【この記事の結論】老朽化・建替えを理由とする立ち退き
- 「建物が古いから建て替えたい」という貸主側の事情だけでは、借地借家法28条の正当事由として不十分とされることがあります。老朽化は正当事由を構成する一要素(建物の現況)にとどまります
- 建物が著しく老朽化し、耐震性能の不足・倒壊の危険が建物診断・耐震診断などの客観的資料で裏づけられる場合は、貸主側の建替えの必要性が高く評価されやすくなります
- 老朽化や建替えの必要性がそれだけでは正当事由を満たさない場合でも、相当な立退料を申し出ることで正当事由を補完できることがあります(補完法理)。立退料の相場は、貸主側の必要性が弱いほど厚くなる関係にあります
- 借地では、建物の自然倒壊による「朽廃」で借地権が消滅する場面と、建物賃貸借の「老朽化」とは法的な扱いが異なります。混同しないことが重要です
- 再開発・有効活用を目的とする建替えは、収益向上だけを理由にすると正当事由が弱く評価されがちです。安全性・公共性など客観的な必要性をあわせて主張することが有効です
- 分譲マンション(区分所有建物)の建替えは、2026年4月1日施行の改正区分所有法にもとづく別ルートです。一棟をご自身で所有する賃貸マンション・アパートは、本記事の借地借家法28条のルートで進みます
大阪・関西で老朽化・建替えを理由とする立ち退き(明渡し)をお考えの貸主・地主の方は、弁護士法人ブライトへ。電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
【2026年4月1日以降の建替え・敷地売却は別ルートです】分譲マンション(区分所有建物)で建替え決議・敷地売却決議が行われた場合、賃借人の明渡しは借地借家法28条の正当事由・立退料ではなく、賃貸借の終了請求(請求から6か月で終了)と補償金のルートで進みます(詳細は後述の5章)。
「築40年を超えるアパートが古くなり、修繕費もかさむので建て替えたい」「老朽化したビルの耐震性が心配で、入居者の安全のためにも建替えを進めたい」「再開発に合わせて土地を有効活用したい」——築古の物件を所有する貸主・地主にとって、老朽化や建替えは避けて通れないテーマです。ところが、いざ借主に退去を求めようとすると、「建物が古いというだけでは出ていってもらえない」という法律の壁にぶつかります。
借地借家法は、住まいや事業の基盤を借りている借主を厚く保護しています。そのため、貸主が「自分の建物を建て替えたい」と考えても、その事情が法律上の正当事由(借地借家法28条)として十分かどうかは、慎重に検討する必要があります。本記事では、老朽化・建替え・耐震不足を理由とする立ち退きについて、条文と裁判例の考え方を軸に、大阪・関西で不動産トラブルに対応する弁護士の視点で整理します。
立ち退き全体の流れは立ち退き・明渡しのご案内(総合ページ)と貸主・地主のための完全ガイド、立退料の水準は立退料の相場と決まり方、正当事由の判断要素は正当事由とは(借地借家法28条)で解説しています。
1. 「老朽化だけ」では立ち退かせられない——借地借家法28条の基本
貸主が契約期間満了時に更新を拒絶したり、期間の定めのない契約を解約したりするには、借地借家法28条が定める正当事由が必要です。条文は複数の要素を総合考慮することを定めています。
建物の賃貸人による(中略)建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(中略)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。(借地借家法28条)
ここで「老朽化」は、条文の「建物の現況」という考慮要素に位置づけられます。つまり老朽化は、正当事由を判断する材料のひとつにすぎず、それ自体が単独で正当事由を完成させるわけではありません。裁判実務でも、「建物が古い」という理由だけで更新拒絶を認めた例は乏しく、老朽化の程度・安全性への影響・貸主の使用の必要性・借主の被る不利益・立退料の申出などを総合して判断されます。だからこそ、老朽化の実態を客観的に示せるかどうかが出発点になります。
「古いから建て替えたい」の一言で進めると危険です
