このページは、相続財産の調べ方——とりわけ不動産の登記確認と戸籍集め——について、芦屋・阪神間の相続不動産のご相談を取り扱う弁護士法人ブライト(代表:和氣良浩弁護士)が、実務の視点から整理した解説記事です。
はじめに|相続手続きは「何があるか」を確定させることから始まる
親が亡くなり、いざ相続の手続きを始めようとしたとき、多くの方が最初にぶつかるのは「そもそも何がどこにあるのか分からない」という壁です。
- 通帳や不動産の権利証がどこにしまってあるか分からない
- 親名義だと思っていた土地が、調べたら別の人の名義だった
- 逆に「もう手放したはず」の土地が、まだ親の名義で残っていた
- 遠方に不動産があるらしいが、地番も範囲もはっきりしない
遺産分割の話し合いも、相続税の申告も、そして遺言書の作成すら、「相続財産の全体像」が確定していなければ始められません。何があるか分からないものを、公平に分けることも、正しく申告することもできないからです。
この「相続財産の調査」は、地味で手間がかかる一方で、相続のすべての土台になります。とりわけ不動産は、「あると思ったらなかった」「ないと思ったらあった」という食い違いが起きやすく、記憶や思い込みで進めると、後から手続きをやり直すことになりかねません。
この記事では、相続財産——特に不動産と相続人——の正しい調べ方を、実務で必ず踏む手順にそって弁護士が解説します。
何から手をつけていいか分からない段階でも、ご相談の対象になります。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
初回相談無料/LINEでも受け付けています(お電話:06-4965-9590)
1. なぜ「財産調査」が最初の関門なのか
相続手続きは、大きく分けて「①財産(と負債)を確定する」「②相続人を確定する」「③分け方を決める(遺産分割)」「④名義を変える・申告する」という順で進みます。このうち①と②が終わらないと、③以降は一歩も動けません。
1-1. 全体像が見えないと、分割も申告もできない
遺産分割協議は、相続人全員が「何を、どう分けるか」に合意する手続きです。ところが、分割の対象となる財産の一部が漏れていると、その財産については合意が成立しておらず、あとで「これも遺産だった」と分かった時点で、もう一度協議をやり直すことになります。
相続税の申告も同じで、申告には期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月)があり、財産の把握が遅れるほど準備の時間が削られます。財産調査は、相続手続き全体のスピードを決める工程だと考えてください。
1-2. 不動産は「思い込み」がもっとも危ない
現金や預金は、通帳や残高証明で比較的つかみやすい財産です。これに対して不動産は、
- 名義が思っていた人と違う(親名義のつもりが、祖父名義のまま何十年も放置されていた)
- 家族が「遺産」と思っていた土地が、実は他人の名義だった
- 家族の誰も知らなかった土地が、別の市区町村に存在した
といった食い違いが、実務では珍しくありません。不動産は登記という公的な記録で管理されていますから、記憶や口伝えではなく、必ず記録で裏を取ることが、相続財産調査の基本姿勢になります。
「たぶんこうだろう」で進める前に、事実を確認する。それだけで、あとの手続きが大きく変わります。
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2. 不動産の調べ方|3つの資料で「何が・誰の名義か」を確定する
不動産の調査は、次の3つの資料を順に使って進めます。
| 資料 | 何が分かるか | 入手先 |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 | 毎年課税されている不動産のおおよその一覧 | 毎年春に市区町村から郵送(手元にあることが多い) |
| 名寄帳(固定資産課税台帳) | その市区町村内の、その人名義の不動産の一覧 | 市区町村の税務担当窓口で取得 |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | その不動産の正確な名義・面積・地番・権利関係 | 法務局(全国どこの法務局でも取得可) |

2-1. 出発点は「固定資産税の納税通知書」
まず手がかりになるのが、毎年春ごろに市区町村から届く固定資産税の納税通知書(と、それに付いてくる課税明細書)です。ここには、その市区町村内で課税されている不動産が一覧で載っているため、「どこに、どんな不動産があるか」の大まかな見取り図になります。
ただし、注意点が2つあります。第一に、納税通知書は「市区町村ごと」に届くため、複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの通知書を集める必要があります。第二に、課税されていない不動産(非課税の私道や、免税点未満の土地など)は載らないことがあるため、通知書だけでは漏れが出ることがあります。
