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交通事故の基礎知識

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高級車の事故で相手が無保険・対物上限オーバーだったら|フェラーリ等の修理費・評価損を回収する方法

フェラーリをはじめとする高級車を傷つけられ、修理見積りが数百万円になった。ところが相手方に連絡すると「任意保険に入っていない」「対物は上限があるので、そこまでは払えない」と言われた——このとき被害者の頭をよぎるのは、「結局、泣き寝入りするしかないのか」という不安だと思います。

先に結論を申し上げます。相手が無保険でも、請求できる相手・使える制度・回収の手段は残っています。ただし、何も手を打たなければ本当に0円で終わります。しかも、無保険案件で被害者が最初に選ぶ一手(自分の車両保険を使うか、相手本人に請求するか、いつ訴訟に切り替えるか)によって、最終的な手取り額が大きく変わります。この記事では、高級車の修理費・評価損を現実に回収するための考え方を、大阪・関西で交通事故を扱う弁護士が解説します。

※本記事は被害者の方(車を壊された側)に向けた解説です。

執筆:松本 洋明 弁護士(弁護士法人ブライト・大阪弁護士会所属/交通事故案件を担当) 監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表弁護士・大阪弁護士会所属)

この記事のポイント
  • 「無保険」には3つの型がある——完全無保険/対物に上限がある/限定特約違反で実質無保険
  • 相手の保険がどうなっているかは、弁護士会照会(弁護士法23条の2)で調べられる場合がある
  • 政府保障事業も無保険車傷害保険も、物損には使えない——高級車の修理費・評価損は自力で回収設計が必要
  • 請求できる相手は運転者だけとは限らない。車両の所有者・勤務先に責任が及ぶことがある
  • 判決を取っても回収できないことは現実にある。だからこそ資産調査と回収設計を先にする

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「相手が無保険」には3つの型がある

実務で「無保険」と呼ばれる状態は、実は次の3つに分かれます。どの型かによって、打つべき手がまったく変わります。

状態物損(修理費・評価損)への影響
①完全無保険自賠責のみで、任意保険に加入していない物損には自賠責が使えないため、加害者本人に直接請求するしかない
②対物に上限がある任意保険はあるが、対物賠償の保険金額が上限額(例:500万円等)で設定されている上限までは保険会社が支払うが、超過分は加害者本人へ請求。高級車では超過が起きやすい
③限定特約違反で実質無保険「本人・配偶者限定」「年齢条件」などに反する者が運転していたため、保険が使えない形式上は保険契約があるのに保険金が出ない。発覚が遅れやすいのが最大の問題

特に注意が必要なのが③です。当事務所が扱った案件でも、交渉が進んだ段階になって初めて相手方の運転者が任意保険の限定特約に違反しており、保険が使えない状態だったことが判明した事例があります。相手方保険会社が最初から正直に「使えません」と告げてくれるとは限らず、被害者側で確認しなければ何か月も分からないままになります。

相手の保険がはっきりしない段階でご相談ください

「保険会社から連絡が来ない」「相手が保険を使わないと言っている」——この時点が動きどきです。

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まず確認する——相手の保険の有無をどう調べるか

相手が「保険に入っていない」と口頭で言っているだけの状態と、加入状況を客観的に確認した状態とでは、その後の戦略がまったく違います。実務では次の手順で確定させます。

  1. 交通事故証明書の取得——加害者の氏名・住所、車両の登録番号、自賠責保険の証明書番号と保険会社が記載されます
  2. 相手方(またはその保険会社)への確認——任意保険の有無、対物賠償の保険金額、運転者限定・年齢条件の有無を照会します
  3. 弁護士会照会(弁護士法23条の2)——弁護士が所属弁護士会を通じて照会を行う制度です。任意保険の加入状況の確認に用いられることがあります
  4. 車検証・登録事項証明書による所有者の確定——運転者と所有者が別人であれば、請求先が増える可能性があります

当事務所の実務でも、この弁護士会照会によって「相手方の任意保険は使えない」ことを確定させ、その時点で交渉路線から訴訟路線へ切り替えた案件があります。使えるかどうか分からないまま任意交渉を続けるのは、時間だけが過ぎて時効が近づく最悪の展開です。照会には相手方が応じないこともありますが、「調べたうえで動く」ことが回収設計の出発点になります。

高級車の物損で「使えない制度」と「使える制度」

無保険事故というと「政府保障事業がある」「無保険車傷害保険がある」と説明されることがありますが、これらは人身損害のための制度であり、車の修理費や評価損には使えません。ここを誤解したまま時間を使ってしまう被害者の方が少なくないため、最初に整理します。