老朽化を理由とする立ち退きは、主張の組み立て方で結論が大きく変わります。客観資料の準備と立退料の設計を誤ると、交渉が長期化したり想定外の負担を強いられたりすることがあります。大阪・関西の貸主・地主の方は、お早めにご相談ください。
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2. 老朽化の主張は資料で裏づける——耐震診断・修繕費見積り・修繕履歴
老朽化がどれだけ評価されるかは、「どの程度老朽化しているか」を客観的に示せるかにかかっています。同じ築年数でも、維持管理されてきた建物と構造的な劣化が進んだ建物とでは評価が異なります。実務では次の資料の有無が交渉力を左右します。
- 耐震診断結果:旧耐震基準(1981年5月31日以前の建築確認)の建物では、耐震性能の不足を数値(Is値等)で示せます。老朽化の主張のなかで最も客観性が高い資料です
- 建物診断書(インスペクション):建築士等による構造・劣化状況の評価。第三者の客観的判断として説得力があります
- 修繕費の見積書:外壁・屋上防水・給排水管の更新など、今後必要になる大規模修繕の費用を専門業者の見積りで示します
- 築年数と修繕履歴:いつ・どこを・いくらで修繕してきたかの記録。修繕を重ねてなお劣化が止まらない経過は、「修繕では対応できない」ことの裏づけになります
- 写真・動画:ひび割れ・腐食・剥落・雨漏り・漏水など、劣化の現状を視覚的に記録したもの
- 修繕費と建物価値の比較:修繕に建物の経済的価値を超える費用がかかる状況は、建替えの合理性を支えます
この点は交渉の現場でそのまま効いてきます。当事務所が関与した店舗賃貸借の事案でも、貸主側が「建物が古く、漏水もしていて維持管理が難しい」と説明したのに対し、借主側の代理人から「その漏水や耐震の状況を示す資料を提示してほしい」と求められ、そこで話が止まりました。老朽化は、言葉で述べるだけでは相手方も裁判所も動かず、資料で示してはじめて主張として立ち上がります。同じ事案では、貸主が賃料の3年分程度の立退料を提示したのに対し、借主側はその数倍を希望し、交渉は10ヶ月近くに及びました(事案の内容は依頼者の特定を避けるため一般化しています)。
したがって、借主に退去を切り出す前に診断と見積りを取得しておくことをおすすめします。切り出した後で集め始めると、その間に相手方へ代理人が付き、「根拠が示せないなら老朽化は認められない」という入口を与えてしまいます。
3. 耐震不足(既存不適格)は正当事由をどこまで押し上げるか
老朽化の中でも、耐震性能の不足は正当事由を強める重要な事情です。旧耐震基準(建築基準法の1981年改正前の基準)で建てられた建物は、現行基準を満たさない既存不適格の状態にあり、大地震で倒壊・損傷するリスクが指摘されることがあります。この場合、建替えの必要性は貸主の都合を超えて、入居者・近隣の生命・身体の安全という公共的な要素を帯びます。
もっとも、「既存不適格である」というだけで正当事由が完成するわけではありません。既存不適格は、建築時の基準には適合していた建物が法改正で現行基準から外れた状態を指すもので、それ自体は違法建築ではないからです。実務では次の4つを順に検討し、耐震不足がどこまで正当事由を押し上げるかを見極めます。
- ①危険性の程度:耐震診断の結果、倒壊・崩壊の危険が「高い」と評価されているか。数値で示せるほど評価は強くなります
- ②改修可能性:耐震改修(補強工事)で安全性を確保できないか。改修費用が建替え費用に近づくほど、建替えの合理性が高まります
- ③借主の使用の必要性:居住の基盤か、その場所でなければ成り立たない事業か。借主側の必要性が高いほど、貸主側にはより強い必要性が求められます
- ④立退料の申出:①〜③を踏まえてなお不足する分を、相当な立退料の申出で補います
裁判例の傾向としては、耐震性に重大な問題がある建物について、相当な立退料の申出とあわせて建替えの必要性を主張した事案で、正当事由が認められやすくなる方向が見られます。逆に、耐震上の問題が軽微であったり、耐震改修で十分対応できると判断されたりする場合には、建替えの必要性は弱く評価されることがあります。
