【執筆】松本 洋明 弁護士(弁護士登録2010年・修習63期・交通事故主任)
【監修】和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト代表)
この記事でわかること
- 遺族が請求できる損害項目の全リスト(慰謝料・逸失利益・葬儀費・弁護士費用等)
- 自賠責・任意保険・加害者本人への3ルートの請求方法
- 時効は2020年4月以降の事故で5年(改正民法724条の2)
- 示談前に弁護士を立てるべき具体的な理由
死亡事故で遺族が請求できる損害項目の全リスト
交通事故で家族を亡くした遺族は、加害者側に対して以下の損害を請求できます。保険会社の提示では計上されていない費目が含まれることも多いため、必ず弁護士に確認してください。
| 損害項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 死亡慰謝料 | 精神的損害の賠償 | 弁護士基準2,000〜2,800万円 |
| 近親者固有慰謝料 | 遺族自身の精神的損害(民法711条) | 配偶者200〜500万円等 |
| 逸失利益 | 将来の収入の喪失 | 年収×ライプニッツ係数×0.5 |
| 葬儀費用 | 葬儀・埋葬等の費用 | 150万円程度が認められる実務 |
| 傷害慰謝料 | 死亡前の入院・通院に対する慰謝料 | 入院日数・通院期間で算定 |
| 治療費・入院費 | 死亡前の医療費 | 実費 |
| 休業損害 | 死亡前の休業に伴う収入の損失 | 事故〜死亡日まで |
| 弁護士費用 | 訴訟で認められる弁護士費用相当額 | 損害額の10%程度が認定実務 |
| 遅延損害金 | 事故日から支払い日までの法定利息 | 年3%(改正民法) |
ブライトが取り扱った実案件(バイク右直事故で20代女性死亡・判決)では、判決総額約8,400万円に加えて遅延損害金も全額乗せた解決となりました。保険会社との和解では遅延損害金・弁護士費用が削られるため、この案件では判決取得を選択しました。
3つの請求ルート|自賠責・任意保険・加害者直接
ルート1:自賠責保険への直接請求
自賠責保険は加害者が加入する強制保険で、死亡事故の場合は最高3,000万円まで補償されます。被害者(遺族)が直接保険会社に請求する「被害者請求」が可能です。自賠責請求は他の手続きと並行して進められます。
ルート2:加害者側任意保険会社への請求
加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が交渉窓口になります。ただし任意保険会社が提示する金額は自社基準(任意保険基準)であり、弁護士基準より大幅に低いのが通常です。弁護士を立てることで弁護士基準での交渉が可能になります。
ルート3:加害者本人への直接請求
任意保険未加入の場合は加害者本人に直接請求します。ブライトの実案件では、任意保険未加入の加害者に対して訴訟提起・預金仮差押えを行い、最終的に共同不法行為(バイク運転者の任意保険会社との連帯)で大部分を回収しました。
手続きの全体フロー|死亡事故の場合
死亡事故発生から示談・判決まで、一般的な流れは以下のとおりです。
- 事故直後〜1か月:警察への届出・加害者情報の確保・弁護士への相談開始
- 1〜3か月:自賠責仮渡金の請求(最高290万円)・葬儀費用への充当
- 3〜6か月:相続関係の確認・損害計算書の作成・保険会社への請求
- 6か月〜1年:示談交渉(任意保険会社から提示が来る)
- 交渉不成立の場合:調停・ADR(示談あっせん)・訴訟提起
- 訴訟提起後1〜2年:判決または訴訟上の和解による解決
解決までの期間は案件の複雑さによって大きく異なります。ブライトの実案件では、横断歩道死亡事故が受任から約1年4か月で和解解決しました。自転車×右折車の死亡案件は約2年半かかりました。
時効の管理|2020年4月以降は5年
改正民法724条の2(2020年4月1日施行)により、人の生命・身体を侵害する不法行為の損害賠償請求権の主観的起算点(損害と加害者を知った時)からの時効は5年に延長されました(2020年3月31日以前の事故は旧法3年)。
ただし、示談交渉が長期化している場合でも油断は禁物です。保険会社との交渉に時間がかかっている間に時効が近づくことがあります。弁護士に依頼すると、時効管理も含めてすべての手続きを任せられます。
示談前に弁護士を立てるべき5つの理由
- 理由1:弁護士基準の慰謝料を使える(任意保険基準の2倍以上になることがある)
- 理由2:損害項目の漏れを防げる(葬儀費・近親者慰謝料・弁護士費用等)
- 理由3:示談書サイン後は原則増額不可(後悔しないために事前に確認)
- 理由4:訴訟移行の判断ができる(保険会社が強気な場合、早期提訴が有効)
- 理由5:遺族が直接交渉するストレスを避けられる(精神的な負担を軽減)
なお、示談について詳しくは「示談書にサインしないでください」の解説記事もご参照ください。
相続人と請求権の関係|誰が誰に請求できるか
死亡事故では「誰に請求権があるか」が重要です。被害者の慰謝料・逸失利益・葬儀費等は法定相続人が相続して請求します。相続人は配偶者・子・父母・兄弟姉妹の順序で決まります(民法887条〜890条)。
ブライトの実案件では、離婚した前夫(被害者の父)と母(依頼者)の2名が相続人となり、前夫への分配を最小化するため寄与分調停・固有慰謝料の扱いを慎重に検討した事例がありました。複雑な家族関係がある場合は早めに弁護士に相談することが重要です。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 遺族がすぐにやるべきことは何ですか?
まず警察への届出・加害者の保険情報の確保が最優先です。その後、できるだけ早く弁護士に相談してください。早期の弁護士介入で、証拠保全・仮渡金請求・保険会社対応を一括して任せられます。
Q2. 保険会社から「早期に解決しましょう」と言われたら?
保険会社が早期解決を勧める場合、提示額が低い可能性があります。急いでサインする必要はありません。弁護士に内容を確認させてから判断してください。
Q3. 加害者が高齢・資力不足でも請求できますか?
任意保険がある場合はそちらに請求できます。無保険・資力不足の場合は政府保障事業(ひき逃げ等の場合)や弁護士費用特約等の活用を検討します。
Q4. 刑事手続きと民事請求は別に進められますか?
はい、刑事事件と民事損害賠償は別の手続きです。刑事判決を待たずに民事請求を進めることができます。ただし刑事記録は民事での証拠として活用できるため、弁護士が適切なタイミングを判断します。
Q5. 弁護士費用特約がない場合の費用は?
ブライトでは完全成功報酬制での対応が可能です。解決した賠償金から費用を差し引く形になるため、持ち出しなしで依頼できます。
Q6. 子どもが被害者の場合も請求できますか?
子どもが死亡した場合も、親が相続人として慰謝料・逸失利益・葬儀費等を請求できます。子どもの逸失利益については逸失利益の計算記事で詳しく解説しています。
まとめ
死亡事故の遺族が請求できる補償は、慰謝料だけでなく逸失利益・葬儀費・弁護士費用等多岐にわたります。保険会社の提示だけで示談すると、大幅に損をするリスクがあります。
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