図解:相手が無保険のとき、高級車の「物損」に使えるものはどれか
物損には使えない
・自賠責保険(人身のみ)
・政府保障事業(人身のみ)
・無保険車傷害保険(死亡または後遺障害が生じた場合を対象とするのが一般的=物損は対象外)
・運行供用者責任=自賠法3条(人身のみ)
物損に使える/使い方次第
・加害者本人への直接請求(民法709条)
・車両所有者・勤務先への請求(民法715条ほか)
・自分の車両保険(等級ダウンとの比較が必要)
・弁護士費用特約(物損のみでも利用可が一般的)

つまり、高級車の修理費・評価損は「誰かが用意してくれている救済制度」では回収できないということです。加害者側の資力に届く請求先を探し、確実に債務名義(判決や公正証書など強制執行の根拠となる文書)を取り、回収するところまでを一続きの設計として組み立てる必要があります。

自分の保険をどう使うか——車両保険・人身傷害保険の判断

車両保険を先に使うという選択

相手からの回収が不透明な場合、ご自身の車両保険を先行して使い、修理を進めるという選択があります。保険会社が保険金を支払うと、その範囲で保険会社が加害者に対する損害賠償請求権を取得し(保険代位)、以後の回収は保険会社が行います。回収の不確実性を保険会社に移せるのが最大のメリットです。

ただし、高級車では次の点に注意が必要です。

  • 協定保険価額が上限になる——契約時に設定した車両保険金額を超える修理費は出ません。高年式・希少モデルでは実勢価格との差が生じることがあります
  • 免責金額の自己負担——契約により免責金額(自己負担額)が設定されています
  • 等級のダウン——一般に3等級ダウンとなり、事故有係数が数年適用されます。保険料の増加分と受取額を比較する必要があります
  • 評価損は原則として支払われない——車両保険が対象とするのは修理費・時価額であり、格落ち損(評価損)を対象とする特約が別途付いていない限り、評価損は加害者本人に請求するほかありません

この最後の点が、高級車の無保険事故における最大の落とし穴です。車両保険で修理費が埋まったことで安心してしまい、数十万円から百万円単位になり得る評価損を請求しないまま終わるケースがあります。フェラーリの評価損の考え方はフェラーリの評価損(格落ち損)——大阪・関西の弁護士に相談、高級車全般については大阪・関西|高級車・外車の評価損(格落ち損)に強い弁護士をご覧ください。

ケガもしている場合——人身傷害保険を先行するかどうか

物損だけでなくケガもされている場合、ご自身の人身傷害保険を先行して受け取るか、相手方の自賠責保険へ直接請求(被害者請求)するかという判断が生じます。相手が任意保険に未加入でも、自賠責保険には加入義務があるため、人身損害については自賠責への被害者請求という道が残されています

当事務所では、事案によって「人身傷害保険を先行して受け取らず、自賠責に対して訴訟を提起する」という選択を取ったこともあります。人身傷害保険の支払基準よりも裁判基準のほうが高額になる場面があるためです。どちらが有利かは、過失割合・受傷の程度・回収可能性によって変わりますので、受け取る前にご相談いただくのが安全です。

【ご注意】保険金を受け取る前にご相談ください

ご自身の保険から先に保険金を受け取ると、その後の請求の組み立て(誰に、いくら、どの順番で請求するか)が変わります。受領後では選べなくなる選択肢がありますので、手続の前に一度ご確認ください。

弁護士費用特約は、相手が無保険でも使える

「相手が無保険なら、弁護士に頼んでも費用倒れになるのでは」——よくいただくご質問です。しかし実際には、相手が無保険の案件こそ、弁護士費用特約が最も効く場面です。

  • 相手が無保険であることは、特約利用の妨げになりません。ご自身(またはご家族)の自動車保険に付帯していれば利用できるのが一般的です
  • 物損のみの案件でも利用できるのが一般的です。修理費・評価損の請求も対象になります
  • 上限額(300万円とすることが多い)の範囲で、弁護士費用が保険から支払われます
  • 特約を使っても等級には影響しない扱いが一般的とされていますが、約款により異なるため契約内容の確認が必要です

当事務所が扱った無保険案件でも、ご自身の保険に付帯していた弁護士費用特約を利用してご相談いただき、相手方本人との交渉が難航することを見越してそのままご依頼いただいたという経緯の案件があります。相手が無保険であることが分かった時点で、まずご自身の保険証券を確認してください。特約の詳しい使い方は高級車・外車の物損(評価損・修理費)で弁護士費用特約は使える?対物賠償・300万上限・評価損請求での活用で解説しています。

