このページは、共有名義の不動産が売却できないときの打開策について、芦屋・阪神間の相続不動産のご相談を取り扱う弁護士法人ブライト(代表:和氣良浩弁護士)が、実務の視点から整理した解説記事です。
はじめに|「売りたいのに、動かせない」を打開する
相続した実家や土地を共有名義のまま持っていて、「そろそろ売りたい」と思ったとき、多くの方が同じ壁にぶつかります。
- 共有者の一人に相談したが、「まだ売りたくない」「価格に納得できない」と反対されている
- 共有者の一人と何年も連絡を取っておらず、そもそも話し合いのテーブルにつけない
- 気づいたら、共有者の一人が自分の持分だけを見知らぬ業者に売ってしまっていた
- 共有者の一人が高齢で、判断能力に不安があり、契約の話ができる状態ではない
「共有名義の不動産は、全員が納得しないと売れない」——これは事実ですが、だからといって「一人でも反対すれば永久に売れない」わけではありません。反対・不在・意思能力の欠如、それぞれの局面に応じた法律上の打開策が用意されています。
この記事では、「なぜ共有名義の不動産は売れないのか」という基本構造を確認したうえで、共有者が非協力的・行方不明・意思表示不能といった局面ごとに、弁護士がどう動くかを解説します。
「売りたいのに、共有者の同意が得られず止まっている」——その段階こそご相談の対象です。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
なぜ共有名義の不動産は売れないのか|「全員同意」の壁と「持分だけ売却」の限界
1-1. 不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要
共有物の売却は、法律上「変更行為」に位置づけられ、共有者全員の同意がなければ行うことができません(民法251条1項)。修繕や不法占拠者への明渡し請求のような「保存行為」は各共有者が単独でできますし、賃料額の変更など軽微な「管理行為」は持分価格の過半数で決められますが(民法252条1項)、売却はこの区分の中でもっともハードルの高い「全員同意」の領域にあります。
つまり、3人兄弟の共有名義であれば、1人が「まだ売りたくない」と言うだけで、不動産会社は売却活動そのものを始められません。これは共有名義の不動産に共通する、避けようのない構造です。
1-2. 自分の持分だけなら単独で売れる——ただし、買い手がつきにくい
見落とされがちですが、各共有者は自分の持分だけであれば、他の共有者の同意を得ることなく第三者へ売却できます(所有権の性質を定めた民法206条、および共有物「全体」の変更に全員の同意を求める民法251条の反対解釈から、持分自体の処分は各共有者が単独で行えると解されています)。「全員の同意が必要」なのは不動産全体の話であり、自分の権利分だけを手放すことは、原則として自由です。
ただし、持分だけを買っても、その不動産を単独で使用したり、自由に建て替えたりすることはできません。一般の個人が住宅ローンを組んで持分だけを購入することは通常想定されておらず、実際に持分だけの取引に応じるのは、共有持分を専門に扱う買取業者が中心となります。「売りたくても、まともな条件で買ってくれる相手が見つからない」——これが、共有名義の不動産が「売れない」と言われるもう一つの理由です。
このように、共有名義の不動産が動かない背景には、「全員同意が必要な不動産全体の売却」と「単独でできるが買い手がつきにくい持分だけの売却」という、2つの異なる壁があります。次の章では、これらの壁を前提に、共有者側の事情に応じた打開策を整理します。
打開策はパターンによって変わる|4つの典型パターンと動き方
「共有者の同意が得られない」と一口に言っても、その原因は一様ではありません。原因ごとに、取るべき手続きも変わります。ここでは実務でよく直面する4つのパターンに分けて解説します。

パターン1:共有者の一部が非協力的(連絡はつくが同意しない)
もっとも多いのが、連絡は取れるものの、「価格に納得できない」「まだ手放したくない」と反対しているケースです。
このパターンでは、反対の理由を正確に見極めることが出発点になります。多くの場合、対立の実体は「売る・売らない」という感情論ではなく、評価額の水準にあります。売却を急ぎたい側は低めの査定額を、慎重な側は高めの実勢価格を主張し、双方の提示額が2倍近く開いた状態から話が止まる——これは実務でしばしば見る光景です。路線価・査定書・不動産鑑定といった客観資料を段階的に示しながら、譲れる点と譲れない点を整理していくことで、多くの案件は合意に近づきます。
