執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士|弁護士法人ブライト 大阪弁護士会
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士|弁護士法人ブライト代表 大阪弁護士会
本記事で紹介する事例は、当事務所が取り扱った事案を再構成した解説です。ご依頼者の属性・金額・事故場所・時期等は実際の事案と異なります。特定の事件についての見解を示すものではありません。
【結論】ドラレコは「過失割合を決める証拠」ではなく「争える材料」です
- ドラレコ映像があっても、過失割合が自動的に決まるわけではありません。当事務所の経験上、同じ映像を見ても、保険会社の提示と弁護士の見立てが1〜2割ずれることは珍しくありません。
- 弁護士が映像から読み取るのは、合図・減速・一時停止・速度・位置関係・死角・事故前後の7点です。この7点の読み方で基本の割合も修正も変わります。
- 映像でいちばん結論を左右するのは「この事故をどの類型として扱うか」という入口の判断です。ここを外すと、細かい主張をいくら積んでも戻せません。
- 映像は、示談に同意(署名)する前に、弁護士にご覧に入れてください。示談書に署名した後では、映像があっても原則として覆せません。
- 弁護士費用特約があれば費用の自己負担はほぼ発生しません。特約がない場合も着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。
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目次
- ドラレコがあれば過失割合は決まる、とは限らない
- 弁護士が最初にやるのは「秒単位の時系列に並べ直す」こと
- ポイント①合図(ウインカー)――「何秒前に出したか」で結論が動く
- ポイント②減速したか――同じ映像で20:80にも30:70にもなる
- ポイント③一時停止――「止まった」だけでは足りない
- ポイント④速度――映像に映らない速度を音と背景から詰める
- ポイント⑤位置関係――どちらが先にそこにいたか
- ポイント⑥映っていないもの――ドラレコの死角と防犯カメラ
- ポイント⑦事故の前後――映像は衝突の瞬間だけではない
- 映像を「事故類型」に当てはめる作業が、過失割合の本体
- ドラレコがあると、交渉と裁判はこう変わる
- ドラレコがない場合はどうなるか
- 弁護士に映像を見せるときにご用意いただきたいもの
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
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事故の映像を当事務所の診断ページに入れると、約1分で事故の状況を整理し、裁判実務の基準にあてはめた基本の過失割合と、弁護士が注目するポイント・事故の概略図を画面に表示します。お名前や連絡先の入力は不要で、動画は解析後ただちに削除されます。
ドラレコがあれば過失割合は決まる、とは限らない
「ドラレコが付いていたので、過失割合は問題なく決まると思っていました」——ご相談でいちばんよく聞く言葉です。ところが実際には、映像があるのに保険会社の提示に納得できず、そこから交渉が動かなくなるケースがたくさんあります。
理由はシンプルです。ドラレコが記録しているのは「何が起きたか」であって、「どちらがどれだけ悪いか」ではないからです。過失割合は、映像から確定した事実を、事故類型ごとの実務基準に当てはめて初めて出てきます。この「当てはめ」の部分は評価であって、映像だけでは決まりません。
実際、当事務所が扱った事案でも、こういうことが起きています。相手方が一時停止線でいったん停止していたことは映像から明らかで、その点だけを見れば当方に不利です。しかし同じ映像から「相手方は右方をほとんど確認しないまま右折を開始している」ことも読み取れました。前者だけを取り上げれば当方の過失は10%加算され、後者を主張すれば5〜10%減算されます。映像は同じでも、どこを切り取って主張するかで20%近く動くということです。
ですから、ドラレコをお持ちの方にお伝えしたいのは「映像があるから安心」ではなく、「映像があるからこそ、読み方で結果が変わる」ということです。この記事では、私たちが実際に映像を見るときに何をどの順で確認しているのかを、具体的に説明します。
| ドラレコが決めるもの(事実) | ドラレコが決めないもの(評価) |
|---|---|