2-2. 「名寄帳」で、その市区町村内の名義不動産を一覧化する
納税通知書の弱点を補うのが名寄帳(なよせちょう)です。名寄帳は、市区町村が管理している「その人名義の不動産の一覧表」で、税務担当の窓口で取得できます。納税通知書に載らない非課税の土地も含めて、その市区町村内の名義不動産を洗い出せるのが強みです。
ここで重要なのが、「不動産があるかもしれない市区町村」を、あらかじめ見当をつけておくことです。実務では、亡くなった方の本籍地・過去の住所地・出身地などをたどり、「昔このあたりに住んでいた」「先祖の土地がこの地域にあるらしい」といった情報から、名寄帳を取得する市区町村を絞り込んでいきます。相続財産調査では、この「どの自治体を当たるか」の見当付けが、漏れを防ぐ勘どころになります。
2-3. 最後は「登記事項証明書」で名義を確定する
名寄帳や納税通知書で不動産の所在(地番)が分かったら、その不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得します。ここで確認するのが、「本当に、亡くなった方の名義になっているか」です。
これが、相続財産調査でもっとも見落とされがちで、もっとも大切な確認です。というのも、
- 親名義だと思っていたら、登記名義は祖父のままだった(=先代の相続登記が済んでいない。数次相続の問題)
- 家族が「うちの土地」と思っていたら、登記名義は別の親族(存命)だった(=そもそも相続財産ではない)
といったことが、登記を見て初めて判明するからです。名義が亡くなった方でなければ、その不動産は遺産分割や遺言の対象にはなりません。逆に、祖父名義のまま止まっていれば、先代からの相続関係をさかのぼって整理する必要が出てきます。
なお、先代名義のまま相続登記がされずに世代が重なった「数次相続」の扱いは、それ自体が複雑な論点になるため、別記事で詳しく解説しています。→祖父名義のまま放置された土地はどうなる?数次相続の落とし穴
登記名義を一度確認するだけで、「分けられる財産か」「そもそも遺産か」がはっきりします。まずはご相談ください。
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3. 相続人の調べ方|戸籍を「出生まで」さかのぼって集める
財産と並んで確定させなければならないのが、相続人が誰かです。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けた協議は無効になります。そのため、相続人を「思い込み」ではなく、戸籍で客観的に確定させる作業が欠かせません。
3-1. なぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要なのか
相続人を確定するには、亡くなった方の「出生から死亡まで」の連続した戸籍を集めます。現在の戸籍だけを見ても、そこには載っていない相続人——たとえば、前の配偶者との間の子や、認知した子など——が存在する可能性があるからです。
戸籍は、結婚・転籍・戸籍制度の改製などのたびに新しく作り直されており、そのつど古い戸籍(除籍・改製原戸籍)に情報が残ります。これらを時系列でつなぎ、「生まれてから亡くなるまで、家族関係に抜けがない」状態にして初めて、相続人の範囲が確定します。
3-2. 戸籍集めは「複数の自治体にまたがる」のが普通
ここで多くの方がつまずくのが、戸籍が一か所にまとまっていないという点です。人は一生の間に、結婚や引っ越しで本籍を移すことがあり、そのたびに戸籍を管理する自治体が変わります。そのため、出生から死亡までの戸籍をそろえるには、複数の市区町村に、それぞれ請求をかけていく必要があるのが一般的です。
実務では、まず死亡時の戸籍を取り、そこに書かれた「一つ前の本籍地」をたどって次を請求し……という形で、リレーのように過去へさかのぼっていきます。地方の自治体をいくつも当たることになるケースも多く、この戸籍収集は、相続手続きの中でも特に手間と時間のかかる工程です。
3-3. 手続きを楽にする2つの制度
近年、この戸籍集めの負担を軽くする制度が整備されています。
- 戸籍の広域交付制度:本籍地が遠方の自治体にある戸籍でも、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになった制度です(2024年3月開始)。従来のように各自治体へ個別に郵送請求する手間を大きく減らせます。ただし、この制度で請求できるのは、請求する本人・配偶者・父母や子・孫といった直系の親族の戸籍に限られ、きょうだいの戸籍は対象外とされています。また、窓口での本人確認が必要で、郵送や任意代理人(委任状による代理人)による請求はできない点にも注意が必要です(弁護士に依頼する場合は、弁護士会照会など別の方法で戸籍等を取得できます)。
- 法定相続情報証明制度:集めた戸籍一式を法務局に提出すると、相続関係を一覧化した「法定相続情報一覧図」に登記官の認証を付けてもらえる制度です。この一覧図を使えば、金融機関や法務局での各種手続きのたびに戸籍の束を出し直す必要がなくなり、手続きが大幅に楽になります。
