交通事故の怪我を治療するため、医師の許可なしで整骨院に通った場合、もらえる慰謝料が減ってしまいます。
むち打ちなどの軽症の場合、治療費などの実費に加えて、通院1日あたり6,000円前後の入通院慰謝料を加害者に対して請求することが出来ます。しかし、これは適切な治療を受けた場合です。自己判断で整骨院に通った場合、必要のない治療と判断されて慰謝料や治療費を受け取れない可能性があります。
一方で医師に「整骨院でも治療をしたい」と伝えて、反対されなければ整形外科と整骨院を併用することが出来ます。医師の許可を得た場合は、治療費や入通院慰謝料は減額されません。
ここでは、交通事故の怪我で整骨院に行く際の注意点を詳しくご紹介しています。整骨院での施術を検討されている方は、ぜひ、ご一読下さい。
カイロプラクティックや整体院は、治療費や慰謝料の支払い対象になりません。
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交通事故の被害者は整骨院に行くと慰謝料が下がるのか
整形外科に一度も行かずに、事故の怪我を整骨院で治療すると慰謝料や治療費といった賠償金が下がる可能性があります。
整骨院で治療するともらえる治療費が下がる理由
事故による怪我で治療費を加害者に請求するには、原則として受けた治療が次の条件を満たす必要があります。
- 施術の必要性:治療の必要があったか
- 施術内容の合理性:治療内容は適切か
- 施術期間・費用の相当性:必要以上に治療をしていないか
- 施術の有効性:治療によって怪我はよくなったか
病院で医師が行う治療であればこの条件を満たしているとして治療費を加害者に請求することが出来ます。
対して、整骨院で施術を行うのは柔道整復師であり、患部を温める・冷やすといった治療がこの条件を満たしていないと判断されて治療費が減額されたり、支払われなかったりします。
一方、整骨院での治療費を損害として加害者に請求する方法もあります。
それは医師の指示を受けて整骨院で治療する事です。
ここでいう指示とは医師の口から「整骨院に行ってください」と言われるだけでなく、こちらから「整骨院に行ってもいいですか?」と聞いて反対されなかった場合も含みます
整骨院への通院を反対されなかった場合は「黙示の同意」があったとみなされます
医師の指示を受けて整骨院に通えば、条件の1番と4番を満たしていると考えられるので治療費を相手に請求しやすくなります。
整骨院に通院すると慰謝料が下がる理由
交通事故で整骨院に行くような怪我をした場合、被害者が受け取れる慰謝料は次の2つです。
この他にも死亡慰謝料というものがありますが、整骨院に通う怪我の場合は発生しないため省略します。
整骨院で治療した場合の入通院慰謝料
入通院慰謝料は通院期間に応じて変わり、
通院期間 | 入通院慰謝料 |
---|---|
1ヵ月 | 19万円 |
2ヵ月 | 36万円 |
3ヵ月 | 53万円 |
4か月 | 67万円 |
5ヵ月 | 79万円 |
6ヵ月 | 89万円 |
この表は弁護士に依頼した場合の金額です、弁護士に依頼しなかった場合は4,300円×通院日数となります。
となるのですが、治療費のところでも説明したように医師の許可なく整骨院に通うと怪我の治療に必要でなかったとして慰謝料が認められません。
整骨院で治療した場合の後遺障害慰謝料
事故でむち打ちなどの怪我をし、手足に痺れなどの後遺症が残った場合は後遺障害として認められ、後遺障害慰謝料が発生する可能性があります。
その金額は残った症状の重さによっても変わりますが、整骨院で治療を受けるような怪我の場合は後遺障害14級が認められる可能性があるので弁護士に依頼すれば110万円、自賠責保険では32万円です。
後遺障害として認められるためには「後遺障害診断書」という書類が必要なのですが、これは医師にしか書くことが出来ないので整骨院だけで治療をすると後遺障害慰謝料をもらえなくなります。
関連ページ:交通事故のむち打ちの症状や治療期間、慰謝料など詳しく解説
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交通事故の怪我で整骨院へ行くときの注意点
整骨院と整形外科を比べると、整形外科に最初から最後まで通院する方が治療費や慰謝料などを適切な金額で受け取れる可能性が高いです。
一方で整骨院にも整形外科と比べて
- 店舗数が多いため通いやすい
- 営業時間が整形外科に比べて長い
- マッサージ等の積極的な治療によって回復を感じることがある
といった長所があるため、整骨院に通いたいという方も多くいます。
そこで交通事故の怪我を整骨院で治療する時に気を付けておきたい事をまとめて解説します。
- 事故直後の初診は整形外科に行く
- 医者と保険会社に整骨院で治療する事を伝える
- 整骨院だけでなく、整形外科にも通院する
事故直後の初診は整形外科に行く
交通事故に遭った場合には、事故直後に必ず整形外科を受診するようにしてください。すでに説明したように治療費や慰謝料が減ることに加えて、整骨院では
- 手術や薬の処方
- 医師の許可なく脱臼や骨折した患部への施術
をしてはいけないと法律で定められています。
なので
- MRI検査
- レントゲン写真の撮影
といった検査は整形外科でしか出来ません。
これらの検査は治療をするためだけでなく、適切な慰謝料を獲得するためにも重要であるため、必ず事故直後は最初に整形外科に行きましょう。
医者と保険会社に整骨院で治療する事を伝える
整形外科を受診した後でも勝手に整骨院に行ってはいけません。必ず医師だけでなく相手保険会社に整骨院へ行くことを伝えてから行ってください。
