LINE相談

不動産を巡るトラブルの基礎知識

KNOWLEDGE

立ち退き料の相場|居住用・店舗・事務所・借地のケース別金額と税金の扱い

「立ち退き料ってどのくらいもらえるの?」「相場はあるの?」——こう聞かれても、明確な答えが出にくいのが立退料の難しさです。居住用の部屋と老舗の飲食店、オフィスビルの事務所では、同じ「立退き」でも金額の桁が違うことがあります。

この記事では、立退料が決まる仕組みを整理したうえで、居住用(賃貸マンション・アパート・一軒家)・店舗・事務所・借地・マンション建替え・道路拡張のケース別に、金額レンジと算定の考え方を解説します。検索の多い「立ち退き料に税金はかかるのか」にも触れます。立退き問題の全体像は立ち退き・明渡しの特集ページにまとめています。

【この記事の結論】立退料の相場感(ケース別)

  • 居住用(賃貸・一軒家):50万〜200万円程度が交渉の出発点。戸建てはやや高めで協議されることがあります
  • 店舗・飲食店:営業補償が加わるため300万〜1,500万円以上になることも
  • 事務所(テナント):移転費用が中心で100万〜500万円程度が目安
  • 借地:借地権割合(路線価の40〜60%)×土地価格が交渉の起点です
  • マンション建替え・道路拡張は別制度:「立退料」ではなく補償金・売渡請求の枠組みで動きます
  • 賃貸借の立退料は「正当事由を補完するもの」(借地借家法28条)であり、金額に法定の上限・下限はありません

大阪・関西でのご相談は弁護士法人ブライトへ。電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

【2026年4月1日以降の建替え・敷地売却は別ルートです】分譲マンション(区分所有建物)で建替え決議・敷地売却決議が行われた場合、賃借人の明渡しは本記事で解説する借地借家法28条の正当事由・立退料ではなく、改正区分所有法と『マンションの再生等の円滑化に関する法律』にもとづく賃貸借の終了請求(請求から6か月で終了)と補償金のルートで進みます。詳しくは特集「2026年マンション再生法と立退き」で解説しています。

1. 立退料とは何か——借地借家法28条の仕組み

立退料は「立退きの対価」として支払われるものですが、法律上の位置づけは少し異なります。

借地借家法28条は、貸主が建物の賃貸借を終了させるために必要な「正当事由」の要素として、「財産上の給付の申出」(=立退料の提供)を挙げています。つまり立退料は、正当事由が足りない部分を金銭で補う手段という位置づけです。

正当事由がまったくない場合、立退料だけで解決しようとしても、借家人に拒否されれば強制退去はできません。一方、老朽化・建替えなど一定の正当事由があれば、立退料の提供で合意退去の可能性が大きく高まります(立ち退きの「正当事由」とは)。

正当事由と立退料の関係

正当事由の強さ 立退料の必要性 実例
強い(貸主側に明確な必要性) 低い〜不要なこともある 貸主が自分で居住する必要がある・建物が倒壊危険の状態
中程度 相当額が必要になることが多い 老朽化での建替え・収益性改善のための大規模改修
弱い(貸主の都合のみ) 高額になる傾向がある 土地活用・転売目的・相続税対策での売却

重要なのは「正当事由の強弱」と「立退料の多寡」がトレードオフになるという点です。弱い正当事由を高額の立退料で補うか、正当事由を補強した上で合理的な金額で合意するか——戦略の選択が結果を左右します。

2. ケース別の立退料相場・早見表

まず全体像です。金額はいずれも交渉の出発点として語られる水準であり、法律で決まった相場ではありません。同じ区分でも、正当事由の強さ・居住年数・物件の代替性によって上下します。