もう一つ実務で繰り返し見られるのが、共有者の一人が当初は持分の買い取りや売却に前向きな姿勢を見せながら、後になって「資金的に難しい」「借入がこれ以上組めない」と態度を翻すパターンです。この局面では、感情論で押し引きするのではなく、買い取る側の借入返済と収入のバランス(キャッシュフロー)で成り立つかどうかを最初に検証することが、後戻りのない進め方になります。
話し合いが平行線のまま長期化している場合は、弁護士名義の書面で正式に売却・分割の意向を申し入れることで、止まっていた話が動き出すことがあります。それでも応じない場合の最終手段は、後述する共有物分割請求です。
「反対の理由」を整理するだけでも交渉は前に進みます。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
パターン2:共有者と連絡が取れない・行方不明
次に多いのが、共有者の一人と長年連絡を取っておらず、そもそも話し合いの土俵に上げられないケースです。
このパターンでは、その共有が遺産分割を経ているかどうかで、使う手続きが変わります。
- 遺産分割協議がまだ終わっていない場合:行方不明の相続人を除いて協議を進めることはできません。まず不動産登記簿や住民票・戸籍の附票などで所在調査を尽くし、それでも所在が判明しなければ、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる手続きがあります(民法25条1項)。選任された管理人が、家庭裁判所の許可を得たうえで、行方不明者に代わって遺産分割協議に加わります。
- 遺産分割を経て共有名義の登記が済んでいる場合:2023年4月施行の改正民法により、所在等不明共有者の持分を、裁判所の決定を得て他の共有者が取得・譲渡できる制度が使えます(民法262条の2・262条の3)。他の共有者が持分を取得すれば単独所有として売却でき、あるいは第三者への譲渡権限を得て売却代金を分配することもできます。
いずれのルートも、まず「探す」努力(所在調査)を尽くしたことを裁判所に示す必要があり、調査には一定の時間がかかります。「行方不明だから売却は諦めるしかない」という結論にはならない一方、見通しを立てるには早めの着手が重要です。
連絡が取れない共有者がいても、諦める必要はありません。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
パターン3:共有者の一部が持分を先に第三者(買取業者)へ売却してしまった
1-2で触れたとおり、各共有者は自分の持分だけであれば単独で売却できます。そのため、資金繰りなどの事情から、共有者の一人が自分の持分を専門の買取業者へ売却してしまうケースが実際に起こります。この場合、ある日突然、面識のない業者が新たな共有者として登場し、持分の買い取りや共有物分割を求めてくることになります。
この局面自体は、業者が違法な行為をしているわけではなく、法律上認められた持分処分の結果です。ただし、家族間の話し合いだったはずの問題が、取引に慣れた相手との交渉に変わる以上、対等な立場で臨むには専門的な知識が必要になります。
この状態から不動産全体を現金化・解決に導く方向性としては、大きく①こちらの持分も含めて業者に適正価格で買い取ってもらう、②業者が保有する持分をこちらが買い戻して単独所有に戻す、③業者を含む共有者全員の合意のもとで不動産全体を第三者へ売却する、のいずれかに整理できます。どの方向が現実的かは、業者の提示条件や資金状況によって変わります。買い取り価格の考え方や交渉の進め方、共有物分割請求への対応まで含めて、早い段階で弁護士に整理を依頼することをおすすめします。
パターン4:共有者が認知症等で意思表示できない
共有者の一人が高齢で認知症等により判断能力(意思能力)を欠く状態にある場合、その人との間で有効な売買契約や遺産分割協議を成立させることはできません。意思能力のない人がした契約は、法律上無効とされているためです。
このパターンでは、家庭裁判所に成年後見開始の審判を申し立て、選任された成年後見人が本人に代わって意思表示を行う体制を整える必要があります(民法7条)。実務では、申立てに必要な医師の診断書を、かかりつけ医から「専門外である」等の理由で作成を断られるといったつまずきが起こることがあり、その場合は過去の入院歴等をたどって別の医療機関に依頼するなど、地道な調査が必要になることもあります。後見開始までには一定の時間がかかるため、判断能力に不安の兆候が見えた段階で早めに着手することが、結果的に手続き全体を早く進める鍵になります。
なお、判断能力があるうちに将来を見据えて準備しておく方法として、民事信託(家族信託)という選択肢もあります。あらかじめ不動産の管理・処分の権限を信頼できる家族に託しておけば、将来その共有者の判断能力が低下しても、共有不動産の管理や売却が止まらずに済みます。平時のうちに備えておけるかどうかで、いざという時の選択肢の幅は大きく変わります。
