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立退料の相場と決まり方|居住用・店舗・事務所・借地のケース別金額と計算の仕組みを弁護士が解説

「立退料ってどのくらいもらえるの?」「相場はあるの?」——こう聞かれても、明確な答えが出にくいのが立退料の難しさです。居住用の部屋と老舗の飲食店、オフィスビルの事務所では、同じ「立退き」でも金額の桁が違うことがあります。

この記事では、立退料がどのような仕組みで決まるのか、そして居住用・店舗・事務所ごとの実際の金額レンジを、弁護士の視点からできる限り具体的に解説します。

【この記事の結論】立退料の相場感(ケース別)

  • 居住用(賃貸マンション・アパート):50万〜200万円程度が交渉の出発点になることがあります。転居費用・引越し費用・家賃差額6〜12ヶ月分が主な算定要素です
  • 店舗・飲食店:300万〜1,500万円以上になることもあります。営業補償(粗利の2〜3年分)が加算されるため、居住用と桁が異なります
  • 事務所(テナント):100万〜500万円程度が交渉の目安になることがあります。移転費用+顧客喪失補償が主要素です
  • 借地(土地を借りている場合):借地権割合(路線価の40〜60%)に土地価格を乗じた金額が交渉の起点となります
  • 立退料は「正当事由を補完するもの」(借地借家法28条)として機能し、金額に法定の上限・下限はありません

大阪・関西でのご相談は弁護士法人ブライトへ。電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

1. 立退料とは何か——借地借家法28条の仕組み

立退料は「立退きの対価」として支払われるものですが、法律上の位置づけは少し異なります。

借地借家法28条は、貸主が建物の賃貸借を終了させるために必要な「正当事由」の要素として、「財産上の給付の申出」(=立退料の提供)を挙げています。つまり立退料は、正当事由が足りない部分を金銭で補う手段という位置づけです。

この点が重要で、正当事由がまったくない場合に立退料だけで解決しようとしても、借家人から拒否されれば強制退去はできません。一方、老朽化・建替えなど一定の正当事由がある場合、立退料の提供によって合意退去の可能性が大きく高まります。

正当事由と立退料の関係

正当事由の強さ立退料の必要性実例
強い(貸主側に明確な必要性)低い〜不要なこともある貸主が自分で居住する必要がある・建物が倒壊危険の状態
中程度相当額が必要になることが多い老朽化での建替え・収益性改善のための大規模改修
弱い(貸主の都合のみ)高額になる傾向がある土地活用・転売目的・相続税対策での売却

重要なのは「正当事由の強弱」と「立退料の多寡」がトレードオフになるという点です。弱い正当事由を高額の立退料で補うか、正当事由を補強した上で合理的な金額で合意するか——戦略の選択が結果を左右します。

2. 居住用(賃貸マンション・アパート)の立退料相場

居住用の借家に対する立退料は、一般的に以下の要素を積み上げて算定されることがあります。

算定要素と実際の金額感

  • 引越し費用・転居実費:20万〜50万円程度(単身・家族構成により異なります)
  • 新居の敷金・礼金:家賃の2〜4ヶ月分程度
  • 家賃差額の補填:現在の家賃と転居先家賃の差額×6〜12ヶ月分程度が考慮されることがあります
  • 生活安定補償:高齢・持病がある・長期居住(10年以上)などの事情により加算されることがあります
  • 精神的損害への配慮:特に高齢者・障害者・長期居住者は交渉上のウエイトが大きくなりがちです

これらを合算した交渉の出発点として、50万〜150万円程度が居住用の立退料として協議されることが多いです。長期居住(20年以上)・高齢者・転居困難な事情がある場合は200万〜300万円以上になることもあります。

ただし、これはあくまで交渉の目安です。裁判(調停・訴訟)に持ち込まれた場合は、裁判所が個別事情を考慮して「相当な額」を決定しますが、その金額には幅があります。

実際の交渉で出てくる論点(実案件から抽象化)

居住用の立退き交渉では、次のような論点が問題になることがあります。

【典型例A】築40年超の木造アパートの建替えで、入居者が高齢かつ10年以上の長期居住というケースでは、転居後に同等の家賃物件が近隣にないことを理由に、「転居先の保証」や「家賃差額の補填」を求められることがあります。こうした場合、転居先の斡旋と引越し費用、家賃差額の一定期間分の補填といった形で折り合うことが少なくありません。正当事由(老朽化)が強いケースでは立退料そのものは抑えられる傾向がある一方、「転居の現実的なサポート」が合意の鍵になりやすいといえます。