ケース 根拠となる制度 金額の目安 金額を動かす主因
賃貸マンション・アパート 借地借家法28条 50万〜200万円程度 家賃差額・居住年数・転居困難性
一軒家(戸建ての借家) 借地借家法28条 集合住宅よりやや高め 代替物件の少なさ・家財量・庭や車庫
店舗・飲食店 借地借家法28条 300万〜1,500万円超 営業補償・のれん代・設備移設
事務所・オフィス 借地借家法28条 150万〜1,000万円程度 面積・内装工事費・事業への影響
借地(土地を借りて建物を所有) 借地借家法6条・8条 借地権価格を起点(数千万円〜) 借地権割合・土地の実勢価格
分譲マンションの建替え・敷地売却 区分所有法・再生円滑化法 補償金/売渡請求(時価) 決議の有無・区分所有者か賃借人か
道路拡張・都市計画道路・区画整理 土地収用法・損失補償基準 補償基準に沿った算定額 移転工法・面積・営業実績
使用貸借(無償で貸している) 民法593条以下 原則として支払義務なし 目的・期間の定めの有無
図:立ち退き料・補償金のケース別早見表(金額は交渉上の目安であり法定の相場ではありません)

見落とされやすいのは下3行が「立退料」ではないという点です。分譲マンションの建替えも、道路拡張も、使用貸借も、借地借家法28条とは別の制度で動きます。相手方が持ち出す「相場」がどのルートの話なのかを最初に確認してください。

3. 居住用(賃貸マンション・アパート・一軒家)の立退料相場

居住用の借家に対する立退料は、一般的に以下の要素を積み上げて算定されることがあります。

算定要素と実際の金額感

  • 引越し費用・転居実費:20万〜50万円程度(単身・家族構成により異なります)
  • 新居の敷金・礼金:家賃の2〜4ヶ月分程度
  • 家賃差額の補填:現在の家賃と転居先家賃の差額×6〜12ヶ月分程度が考慮されることがあります
  • 生活安定補償:高齢・持病がある・長期居住(10年以上)などの事情により加算されることがあります
  • 精神的損害への配慮:特に高齢者・障害者・長期居住者は交渉上のウエイトが大きくなりがちです

これらを合算した交渉の出発点として、50万〜150万円程度で協議されることが多く、長期居住(20年以上)・高齢者・転居困難な事情がある場合は200万〜300万円以上になることもあります。あくまで交渉の目安であり、調停・訴訟になれば裁判所が個別事情を考慮して「相当な額」を決定しますが、その金額には幅があります。

一軒家(戸建ての借家)の立ち退き料は高くなりやすい

戸建ての賃借人に立退きを求める場合、法律上の枠組み(借地借家法28条)は集合住宅と同じですが、実際の金額はやや高めで協議されることがあります

  • 代替物件が少ない:同じ地域・家賃帯の戸建て賃貸は供給が限られ、「近隣に移れない」という主張が通りやすい
  • 家財の量が多い:引越し費用そのものが集合住宅より大きくなりやすい
  • 庭・車庫・物置の利用:家庭菜園や駐車スペースとして使っていた場合、その喪失分が交渉材料になります

反対に、老朽化した戸建てで倒壊のおそれを具体的に示せるケースでは正当事由が強く評価され、立退料が抑えられる方向に働くこともあります(老朽化・建替えを理由とする立ち退き)。

「持ち家の一軒家」に立ち退き料は発生しない

「立ち退き料 相場 持ち家」「道路拡張 立ち退き料 一軒家」と調べる方も多いのですが、自分が所有している家に立退料という概念はありません。立退料は賃貸借や借地の当事者間で発生するものだからです。所有者が金銭を受け取る場面は次の3つです。

  • 公共事業(道路拡張・区画整理など):立退料ではなく損失補償(補償金)(第8章)
  • 民間の再開発・買収:立退料ではなく売買代金。売るかどうかは所有者の自由で、応じる義務はありません
  • 借地の上に自分の建物がある場合:地主から返還を求められたときは借地権の対価が問題になります(借地・底地の立退き

実際の交渉で出てくる論点(実案件から抽象化)

【典型例A】築40年超の木造アパートの建替えで、入居者が高齢かつ長期居住というケースでは、近隣に同等の家賃物件がないことを理由に「転居先の保証」や「家賃差額の補填」を求められることがあります。転居先の斡旋・引越し費用・家賃差額の一定期間分の補填といった形で折り合うことが少なくありません。正当事由(老朽化)が強ければ立退料自体は抑えられる傾向がある一方、「転居の現実的なサポート」が合意の鍵になります。