弁護士費用特約の有無だけでも確認しませんか

ご自身・ご家族の保険証券をお手元にご用意のうえ、お電話ください。使えるかどうかを一緒に確認します。

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請求できる相手は運転者だけとは限らない

加害者本人に資力がない場合でも、責任を負う人が他にいないかを検討します。これは無保険案件における回収可能性を左右する最重要ポイントです。

請求先の候補根拠物損に使えるか
運転者本人不法行為責任(民法709条)使える
車両の所有者・保有者運行供用者責任(自賠法3条)使えない(人身のみ)。物損は民法709条・719条等の構成を検討
勤務先(業務中の事故)使用者責任(民法715条)使える。会社に資力があれば回収可能性が大きく上がる
車両を貸した人事案により不法行為責任等個別事情による

実務上、最も効果が大きいのが勤務先に対する使用者責任(民法715条)です。事故が加害者の勤務中に発生していたのであれば、資力のある会社を相手方に加えられる可能性があります。当事務所でも、相手方が無保険で資力に乏しいことが予想された案件で、事故が勤務中に発生していた点に着目し、勤務先企業に対する使用者責任を追及する方針を採った事例があります。

また、運転者と車両の所有者が別人であるケースでは、所有者に対する責任追及を検討します。人身損害については自賠法3条の運行供用者責任という強力な根拠がありますが、物損については自賠法3条が使えないため、所有者自身の過失(管理・貸与の態様等)を主張する構成が必要になります。この点を最初に見極めておかないと、訴訟の被告を誤ることになります。

交渉・紛争処理センター・訴訟——どこで戦うか

相手が無保険の場合、手続の選び方も通常の事故とは変わります。

  • 任意交渉——相手本人と直接やり取りすることになります。連絡が取れなくなる、支払うと言ったまま履行しない、といった事態が起きやすい局面です
  • 交通事故紛争処理センター——本来は迅速・簡易な解決手段ですが、相手方が任意保険を使えない案件では機能しにくいのが実情です。相手方が手続に応じない、あっせん案が出ても資力がないため履行されない、といった問題が残ります
  • 訴訟——判決という債務名義を取得できます。相手が期日に出頭せず何の反論もしなければ、こちらの主張どおりの判決を得られる場合があります
  • 支払督促——書類審査で迅速に手続が進みますが、相手が異議を出せば通常訴訟へ移行します

当事務所の実務でも、弁護士会照会で相手方の任意保険が使えないことを確認した段階で、「紛争処理センターへの申立てはせず、訴訟提起をする」という方針判断を行った案件があります。相手方に資力の問題がある事案では、あっせんによる合意よりも、まず債務名義を確実に取ることを優先するという考え方です。

「相手と連絡が取れない」段階でも動けます

受任通知の送付、住所調査、訴訟提起まで当事務所が行います。

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判決を取っても回収できないことがある——資産調査と強制執行の現実

ここは、他のサイトではあまり書かれない部分です。勝訴判決を得ることと、実際にお金を回収することは別です。相手方に差し押さえるべき財産がなければ、判決は紙のまま終わります。

当事務所が扱った無保険事故の案件でも、物損について勝訴判決を得たものの、相手方に資産がなく最終的に回収額が0円となったものがあります。だからこそ、訴訟に進む前に「取れるのか」を調べることを重視しています。

訴訟の前後に行う資産調査

  • 住民票の取得——現住所の確定(訴状の送達先、差押えの前提)
  • 不動産登記簿の調査——相手方名義の不動産の有無、抵当権の設定状況
  • 弁護士会照会——預貯金口座の有無等について、金融機関への照会を検討します(回答は照会先の判断によります)
  • 勤務先の把握——給与債権の差押えを検討する前提となります

当事務所では、強制執行に入る前に相手方の住民票と住所地の不動産登記簿を取得して回収見込みを判断するという手順を踏むことがあります。回収可能性が乏しい相手に対して費用と時間をかけ続けることが、依頼者にとって利益にならない場面があるためです。

債務名義を得た後の手続——財産開示と第三者からの情報取得

判決等の債務名義を得た後には、民事執行法上の制度が使えます。ここで物損だけの債権と、人身損害を含む債権とでは、使える手続の範囲が違うという点は非常に重要です。

手続内容物損のみの債権で使えるか
財産開示手続(民事執行法196条以下)債務者を裁判所に呼び出し、自らの財産を開示させる。不出頭・虚偽陳述には刑事罰が定められています(同法213条)使える
預貯金債権等に関する情報取得(同法207条)金融機関から預貯金口座の情報を取得する使える
不動産に関する情報取得(同法205条)登記所から不動産の情報を取得する使える(財産開示手続の前置が必要)
給与債権に関する情報取得(同法206条)市町村・年金機構等から勤務先の情報を取得する使えない。養育費等の債権または生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者に限られます