| 信号の色、ウインカーの点灯タイミング、停止の有無 | その停止が「一時停止義務を果たした」と評価できるか |
| 接触までの秒数、車両の位置関係 | この事故をどの事故類型として扱うか |
| 天候・路面・見通し・時間帯 | 見通しの悪さを修正要素として何%評価するか |
| 急ブレーキ・急ハンドルの有無 | その回避行動が「結果回避可能性」を基礎づけるか |
映像を見ながら、いまの提示が妥当か一緒に確認します
「この映像だと何割になりますか」というご相談から承っています。
交通事故専用フリーダイヤル・相談は無料/平日9:00〜18:00(土日要予約)
弁護士が最初にやるのは「秒単位の時系列に並べ直す」こと
弁護士が最初にやるのは、映像を通しで眺めることではありません。衝突の瞬間を0秒として、そこから逆算して秒単位の時系列表を作る作業です。多くのドラレコは映像の隅にタイムコードを表示していますし、なくてもコマ送りで秒数は特定できます。
なぜ秒単位かというと、過失割合の議論はほぼすべて「その瞬間、相手は何をしていて、こちらは何ができたか」という形で戦われるからです。「危なかった」「急に出てきた」という感覚的な言葉は、示談交渉では通りません。「相手車がウインカーを点灯したのは衝突の3秒前」「当方が制動を開始したのは1.2秒前」という数字にして初めて主張になります。
| 衝突からの秒数 | 相手車の動き | 当方の動き | この事実が効く論点 |
|---|---|---|---|
| -5.0秒 | 第3車線を走行 | 第2車線を走行 | どちらが先にその車線にいたか |
| -3.0秒 | 左ウインカー点灯 | 変化なし | 合図の有無・タイミング(修正要素) |
| -2.0秒 | 緩やかに進路変更開始 | 変化なし | 「急な」進路変更かどうか |
| -1.2秒 | 進路変更継続 | 制動開始・警音器なし | 結果回避可能性・こちらの落ち度 |
| 0秒 | 接触 | 接触 | 接触部位=事故態様の確定 |
この表を作ると、それまで「相手が急に入ってきた」としか言えなかったものが、「相手は3秒前に合図を出しており、進路変更の態様も緩やかだった。むしろ当方が車線をキープしたまま速度を維持していた」という、まったく違う絵に見えてくることがあります。逆もまた同じです。時系列表は、こちらに有利な事実だけでなく不利な事実も同時に見える化します。不利な事実を先に把握しておくことが、後で述べる「映像を出すかどうか」の判断につながります。
ポイント①合図(ウインカー)――「何秒前に出したか」で結論が動く
合図——ウインカーです。進路変更、右左折、転回が絡む事故では、ここが最初の勝負どころになります。
道路交通法は、進路変更をしようとするときはその行為をしようとする時の3秒前に合図を出し、進路変更が終わるまで合図を続けることを求めています(同法53条、同法施行令21条)。右左折の場合は交差点の手前30メートルの地点に達したときです。この「3秒前」という数字が、そのままドラレコ映像の検証項目になります。
当事務所が扱った事案では、相手車がウインカーを出さないまま進路変更してきたことが映像から明白で、この点を修正要素として主張し、基本の割合から20%を動かして「当方10:相手方90」という主張を組み立てました。逆に、こちらが進路変更した側になった事案もあります。一審判決が「急に進路変更した」と認定したのに対し、当事務所は、映像上、合図は進路変更のかなり前から出ており、進路変更の態様も緩やかであったと主張して控訴しました。もっとも、控訴審でも裁判所の見方は大きくは変わらず、最終的には金額面での和解に至っています。
見ていただきたいのは、この2つが同じ「ウインカー」という論点でありながら、立場によって攻守が入れ替わるという点、そして映像上の事実を主張できたからといって、必ずその主張が通るわけではないという点です。だからこそ、ご自身の映像でウインカーがいつ点いているかは、交渉に入る前に必ず確認しておく必要があります。
実務のポイント:ドラレコのフレームレートによっては、ウインカーの点滅周期と映像のコマが干渉して「点いているのに映像では消えて見える」ことがあります。1回の点滅だけで判断せず、数周期にわたって確認します。
ポイント②減速したか――同じ映像で20:80にも30:70にもなる
見通しの悪い交差点や、一時停止規制のある交差点での出会い頭事故では、「双方が減速していたか」が過失割合を直接動かします。実務基準では、交差する道路の一方または双方が減速していたかどうかによって、基本の割合そのものが別の枠に分かれています。