【典型例B】収益物件を購入したところ高齢の賃借人が居住していたケースでは、賃借人を支援する福祉団体が交渉に加わり、転居先施設の初期費用や当面の生活費を理由に100万円台の立退料を求められることがあります。当事務所が関与した事案でも、この水準で合意し、明渡し完了までおおむね8ヶ月を要しました。居住用の立退料は相場表の数字ではなく、その人が現実に転居できる条件をいくらで作れるかで決まります。金額そのものより、転居先の目処が立つかどうかが交渉の速度を決めます。

居住用立退き交渉でのポイント

弁護士が代理人として交渉に入ることで、感情的な対立を避けながら合理的な条件を引き出しやすくなります。立退料の金額だけでなく、「転居のタイムライン」「転居先の条件」「引越し業者の手配支援」などパッケージで提案する方が合意に至りやすい傾向があります。

立退き交渉のご相談は弁護士法人ブライトへ。電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
LINEでの相談も受け付けています。

4. 店舗・飲食店の立退料相場——営業補償が鍵

店舗・飲食店の立退料が居住用と大きく異なるのは、「営業補償」が加算されるためです。居住用では「生活再建の実費」が中心ですが、店舗では「失う営業利益」を補償しなければならない局面があります。

店舗立退料の主要算定要素

  • 移転費用・改装費用:新店舗への移転工事費・内装費(100万〜500万円以上になることもあります)
  • 営業補償(休業損失):移転準備・工事中の売上ロス(数ヶ月〜1年分)
  • 得意客喪失補償(のれん代):長年通ってくれた顧客が転居先に来なくなる損失。粗利の1〜3年分が交渉の素材になることがあります
  • 営業権・固定客リスト・ブランド毀損:飲食店等で「場所の価値」が大きい業態では特に重くみられることがあります
  • 什器・設備の移設費・廃棄費:業務用厨房機器や大型設備は移転が困難なケースが多く、廃棄・再購入費用として計上されることがあります

これらの合計として、繁盛している飲食店では500万〜1,500万円超の立退料が交渉テーブルに乗ることもあります。場所の強みが収益の大半を占める業態(駅前立地・老舗)では、さらに高額になる可能性があります。営業補償の中身の詰め方はテナントの営業補償で個別に整理しています。

実際の交渉で浮上する論点(実案件から抽象化)

【典型例C】ビルの老朽化を理由に貸主が全テナントに立退きを求めるケースでは、長年営業する飲食店に対し、当初は「引越し費用+数ヶ月分の家賃相当」程度が提示されることがあります。これに対し、月間粗利の実績データ・固定客の来店頻度・移転先で同等の立地を確保する難しさを客観的な資料で示すことで、移転費用に加えて営業補償(粗利の一定年数分)を含む水準まで交渉が進むことがあります。「場所のブランド」を数値で示せるかどうかが交渉力を左右します。

実務では、事業用物件の賃借人側から数百万円台の立退料が最初の要求として提示されることは珍しくありません。要求額の内訳(移転実費なのか、営業補償なのか、根拠のない上乗せなのか)を項目ごとに分解すると、争うべき部分と早期に認めてよい部分が分かれます。総額で殴り合わず、項目ごとに詰めるのが交渉期間を短くするコツです。

飲食店の立退き交渉では、月次の売上・粗利データを揃えておくことが決定的に重要です。これがないと「のれん代」の主張に説得力が出ません。

店舗・飲食店の立退き交渉をお考えの方へ

貸主から「立退いてほしい」と言われた段階で、すぐに応じる必要はありません。まず弁護士に相談し、受け取れる立退料の見込みを確認してから交渉の方針を決めることが大切です。

