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「先代が元気なうちは何も決めずにきたが、株式が兄弟姉妹に分散したまま代替わりの時期を迎えそうだ」「後継者に自社株を集めたいが、他の相続人の遺留分が心配で言い出せない」——中小企業の現経営者・後継者から、事業承継の入口で寄せられる典型的なご相談です。
このページでは、142社の顧問契約を担当する弁護士法人ブライトが、事業承継を「相続が起きてから」の紛争案件にしないための予防法務——自社株の生前集約、遺言、種類株式・属人的株式の設計、株主間契約と売渡請求の活用まで一気通貫で解説します。
事業承継は税務の話だと思われがちですが、実際に長期化・深刻化するのは法務の抜け漏れが原因のケースがほとんどです。遺言の効力が争われる、先代名義のまま放置された名義株の帰属が分からなくなる、相続で株式が準共有状態になり総会決議が止まる——いずれも「相続が起きてから」対応しようとすると、解決までに年単位の時間と複数の訴訟を要します。平時のうちに手を打てるかどうかが、承継後の会社の命運を分けます。
この記事でわかること
この記事のポイント
事業承継そのものは経営の一大イベントですが、それ自体が紛争を生むわけではありません。紛争化するのは、株式や議決権の帰属があいまいなまま代替わりの時期を迎えたときです。弁護士法人ブライトが実際にご相談を受ける中で多いのは、次の3つの類型です。
先代が自筆証書遺言を残していた、あるいは遺言そのものがなかった場合、株式の帰属を巡って相続人間で見解が対立します。遺言の方式不備・遺言能力の有無・複数の遺言書の先後関係が争点となり、株式の名義を確定できないまま長期間が経過することも珍しくありません。株式の帰属が確定しなければ、後継者が単独で経営判断を行う正当性そのものが揺らぎます。
設立時の出資者名簿と実際の出資者が一致しない「名義株」は、創業から数十年を経た中小企業では珍しくありません。先代の代で整理されないまま相続が発生すると、名義人の相続人から「自分にも株主権がある」と主張されるケースがあります。名義株の整理には、実質的な出資関係を示す証拠(出資金の払込記録・配当の受領実績・議決権行使の実態)の収集が必要ですが、時間が経つほど証拠は散逸します。
遺産分割協議が整わないまま相続が発生すると、株式は相続人全員の準共有状態になります。準共有株式について権利行使する者を1名に定めなければ会社に対して議決権を行使できず(会社法106条)、これが決まらないと株主総会の定足数すら満たせない事態に陥ります。また、遺産分割で株式が複数の相続人に分散すると、後継者の持株比率が希薄化し、意図せず少数株主の立場に転落することもあります。
これらの紛争は、いずれも解決までに年単位を要し、遺産分割調停・株主権確認訴訟・株主総会決議取消訴訟など複数の手続が並行することも少なくありません。関連する紛争実務の詳細は、多重代表訴訟・株主代表訴訟の実務や取締役解任・職務執行停止仮処分の実務で解説しているとおりです。事業承継の予防法務は、こうした紛争側の実務知見を踏まえて逆算的に設計することが有効です。
企業の法律問題でお困りの経営者・法務担当者様へ
弁護士法人ブライトは、契約書・債権回収・労務トラブル・M&Aを伴走支援する「みんなの法務部」です。
企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と日々向き合っています。
事業承継に関する法務論点の多くは、相続発生前にしか選択肢がありません。遺言は本人が生存し、かつ判断能力があるうちにしか作成できません。種類株式や属人的株式の導入には定款変更の株主総会決議(特別決議・場合によっては全員一致に近い特殊決議)が必要で、相続人間の関係がこじれた後では合意形成そのものが困難です。株主間契約も、当事者全員が前向きな時期でなければ実効性のある内容で締結できません。
つまり、事業承継の予防法務は「相続が起きる前」という限られた時間の中でしか実行できない対策の集合体です。先代・後継者双方が健在で、かつ関係が良好なうちに着手することが、後の紛争コストを大きく左右します。
後継者以外の親族が株式を保有している場合、生前のうちに後継者へ集約しておくことが最も基本的な予防策です。手法としては次のようなものがあります。
集約を検討する際は、譲渡制限株式であれば取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認手続を確実に履践すること、自己株式取得であれば財源規制(会社法461条)に抵触しないことの確認が欠かせません。手続を欠いた株式移転は、後日その効力自体が争われる原因になります。
集約と並行して行うべきなのが、名義株の整理です。実質的な出資者と株主名簿上の名義が一致しない状態を放置すると、相続発生時に名義人の相続人から株主権を主張されるリスクが残ります。整理の実務では、出資金の払込記録・配当金の受領実績・議決権行使の実態といった実質的な権利関係を示す資料を収集し、名義人との間で名義株であることの確認書を取り交わすのが基本です。名義人が既に他界している場合は、その相続人全員から確認を得る必要があり、時間が経つほど対応が難しくなります。
自社株を後継者に集中して承継させる意思がある場合、その意思を明確な形で残す確実性の高い手段が公正証書遺言です。自筆証書遺言と異なり、方式不備による無効リスクが低く、遺言能力の有無についても公証人の関与により一定の担保がされます。事業承継の場面では、単に「株式は後継者に相続させる」と定めるだけでなく、遺言執行者を指定しておくことで、相続発生後の名義変更手続をスムーズに進められます。
後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害する可能性が生じます。遺留分侵害額請求(民法1046条)を受けると、後継者が金銭での支払義務を負い、場合によっては自社株を手放さざるを得なくなることもあります。対策としては、生命保険の活用による代償資金の準備、非後継者への他の資産の配分などが基本ですが、より踏み込んだ制度として、経営承継円滑化法に基づく「遺留分に関する民法の特例」があります。