当事務所で検討した事案を再構成してご説明します。相手車は一時停止したものの、こちらの接近に気づかないまま交差点へ進入していた、という事故です。保険会社は一定の割合を提示してきましたが、当事務所の見立てでは、訴訟になれば「こちらが減速せず・相手方が減速した」という枠で判断され、示談段階の提示より1割ほどこちら側に不利な結論になる可能性が高いと考えられました。同じ映像から、1割の幅が見えていたということです。
ここから分かることが2つあります。
- 保険会社の提示は「交渉の出発点」であって、訴訟でそのまま通る保証はない。逆に、示談で有利に見える数字が訴訟では不利になることもあります。
- 減速したかどうかは、こちらの映像にこそはっきり映る。自車の減速は、前方の景色の流れ方、ブレーキランプの映り込み、Gセンサー記録などから判断できます。つまり自分の映像が自分に不利な材料になりうるということです。
「訴訟になったらどうなるか」まで見通してお伝えします
示談で受けるべきか、争うべきかの分岐点をその場でご説明します。
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ポイント③一時停止――「止まった」だけでは足りない
一時停止規制のある交差点では、「相手が止まったかどうか」が最大の争点になります。ところが実務では、止まったこと自体は認めたうえで、その先を争うことがよくあります。
当事務所が扱った事案では、映像上、相手車が確かに一時停止していました。これは通常、停止した側に有利に働きます。しかし映像を精査すると、相手方は停止している間にこちらの接近を認識しないまま交差点へ進入していたことが読み取れました。そこで「単に停止しただけでは安全確認義務を果たしたことにならない」という主張に組み替えています。
道路交通法43条は、一時停止標識のある場所では停止線の直前で一時停止し、かつ交差道路を通行する車両等の進行を妨げてはならないと定めています。つまり止まることと、止まったうえで安全を確認することは別の義務です。映像で確認すべきは次の3点です。
- 停止の位置——停止線の手前か、大きく越えた位置か。越えた位置で止まって「見えるところまで出た」なら、そこは実質的に交差点内です。
- 停止の時間——完全停止か、いわゆる「徐行に近い減速」か。タイヤの回転や背景の動きで判別します。
- 停止後の発進のしかた——首を振って左右を確認する動作が窓越しに見えるか、停止からすぐ加速しているか。
別の事案では、相手方が右折を開始する場面から、右方をほとんど確認しないまま右折を始めたと評価できると読み取り、右折車側の著しい過失を主張して、こちらの過失を数%〜1割程度引き下げる交渉を組み立てました。停止したかどうかで思考を止めず、その次を読むということです。
ポイント④速度――映像に映らない速度を音と背景から詰める
速度は、過失割合を大きく動かす一方で、ドラレコにいちばん映りにくい情報です。GPS付きの機種であれば速度がそのまま記録されますが、そうでない機種も多く、また相手車の速度は原理的に映りません。
そこで実務では、次のような間接的な手がかりを積み上げます。
| 手がかり | 見るところ | 使い方 |
|---|---|---|
| エンジン音・排気音 | 音声トラック。加速時に音程が上がる | 「接触直前に加速しているようなエンジン音が聞こえる」といった形で主張材料になる |
| 背景の流れ方 | 路側帯の区画線、電柱、白線の通過間隔 | 既知の間隔(白線と間隔の長さ等)とコマ数からおおよその速度を割り出す |
| 相手車の見かけの大きさの変化 | 接近してくる車のフレーム内での拡大速度 | 相対速度の感覚的な裏づけ |
| 自車の制動距離 | ブレーキ開始から停止までの映像上の移動量 | 自車速度の下限を示せる |
| GPS・Gセンサー記録 | 本体の記録ファイル・専用ビューア | 最も直接的。機種によっては速度がそのまま出る |
当事務所でも、相手車は全体として低速に見えるものの、接触の直前に加速したことをうかがわせるエンジン音が入っている——という所見をもとに、相手方の運転態様を検討したことがあります。映像は目で見るものだと思われがちですが、音声も証拠です。データを渡していただくときは、音声を含めた元ファイルのままでお願いしているのはこのためです。
なお、駐車場内の事故では「駐車場内にしては速度がやや速い」という評価が過失割合を動かすことがあります。一般道では問題にならない速度でも、場所によっては修正要素になります。
ポイント⑤位置関係――どちらが先にそこにいたか