弁護士法人ブライト:電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
LINEでのご相談もどうぞ。

5. 事務所・オフィスの立退料相場

事務所・オフィスの立退料は、居住用より高くなる傾向がありますが、飲食店ほど「のれん代」の要素が大きくないケースが多いです。

事務所立退料の算定要素

  • 移転費用(引越し・什器移設):50万〜200万円程度(規模による)
  • 新オフィスの内装・設備工事:坪単価×面積で計算。中規模オフィスで100万〜500万円になることがあります
  • 住所変更に伴う手続きコスト:登記変更・名刺・Webサイト・各種届出。10万〜50万円程度
  • 事業継続への影響(売上減少リスク):移転により一時的に顧客が減少する可能性があれば、その補償が求められることがあります
  • 敷金・礼金・仲介手数料:移転先の初期費用として計上

目安として、小規模事務所(20〜30坪)で150万〜400万円程度、中規模オフィス(50坪超)では500万〜1,000万円以上になるケースもあります。

なお、事務所テナントの場合、「借地借家法の適用がある普通賃貸借」か「定期建物賃貸借」かで状況が大きく異なります。定期借家の場合は期間満了で賃貸借が終了するため、立退料の交渉は発生しないのが原則です(定期借家は立ち退きを求めやすいか)。契約書の表題ではなく、契約時に書面での事前説明がなされていたかまで確認してください。

6. 借地(土地の立退き)の立退料——桁が違う理由

建物の立退きではなく「借地人(土地を借りて建物を建てている人)」に対する土地の返還請求の場合、立退料の話は根本的に異なります。

借地権は強い法的保護を受けており(借地借家法6条・8条)、貸主が更新拒絶や解約を申し入れるためには「正当事由」が必要です。借地権価格が高額な場合、立退料も非常に大きな金額になることがあります。

借地の立退料算定——借地権割合が起点

土地の立退きにおける補償は、「借地権価格」を基準に協議されることが一般的です。

項目 計算の仕組み 例(路線価1,000万円/坪・30坪の土地の場合)
土地価格(時価) 路線価÷0.8×地積 約3億7,500万円
借地権割合(路線価図のA〜G) A:90%〜G:30%。住宅地は50〜60%が多い 50%の場合 → 約1億8,750万円
底地割合 土地全体から借地権割合を差し引いた残り 50%→ 約1億8,750万円
立退料の目安 借地権価格を参考に協議 1億5,000万〜2億円超になることがある

上記は計算の枠組みです。実際の交渉では「借地権の消滅による借地人の損失をどう補償するか」という観点から、建物の価値・移転コスト・営業の有無といった個別事情が加味されます。

借地権割合は国税庁が公表する「路線価図」(財産評価基準書)で確認できます。ただし相続税評価の路線価と実勢価格には乖離があることが多く、交渉では不動産鑑定士の評価も活用されます(借地・底地の立退き)。

借地の立退き・更新拒絶についてのご相談

借地権が関係する立退き問題は、金額が大きく法律関係も複雑です。地主側・借地人側どちらの立場であっても、早期に弁護士に相談することで戦略の幅が広がります。

弁護士法人ブライト:電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

7. マンションの建替えと立ち退き料——2026年の法改正で相談が増えています

2026年4月1日に施行された改正区分所有法と『マンションの再生等の円滑化に関する法律』により、老朽化した分譲マンションの建替え・敷地売却の決議要件が緩和されるなど、再生の手続を進めやすくする見直しが行われたとされています。築40年を超える分譲マンションが増え続けるなかでの改正であり、今後建替えに伴う賃借人の立ち退きと補償の相談が増えることが見込まれます(2026年区分所有法改正の解説)。

「マンション 建て替え 立ち退き料」を調べるときは、まず自分の立場を切り分けてください。金額の考え方がまったく別になります。

  • 賃貸マンション(1棟所有)の建替え:借地借家法28条。正当事由+立退料で、第3章の居住用レンジが出発点です
  • 分譲マンションの区分所有者:立退料ではなく、建替え決議に参加しない場合の売渡請求(時価での買取)という処理になります
  • 分譲マンションの賃借人:決議後は借地借家法28条ではなく、円滑化法の賃貸借の終了請求(請求から6か月で終了)と補償金のルートです