この特例は要件が細かく、推定相続人全員の合意形成という高いハードルがあるため、事業承継税制の適用可否とあわせて早い段階から検討する必要があります。
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株式そのものの集約が難しい場合や、非後継者にも一定の財産的利益を残しつつ経営権は後継者に集中させたい場合には、種類株式・属人的株式による議決権設計が有効です。
配当優先権を与える代わりに議決権を制限した株式を非後継者に承継させることで、財産的利益は分配しつつ、議決権は後継者に集中させる設計が可能です。非後継者にとっても、経営に関与しない代わりに安定した配当を受けられるメリットがあります。
特定の重要事項について拒否権を持つ株式です。先代が引退後も一定期間、後継者の重要な経営判断に関与し続けたい場合や、後継者育成期間中のガバナンスを補強したい場合に活用されます。ただし、拒否権付株式を先代が保有し続けると、後継者の経営の独立性を損なう側面もあるため、行使できる事項と保有期間を限定的に設計するのが実務上の工夫です。
非公開会社では、株式の内容ではなく特定の株主個人に着目して、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権について異なる取扱いを定款で定めることができます。例えば「代表取締役である株主が保有する株式は1株につき10個の議決権を有する」といった設計です。株式そのものを動かさずに議決権比率をコントロールできる柔軟性がある一方、この定款変更には総株主の半数以上(頭数)かつ総株主の議決権の4分の3以上という、通常の特別決議よりも著しく重い特殊決議(会社法309条4項)が必要です。株主間の関係が良好で、非後継者株主の理解を得やすい早い段階でなければ、事実上導入できません。
親族株主・少数株主との間で、議決権行使の方向性、株式の譲渡先の制限、先買権・売渡請求権などを取り決める契約です。定款だけではカバーしきれない柔軟な取り決めができる一方、契約の当事者が変わる(相続が発生する)と効力の承継が問題になるため、相続時の取扱いを契約書に明記しておくことが重要です。
定款に定めを置くことで、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、会社がその株式を会社に売り渡すよう請求できる制度です。非後継者の相続人に株式が分散するのを防ぐ有力な手段ですが、注意すべき点があります。
「定款に定めさえあれば安心」ではなく、実際に発動した場合の資金負担と価格決定手続の見通しまで含めて、事前にシミュレーションしておくことが実務上の要点です。
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企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と日々向き合っています。
事業承継は税務対策として語られることが多く、実際に事業承継税制の適用や株価対策は税理士が主導して進めるケースが一般的です。もっとも、税務上の最適化だけを優先してスキームを組むと、法務面の抜け漏れが後になって表面化することが少なくありません。
税務スキームと法務手続は本来、両輪で設計すべきものです。弁護士法人ブライトでは、顧問先の事業承継案件において、顧問税理士と連携しながら法務面の実行部分(定款変更・株主総会決議・契約書作成・名義株整理)を担当し、税務と法務の抜け漏れがない承継設計を支援しています。
創業から年数の経った会社ほど、株式が親族間で分散しているケースが多く見られます。まずは株主名簿と実際の出資関係を突き合わせ、名義株の有無を確認したうえで、集約の優先順位(生前贈与・譲渡・自己株式取得)を検討します。分散株主との関係性によっては、株主間契約による議決権行使の取り決めを先に結び、時間をかけて集約を進める設計もあります。
後継者への株式集中と、他の相続人への配慮は、経営承継円滑化法の民法特例(除外合意・固定合意)、生命保険を活用した代償資金の準備、非後継者への他資産の配分など複数の手法を組み合わせて設計します。どの手法が適するかは、株式の評価額・他の相続財産の構成・相続人間の関係性によって異なるため、個別の状況を踏まえた検討が必要です。
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事業承継の予防法務は、一度の契約書作成や定款変更で完結するものではありません。株主構成の変化、後継者の育成状況、税制改正などに応じて、数年単位で見直しが必要になります。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」は、142社の顧問先企業に対し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが継続的に伴走する顧問弁護士サービスです。事業承継についても、単発のスポット対応ではなく、顧問契約の中で定期的に株主構成・定款・遺言の内容を点検し、経営環境の変化に合わせて設計をアップデートする形でサポートしています。
事業承継で経営権紛争を避けるための対策——自社株の生前集約、公正証書遺言、遺留分に関する民法特例、種類株式・属人的株式、株主間契約、相続人等に対する売渡請求——は、そのほとんどが先代・後継者・他の相続人の関係が良好なうちにしか実行できません。相続が発生してから対応しようとすると、選択できる手段は限られ、解決までに年単位の時間と複数の紛争リスクを抱えることになります。
弁護士法人ブライトでは、142社の顧問契約を通じて、顧問税理士と連携しながら事業承継の法務設計から、実際に紛争が生じた場合の対応まで一貫して支援しています。自社株が分散したまま代替わりの時期が近づいている、後継者への集約と遺留分のバランスに悩んでいるという経営者・後継者の方は、お気軽にご相談ください。
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