| 建替えの理由(類型) | 老朽化・危険性の裏づけ | 正当事由の評価 | 立退料の重さ |
|---|---|---|---|
| 耐震診断で倒壊の危険が高いと評価された(旧耐震・既存不適格) | 耐震診断書・改修見積り | 安全確保の必要性として高く評価されやすい | 補完として相対的に軽くなる方向 |
| 劣化が進み、修繕費が建物の経済的価値を上回る | 建物診断書・修繕見積り・修繕履歴 | 建替えの合理性として一定程度評価される | 中程度 |
| 老朽化は軽度で、耐震改修により対応できる | 診断結果はあるが危険性は低い | 単独では正当事由として弱い | 厚めの立退料が前提になりやすい |
| 収益向上・有効活用が主目的(老朽化の要素が乏しい) | 事業計画のみで客観資料が乏しい | 弱く評価されがち | 相当高額の申出が前提になりやすい |
| 分譲マンションの建替え決議・敷地売却決議(2026年新法) | 区分所有者の決議 | 借地借家法28条の枠外(別ルート) | 立退料ではなく補償金 |
耐震診断・建物診断の準備からサポートします
「旧耐震の建物だが、建替えと耐震改修のどちらで進めるべきか」「診断結果をどう交渉に活かすか」など、立ち退きの戦略を見据えた準備をご一緒に整理します。大阪・関西で築古物件をお持ちの貸主・地主の方は、お気軽にご相談ください。
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4. 再開発・有効活用を目的とする建替えの扱い
老朽化・耐震とは別に、「土地を有効に活用したい」「再開発に合わせて高層化したい」という有効活用・再開発目的の建替えもあります。この場合の正当事由の評価は、安全性を理由とする場合より慎重になりがちです。
有効活用目的の建替えは「貸主の経済的利益の追求」という側面が強く、借主の使用の必要性と比べて直ちに優越するとは限らないからです。裁判例には、収益向上のみを目的とする建替えについて正当事由を否定したものもあります。一方、次のような事情があると認められやすくなる傾向が指摘されています。
- 老朽化・耐震性の問題が併存し、安全性確保の必要性が伴うこと
- 都市計画・再開発事業などの公共性のある計画に組み込まれていること
- 建替えによる地域貢献・防災性向上など、社会的な合理性があること
- 相当な立退料の申出により、借主の不利益が金銭的に補償されること
店舗・事務所の賃貸では、借主が当該場所で営業を続ける必要性(顧客基盤・立地依存性)が高いことが多く、有効活用目的の建替えだけでは正当事由が弱くなりがちです。営業補償を含む立退料の設計、明渡しの時期、原状回復の範囲を、契約内容と営業実態を踏まえて検討してください。
5. 2026年の区分所有法改正で、マンションの建替えはどう変わったか
2026年4月1日、改正区分所有法と『マンションの再生等の円滑化に関する法律』が施行され、分譲マンション(区分所有建物)の再生をめぐる環境が変わりました。建替えが進まない一因が決議要件の重さだったため、次の手当てがされています。
- 建替え決議の要件緩和:原則は区分所有者および議決権の各5分の4以上ですが、建物が一定の状態(耐震性の不足など)にある場合には、要件が4分の3に引き下げられます
- 新しい決議類型:建替え・敷地売却に加えて、一棟リノベーションにあたる「建物更新決議」や、取り壊して敷地を残す「取壊し決議」などの選択肢が用意されました
- 賃借人との関係は別ルート:決議がされた場合、部屋を借りている賃借人に対しては、借地借家法28条の正当事由・立退料ではなく、賃貸借の終了請求(請求から6か月で終了)と補償金という枠組みで処理されます
ここで取り違えやすいのが、「分譲マンションの一室を賃貸しているオーナー」と「賃貸マンション・アパートを一棟所有しているオーナー」で適用されるルールがまったく違うという点です。一棟をご自身で所有している場合、区分所有法は関係せず、建替えのために入居者へ退去を求めるには本記事の借地借家法28条(正当事由+立退料)のルートを通ります。一室を貸している場合は、管理組合の決議という自分では動かせない事情に左右され、賃借人への対応も終了請求と補償金のルートになります。
