交通事故で車が損傷し、修理後に「評価損(格落ち損)を請求したい」と保険会社に申し出たところ、「評価損は認めません」「うちの基準には評価損という項目がありません」と言われた——そのような相談が弁護士法人ブライトには後を絶ちません。
結論から言えば、保険会社に拒否されても評価損の請求を諦める必要はありません。保険会社の「支払えない」は「法律上支払義務がない」ではなく、「自社の任意保険支払基準の対象外」という意味にすぎないからです。
- 保険会社が評価損を拒否する理由は「任意保険の支払基準に項目がない」から——法律上の義務とは別問題
- 裁判例では修理費の10〜50%の評価損が認定されている(園部厚著『交通事故物的損害の認定の実際』・赤い本2026年版下巻参照)
- 弁護士が裁判例を根拠に交渉・訴訟することで評価損が認められた事例が多数存在する
- 弁護士が訴訟・訴訟前提交渉を行うことで遅延損害金(事故日から年3%)+弁護士費用相当額(訴訟認容額の約1割)も請求対象になる
- 高級車・外車ほど評価損が高額になり、拒否された場合の損失が大きい
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なぜ保険会社は評価損を拒否するのか
理由1:任意保険の支払基準に「評価損」という項目がない
任意保険会社は、社内の「支払基準」に従って損害を算定します。修理費・代車費用・レッカー費用など物損の主要項目は明記されていますが、評価損(格落ち損)はほとんどの任意保険会社の社内基準に存在しないか、極めて限定的にしか認められない扱いです。保険会社の担当者が「評価損は払えない」と言うとき、それは「自社基準の対象外」という社内ルールを言っているだけであり、民法や裁判例が評価損の請求を認めていないということとは全く別の話です。
理由2:「裁判をしなければ払わない」という実務慣行
評価損は、示談交渉の段階では保険会社が頑として支払わず、弁護士が裁判例を示して法的請求をする、または実際に訴訟を提起するか訴訟前提の交渉をすることで初めて動く損害項目です。個人が交渉してくる段階では「評価損は基準外」という対応を続けます。弁護士が介入した時点で初めて、保険会社が評価損の支払いを検討するケースが多くあります。
理由3:評価損の存在自体を相手方に知らせる義務がない
保険会社には、被害者に「評価損という損害項目が存在する」と教える義務はありません。請求しなければ0円のまま示談が終わります。評価損を知らないままサインした示談書で「全損害について精算済み」として後から請求できなくなるケースが多数あります。
評価損は、示談書で「全損害について精算済み」と合意した後は原則として請求できなくなります。示談提示を受けたら、必ず弁護士に相談してからサインしてください。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(通話料無料・平日9:00〜18:00)
初回相談無料・着手金0円・完全成功報酬制。LINEでのご相談も受け付けています。
評価損とは何か——2種類の評価損と「取引上の評価損」が争点になる理由
評価損(格落ち損)には、①技術上の評価損と②取引上の評価損の2種類があります(赤い本2026年版下巻・満田智彦裁判官講演録参照)。
- 技術上の評価損:修理しても機能・外観に何らかの欠陥が残存するために生じる評価損
- 取引上の評価損:修理により外見上の欠陥は残存しないものの、事故歴・修理歴があることにより中古市場での交換価値が下がることで生じる評価損
保険会社との争点になるのは、ほぼ例外なく②取引上の評価損です。赤い本2026年版下巻(満田智彦裁判官講演録)では、現在の実務において取引上の評価損を一定の場合に肯定する見解が多数であり、「評価損全体を否定するような裁判例は見当たらず、実務は肯定説で運用されている」と整理されています。
保険会社に拒否されても請求できる根拠——裁判例の蓄積
評価損が裁判例上認められていることは、専門書に収録された多数の判決から明らかです(出典:園部厚著『交通事故物的損害の認定の実際』・赤い本2026年版下巻)。
高級外車での評価損認定裁判例
| 裁判例 | 車種・状況 | 認定額・割合 |
|---|---|---|