そうしないと、相手保険会社から「整骨院への通院は治療のために必要ないのではないか」と判断され治療費の減額や早期打ち切り、あるいは治療費を全く支払ってもらえないという事も考えられます。
整骨院だけでなく整形外科にも通院する
医師から整骨院に通う許可をもらった後も整形外科に通院する必要があります。
整形外科に継続して通院していないと、治療を継続する必要性が認められなくなるおそれがあります。医師に必要な診断を受け、医師による症状の管理下で整骨院に通院しているという形にすることで、治療費支払い、後遺障害認定、慰謝料請求いずれの場面においても有利になります。
少なくとも月に1回は整形外科に通院して、整骨院と併用するようにしましょう。
もし整形外科に定期的な通院を行わずに後遺症が残ってしまった場合、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の請求に必要な後遺障害診断書を書いてもらえないため注意してください。
鍼灸院、指圧院、整体、カイロプラクティックには行かない
「整体院」「カイロプラクティック」での治療費は加害者側の保険会社に請求することは出来ません。
下の表のように整形外科と整骨院はそれぞれ、医師と柔道整復師という国家資格を持った人間が施術を行うため整形外科ではすべての施術が、整骨院では急性の打撲や捻挫等の一部の治療で健康保険を使うことが出来ます。
一方で整体・カイロプラクティックの施術には特に資格が必要ありません。
施設名 | 施術者の資格 | 健康保険適用 |
---|---|---|
整形外科 | 医師 | あり |
整骨院・接骨院・ほねつぎ | 柔道整復師 | 一部あり |
整体院・カイロプラクティック | 不要 | なし |
国家資格を持たない人が施術している施設に通っても、保険会社に治療費を負担してもらうことは出来ません。また入通院慰謝料の請求も難しくなるため、受け取る賠償金が減ってしまう危険性があります。
整骨院と同様のものと考えて、整体院やカイロプラクティックに行くことがないように気をつけてください。
鍼灸院や指圧院などの治療でも医師の指示があれば治療費を請求できる!と書いているサイトもありますがこれは間違いです。
確かに整骨院と同じく国家資格を持っている人間が施術を行いますが、この二つへの通院については医師が明確に「同意する」と書類に記載する必要があり、整骨院のように黙示の同意(黙認)では治療費の支払いを否認されます。
交通事故で整骨院に通った場合のトラブル
整骨院への通院については、相手方保険会社が治療費や慰謝料の支払いの対象にしないことがあります。保険会社の立場としては「整骨院への通院は治療のために必要ないのではないか」と考えるからです。考えられる保険会社の対応は以下のようなものになります。
治療費をまったく支払わない
保険会社が整骨院の治療費を一切支払わないこともあります。
交通事故の治療費は保険会社が被害者の代わりに支払い、被害者は負担の必要がないのが一般的です。しかし、「整骨院への通院は必要ない」として治療費が支払われないと、被害者が費用を窓口で自己負担しなければなりません。健康保険を使用できるとはいえ、通院回数が多くなれば金銭的負担が大きくなります。
保険会社に確認をとらずに整骨院に通院するのは、治療費が支払われないリスクがあるので避けるようにしてください。
治療費の支払いを打ち切る
整骨院の治療費の支払いに始めは応じていたとしても、途中で支払いが打ち切られてしまうこともあります。「治療してもそれ以上症状が改善するわけではない」というのが保険会社の言い分です。
こうしたケースで治療費を継続して支払うよう求めるためには、医師の意見が重要です。医師のお墨付きを得て、整骨院の治療が症状の改善に有効であることを示さなければ、治療費の支払いを受けるのが難しくなります。
慰謝料の計算において整骨院への通院を考慮しない
治療が終了して示談金の交渉の段階になったときに、保険会社が整骨院への通院を考慮せずに入通院慰謝料を計算する可能性があります。
整骨院への通院も整形外科と同様に慰謝料計算の根拠とされるのが一般的です。しかし、必要のない通院だったと判断され慰謝料の対象外となると、慰謝料額が大きく下がってしまいます。慰謝料は交通事故の被害賠償において重要であるため、十分な慰謝料が支払われないことによる不利益は大きなものです。
保険会社の対応について「事故で相手保険会社が嫌がること|泣き寝入りしない方法を弁護士が紹介」でも詳しく紹介しています。
治療に関するトラブルは多い
治療費や慰謝料の支払いにおいて加害者とトラブルになることは少なくありません。
弁護士に依頼することで相手とのやり取りを代わってもらうことが出来るので安心して治療に専念できます。
被害者が加害者に請求できるお金
交通事故で怪我をした場合、加害者に対して次のお金を請求することが出来ます。
- 治療費や病院までの交通費といった実費
- 入通院慰謝料(通院1日当たり4,300円~6,000円前後)
それに加えて・・・・
怪我のせいで仕事を休み、収入が減った場合は
をもらうことができます。
さらに、事故が原因で後遺障害が残ったと判断されれば
という「事故によって失った将来の収入に対する賠償金」を加害者に請求することが出来ます。
交通事故での怪我はまずは整形外科へ、その後に整骨院へ
交通事故で整骨院に通いたい場合、まずは整形外科で診てもらってから医師に「整骨院に通いたい」と申し出ましょう。
そこで明確に反対されなければ加害者側の保険会社に「医師の許可をもらって整骨院に通院します」と伝えてから通院を始めましょう。
適切な手順を踏まなければ治療費や慰謝料などの賠償金が減ってしまう可能性があります。
もし事故で怪我をして通院方法や治療費、慰謝料についてわからないことがあれば我々弁護士法人ブライトまでご相談ください。