これらの制度は便利ですが、「どの戸籍をどこまでさかのぼるか」「集まった戸籍から相続人をどう読み解くか」という判断の部分は、依然として専門的な知識を要します。制度で楽になるのは「集める手間」であって、「読み解く判断」ではない、という点は押さえておいてください。
戸籍集めで手が止まっている方は、その時点でご相談ください。集め方と読み解きの両方をお手伝いします。
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4. 見落としがちな財産・負債|「プラスもマイナスも」洗い出す
相続財産の調査は不動産と預貯金に目が行きがちですが、見落とされやすい財産・負債も数多くあります。相続ではプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(負債)も引き継ぐため、両方を洗い出しておくことが大切です。
見落としがちなプラスの財産
- 有価証券(株式・投資信託・国債など)——証券会社からの取引報告書や配当通知が手がかりになります
- ネット銀行・ネット証券の口座——紙の通帳がなく、通知もメールのみのため見つけにくい
- 借地権——土地を借りて建物を建てている場合、その「借りる権利」自体が財産になります
- 貸付金・売掛金——個人的な貸し借りや事業上の債権
- 生命保険(契約者・受取人の確認)——保険金は原則として受取人固有の財産ですが、契約関係の確認は必要です
見落としがちなマイナスの財産(負債)
- 借入金・ローンの残債
- 未払いの税金・医療費・施設利用料
- 保証債務(連帯保証を含む)——亡くなった方が誰かの保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象になり得ます。書類が残りにくく、後から発覚することがある要注意項目です
負債がプラスの財産を上回る、あるいは負債の全容が読めない——という場合には、相続放棄や限定承認という選択肢もあります。これらには「相続の開始を知った時から3か月」という期限があるため、負債の可能性に気づいた段階で、早めに検討する必要があります。負債の調査が遅れると、この期限内に判断できなくなるおそれがあるのです。
なお、相続財産の評価や、相続税・譲渡所得税といった税務の取り扱いについては、一般的な情報のご案内にとどめます。個別の税額計算や申告の要否といった具体的な判断は、税理士にご確認ください。
「負債があるかもしれない」という不安こそ、早めの確認が肝心です。期限のある手続きだからこそ、まずご相談ください。
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5. 実務の肌感|「あると思ったらなかった」不動産の話
当事務所で扱った相続・生前対策の事案から、固有の情報を除いて一般化した「現場の感覚」をお伝えします。
「先祖代々の土地」が、実は他人名義だったケース
生前対策のご相談の中で、ご家族が「あそこの土地はうちの財産だ」と長年信じておられた地方の土地について、念のため登記を確認したところ、名義は存命の親族(きょうだいの配偶者など)になっていた、というケースがありました。
家族の記憶の中では確かに「うちの土地」だったのですが、登記という記録の上では、その方の財産ではなかったのです。この場合、その土地は遺言や遺産分割の対象から正しく除外することになります。もし登記を確認せずに「うちの土地」として遺言に書いていたら、実現できない内容の遺言になり、後の手続きで混乱を招いていたはずです。
この一件が示すのは、「家族が財産だと思っているもの」と「記録上その人の財産であるもの」は、必ずしも一致しないという実務上の現実です。だからこそ、遺言や遺産分割の設計に入る前に、必ず登記で名義を裏取りします。推測で書かず、記録で確かめる——地味ですが、これが後のトラブルを防ぐ最大の予防策です。
戸籍集めは「思ったより時間がかかる」ものと考える
もう一つ、実務でよく実感するのが、戸籍収集にかかる時間です。亡くなった方が生前に何度か本籍を移していると、戸籍は複数の自治体に散らばり、一つひとつ請求してつないでいく作業になります。「戸籍を集めるだけで、想像以上の時間がかかった」という声は少なくありません。
相続手続きが「なかなか進まない」と感じられる背景には、こうした戸籍集めと財産調査という、目に見えにくい下準備の時間があります。ここを段取りよく進められるかが、相続全体のスピードを左右します。早い段階で戸籍・登記の収集に着手するのは、この「見えない時間」を圧縮するためです。
「うちの不動産は、本当にうちの名義か」——その確認だけでも、やる価値があります。まずはご相談ください。
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6. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 親の不動産が、全国のどこにあるか分かりません。全部を調べる方法はありますか?