制度は施行されたばかりで、新しい決議類型の運用実績は多くありません。詳しくは2026年区分所有法改正の解説と、賃借人側からみた手続の流れを整理した特集「2026年マンション再生法と立退き」をご確認ください。
6. 「朽廃」と「老朽化」の違い——借地の場合に特に注意
老朽化と混同されやすい概念に、借地(土地賃貸借)における朽廃(きゅうはい)があります。法的な扱いがまったく異なるため、地主・貸主は区別して理解しておく必要があります。
- 老朽化(建物賃貸借):建物を貸している場合に、その建物が古くなること。立ち退きを求めるには借地借家法28条の正当事由が必要で、老朽化はその一要素にとどまります
- 朽廃(借地・建物賃貸借ではない土地の賃貸借):借地上に借地人が所有する建物が、自然の経過によって社会的・経済的な効用を失い、建物としての存在を失う状態。旧借地法の下では、建物の朽廃により借地権が消滅すると扱われる場面がありました
注意すべきは、現行の借地借家法(1992年8月1日施行)では建物の朽廃による借地権の当然消滅という規定は採用されていない点です。新法下の借地契約では、建物が老朽化・朽廃しても、それだけで借地権が自動的に消滅するわけではありません。「借地上の建物が古くなったから土地を返してもらえる」と短絡的に考えるのは危険で、借地契約の終了には更新拒絶の正当事由(借地借家法6条)等の検討が必要になります。
旧借地借家法(旧法)の立ち退きは何が違うか
「旧借地借家法」と呼ばれるのは、現行の借地借家法が施行される1992年7月31日までに設定された借地・借家に適用される旧借地法・旧借家法のことです。押さえておきたいのは、旧法が適用されるかどうかは「最初の契約がいつ結ばれたか」で決まり、その後に更新しても新法には切り替わらないという点です。何十年も更新を重ねてきた借地・借家では、いまも旧法が生きているケースが珍しくありません。
老朽化・建替えとの関係では、旧法借地に特有の論点が2つあります。ひとつは前述の朽廃で、旧法では建物の朽廃が借地権消滅の事由となる場面がありました。もうひとつは堅固建物・非堅固建物の区別で、旧法は建物の構造によって存続期間を分けています。木造の非堅固建物を鉄筋コンクリートの堅固建物へ建て替える場合は契約の条件変更にあたるため、地主の承諾(承諾料)か、承諾が得られなければ裁判所の許可(借地非訟)が問題になります。
逆に、地主が建替えや有効活用を理由に借地契約を終了させたい場合は、旧法・新法いずれでも更新拒絶の正当事由が必要です。借地人が土地上に建物を所有している以上、そのハードルは建物賃貸借より高く、立退料も高額になりやすい傾向があります。まずは契約書と当初の契約日を確認し、旧法・新法のどちらが適用されるかを確定させてください。詳しくは借地・底地の立退きの解説、立退料の水準は立退料の相場と決まり方もご覧ください。
借地・底地のトラブルもご相談ください
「借地上の建物が老朽化したので土地を返してほしい」「旧法借地か新法借地か分からない」など、借地・底地に関する貸主・地主のご相談を承っています。契約の経緯と適用される法律を確認したうえで、進め方をご提案します。
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7. 立退料で正当事由を補完する——老朽化・建替えのケース
老朽化や建替えの必要性が、それ単独では正当事由を満たすに足りない場合でも、相当な立退料を申し出ることで正当事由を補完できることがあります(補完法理)。借地借家法28条が「財産上の給付をする旨の申出」を考慮要素として明記しているのは、この趣旨を反映したものです。
もっとも、最高裁の考え方(最高裁判所第一小法廷 昭和46年11月25日判決(昭和41年(オ)第1005号/判例秘書 L02610199)参照)によれば、立退料は正当事由を「補完」するものであって、立退料さえ払えば正当事由が必ず認められるというものではありません。貸主側に一定の使用の必要性(ここでは老朽化・耐震・建替えの合理性)が存在することが前提です。老朽化・建替えのケースで立退料を設計する際は、次の要素を考慮します。
- 借家権価格:借主が失う賃借権の経済的価値