※注意点として、成年後見制度は「不動産を売却するためだけ」に一時的に利用できる制度ではありません。一度後見が開始すると、原則として本人が亡くなるまで(または判断能力が回復するまで)継続し、専門職が後見人に選任された場合は月々の報酬が発生し続けることもあります。申立てにあたっては、売却後もこの体制が長期間続くことを踏まえて検討する必要があります。
「話ができない」共有者がいる場合こそ、早めの着手が解決を早めます。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
それでもまとまらない場合の最終手段|共有物分割請求
パターン1〜4のいずれについても、話し合いや所在調査・後見手続きを尽くしてなお解決しない場合の最終手段は共有物分割請求です。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができ(民法256条1項)、他の共有者がどれだけ反対していても、共有状態を強制的に解消する道が法律上保障されています(民法258条)。
訴訟まで進んだ場合、裁判所は現物分割・賠償分割(一人が取得し他の共有者へ金銭を支払う方法)・競売による換価のいずれかを命じます。「実家に住み続けたい」側にとっては、共有者の一人に全部を取得させ、他の共有者に適正価格を賠償させる全面的価格賠償という、判例で認められ現在は民法258条2項に明文化された方法もあります(最高裁平成8年10月31日第一小法廷判決・民集50巻9号2563頁)。ただし、この方法が認められるには、取得する側に他の共有者へ適正な対価を支払うだけの資力(賠償能力)があることなど、一定の要件を満たす必要があり、誰でも無条件に選べる方法ではありません。
一方で、話し合いの前段階でも打てる手はあります。弁護士名義での内容証明郵便による申入れ自体が、何年も塩漬けだった話を動かすきっかけになることは、実務上しばしば経験するところです。訴訟はあくまで最終手段であり、その前段階でどこまで手を尽くせるかで、解決までの期間とコストは大きく変わります。共有物分割請求の具体的な流れ・費用・期間はこちらの記事で詳しく解説しています。
共有解消の手段全体(話し合いによる持分売買・現物分割・代償分割・換価分割・共有物分割請求の5類型)を整理した総論は、相続した不動産の共有状態を解消する方法でも解説していますので、あわせてご覧ください。
「最終手段としてどこまでやれるか」を知っておくだけでも、交渉の姿勢は変わります。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
実務の肌感|「売れない」不動産の現場で見えていること
当事務所で扱った相続・共有不動産の事案から、固有の情報を除いて一般化した「現場の感覚」をお伝えします。
その1:買い取りへの前向きな姿勢は、資金の壁で翻ることがある
共有者の一人が「持分を買い取ってもよい」「代償金を払ってもよい」と当初は前向きでも、実際の金額が見えてきた段階で「資金的に難しい」と態度を変えることは、決して珍しくありません。感情としての希望と、実行可能なキャッシュフローは別物であるという前提で、早い段階から資金計画を検証しておくことが、後々の失望や交渉の停滞を防ぎます。
その2:行方不明の共有者がいても、調査を段階的に進めれば糸口は見える
不動産登記簿・住民票・戸籍の附票といった公的資料を一つずつ確認していくことで、当初は「もうどうしようもない」と思われた行方不明のケースでも、所在の手がかりや、少なくとも申立てに必要な調査を尽くした事実は積み上げられます。焦って諦めるより、まず調査の道筋を専門家と一緒に立てることが近道になります。
その3:判断能力に不安がある共有者がいる案件は、手続きの「時間」を最初から織り込む
成年後見の申立てには、診断書の取得だけでも想定外の時間がかかることがあります。「早く売りたい」という希望と、後見手続きに必要な期間との間にギャップが生じやすいため、判断能力の不安に気づいた時点で、売却の検討と並行して手続きに着手しておくことが望ましい進め方です。
その4:共有者側の個別事情(生活保護・年金等)が、方針そのものを左右することがある
共有者の一人が生活保護を受給しているなど個別の事情を抱えている場合、持分の売却や代償金の受け取りが、その人の受給資格に影響することがあります。「法律上は解決できる」ことと、「関係者全員にとって望ましい解決か」は別の問題であり、方針を決める前に、こうした周辺事情まで含めて検討する必要があります。
「うちの場合はどのパターンに近いのか」を知るだけでも、次の一手が変わります。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 「自分の持分だけなら売れる」と聞きました。それなら早いのでは?