居住用立退き交渉でのポイント

弁護士が代理人として交渉に入ることで、感情的な対立を避けながら合理的な条件を引き出しやすくなります。立退料の金額だけでなく、「転居のタイムライン」「転居先の条件」「引越し業者の手配支援」などパッケージで提案する方が合意に至りやすい傾向があります。

立退き交渉のご相談は弁護士法人ブライトへ。電話:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)
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3. 店舗・飲食店の立退料相場——営業補償が鍵

店舗・飲食店の立退料が居住用と大きく異なるのは、「営業補償」が加算されるためです。居住用では「生活再建の実費」が中心ですが、店舗では「失う営業利益」を補償しなければならない局面があります。

店舗立退料の主要算定要素

  • 移転費用・改装費用:新店舗への移転工事費・内装費(100万〜500万円以上になることもあります)
  • 営業補償(休業損失):移転準備・工事中の売上ロス(数ヶ月〜1年分)
  • 得意客喪失補償(のれん代):長年通ってくれた顧客が転居先に来なくなる損失。粗利の1〜3年分が交渉の素材になることがあります
  • 営業権・固定客リスト・ブランド毀損:飲食店等で「場所の価値」が大きい業態では特に重くみられることがあります
  • 什器・設備の移設費・廃棄費:業務用厨房機器や大型設備は移転が困難なケースが多く、廃棄・再購入費用として計上されることがあります

これらの合計として、繁盛している飲食店では500万〜1,500万円超の立退料が交渉テーブルに乗ることもあります。場所の強みが収益の大半を占める業態(駅前立地・老舗)では、さらに高額になる可能性があります。

実際の交渉で浮上する論点(実案件から抽象化)

店舗・事務所の立退きでは、次のような交渉の流れが典型的です。

【典型例B】繁華街に近いビルで建物老朽化を理由に貸主が全テナントに立退きを求めるケースでは、長年営業する飲食店に対し、当初は「引越し費用+数ヶ月分の家賃相当」程度が提示されることがあります。これに対して、月間粗利の実績データ・固定客の来店頻度・移転先で同等の立地を確保することの難しさを客観的な資料で示すことで、移転費用に加えて営業補償(粗利の一定年数分)を含む水準まで交渉が進むことがあります。「場所のブランド」を数値で示せるかどうかが、交渉力を左右しやすいポイントです。

飲食店の立退き交渉では、月次の売上・粗利データを揃えておくことが決定的に重要です。これがないと「のれん代」の主張に説得力が出ません。弁護士が入る前に、可能な限り経営数値を整理しておくことをお勧めします。

店舗・飲食店の立退き交渉をお考えの方へ

貸主から「立退いてほしい」と言われた段階で、すぐに応じる必要はありません。まず弁護士に相談し、受け取れる立退料の見込みを確認してから交渉の方針を決めることが大切です。

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4. 事務所・オフィスの立退料相場

事務所・オフィスの立退料は、居住用より高くなる傾向がありますが、飲食店ほど「のれん代」の要素が大きくないケースが多いです。

事務所立退料の算定要素

  • 移転費用(引越し・什器移設):50万〜200万円程度(規模による)
  • 新オフィスの内装・設備工事:坪単価×面積で計算。中規模オフィスで100万〜500万円になることがあります
  • 住所変更に伴う手続きコスト:登記変更・名刺・Webサイト・各種届出。10万〜50万円程度
  • 事業継続への影響(売上減少リスク):移転により一時的に顧客が減少する可能性があれば、その補償が求められることがあります
  • 敷金・礼金・仲介手数料:移転先の初期費用として計上

目安として、小規模事務所(20〜30坪)で150万〜400万円程度、中規模オフィス(50坪超)では500万〜1,000万円以上になるケースもあります。

なお、事務所テナントの場合、「借地借家法の適用がある普通賃貸借」か「定期建物賃貸借」かで状況が大きく異なります。定期借家の場合は期間満了で賃貸借が終了するため、立退料の交渉は発生しないのが原則です。

5. 借地(土地の立退き)の立退料——桁が違う理由

建物の立退きではなく「借地人(土地を借りて建物を建てている人)」に対する土地の返還請求の場合、立退料の話は根本的に異なります。

借地権は強い法的保護を受けており(借地借家法6条・8条)、貸主が更新拒絶や解約を申し入れるためには「正当事由」が必要です。借地権価格が高額な場合、立退料も非常に大きな金額になることがあります。

借地の立退料算定——借地権割合が起点

土地の立退きにおける補償は、「借地権価格」を基準に協議されることが一般的です。

項目計算の仕組み例(路線価1,000万円/坪・30坪の土地の場合)
土地価格(時価)路線価÷0.8×地積約3億7,500万円
借地権割合(路線価図のA〜G)A:90%〜G:30%。住宅地は50〜60%が多い50%の場合 → 約1億8,750万円
底地割合100%から借地権割合を引いた残り50%→ 約1億8,750万円
立退料の目安借地権価格を参考に協議1億5,000万〜2億円超になることがある

