このページでわかること
- 相続した不動産で兄弟・親族がもめる「5大パターン」と、それぞれの法的な打ち手
- 遺産分割協議が「全員合意しないと先へ進めない」理由と、合意できない場合の手続き
- 2024年4月1日施行の相続登記義務化(不動産登記法76条の2)と放置した場合のリスク
- 弁護士に相談すべきタイミングと、大阪・関西でブライトに相談した場合の流れ
「実家を相続したけれど、兄弟の意見がまとまらない」「共有名義のまま何年も放置しているが、どうすればいいかわからない」——こうした相談が弁護士法人ブライトには毎月複数件寄せられます。
相続した不動産が「もめごと」に発展する理由のひとつは、不動産という資産の特殊性にあります。現金であれば100万円を2人で分けるのは容易ですが、評価額1,000万円の実家は「物理的に分割」することが原則としてできません(民法898条・906条)。このため、相続人全員が「どのように分けるか」について合意しなければ、売却も名義変更も進まない状態が生じます。
本記事では、相続不動産をめぐる5大トラブルパターンと、それぞれの法的解決策を弁護士が具体的に解説します。「うちはどのケースに当たるのか」を確認しながら読み進めてください。
相続した不動産で「もめる」根本的な理由
まず前提として、なぜ相続不動産のトラブルが多いのかを確認します。
民法906条は「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています。つまり、遺産分割の方法は相続人全員の協議で決める建前ですが、全員が合意に至るまでは不動産を動かすことができません。
相続人が1人なら問題ありませんが、複数いる場合(民法898条「共同相続の場合の遺産の帰属」)は遺産全体が共有状態になり、各相続人の意見が一致しない限り、売却・賃貸・建替えといった処分行為を単独では行えません。これが「もめる」構造的な背景です。
遺産分割協議は民法907条で定められており、「協議が調わないとき、または協議をすることができないとき」は家庭裁判所に分割を請求できます(調停→審判)。ただし、審判になるまでには数ヶ月から1年以上かかるケースも珍しくなく、その間も不動産は動かせません。
5大パターン別・トラブルの実態と解決法
パターン1:兄弟共有で「1人だけ売りたい」——膠着した共有状態の打開策
最も多いのが、相続後も不動産を複数の兄弟が共有名義のまま持ち続け、一部の相続人は「実家を売ってお金にしたい」、別の相続人は「売りたくない(思い出がある、自分が住んでいる)」という対立です。
法的な打ち手:共有物分割請求(民法258条)
協議が整わない場合、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できます(民法256条)。ただし、土地・建物の「現物分割」は事実上難しいケースが多いため、裁判所が「換価分割」(競売して代金を分ける)または「全面的価格賠償」(一人が全部取得し、他の者に代償金を支払う)を命じることがあります。
なお、全面的価格賠償(最高裁平成8年10月31日判決・民集50巻9号2563頁)は、不動産を取得する者が他の共有者に対して適正な対価を支払える支払能力があることが前提となります。資金力のない方が「自分が取得したい」と主張しても裁判所に認められないケースがある点は注意が必要です。
2023年民法改正(258条の2)で何が変わったか
2023年4月1日施行の民法改正により、共有物分割訴訟での解決方法が条文上明確化されました(民法258条の2)。裁判所が「換価分割」(競売して代金を分ける)や「全面的価格賠償」(一人が全部取得し他の者に代償金を支払う)を命じることができることが明文化され、共有関係の解消がより円滑になっています。また、同日施行の改正民法では、所在が不明な共有者がいる場合に他の共有者がその持分を取得したり、共有物全体を第三者に譲渡したりできる制度も新設されており、長期放置された相続不動産も動かしやすくなっています。
ブライトが実際に受けた相談でも、「10年以上共有のまま固定資産税だけ払い続けてきたが、どうにかしたい」というケースが複数あります。こうした場合、弁護士が遺産分割調停の申立てと並行して、法改正を踏まえた戦略を立てることが有効です。