つまり、修理費・評価損だけの物損債権では、勤務先を裁判所経由で調べる制度が使えません。一方、同じ事故でケガもされていて人身損害の債権も持っている場合には、この制度を使って給与差押えにつなげられる可能性があります。「物損だけの事故として処理してよいのか」を最初に検討する価値があるのは、このためでもあります

分割払いの合意をどう設計するか

相手方に一括で支払う資力がない場合、分割払いでの合意が現実的な選択肢になります。しかし、ただ「分割で払います」という合意書を作っても、途中で止まれば意味がありません。設計の巧拙が回収額を決めます。

  • 金額は裁判基準の上限で確定させ、支払方法だけを調整する——請求額そのものを値引きするのではなく、支払期間で調整する考え方です
  • 実現可能な月額に設定する——相手方の資力を無視した高い月額は、早期の履行遅滞を招きます。当事務所でも、相手方の申し出を踏まえて当初1年間は月額を抑え、その後増額するという段階的な設計を採用したことがあります。「途中で止まるリスク」を下げるほうが、結果的に回収総額が増える場面があります
  • 期限の利益喪失条項を入れる——一定回数の遅滞があれば残額を一括請求できるようにします
  • 強制執行認諾文言付きの公正証書にする——不履行の際に、あらためて訴訟を起こさずに強制執行へ進める余地が生まれます
  • 入金の受け皿と充当順位を決める——弁護士の預り金口座で受領し、複数の債権者(ご本人・同乗者・保険会社の求償など)がいる場合の充当順位をあらかじめ整理しておきます

高級車の物損は金額が大きいため、分割期間が数年に及ぶこともあります。「回収し続ける仕組み」まで含めて合意書を作れるかどうかが、弁護士に依頼する実益が最も大きく出る場面です。

泣き寝入りしないための初動——事故直後にやるべき5つ

図解:無保険が疑われるときの初動フロー
1 警察へ届出
交通事故証明書を取得できる状態にする
2 相手情報の確保
免許証・車検証・勤務先・連絡先を撮影で記録
3 自分の保険証券
弁護士費用特約・車両保険・人身傷害の有無を確認
4 証拠の保全
修理着手前の損傷写真・ドライブレコーダー映像
5 弁護士へ相談
回収設計を先に立ててから支払い・示談を判断する
  1. その場で相手の情報をできる限り記録する——氏名・住所・連絡先・勤務先・車両登録番号・車検証上の所有者。勤務先の情報は、後の使用者責任の追及に直結します
  2. 示談・念書のその場でのやり取りを避ける——高級車の修理費は、その場では誰にも分かりません。金額が判明する前の合意は不利に働きます
  3. 修理着手前に損傷状態を撮影する——着手後は撮り直せません。評価損の主張にも必要な資料です
  4. 自分の保険証券を確認する——弁護士費用特約・車両保険・人身傷害保険の有無と内容
  5. 保険金を受け取る前に弁護士へ相談する——受領後では選べなくなる選択肢があります
「相手が払えないと言っている」段階でご相談ください

回収設計は、示談してからでは組み直せません。

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弁護士に依頼するメリットと費用

  • 相手の保険状況を客観的に確定させる——弁護士会照会を含め、「本当に使えないのか」を確認したうえで方針を決めます
  • 請求先を増やす——運転者だけでなく、所有者・勤務先へ責任追及できないかを検討します
  • 回収可能性を先に見極める——住民票・不動産登記簿等で資産状況を調べ、費用倒れになる手続を避けます
  • 債務名義の取得と執行までを一貫して行う——訴訟・公正証書・財産開示・差押えまで手続が続きます
  • 評価損を取りこぼさない——車両保険では出ない損害を、加害者本人への請求として組み立てます
  • 費用——弁護士費用特約があれば特約から支払われます。特約がない場合も、交通事故案件は着手金0円・完全成功報酬制でお受けしています

交通事故のご相談は相談料が何度でも無料です。もっとも、事案の内容によってはご依頼をお断りすることもありますので、あらかじめご了承ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相手が任意保険に入っていません。修理費は諦めるしかないですか?

