏づけがなく、施術費が賠償の対象と認められにくい傾向があります。鍼灸・あん摩マッサージ指圧は国家資格ですが、賠償の対象とするには医師の指示・同意が実務上ほぼ必須です。通う前に必ず医師と保険会社に確認してください。

Q5. 一括対応で窓口負担がないのに、後から請求されることがあるのですか。

あります。保険会社が整骨院の請求を全額は認めず、認められなかった差額が整骨院の未収金として残るケースです。示談する前に、施術費が全額精算されているかを必ず確認してください。示談成立後は、その差額を相手方に追加請求することは原則としてできません。

Q6. 整骨院に通った期間は、後遺障害の「通院期間」に数えてもらえますか。

後遺障害等級の審査で重視されるのは、医師の診療実績と医学的所見です。整骨院への通院は、症状の一貫性を示す事情の一つとして考慮される余地はありますが、それ単独で等級認定の根拠になるものではありません。整形外科の受診を並行して続けることが不可欠です。後遺障害全般については交通事故の後遺障害認定をご覧ください。

Q7. 相談や依頼のタイミングは、いつがよいですか。

早いほど打てる手が多くなります。特に①治療費を打ち切ると言われる前、②症状固定を決める前、③示談書にサインする前の3つは、いずれも「その前」と「その後」でできることがまったく違うタイミングです。

なお、人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、損害および加害者を知った時から5年です(改正民法724条の2)。この5年は、2020年4月1日以降に発生した事故はもちろん、それ以前に発生した事故であっても、2020年4月1日の時点で改正前の3年が経過していなかったものには適用されます(改正法の経過措置)。物損部分は3年です。

また、起算点は傷害分と後遺障害分で異なり、後遺障害分は症状固定日が基準になります。更新・完成猶予が生じている場合もあります。2020年4月1日より前に発生した事故の傷害分は、通常はすでに期間が経過しています。もっとも後遺障害分は症状固定が遅ければまだ期間内のことがありますし、逆にまだ余裕があると思っていても期限が近いことがあります。ご自身で結論を出さず、個別にご確認ください。

まとめ——整骨院は「使い方」で結果が変わる

この記事の要点を整理します。

  • 整骨院への通院は可能。ただし①初診は整形外科、②医師の同意、③保険会社への事前連絡、④整形外科は最低月1回維持——この4つを外さないこと。
  • 整骨院では診断書も後遺障害診断書も作成できない。後遺症が残りうるケガでは、整形外科の通院実績が等級を左右する。
  • 自賠責の傷害分120万円には施術費も含まれる。相手方が任意保険未加入で自賠責しか使えない事案では、施術費が慰謝料や休業損害の取り分を圧迫する。
  • 一括対応でも施術費が全額認められるとは限らない。認められなかった差額は、後日ご本人に請求されうる。示談前に精算状況を確認すること。
  • 通勤中・業務中の事故なら、労災の療養(補償)給付で施術を継続できる可能性がある。

整骨院に通うこと自体を否定する必要はありません。仕事帰りに通えること、慢性期の症状緩和に役立つことは、被害者の方にとって現実的な価値があります。問題は、その通い方が賠償の場面で不利に働かない設計になっているかです。

弁護士法人ブライトでは、交通事故部の松本を中心に、通院の組み立てから施術費の精算、後遺障害申請、示談交渉までを一貫してお引き受けしています。労災事故部との連携により、通勤中・業務中の事故についても入口から整理できます。

「この通い方で大丈夫だろうか」という段階でのご相談を歓迎します。示談書にサインしてしまう前に、一度ご確認ください。

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  • この記事を書いた人

代表弁護士:和氣 良浩

弁護士法人ブライト代表弁護士: 2006年に独立開業してから交通事故被害の回復に努めてきました。これまで1000件を超える交通事故を解決して参りましたが、被害者が低い賠償金で納得させられているケースをたくさん見てきました。 一人でも多くの被害者が適切な補償を受けられるように情報発信を行っています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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交通事故担当弁護士

  • 代表弁護士 和氣良浩

    代表弁護士 和氣良浩
             

事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-927-113(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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弁護士法人ブライト (著)
顧問弁護士はトラブル対応だけでなく契約書作成など実務も担う身近な存在となりました。本書では顧問弁護士の活用メリット、自社に合う選び方、法的リスクのマネジメントについて解説します。
顧問弁護士はトラブル対応だけでなく契約書作成など実務も担う身近な存在となりました。本書では顧問弁護士の活用メリット、自社に合う選び方、法的リスクのマネジメントについて解説します。

おもてなしを守る「ホテル法務」の教科書

宿泊業経営者のための新リーガル戦略
弁護士法人ブライト (著)
2026年10月のカスハラ対策義務化から、悪質クレームと合理的配慮の境界線、合法的な宿泊拒否の手順まで。当法人が対応してきた8つの実務事案をもとに、宿泊業の予防法務を解説します。
2026年10月のカスハラ対策義務化から、悪質クレームと合理的配慮の境界線、合法的な宿泊拒否の手順まで。当法人が対応してきた8つの実務事案をもとに、宿泊業の予防法務を解説します。