上記はあくまで計算の枠組みを示したものです。実際の交渉では「借地権を消滅させることによる借地人の損失をいかに補償するか」という観点から、個別の事情(建物の価値・移転コスト・営業の有無)が加味されます。

重要なのは、借地権割合は国税庁が公表している「路線価図」(財産評価基準書)で確認できるという点です。ただし、相続税評価の「路線価」と実勢価格(時価)には乖離があることが多く、交渉においては不動産鑑定士による評価も活用されることがあります。

借地の立退き・更新拒絶についてのご相談

借地権が関係する立退き問題は、金額が大きく法律関係も複雑です。地主側・借地人側どちらの立場であっても、早期に弁護士に相談することで戦略の幅が広がります。

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6. 立退料交渉の実務——弁護士が入るとどう変わるか

立退き交渉を当事者同士でやると、感情的になりやすく、金額の根拠も不明確なまま進みがちです。弁護士が代理人として入ることで、以下のような変化が生まれます。

  • 正当事由の強弱を評価し、立退料の相場感を試算する(感情論でなく法律と事実で交渉する土台をつくる)
  • 相手方への交渉窓口を代行する(直接顔を合わせなくて済む)
  • 内容証明郵便の起案・送付(解約申入れの要件を整える)
  • 調停・訴訟への移行判断と対応(合意が見込めない場合)
  • 合意書・和解書の作成(口頭合意を法的に有効な書面にする)

貸主側・借家人側のどちらから見ても、「弁護士が入っている」という事実自体が交渉を現実的に進める上でのシグナルになります。相手方も「訴訟まで視野に入っている」と理解し、早期解決を検討するケースが多いです。

7. 関連情報——不動産トラブルの全体像

立退き問題は、不動産に関わる他の法律問題と密接に絡み合っています。以下の記事も合わせてご覧ください。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 立退料の相場はいくらですか?

法定の相場はありません。居住用では50万〜200万円程度が交渉の出発点になることがあります。店舗・飲食店では営業補償が加わり300万〜1,500万円以上になることもあります。事務所では移転費用中心で100万〜500万円程度が目安になることがあります。借地の場合は借地権価格が基準となり、数千万〜数億円に及ぶ事例もあります。正確な見込みは個別の事情によりますので、弁護士への相談をお勧めします。

Q2. 立退料の計算式はありますか?

法律上の計算式はありません。実務的には「移転費用(実費)+家賃差額補填+営業補償(店舗の場合)+精神的損害への配慮」を積み上げて交渉の素材を作ることが多いです。裁判所が判断する場合も、同様の要素を個別の事情に応じて評価します。

Q3. 立退料なしで退去を求めることはできますか?

賃貸借の場合、立退料の支払いは必須ではありませんが、正当事由が強くなければ合意退去は難しく、裁判でも貸主が負ける可能性があります。使用貸借(無償貸与)の場合は立退料の支払い義務はないのが原則です。ただし状況次第では「円満解決のための礼金」として何らかの金銭的配慮をすることで、紛争を避けられるケースがあります。

Q4. 立退料を拒否されたらどうなりますか?

借家人が立退料・立退き自体を拒否した場合、建物明渡請求訴訟を提起することになります。裁判所が「正当事由あり」と判断すれば明渡命令が出ます。ただし貸主側の正当事由が弱い場合、裁判所が立退料の増額を条件として明渡しを認めるケースもあります。訴訟には時間(6ヶ月〜2年程度)とコストがかかるため、弁護士を介した交渉で早期解決を目指す方が多いです。

Q5. 借地権割合はどこで確認できますか?

国税庁が毎年公表している「路線価図」(財産評価基準書)で確認できます。路線価図には「A」〜「G」の記号で借地権割合(A:90%〜G:30%)が記載されています。ただし路線価はあくまで相続税評価額であり、実勢価格とは乖離することがあります。立退き交渉では不動産鑑定士の評価書も有効な材料になります。

監修者情報

監修:弁護士法人ブライト 代表弁護士 和氣 良浩

大阪弁護士会所属。2006年弁護士登録(修習59期)。企業法務・不動産・相続を中心に20年以上の実務経験を持つ。「みんなの法務部」として中小企業・オーナー経営者の法的リスク対応をサポート。契約企業130社以上(実名公開)。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の案件に対する法律上のアドバイスではありません。具体的な事情については弁護士にご相談ください。

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事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、不動産を巡るトラブル、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、不動産を巡るトラブル、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(不動産を巡るトラブル・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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