まず手元の固定資産税納税通知書と、心当たりのある市区町村の名寄帳から洗い出すのが基本です。亡くなった方の本籍地・過去の住所地・出身地などをたどって「不動産がありそうな自治体」に見当をつけ、その市区町村ごとに名寄帳を取得していきます。全国を一括で検索できる仕組みは限られているため、実務では「どの自治体を当たるか」の絞り込みが調査の要になります。心当たりの整理から、私たちがお手伝いできます。
Q2. 相続財産だと思っていた土地が、他人名義でした。どうすればいいですか?
登記名義が亡くなった方でなければ、その土地は原則として遺産分割や遺言の対象にはなりません。まず、なぜ他人名義になっているのか(もともと他人の土地なのか、過去の売買や贈与が反映されているのか、先代からの相続登記が済んでいないだけなのか)を、登記の記録から読み解く必要があります。「先代名義のまま止まっている」ケースは数次相続の整理が必要になり、扱いが変わってきます。名義の経緯によって取るべき対応が異なるため、登記を見ながら一緒に整理しましょう。
Q3. 戸籍を自分で集めるのは大変そうです。専門家に頼めますか?
はい。戸籍の収集と、そこから相続人を確定する作業は、弁護士などの専門家が代行できます。2024年3月からの戸籍の広域交付制度で、本人・配偶者・直系の親族の戸籍については「集める手間」が軽くなりましたが、集まった戸籍を読み解いて相続人の範囲を確定する判断には、専門的な知識が必要です。特に、前婚の子や認知した子など、思わぬ相続人が判明することもあるため、正確を期すなら専門家に任せるのが安心です。
7. まとめ|相続は「記録で裏を取る」ことから始まる
- 相続手続きは、まず財産(と負債)と相続人を確定することから始まります。全体像が見えなければ、分割も申告も遺言も進められません
- 不動産は「固定資産税納税通知書 → 名寄帳 → 登記事項証明書」の順に、記憶ではなく記録で名義と範囲を確定します。「親名義のつもりが祖父名義」「うちの土地のつもりが他人名義」は、登記を見て初めて分かります
- 相続人は、出生から死亡までの戸籍を複数の自治体からさかのぼって集めて確定します。広域交付制度(利用には直系親族に限るなどの条件あり)や法定相続情報証明制度で手間は軽くなりましたが、読み解く判断は専門的です
- 有価証券・借地権・保証債務など、見落としがちな財産・負債も忘れずに。負債がある場合は、相続放棄などの期限(3か月)にも注意が必要です
- 「あると思ったらなかった/ないと思ったらあった」を防ぐ最大の予防策は、推測で進めず、登記と戸籍で裏を取ることです
弁護士法人ブライトでは、相続財産の調査から、その後の遺産分割・遺言・不動産の出口までを見据えたご相談をお受けしています。芦屋・阪神間にお住まいの方は、芦屋・阪神間の相続不動産のご相談はこちらもご覧ください。相続した不動産を今後どう受け継いでいくかの全体設計は、不動産の承継設計についての解説でも扱っています。共有名義になっている不動産をお持ちの場合は、相続不動産の共有状態を解消する方法もあわせてご覧ください。
何がどこにあるか分からない——その段階からご一緒します。
売る・分ける・建て替えるの前に、一度だけ法律の目を通してください。
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監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表弁護士・大阪弁護士会所属)
弁護士歴20年以上。企業法務(顧問先130社以上)から相続・不動産まで幅広く手がける。芦屋在住。「その資産を、守り、受け継ぐために。」を信条に、売る前提ではなく住み続ける前提からも話せる相談対応を大切にしている。
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