- 移転費用:引越し費用、新居・新店舗の敷金礼金・仲介手数料等
- 営業補償(店舗・事務所の場合):移転に伴う休業損失、得意先・立地の喪失等
- 賃料差額の補償:従前より高い賃料の物件へ移る場合の差額
老朽化・耐震不足の事情が強いほど貸主側の必要性が高く評価されるため、相対的に立退料が低めでも正当事由が認められやすくなる傾向があります。逆に有効活用目的が中心で老朽化が軽い場合は、立退料を厚くして借主の不利益を補償する必要が高まります。金額は建物の用途・借主の利用実態・地域相場で大きく変わるため、個別の見立てが欠かせません。
8. 老朽化・建替えを理由とする立ち退きの進め方
老朽化・建替えを理由に立ち退きを求める場合、おおまかには次のステップで進めます。各段階で証拠を整え、正当事由と立退料の見立てを固めていくことが、交渉を有利に進める鍵となります。
- 建物・契約の調査:築年数、耐震基準(旧耐震か新耐震か)、契約形態(建物賃貸借か借地か・旧法か新法か)、更新の経過を確認します
- 客観資料の取得:建物診断・耐震診断、修繕履歴、修繕見積りなど、老朽化の実態を示す資料を準備します
- 正当事由の見立て:老朽化・耐震・建替えの必要性が、借主の必要性にどの程度優越するかを評価します
- 立退料の設計:補完に必要な立退料の水準を、借家権価格・移転費用・営業補償等から試算します
- 更新拒絶・解約の通知:期間の定めがある契約は期間満了の1年前から6ヶ月前までの更新拒絶通知(借地借家法26条)、期間の定めがない契約は解約申入れから6ヶ月の経過(同27条)と、時期と方法を守ります
- 交渉:立退料・退去時期・原状回復の条件を協議します。借主側に代理人が付くことも多い領域です
- 調停・訴訟:交渉がまとまらない場合、建物明渡請求訴訟等で正当事由の有無を争います
とくに通知の時期を逃すと契約が法定更新され、計画が大きく遅れることがあります。建替えのスケジュールから逆算して早めに準備してください。手続き全体の流れは貸主・地主のための立ち退き完全ガイドで解説しています。
なお、鍵の交換、借主の荷物の撤去、無断での室内立入りといった自力救済は違法です。老朽化や耐震不足の事情があっても、貸主が実力で明渡しを実現することは認められず、損害賠償や刑事責任の問題に発展することがあります。
建替えスケジュールから逆算した立ち退き戦略を
「建替えの着工時期が決まっているが、立ち退きが間に合うか不安」「複数の借主がいて交渉の進め方に悩んでいる」など、計画的な立ち退きをお手伝いします。大阪・関西の貸主・地主の方は、弁護士法人ブライトへ。
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9. 老朽化・建替え立ち退きで貸主が陥りやすい落とし穴
築古物件の建替えを進める貸主・地主がつまずきやすいポイントです。事前に知っておくことで、交渉の長期化や想定外の負担を避けやすくなります。
- 「古いから当然出ていってもらえる」と考える:老朽化は一要素にすぎず、客観資料と立退料の検討が欠かせません
- 耐震診断を取らずに「耐震が不安」とだけ主張する:抽象的な不安では正当事由は弱く、診断結果という客観的根拠が必要です
- 資料を用意しないまま先に退去を切り出す:相手方代理人から根拠資料の提示を求められた時点で交渉が止まります
- 立退料をゼロで交渉を始めてしまう:立退料の申出は正当事由を補完する重要要素です。ゼロ提示は交渉を硬直させがちです
- 更新拒絶の通知時期を逃す:法定更新となり、計画が大幅に遅れることがあります
- 借地と建物賃貸借を混同する:朽廃・正当事由の扱いが異なります。契約形態の確認が出発点です
- 複数借主への対応を場当たり的に進める:一部だけ合意して着工できないと、合意済み借主への補償が無駄になります
立ち退き交渉は双方に代理人が付くことが多く、準備の差がそのまま条件の差になりやすい領域です。早い段階で正当事由の見立てと立退料の設計を固めておくことが、円滑な建替えにつながります。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 「建物が老朽化したから」というだけで立ち退かせられますか?
