【執筆】松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士
修習63期・大阪弁護士会/弁護士法人ブライト 交通事故部 主任弁護士
【監修】和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士
弁護士法人ブライト 代表弁護士
この記事を読んでわかること
- 水上バイク(ジェットスキー)・モーターボート事故には自賠責保険が使えないという現実
- 一般的な個人賠償責任保険が船舶事故では免責になることが多い実務上の注意点
- それでも賠償を回収できる可能性がある手段(施設賠償責任保険・任意の船舶保険等)
- 事故直後にすべき証拠保全の具体的な方法
- 早期に弁護士へ相談すべき理由
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目次
1. 水上バイク・ジェットスキー事故の特殊性——自動車事故と何が違うか
水上バイク(ジェットスキー)・モーターボートは、自動車と同様に人身傷害を引き起こす事故が発生し得る乗り物です。しかし、自動車には必ず加入が義務付けられている自賠責保険があるのに対し、水上バイク・モーターボートにはこれに相当する強制保険制度がありません。
さらに、被害者側・加害者側それぞれが加入している「個人賠償責任保険」(自動車保険や火災保険・傷害保険等に付帯していることが多い保険)についても、船舶に関する事故は免責(補償対象外)とされていることが多いという実務上の落とし穴があります。この記事では、水上バイク・モーターボート事故で実際に賠償を回収するための考え方を整理します。

2. 自賠責保険は使えない、という現実
自賠責保険は「自動車損害賠償保障法」に基づく制度であり、対象は同法が定める「自動車」(原動機付自転車を含む)に限られます。水上バイク・モーターボートなどの船舶は、この法律上の「自動車」には該当しないため、自賠責保険の適用対象外です。
そのため、交通事故のように「まず自賠責保険に被害者請求をして、最低限の補償を確保する」という選択肢自体が存在しません。加害者側の資力・保険加入状況次第で、回収できる金額が大きく変わってしまう構造になっています。
3. 個人賠償責任保険がなぜ使えないことが多いのか
自動車保険の特約、火災保険、傷害保険等に付帯している「個人賠償責任保険」は、日常生活における偶然の事故で他人にケガをさせた場合の賠償をカバーする保険です。自転車事故等では広く活用されていますが、水上バイク・モーターボート等の「船舶の所有・使用・管理に起因する事故」を免責事由として定めている約款が多く見られます。
これは、船舶の運航にはより専門的な保険(船舶保険・小型船舶用の賠償責任保険等)への加入が別途想定されているためと考えられます。ただし、免責の範囲・要件は保険会社・商品ごとに異なり、加入している保険の約款によっては適用される場合もあり得ます。「うちの保険は入っているから大丈夫」と思い込まず、必ず保険証券・約款を確認するか、弁護士・保険会社に確認することが重要です。
自転車事故における「ファミリーバイク特約」の適用除外が問題になった実例のように、レジャー・乗り物に関する保険は「入っているつもりが対象外だった」というケースが起こりやすい分野です。
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4. それでも回収できる可能性がある手段
自賠責保険・個人賠償責任保険が使えない場合でも、次のような手段で回収できる可能性があります。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| マリンレジャー免許保険 | 小型船舶操縦免許の取得者向けに用意されている賠償責任保険。加入していれば対人・対物賠償に使える場合があります |
| 施設・レンタル業者の賠償責任保険 | レンタルショップ・マリンスクール等が事業として加入している保険。指導・管理体制に問題があった場合、施設側の責任として請求できる場合があります |
| 任意で加入していた船舶保険 | 対人・対物賠償特約が付帯していれば、その範囲で使える場合があります |
| 加害者本人への直接請求 | 保険が使えない場合、加害者個人の資力に応じた分割弁済交渉・訴訟による回収を目指します |
どの手段が使えるかは、事故の態様(誰が運転していたか、施設のレンタル艇か個人所有艇か等)と加入保険の内容によって大きく変わります。早い段階で弁護士が保険関係を整理することで、回収できる可能性のある選択肢を漏れなく検討できます。
5. 事故直後にすべきこと——証拠保全
水上バイク・モーターボート事故は、自動車事故と異なりドライブレコーダーのような客観的記録が残っていないことが多く、証拠保全の重要性がより高くなります。
- 加害者の氏名・連絡先・レンタルの場合は借主名・業者名
- 使用していた艇の所有者(個人所有かレンタルか)
- 加入していた保険の種類(分かる範囲で保険会社名・証券番号)
- 目撃者(同乗者・周囲で見ていた人)の連絡先
- 受傷部位・状況の写真、受診した医療機機関名
- 事故現場(水域・天候・当時の状況)のメモ・写真
特に「艇の所有者は誰か」「保険に加入していたか」は、後の回収可能性を左右する重要な情報です。事故直後の混乱の中では聞き取りにくい部分もありますが、可能な範囲で確認し、記録しておくことをおすすめします。
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6. 加害者が個人の場合の回収可能性
加害者が個人(友人・知人・見知らぬ利用者等)の場合、まず確認すべきは個人賠償責任保険への加入の有無です。前述のとおり船舶事故を免責とする約款が多いものの、加入している保険の内容次第では対象になる場合もあります。保険が使えない場合は、加害者本人の資力に応じた直接請求・分割弁済交渉・訴訟という流れになります。
弁護士法人ブライトでは、個人賠償責任保険の加入が確認できるケース、または骨折以上の重篤な受傷であるケースを中心に、事件処理の見通しを丁寧にご説明したうえでご依頼をお受けしています。保険が使えるかどうか分からない段階でも、まずは無料相談でご確認いただけます。