諦める必要はありません。加害者本人への請求に加え、勤務中の事故であれば勤務先への使用者責任、運転者と所有者が別であれば所有者への責任追及を検討できます。また、ご自身の車両保険や弁護士費用特約の使い方によって、実質的な回収額が変わります。まずは相手の保険状況とご自身の保険内容を確認するところから始めてください。

Q2. 政府保障事業を使えば修理費は出ますか?

出ません。政府保障事業は、ひき逃げや無保険車による事故の人身損害を対象とする制度であり、車両の修理費や評価損などの物的損害は対象外です。同様に、無保険車傷害保険も死亡または後遺障害が生じた場合を対象とするのが一般的で、物損には使えません。

Q3. 相手の対物保険の上限が500万円で、修理費がそれを超えています。

上限までは相手方保険会社が支払い、超過分は加害者本人への請求となります。この場合、保険会社との交渉と、加害者本人からの回収という2本立ての対応が必要です。高級車では、修理費に評価損・代車費用を加えると上限を超えることが珍しくありません。上限を超えることが見込まれる段階でご相談いただくのが有効です。

Q4. 自分の車両保険を使うと損ですか?

一概には言えません。等級ダウンによる保険料の増加、免責金額、協定保険価額の上限と、回収の不確実性を移せるメリットを比較して判断します。ただし、車両保険では評価損が原則として支払われない点は必ず押さえてください。車両保険で修理費を賄った場合でも、評価損は加害者本人への請求として残ります。

Q5. 相手が「保険を使う」と言っていたのに、後から使えないと言われました。

運転者限定特約・年齢条件などに違反していて保険が適用されない、というケースがあります。この事実は交渉が進んでから判明することも多く、そのまま時間が経過すると時効が問題になります。相手方の説明が変わった時点で、保険の適用関係を客観的に確認する必要があります。

Q6. 相手が分割払いを申し出ています。応じてよいですか?

分割自体は現実的な選択肢ですが、合意書の作り方が重要です。期限の利益喪失条項、強制執行認諾文言付きの公正証書化、支払遅滞時の対応、入金の受け皿と充当順位——これらを設計しないまま合意すると、途中で支払いが止まったときに打つ手が限られます。合意前にご相談ください。

Q7. 判決を取っても払ってもらえないことはありますか?

あります。差し押さえるべき財産がなければ、判決があっても現実の回収には至りません。当事務所でも、物損について勝訴判決を得ながら、相手方に資産がなく回収に至らなかった案件があります。だからこそ、訴訟に進む前の資産調査と、回収手段(財産開示手続・第三者からの情報取得手続・差押え)を含めた設計が重要になります。

Q8. 物損の請求に期限はありますか?

物損の損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年で時効にかかります(民法724条1号)。人の生命・身体の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権については、同じ主観的起算点からの期間が5年に延長されていますが(民法724条の2)、これは人身損害についての特則であり、物損部分は3年のままです。相手との交渉が長引いている間も期間は進行しますので、早めのご相談をおすすめします。

まとめ

  • 「無保険」は完全無保険/対物上限/限定特約違反の3型。型を確定させないと打つ手を誤る
  • 政府保障事業・無保険車傷害保険・自賠法3条は、いずれも物損には使えない
  • 請求先は運転者だけではない。勤務先の使用者責任、所有者の責任を検討する
  • ご自身の車両保険では評価損は原則として支払われない。格落ち損は加害者本人への請求として残る
  • 弁護士費用特約は、相手が無保険でも、物損のみでも使えるのが一般的
  • 判決=回収ではない。資産調査と執行までを設計してから動く
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監修弁護士

執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士
弁護士法人ブライト 弁護士。大阪弁護士会所属。交通事故案件を担当。

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士
弁護士法人ブライト 代表弁護士。大阪弁護士会所属。顧問先140社の実績。

本記事は、当事務所が実際に取り扱った無保険加害者に対する回収案件(弁護士会照会による保険適用関係の確定、使用者責任・運行供用者責任の追及、勝訴判決後の資産調査と強制執行、分割払い合意の設計など)で問題となった論点をもとに構成しています。個別の事案については結論が異なりますので、具体的な判断は個別にご相談ください。

  • この記事を書いた人

代表弁護士:和氣 良浩

弁護士法人ブライト代表弁護士: 2006年に独立開業してから交通事故被害の回復に努めてきました。これまで1000件を超える交通事故を解決して参りましたが、被害者が低い賠償金で納得させられているケースをたくさん見てきました。 一人でも多くの被害者が適切な補償を受けられるように情報発信を行っています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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交通事故担当弁護士

  • 代表弁護士 和氣良浩

    代表弁護士 和氣良浩
             

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事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-927-113(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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