| 京都地判平18・9・22(自保ジャーナル1678号12頁) | メルセデス・ベンツCL600(購入価格1774万5000円)・初度登録から約4年半・走行約4万7741km・骨格損傷なし | 修理費の30%(51万7230円) |
| 京都地判平11・7・6(自保ジャーナル1328号3頁) | メルセデス・ベンツE320・新規登録から1年未満・走行4000〜5000km | 車両価格650万円の1割(約65万円) |
| 東京地判平18・1・24(交民集39巻1号70頁) | BMW735i・初度登録から約4か月・骨格本質的構造部分の損傷なし | 修理費の3割(53万8524円) |
| 大阪高判平21・1・30(判時2049号30頁) | ポルシェカレラ911(購入価格約1600万円)・初度登録後4か月余り | 150万円 |
| 東京地判平23・3・29(判タ1375号164頁・自保ジャーナル1850号81頁) | 外国車・新車登録後4か月・走行2856km・修理費713万6800円 | 修理費の3割程度(214万1040円) |
| 大阪地判平25・3・22(自保ジャーナル1905号157頁) | ロールスロイス・ファントム(購入価格3530万円)・初度登録から約2年10か月 | 修理費の約3割(105万円) |
| 大阪地判平25・6・14(自保ジャーナル1910号164頁) | ランボルギーニ・ディアブロGT(新車価格3700万円・生産80台の限定車)・初度登録から約10年 | 修理費の3割(36万円) |
国産高級車での認定裁判例
| 裁判例 | 車種・状況 | 認定額・割合 |
|---|---|---|
| 大阪地判平24・10・16(交民集45巻5号1261頁) | レクサスLS(初度登録後5か月・走行1万km未満・骨格部位損傷) | 修理費の40%(40万8525円) |
| 東京地判平23・11・25(自保ジャーナル1864号165頁) | 日産スカイラインGTRプレミアムエディション(本体価格834万7500円)・初度登録から3か月・走行945km | 修理費の50%(70万7739円) |
ランボルギーニ・ディアブロGTのように初度登録から約10年の車両でも、生産台数80台の希少限定車として評価損が認定されました。高級車・希少車では年式だけで諦めてはいけません。
評価損を拒否されている方は、弁護士法人ブライトにご相談ください。裁判例の検討から対応策の提示まで、初回無料です。
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評価損が認められやすい車と認められにくい車——判断基準の4要素
赤い本2026年版下巻(満田智彦裁判官講演録)では、平成31年以降の裁判例約90件を分析した結果として、評価損の算定における主な考慮要素が整理されています。
要素1:初度登録からの期間
- 2年以内:修理費30%以上の評価損が認められることがある
- 2年超〜3年以内:修理費30%以上は認められにくくなる
- 3年超〜5年以内:修理費20%以上は認められにくくなる傾向
- 5年超(外国車・国産人気車種)または3年超(その他国産車):否定例が大多数
- 7年(84か月)超:クラシックカーを除いて原則否定
要素2:走行距離
- 2万km以内:修理費30%以上が認められることがある
- 2万km超〜3万km以内:修理費30%以上は認められにくくなる
- 4万km超:否定されるものが多数
- 9万km超:ほぼ全て否定
要素3:車種・購入価格・中古市場での価値
高級外車や国産人気高額車種は、中古市場での評価が高く、事故歴による価値低下が大きいため評価損が認められやすい傾向があります。前述のベンツCL600の裁判例(京都地判平18・9・22)では、初度登録から約4年半・走行約4万7741kmという「認められにくい」条件でも、正規本体購入価格1774万5000円の高級輸入車であることを考慮して修理費30%が認定されています。
要素4:損傷の部位・程度
車体の骨格部分(フレーム等)に損傷が及んでいる場合は認められやすいですが、赤い本2026年版下巻の分析では「骨格部分等に損傷が生じていないにもかかわらず評価損の発生を認めている裁判例が多数あった」とされており、骨格損傷がないことが評価損を否定する唯一の条件ではないことが確認されています。