7. 事業者(レンタル・スクール)が絡む場合の請求方法
レンタルショップ所有の艇を借りて事故が起きた場合や、マリンスクールの指導中に事故が起きた場合は、運転者個人だけでなく、レンタル業者・スクール側の管理者責任(点検整備の不備・指導体制の不備等)を問える可能性があります。事業者は一般的に施設賠償責任保険に加入していることが多く、個人加害者のみの場合より回収可能性が高いと考えられます。
この点は、遊覧船・クルージング船事故における運航会社への請求と共通する考え方です。事業者が関与している事故かどうかは、賠償請求の設計において重要な分かれ目になります。
8. 請求できる損害費目
賠償責任が認められる場合、一般的な人身傷害と同様に次の損害費目を請求できます。
- 治療費・通院交通費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料・逸失利益
- 破損した所持品(水中カメラ・ウェアラブル機器等)の物損
水上バイク・モーターボート事故には自賠責保険自体が存在しないため、交通事故のような「自賠責基準」はそのままでは当てはまりません。もっとも、保険会社は独自の低い算定基準(任意保険基準相当の考え方)で提示してくることが一般的です。弁護士が代理人として交渉する場合には、裁判例に基づいた「弁護士基準(裁判基準)」に近い金額での解決を目指します。
9. 後遺障害が残った場合
水上バイク・モーターボート事故では、転倒・衝突による骨折(足関節・手首等)が典型的な受傷パターンです。骨折後に可動域制限・変形・神経症状等が残った場合は、後遺障害等級(1級〜14級の考え方)に応じた慰謝料・逸失利益を請求できる場合があります。
ただし、水上バイク・モーターボート事故には、交通事故における「自賠責保険の後遺障害等級認定」のような公的な認定機関は存在しません。そのため、医師の診断書や画像所見等の医学的証拠に基づき、交通事故の等級認定基準を参考にしながら、どの程度の後遺障害に相当するかを個別に立証していく必要があります。部位別の等級認定基準については、下記の詳細記事もご参照ください。
10. 早期に弁護士へ相談すべき理由
水上バイク・モーターボート事故は、①証拠(艇の所有者・保険加入状況・目撃者)が失われやすいこと、②適用される保険が複数の可能性の中から絞り込む必要があること、③時効の管理が必要であることから、交通事故以上に早期の弁護士相談が重要です。
賠償請求の時効は、2020年4月1日以降に発生した人身傷害については、損害及び加害者を知った時から5年間が原則です(改正民法724条の2)。時間が経つほど証拠は失われ、保険の確認も難しくなるため、事故後できるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。
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11. 関連記事への案内
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12. よくある質問(FAQ)
Q1. 水上バイク事故に自賠責保険は使えないのですか?
使えません。自賠責保険は自動車損害賠償保障法上の「自動車」を対象とする制度であり、水上バイク・モーターボート等の船舶は対象外です。そもそも船舶を対象とした自賠責保険の仕組み自体が存在しないため、加害者が任意の保険に加入していない場合、回収は加害者本人への直接請求が中心になります。
Q2. 相手が個人賠償責任保険に入っていれば安心ですか?
一概には言えません。個人賠償責任保険の多くは、船舶の所有・使用・管理に起因する事故を免責事由としていることが多いためです。約款の内容を確認する必要があります。
Q3. 保険が使えない場合、賠償はあきらめるしかないのですか?
あきらめる必要はありません。施設・レンタル業者の賠償責任保険、任意で加入していた船舶保険、加害者本人への直接請求など、複数の回収手段を検討できます。まずは弁護士にご相談ください。
Q4. レンタル艇での事故の場合、誰に請求すればよいですか?
運転していた個人だけでなく、点検整備・指導体制に不備があった場合はレンタル業者・スクール側の管理者責任を問える可能性があります。事案ごとの確認が必要です。
Q5. 賠償請求の時効はいつまでですか?
2020年4月1日以降に発生した人身傷害については、損害及び加害者を知った時から原則5年間です(改正民法724条の2)。物損部分は3年が原則です。
Q6. 弁護士に依頼するといくらかかりますか?
弁護士費用特約があれば実質0円です。特約がない場合も、着手金0円・完全成功報酬制でご依頼いただけます。
Q7. どのタイミングで弁護士に相談すればよいですか?
できるだけ早いタイミングをおすすめします。艇の所有者・保険加入状況・目撃者の記憶は時間の経過とともに確認が難しくなるためです。
13. まとめ
- 水上バイク・モーターボート事故には自賠責保険が使えないという現実がある
- 一般的な個人賠償責任保険も、船舶事故を免責とする約款が多く見られる
- それでもマリンレジャー免許保険・施設の賠償責任保険・任意の船舶保険等で回収できる場合がある
- 艇の所有者・保険加入状況・目撃者の情報は事故直後の証拠保全が重要
- レンタル業者・スクールが絡む場合は事業者側の管理者責任を問える可能性がある
- 賠償請求の時効は人身傷害について原則5年(2020年4月1日以降の事故)
- 弁護士費用特約があれば実質0円、なくても着手金0円で相談可能
水上バイク・ジェットスキー事故でケガをされた方へ
「保険が使えるか分からない」段階からご相談いただけます。
相談料は何度でも無料・着手金0円・完全成功報酬制で安心してご依頼いただけます。
フリーダイヤル:0120-927-113(交通事故専用・24時間受付)
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この記事の監修者
松本 洋明(まつもと ひろあき)
弁護士法人ブライト 交通事故事業部主任
司法修習63期(2010年登録)
交通事故・レジャー事故による人身傷害の損害賠償請求を多数担当。