共有物分割ハブページでは、この手続きをさらに詳しく解説しています。
共有物分割請求とは——手続き・費用・期間を弁護士が解説
パターン2:相続人が音信不通・実家に無断居住している
「亡くなった親の兄弟(叔父・叔母)が相続人に含まれるが、何十年も連絡が取れない」「相続人の1人が実家に住み続けており、売却に応じない」——遺産分割は相続人「全員」の合意が必要なため、1人でも行方不明・連絡不通であれば協議がスタートできません。
法的な打ち手①:不在者財産管理人の選任(民法25条)
長期間住所不明の相続人(不在者)については、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。選任された管理人が不在者に代わって遺産分割協議に参加し、協議を進めることが可能になります。
法的な打ち手②:失踪宣告(民法30条)
7年以上行方不明の場合は失踪宣告の申立てが可能です(普通失踪)。失踪宣告が確定すると、その相続人は死亡したものとみなされ、その者の相続人が代わりに遺産分割に加わります。
法的な打ち手③:実家に無断居住している場合——不当利得返還請求
相続発生後、遺産分割未了の状態で1人の相続人が不動産を単独使用している場合、他の相続人はその者に対して相続分に応じた不当利得(または賃料相当損害金)の返還を請求できる場合があります(最高裁昭和41年5月19日判決等)。売却を急かすより先に、まず使用分の精算を求める交渉が突破口になることもあります。
ブライトが関わった事案では、20年以上音信不通の相続人が居て協議が動かないという状況から、不在者財産管理人の選任申立てを経て、最終的に競売ではなく任意売却で着地したケースがあります(個人情報保護のため詳細は匿名化)。
パターン3:換価分割(売却して分ける)に反対者がいる
遺産分割で「売って分ける(換価分割)」が最も公平に見えますが、「子どもの頃に住んだ実家を売りたくない」「地元に残したい」という感情的な理由や、「買い取ってその土地でアパートを建てたい」という利害関係が絡み、1人でも反対者がいれば売却は止まります。
法的な打ち手:遺産分割調停→審判
協議が整わない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立てが選択肢です。調停委員が間に入って各相続人の意見を聴き、合意形成を図ります。調停でも合意に至らない場合は審判へ移行し、裁判官が分割方法を決定します。
審判では、不動産の評価は原則として「市場価格(時価)」が基準になります。一方、相続人の感情面(思い入れ)は法的には直接考慮されないため、「売りたくない」という相続人が買い取るためには、他の相続人の相続分に応じた代償金を用意する必要があります。代償金の資力がなければ、最終的に競売(換価分割)が命じられることになります。
調停・審判では、不動産鑑定評価の取り扱いや寄与分・特別受益の主張など、法的な論点が複数絡みます。弁護士なしで進めると、相手方の代理人弁護士の主張に押される場面が少なくありません。ブライトへのご相談では、まず現状の権利関係と各相続人の利害を整理したうえで、調停での現実的な着地点を提案します。
パターン4:相続登記を放置していた——売れない・相続人が増殖する
「親が亡くなって10年、名義は父のままだが特に問題なく固定資産税を払ってきた」——こうした相続登記放置のケースが全国的に社会問題となり、2024年4月1日から相続登記が義務化されました(不動産登記法76条の2)。
義務化の概要(不動産登記法76条の2)
相続(遺贈)によって不動産を取得した相続人は、相続開始を知った日から3年以内に相続登記(所有権移転登記)の申請をしなければなりません。正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料(行政上の制裁)が科される可能性があります。
なお、この義務化は2024年4月1日より前に発生した相続にも遡及して適用されます。すでに相続登記が未了の場合は、2027年3月31日が経過措置の期限です。
放置すると何が起きるか