評価損の算定方法——4つのアプローチと裁判例の主流
- ①減価方式:事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額を損害とする方法
- ②時価基準方式:事故当時の車両価格の一定割合を損害とする方法
- ③金額表示方式:車種・使用期間・被害の内容・程度・修理費用等の諸般の事情を考慮して金額で示す方法
- ④修理費基準方式:修理費の一定割合を損害とする方法(裁判例では圧倒的多数)
裁判例では④修理費基準方式が圧倒的多数です(赤い本2026年版下巻・満田智彦裁判官講演録)。弁護士が評価損を請求する場合も、修理費の一定割合(10〜30%が多い)を根拠に交渉・訴訟を行うことが一般的です。
個人では勝てない構造——評価損請求に弁護士が不可欠な3つの理由
理由1:裁判例を根拠にした法的請求ができない
保険会社の担当者は「社内基準」を盾にします。これに対抗するには、「裁判例上、あなたの会社の基準にかかわらず評価損は損害として認められている」という法的根拠を示し、具体的な裁判例を引用して交渉する必要があります。弁護士でなければこの交渉は実質的に不可能です。
理由2:訴訟提起のリアリティがなければ保険会社は動かない
保険会社が示談段階で評価損を支払わない最大の理由は、「個人が本当に訴訟を起こすかどうか分からない」という読みがあるからです。弁護士が介入した時点で「訴訟を前提とした交渉」の現実味が増し、保険会社が評価損の支払いを検討するケースが多くあります。
理由3:査定協会証明書だけでは不十分——法的構成が必要
評価損の証拠として一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)の「事故減価額証明書」を取得することがあります。ただし、赤い本2026年版下巻(満田智彦裁判官講演録)では、査定協会の証明書について「証拠として提出されることも多いが、その評価根拠等が必ずしも明らかでないとして採用せず、評価損を認めない事例もある」と整理されています(東京地判平18・7・31(平18(ワ)33328)判例秘書参照)。証明書だけに頼らず、弁護士が裁判例と法的構成を組み合わせて主張することが重要です。
弁護士が訴訟・訴訟前提の和解で請求すると、評価損に加えて以下が上乗せされます。
- 遅延損害金:事故日から年3%(現行民法の法定利率)。示談では保険会社は計上しない
- 弁護士費用相当損害金:認容額の約1割。高額物損や人身損害が併存する案件では認められやすい
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対処手順——評価損を拒否されてからの具体的なステップ
ステップ1:示談書にサインしない
評価損が含まれていない示談書にはサインしないでください。示談書の「全損害について精算済み」という文言によって、後から評価損を請求する権利を失います。
ステップ2:証拠を確保する
- 車検証(初度登録年月・車種・型式)
- 修理見積書・修理明細書(修理費の算定根拠)
- 損傷箇所の写真(骨格部分への影響を示す資料)
- 走行距離の記録(車検記録・整備記録)
- 査定書(日本自動車査定協会等による事故減価額証明書)
ステップ3:弁護士に相談し、法的請求を依頼する
- 裁判例の選定と法的請求書の作成:車種・年式・走行距離・損傷部位を踏まえ、類似裁判例を根拠に評価損の金額を算定して請求
- 訴訟前提の和解交渉:この段階で遅延損害金と弁護士費用相当額も交渉対象になる
- 訴訟提起:和解が成立しない場合は訴訟。判決では評価損・遅延損害金・弁護士費用相当額が認容されることがある
弁護士費用特約(弁特)がある場合の注意点——精算の仕組み
評価損請求で弁護士費用特約を使う場合、訴訟や和解で相手方から弁護士費用相当額が支払われたときは、特約保険会社との間で精算(返金・控除)が必要になることがあります。弁護士費用特約と弁護士費用相当損害金を二重に受け取ることはできません。