通知書に決議の有無が書かれているかを最初に確認してください。適用ルートを取り違えると、請求できる金額も応じるべき期限も変わります。

8. 道路拡張・区画整理など公共事業のケース——「立退料」ではなく「損失補償」

道路拡張・都市計画道路の整備・土地区画整理で立ち退きを求められる場合、根拠は借地借家法ではなく土地収用法と公共用地の取得に伴う損失補償の基準です。相手も大家ではなく国・自治体などの起業者で、呼び名も「立退料」ではなく「補償金」になります。

補償は、土地の対価補償、建物移転料(再築・曳家など採用する移転工法で額が変わります)、工作物・立木・動産の移転料、仮住居補償・移転雑費、店舗なら営業補償、借りている人には借家人補償——といった項目を、基準に沿って積み上げて算定されるのが一般的です。

賃貸借の立退料と違い基準に沿った算定のため、「交渉で倍にする」といった動き方にはなりにくいのが実情です。一方で、算定の前提(面積・移転工法の選定・営業実績の期間)に誤りや見落としがあれば指摘できます。協議が調わなければ収用委員会の裁決手続へ進みます。持ち家か借家かで補償の中身が変わるため、提示書の内訳を項目ごとに確認することが出発点です。

9. 立ち退き料に税金はかかるか——所得区分と消費税の考え方

「立ち退き料 税金」「立ち退き料 消費税」は検索の多いテーマですが、税務上の取扱いは受け取った金銭が何の補填かによって変わるため、一律の答えはありません。一般論としては次のように整理されることが多いとされています。

立退料の性質 所得区分の一般的な整理
借家権など資産の消滅の対価にあたる部分 譲渡所得として扱われることがあります
移転費用など実費の補填にあたる部分 実費に充てた範囲は課税されない扱いとされることがあります
上記以外の、いわば迷惑料的な部分 一時所得として扱われることがあります
店舗・事業所の休業補償・収益補償にあたる部分 事業所得(不動産所得)の収入として扱われることがあります
公共事業(収用等)に伴う対価補償金 譲渡所得となり、特別控除などの特例の対象になる場合があります
図:受け取った立退料の性質と所得区分の一般的な整理(個別の判断は税務署・税理士にご確認ください)

消費税は、立退料が資産の譲渡等の対価にあたらないため不課税(課税対象外)として扱われるのが一般的とされています。ただし内装造作や設備を貸主が買い取る形の金銭が含まれる場合、その部分は資産の譲渡の対価として課税取引と整理されることがあります。支払う側(オーナー)についても、賃貸事業を継続するための立退料か、建物を取り壊して売却するための立退料かで処理が分かれるとされています。

税務の取扱いは必ず専門家に確認してください

上記は一般的な考え方の整理であり、個別の事案に対する税務上の結論ではありません。金額が大きくなるほど税負担の差も大きくなります。合意書に署名する前に、税理士または所轄の税務署に内訳を示して確認することをお勧めします。弁護士としては、「立退料」の一括表示にせず、何に対する金銭かを合意書に書き分けるところまでを設計します。これが後の税務処理を安全にします。

弁護士法人ブライト:電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

10. 立退料交渉の実務——弁護士が入るとどう変わるか

立退き交渉を当事者同士でやると、感情的になりやすく、金額の根拠も不明確なまま進みがちです。弁護士が代理人として入ることで、以下のような変化が生まれます。

  • 正当事由の強弱を評価し、立退料の相場感を試算する(感情論でなく法律と事実で交渉する土台をつくる)
  • 相手方への交渉窓口を代行する(直接顔を合わせなくて済む)
  • 内容証明郵便の起案・送付(解約申入れの要件を整える)
  • 調停・訴訟への移行判断と対応(合意が見込めない場合)
  • 合意書・和解書の作成(口頭合意を法的に有効な書面にする)