登記を放置した場合の最大のリスクは、世代を超えるたびに相続人が増え続けることです。被相続人の相続人が亡くなると、その子どもが相続人になります。20年・30年放置すると、関係者が10人・20人を超え、全員の合意形成がほぼ不可能になるケースがあります(「数次相続」)。また、相続登記ができていない不動産は売却・担保設定ができません。売りたいときに売れない状態が生まれます。
相続登記の申請自体は司法書士の業務ですが、相続人が多数・行方不明・遺産分割協議が整っていないなど法的紛争が絡む場面は弁護士の領域です。ブライトでは弁護士が遺産分割協議の合意形成を担い、合意後の登記申請は連携する司法書士に引き継ぐ体制を取っています。
⚠ 2027年3月までに相続登記をしないと過料リスク
「名義が亡くなった父のまま」という方は、まず弁護士に現状を確認してください。相続人の調査・遺産分割協議・登記まで一貫してサポートします。
まず無料で相談するパターン5:評価額でもめる・認知症で動かせない
遺産分割で不動産をどう「評価するか」(何円の財産とするか)は、各相続人の取得額に直結するため争点になりやすい箇所です。また、相続人の1人(あるいは被相続人)が認知症の場合は、法的な同意能力の問題が加わります。
評価額争いのパターン
不動産の評価方法は複数あります。固定資産税評価額・路線価(相続税評価額)・不動産鑑定士による鑑定評価(市場価格)は通常いずれも異なる金額になります。遺産分割での実務的な基準は市場価格(鑑定評価または査定額)ですが、「どの評価額を使うか」で当事者間が対立することがあります。
調停・審判では、裁判所が鑑定人を選任して評価させる場合があります(鑑定費用は相続人全員で負担)。事前に弁護士と協議して、どの評価額で話し合いを進めるかの方針を立てることが重要です。
認知症の相続人がいる場合:成年後見人の選任が必要
相続人の1人が認知症等で意思能力を欠く場合、その者が遺産分割協議に参加したとしても協議は無効または取消しの対象となります(民法3条の2・9条)。この場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって遺産分割に参加する必要があります。
成年後見制度を利用すると、後見人(多くは弁護士・司法書士等の専門職)が本人の利益を守る立場で協議に参加するため、他の相続人が望む内容に必ずしも合意しないことがあります。「認知症だから判を押してもらえばいい」という考えは法的に通用しない点を認識してください。
ブライトでは、相続人の中に認知症の方がいるケースについて、成年後見申立ての段階から関与し、後見審判確定後の遺産分割協議まで一貫したサポートを提供しています。
「もめる前」にやっておくべきこと——被相続人が生前にできる予防策
すでにもめている方だけでなく、「親が高齢で、将来が心配」という方にも参考にしていただけるよう、もめる前の予防策を整理します。
① 遺言書の作成(最重要)
被相続人が有効な遺言書を残していれば、原則として遺言の内容が遺産分割よりも優先されます(民法902条)。ただし、遺留分(最低限の相続分)を侵害する遺言は後から遺留分侵害額請求を受けるため、遺留分を考慮した内容にすることが重要です。
② 生前贈与・家族信託
生前に特定の相続人または第三者に財産を移転しておく方法です。ただし、生前贈与は特別受益として遺産分割で持ち戻されるケースがあり(民法903条)、税務上の贈与税も考慮が必要です。家族信託は、認知症対策として不動産の管理・処分権限を信頼できる家族に移す仕組みとして近年注目されています。
③ 相続人への情報共有
親が元気なうちに財産の種類・場所・評価額の目安を相続人全員で共有しておくだけで、相続発生後のトラブルが格段に減ります。「財産目録」の作成と保管場所の周知が有効です。
実際にブライトで解決した相続不動産トラブルの例(匿名・二重匿名化)
事例A:兄弟3人の共有不動産・10年以上協議が止まっていたケース
関西在住の相談者(50代)から「父が亡くなって12年。実家の土地・建物が父名義のまま。兄の1人が実家に住んでおり、売却に応じない」との相談が寄せられました。弁護士が介入し、実家に居住する兄弟に対して使用相当損害金の精算提案を行い、他の兄弟との協議テーブルを再設定。最終的に居住者が代償金を支払い、土地・建物を取得する形(代償分割)で合意に至りました。(関係者の同意のもと、個人を特定できないよう匿名化・事実を変更しています)