弁護士費用特約をご利用の場合、判決や和解で相手方から弁護士費用相当額が支払われたときは、特約保険会社との間で精算(返金・控除)が必要になることがあります。一方、遅延損害金は誰でも純増となり、精算の対象にはなりません。詳しくはご相談ください。
弁護士費用特約の仕組みや高級車・外車での物損での活用については以下もご参照ください。
高級車ほど評価損拒否の損失が大きい——クラスター別詳細
評価損を保険会社に拒否されて放置した場合の損失額は、車両の価格・年式・損傷程度によって大きく変わります。高級車・外車の場合、修理費の20〜30%の評価損が認定されることがあるため、損失額は数十万円から150万円を超えることもあります。
弁護士法人ブライト 交通事故専門チームの強み
- 交通事故主任:松本洋明弁護士(修習63期・登録2010年)が主担当。評価損・物損事案の経験多数
- 代表:和氣良浩弁護士が監修。弁護士歴20年以上・顧問先130社以上の実名公開
- チーム全体の弁護士歴平均14年以上
- 労災連携:笹野皓平弁護士(64期・労災部部長)が通勤災害×交通事故の複合案件に対応
- 着手金0円・完全成功報酬制(交通事故)
保険会社に評価損を拒否されても、諦める必要はありません。弁護士法人ブライトが裁判例を根拠に交渉・訴訟で評価損の回収を図ります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 保険会社に「評価損は認めません」と言われましたが、本当に請求できないのですか?
諦める必要はありません。保険会社の「認めない」は社内の任意保険基準の話であり、民法・裁判例上の請求権とは別問題です。弁護士が裁判例を根拠に請求することで、評価損が認められた事例は多数あります。
Q2. 修理が終わってしまってから評価損を請求できますか?
はい、可能です。修理明細書・車検証・走行距離の記録があれば、修理後でも評価損の根拠を組み立てることができます。ただし示談書にサインした後は原則として請求できなくなりますので、示談前にご相談ください。
Q3. 骨格(フレーム)損傷がなかった場合でも評価損を請求できますか?
はい。赤い本2026年版下巻の実務分析では、骨格部分等に損傷が生じていないにもかかわらず評価損の発生を認めている裁判例が多数確認されています。ベンツCL600の裁判例でも骨格損傷なしで修理費30%の評価損が認定されています。
Q4. 査定協会(JAAI)の事故減価額証明書を取れば評価損は認められますか?
査定協会の証明書は評価損の証拠として提出されることが多いですが、裁判例上、評価根拠が不明確として採用されなかった事例もあります。証明書だけに頼らず、弁護士が裁判例と法的構成を組み合わせて主張することが重要です。
Q5. 評価損の物損請求の時効はいつですか?
物損の損害賠償請求権の時効は、損害および加害者を知った時から3年です(民法724条)。なお、人身傷害部分は改正民法724条の2により知った時から5年に延長されていますが、物損部分は3年のままです。事故から3年以内にご相談ください。
Q6. 弁護士費用特約がない場合でも依頼できますか?
はい。弁護士法人ブライトでは、交通事故案件について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。評価損が認容された場合、訴訟・訴訟前提の和解では弁護士費用相当損害金(認容額の約1割)が上乗せされることがあります。
Q7. 相手方が任意保険未加入の場合でも評価損を請求できますか?
自賠責保険は人身損害のみを対象としており、物損(評価損・修理費)は対象外です。相手方が任意保険未加入の場合は加害者本人に直接請求することになります。弁護士が交渉・訴訟を行うことで回収を図りますが、相手方の資力が問題になることもあります。詳しくはご相談ください。
監修弁護士
執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士
弁護士法人ブライト 交通事故主任。大阪弁護士会所属。登録2010年・修習63期。
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士
弁護士法人ブライト 代表弁護士。大阪弁護士会所属。弁護士歴20年以上。顧問先130社以上の実名公開。