見落とされがちな論点——立退料は「いつ」払うか

金額と同じくらい重要なのが支払いのタイミングです。先に全額を渡すと、退去が実行されないまま資金だけが出ていくリスクが残ります。実務上は明渡しの完了を確認してから支払うのが基本形です。もっとも、賃借人側は転居先の初期費用を用意できなければ動けません。そこで、引越し費用や新居の初期費用など転居に必要な実費は明細を確認したうえで先に手当てし、残額は明渡し確認後に支払う二段構えにすることがあります。合意書に「鍵の返還と引換えに支払う」旨を明記しておくと、後の紛争を防ぎやすくなります。

「弁護士が入っている」という事実自体が、交渉を現実的に進めるシグナルになります。相手方も訴訟までを視野に入れ、早期解決を検討するケースが多いです。なお賃借人が家賃を滞納しているケースでは、立退料を払う前提ではなく信頼関係破壊による解除・明渡しのルートを検討すべき場合があります。合意ができないときの流れは明渡し訴訟と強制執行をご覧ください。

11. 関連情報——不動産トラブルの全体像

立退き問題は、不動産に関わる他の法律問題と密接に絡み合っています。以下の記事も合わせてご覧ください。

12. よくある質問(FAQ)

Q1. 立退料の相場はいくらですか?

法定の相場はありません。居住用は50万〜200万円程度、店舗・飲食店は営業補償が加わり300万〜1,500万円以上、事務所は100万〜500万円程度が交渉の目安になることがあります。借地は借地権価格が基準で、数千万〜数億円に及ぶ事例もあります(ケース別の一覧は第2章の早見表)。見込みは個別の事情によりますので、弁護士への相談をお勧めします。

Q2. 立退料の計算式はありますか?

法律上の計算式はありません。実務的には「移転費用(実費)+家賃差額補填+営業補償(店舗の場合)+精神的損害への配慮」を積み上げて交渉の素材を作ることが多いです。裁判所が判断する場合も、同様の要素を個別の事情に応じて評価します。

Q3. 立退料なしで退去を求めることはできますか?

賃貸借の場合、立退料の支払いは必須ではありませんが、正当事由が強くなければ合意退去は難しく、裁判でも貸主が負ける可能性があります。使用貸借(無償貸与)の場合は立退料の支払い義務はないのが原則です。ただし状況次第では「円満解決のための礼金」として何らかの金銭的配慮をすることで、紛争を避けられるケースがあります。なお、賃借人の承諾なく鍵を交換する・荷物を運び出す・無断で室内に立ち入るといった自力救済は、正当事由の有無にかかわらず違法であり、損害賠償や刑事責任の問題になります。行ってはいけません。

Q4. 立退料を拒否されたらどうなりますか?

借家人が拒否した場合、建物明渡請求訴訟を提起することになります。裁判所が「正当事由あり」と判断すれば明渡命令が出ますが、正当事由が弱い場合は立退料の増額を条件として明渡しを認めるケースもあります。訴訟には時間(6ヶ月〜2年程度)とコストがかかるため、弁護士を介した交渉で早期解決を目指す方が多いです。

Q5. 借地権割合はどこで確認できますか?

国税庁が毎年公表する「路線価図」(財産評価基準書)で確認できます。「A」〜「G」の記号で借地権割合(A:90%〜G:30%)が示されています。ただし路線価は相続税評価額であり実勢価格とは乖離することがあるため、立退き交渉では不動産鑑定士の評価書も有効な材料になります。

Q6. 一軒家(戸建て)の立ち退き料は、マンションより高くなりますか?

法律上の枠組みは同じですが、同条件の代替物件が近隣で見つかりにくいこと、家財が多く引越し費用がかさむこと、庭や車庫の利用が失われることから、やや高い水準で協議されることがあります。なお、自分が所有している一軒家に立退料の概念はなく、公共事業なら補償金、民間の買収なら売買代金という別の枠組みになります。

Q7. 立ち退き料に税金はかかりますか。消費税はどうなりますか?