事例B:相続人の1人が認知症で遺産分割が進まなかったケース
大阪市内の相談者から、「母が亡くなり、相続人は私と父(80代・認知症)。不動産を売って老人ホームの費用に充てたい」という相談がありました。ブライトが成年後見人選任の申立てをサポートし、弁護士が後見人に就任。後見人の立場で遺産分割協議を行い、不動産を売却して介護費用に充当する形で解決しました。(関係者の同意のもと、個人を特定できないよう匿名化・事実を変更しています)
弁護士に相談するタイミング——「遅すぎる」という相談はあるか
「もう20年経っている。今さら弁護士に相談しても……」というご心配をいただくことがあります。しかし、相続不動産の問題は放置するほど相続人が増え、解決が困難になる性質があります。弁護士に相談するタイミングに「遅すぎる」ことはありません。
- 遺産分割協議を始めようとしたが、1人でも合意しない相続人がいる
- 相続人の1人が音信不通、または認知症である
- すでに相続登記が10年以上放置されており、解消したい
- 不動産を売りたいが、共有名義で身動きが取れない
- 「遺産分割調停」を申し立てられた(または申し立てることを検討している)
相続×不動産トラブルの個別解説
- 実家を兄弟と共有相続…1人だけ売りたい時の進め方
- 相続した実家に居座って出ていかない人の明渡し
- 相続不動産を売って分ける「換価分割」の進め方と落とし穴
- 相続登記をしないと不動産が売れない|義務化と放置リスク
- 遺産分割が揉めて名義変更できない時の対処
- 相続不動産の評価額でもめない3つの基準
- 親が認知症で実家・不動産が売れない|成年後見と生前対策
- 相続した空き家のリスクと実家じまいの手順
よくある質問(FAQ)
Q1:遺産分割協議書なしで不動産を売ることはできますか?
A:原則としてできません。相続した不動産を売却するには、①相続登記(被相続人から相続人への名義変更)と②遺産分割協議書による相続人全員の合意が必要です。
Q2:相続登記の義務化はいつから?罰則は?
A:2024年4月1日から施行されています(不動産登記法76条の2)。相続を知ってから3年以内に申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年4月1日以前の相続で未登記のものも対象となり、経過措置期限は2027年3月31日です。
Q3:相続人が行方不明の場合、遺産分割はどうすればいいですか?
A:家庭裁判所への「不在者財産管理人」の選任申立てが有効です(民法25条)。選任された管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。7年以上行方不明の場合は失踪宣告(民法30条)も選択肢です。
Q4:遺産分割調停の申立費用はいくらかかりますか?
A:申立費用は対象となる遺産の価額によって異なりますが、収入印紙代(数百円〜数千円程度)と連絡用郵便切手代が主な実費です。弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用が発生します。ブライトでは初回相談無料で費用見積もりをお伝えしています。
Q5:共有持分の買取業者から連絡が来た。応じるべきですか?
A:すぐに応じる前に、弁護士に相談することをお勧めします。共有持分の買取業者は、持分を市場価格より低い金額で購入したうえで、共有物分割請求訴訟を利用して不動産全体を取得しようとするビジネスモデルをとっているケースがあります。弁護士が介入することで、提示額の妥当性を検証し、必要に応じて対抗策を取ることができます。
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弁護士歴平均14年以上のチームが担当します。
受付時間:平日9:00〜18:00(メール・LINEは24時間受付)
監修弁護士
和氣 良浩(わけ よしひろ)
弁護士法人ブライト 代表弁護士 / 大阪弁護士会所属
企業法務・相続・不動産・労働問題など幅広い分野を取り扱う。大阪を中心に関西の個人・中小企業の法的トラブルに対応。
所属:大阪弁護士会 / 弁護士法人ブライト(law-bright.com)
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