法律上は単独で売却できますが、実際に持分だけを適正な価格で買ってくれる相手は限られます。持分だけの取引に応じるのは主に買取業者であり、市場での取引相場は不動産全体を売る場合より低くなりがちです。「早く現金化したい」という目的だけなら選択肢になり得ますが、まずは他の共有者との話し合いや代償分割など、不動産全体としての解決を検討したうえでの最終手段と位置づけるのが実務的です。
Q2. 共有者の一人が認知症のようで、話もできません。今から打つ手はありますか?
あります。まずは成年後見開始の審判を家庭裁判所に申し立て、後見人が選任されれば、その後見人が本人に代わって売却や遺産分割協議に関与できるようになります。申立てには医師の診断書などの準備が必要で一定の期間がかかりますが、「意思表示できない共有者がいるから、もう何もできない」ということはありません。気づいた時点で早めに着手することをおすすめします。なお、成年後見は「不動産の売却が終わったら終了する」制度ではなく、原則として本人が亡くなるまで続く点は事前に理解しておく必要があります。
Q3. 弁護士に相談すると、まず何をしてもらえるのですか?
まず、共有の経緯(遺産分割が済んでいるか)、登記の状況、共有者それぞれの意向と反対の理由を整理し、どのパターンに近いのかを見極めます。そのうえで、話し合いによる解決を目指すのか、所在調査や後見申立てといった前段階の手続きが必要なのか、最終的に共有物分割請求まで視野に入れるのかという見通しをお伝えします。当事務所は初回相談無料です。相談の段階で、費用と期間の見通しもあわせてご説明します。
まとめ|「売れない」には必ず理由があり、理由ごとに打開策がある
- 共有名義の不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要です。持分だけなら単独で売却できますが、買い手がつきにくいという別の壁があります
- 「同意が得られない」原因は、①非協力的な共有者 ②連絡が取れない・行方不明 ③持分が先に業者へ売却された ④認知症等で意思表示できない、の4パターンに大別でき、それぞれに法律上の打開策があります
- いずれのパターンも、話し合い・調査・後見手続きを尽くしてなお解決しない場合の最終手段として、共有物分割請求という「出口が保障された手続き」があります
- 資金計画・所在調査・後見手続きの時間など、それぞれのパターンには「早く着手するほど選択肢が広がる」という共通点があります
弁護士法人ブライトでは、相続と不動産の出口までを見据えたご相談をお受けしています。芦屋・阪神間にお住まいの方は、芦屋・阪神間の相続不動産のご相談はこちらもご覧ください。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表弁護士・大阪弁護士会所属)
弁護士歴20年以上。企業法務(顧問先130社以上)から相続・不動産まで幅広く手がける。芦屋在住。「その資産を、守り、受け継ぐために。」を信条に、売る前提ではなく住み続ける前提からも話せる相談対応を大切にしている。
▶ 芦屋・阪神間の相続不動産のご相談はこちら
共有者の一人が持分を業者に売ってしまったときの具体的な対抗策は、共有持分を売られた側の対抗策で解説しています。