受け取った金銭の性質によって分かれます。資産の消滅の対価は譲渡所得、実費の補填は実費に充てた範囲では課税されない扱い、それ以外は一時所得、店舗の休業補償は事業所得と整理されるのが一般的です。消費税は不課税として扱われるのが一般的とされますが、造作の買取代金などが含まれる場合は別途検討が必要です。金額が大きくなるほど差が出ますので、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。

Q8. 道路拡張で立ち退きを求められました。立ち退き料の相場はありますか?

公共事業は借地借家法の立退料ではなく損失補償(補償金)の問題で、補償基準に沿って土地の対価・建物移転料・移転雑費・営業補償などを積み上げます。したがって賃貸の立退料のような「相場」はありません。提示額に納得できない場合は算定の前提(面積・移転工法・営業実績の期間など)を確認して協議し、調わなければ収用委員会の裁決手続へ進みます。

監修者情報

監修:弁護士法人ブライト 代表弁護士 和氣 良浩

大阪弁護士会所属。弁護士法人ブライト代表。不動産トラブル・企業法務・相続を中心に、大阪・関西の案件を幅広く取り扱う。「みんなの法務部」として中小企業・オーナー経営者の法的リスク対応をサポート。契約企業141社(実名公開)。

弁護士法人ブライト
〒530-0057 大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

立退き・不動産トラブルでお悩みの方へ

「立退料の目安を知りたい」「立退きを求められているが応じるべきか迷っている」「貸主として立退きを求めたいが進め方がわからない」など、お気軽にご相談ください。初回相談の費用については、お問い合わせ時にご確認ください。

電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
LINEでのご相談も受け付けています。

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の案件に対する法律上のアドバイスではありません。具体的な事情については弁護士にご相談ください。税務上の取扱いについては税理士・所轄税務署にご確認ください。

関連記事・サービス

賃貸借トラブル

賃料増減・解除・立退き・原状回復は、通知の出し方の段階で見通しが決まります。

賃貸借トラブルのご案内を見る →

あわせて読まれています

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 06-4965-9590(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、不動産を巡るトラブル、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(不動産を巡るトラブル・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

お問い合わせ

CONTACT

弁護士法人 ブライトへの法律相談、
メディア出演依頼・取材に関する
お問い合わせはこちら

お電話での
お問い合わせ

TEL:06-4965-9590

※受付時間 9:00-18:00

※法律相談は無料です(労災事故・交通事故は何度でも無料/企業法務・顧問弁護士は初回無料)。ただし、事前のヒアリング内容をもとに対応可否を判断させていただく場合があり、お力になれないと判断したときは、ご相談をお断りすることがございます。

法務ドックで経営が変わる

あなたの会社を法的トラブルから守る
弁護士法人ブライト (著)
多くの企業は法的トラブルを未然に防ぐ対策を講じておらず、顧問弁護士も不在です。本書では「法務ドック」を活用し、リスク回避を図る「みんなの法務部」を提案します。
多くの企業は法的トラブルを未然に防ぐ対策を講じておらず、顧問弁護士も不在です。本書では「法務ドック」を活用し、リスク回避を図る「みんなの法務部」を提案します。

顧問弁護士

経営者のための弁護士「活用」バイブル
弁護士法人ブライト (著)
顧問弁護士はトラブル対応だけでなく契約書作成など実務も担う身近な存在となりました。本書では顧問弁護士の活用メリット、自社に合う選び方、法的リスクのマネジメントについて解説します。
顧問弁護士はトラブル対応だけでなく契約書作成など実務も担う身近な存在となりました。本書では顧問弁護士の活用メリット、自社に合う選び方、法的リスクのマネジメントについて解説します。

おもてなしを守る「ホテル法務」の教科書

宿泊業経営者のための新リーガル戦略
弁護士法人ブライト (著)
2026年10月のカスハラ対策義務化から、悪質クレームと合理的配慮の境界線、合法的な宿泊拒否の手順まで。当法人が対応してきた8つの実務事案をもとに、宿泊業の予防法務を解説します。
2026年10月のカスハラ対策義務化から、悪質クレームと合理的配慮の境界線、合法的な宿泊拒否の手順まで。当法人が対応してきた8つの実務事案をもとに、宿泊業の予防法務を解説します。