老朽化は借地借家法28条の「建物の現況」という考慮要素のひとつにすぎず、それだけで正当事由が完成するわけではありません。老朽化の程度を建物診断・耐震診断で客観的に示したうえで、貸主の建替えの必要性、借主の不利益、相当な立退料の申出などを総合して判断されます。
Q2. 旧耐震基準のビルです。耐震不足を理由に建替えできますか?
旧耐震(1981年5月31日以前の建築確認)の建物で、耐震診断により倒壊の危険性が高いと評価された場合、入居者・近隣の安全確保という公共的な必要性が伴うため、建替えの必要性が高く評価されやすくなります。ただし、耐震改修で対応可能か、借主の使用の必要性はどうか、立退料の申出があるかも総合考慮されます。
Q3. 立退料はどのくらい用意すればよいですか?
立退料は、借家権価格・移転費用・営業補償(店舗等)・賃料差額などを基に算定し、建物の用途や借主の利用実態、地域相場によって大きく変わります。老朽化・耐震不足の事情が強いほど貸主の必要性が高く評価され、相対的に立退料が低めでも正当事由が認められやすくなる傾向があります。具体的な相場は立退料の相場と決まり方の記事をご覧ください。
Q4. 2026年の法改正で、賃貸マンションの建て替えはしやすくなりましたか?
2026年4月1日施行の改正区分所有法が緩和したのは、分譲マンション(区分所有建物)の建替え決議の要件です。一棟をご自身で所有している賃貸マンション・アパートに区分所有法は適用されず、入居者に退去を求めるには従来どおり借地借家法28条の正当事由と立退料が必要です。分譲マンションの一室を賃貸しているオーナーは、決議後の賃借人対応が終了請求と補償金のルートになります。
Q5. 複数の借主がいる建物の建替えはどう進めればよいですか?
一部だけ合意しても建替えに着工できなければ、合意済みの借主への補償が無駄になることがあります。立ち退きスケジュールを建替え計画から逆算し、各借主の正当事由・立退料を個別に見立てつつ、全体戦略のもとで交渉を進めることが重要です。
老朽化・建替えを理由とする立ち退きでお悩みの貸主・地主の方へ
「老朽化で建て替えたいが立ち退かせられるか」「耐震不足を理由にできるか」「立退料をいくら用意すべきか」「複数の借主がいて進め方に悩んでいる」など、貸主・地主の立場でのご相談を承っています。建物・契約の状況を整理し、正当事由の見立てと立退料の設計を含めて、最適な進め方をご提案します。弁護士費用はご相談内容をうかがったうえでお見積りを明示します。
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監修者情報
監修:弁護士法人ブライト 代表弁護士 和氣 良浩
大阪弁護士会所属。弁護士法人ブライト代表。不動産トラブル・企業法務・相続を中心に、大阪・関西の案件を幅広く取り扱う。「みんなの法務部」コンセプトを提唱し、中小企業・個人の法律問題に対応。契約企業130社以上(実名公開)。
弁護士法人ブライト
〒530-0057 大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の案件に対する法律上のアドバイスではありません。具体的な事情については弁護士にご相談ください。
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