「どちらが先にそこにいたか」は、地味ですが決定的な論点です。とくに車線変更、進路変更、割り込みが絡む事故では、ここで事故類型そのものが変わります。
当事務所が争った事案を紹介します。依頼者が第3車線から第2車線へ進路変更しようとしたところ、後方から来た相手車と接触しました。一審判決は、これを通常の「進路変更車と後続直進車の事故」として扱い、その枠の基本割合からスタートして当方に不利な認定をしました。
これに対して当事務所は、映像上、こちらが合図を出した時点では相手車はまだその車線を走行していなかったことを指摘し、相手車を通常の「後続直進車」として扱うことはできないと主張しました。つまり、後ろから普通に走ってきた車ではなく、後方から急接近してきた車である以上、そもそも当てはめる枠が違う、という主張です。
この主張は、細かい修正要素を積み上げるのとは次元が違います。入口の枠を変えれば、スタート地点の数字が丸ごと変わるからです。修正要素での争いが数%〜1割の勝負なのに対し、類型そのものの争いは2割〜4割動くことがあります。だから弁護士は、映像を見るとき「誰がどこに、いつからいたか」を執拗に確認します。
もっとも、この事案では裁判所は当初の枠組みを変えず、最終的に金額面での和解に至りました。類型を争うことは大きな効果を狙える一方、必ず認められるものではありません。だからこそ、映像を早い段階で精査し、どこで争うのが現実的かを見極める必要があります。
入口の当てはめが違っていないか、映像で確認します
修正要素の前に、そもそもの類型が正しいかを見ます。
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ポイント⑥映っていないもの――ドラレコの死角と防犯カメラ
ドラレコの弱点は死角です。前方カメラだけの機種では、自車の側面・後方・真横で起きたことは映りません。そして接触は、しばしばその映らない場所で起きます。
当事務所が扱った自転車と自動車の接触事故では、接触した部位が前方カメラの画角の外にあり、映像に写っていませんでした。そのため過失割合を主張する資料としては足りないと判断し、周辺の防犯カメラ映像の確保に動いています。別の事案では、本来であれば映り込んでいるはずのこちら側の灯火が映像に写っていない点に着目し、付近の店舗の防犯カメラから衝突までの双方の位置関係を確認する方針を立てました。
ここが重要なところです。「映っていない」ことは、それ自体が情報です。本来映るはずのものが映っていなければ、位置関係や灯火の状態について別の説明が必要になります。弁護士が映像を見て「これは足りない、防犯カメラを取りに行きましょう」と言うのは、この判断をしているからです。
そして防犯カメラには時間の制約があります。多くの店舗・施設の防犯カメラはおおむね1週間から1か月程度で上書きされます。ドラレコがあるから大丈夫と思って動かずにいると、その間に補強材料が消えてしまいます。ドラレコがあるときこそ、足りない部分を早く見極めて動く必要があるとお考えください。
| 補う証拠 | 何が分かるか | 確保の期限の目安 |
|---|---|---|
| 店舗・施設の防犯カメラ | 自車の死角、双方の位置関係、灯火の状態 | 1週間〜1か月程度で上書きされることが多い |
| 相手車・第三者車両のドラレコ | 自車からは見えない角度の事故態様 | 任意の開示に頼るため早期の申入れが必要 |
| 実況見分調書(人身事故) | 警察が測定した停止位置・見通し・路面状況 | 刑事事件終了後に取寄せ。数か月かかることがある |
| 物件事故報告書(物損事故) | 事故の日時・場所・当事者の基本情報 | 人身と異なり事故態様の記載は簡略 |
| 車両の損傷状況・修理見積書 | 接触部位と衝突角度の裏づけ | 修理着手前の写真が有用 |
ポイント⑦事故の前後――映像は衝突の瞬間だけではない
ご相談時に「事故の瞬間の映像を切り出して持ってきました」と言われることがありますが、私たちがお願いしているのは前後を含めた元データです。理由は3つあります。
①事故前の走行状況が、こちらの落ち度の有無を決めるから。速度、車間距離、車線のキープのしかた、進路変更の頻度。これらは衝突の何十秒も前から映っています。相手方は、開示された映像の事故前部分を見て、こちらの修正要素を探します。
②事故後の状況が、ケガとの因果関係を左右するから。衝突後に車がどう動いたか、どの程度の衝撃だったかは、後の「その事故でそのケガを負ったといえるか」という争いに直結します。当事務所でも、非接触の事案で映像を見る限り強い急制動とまでは見えず、事故とケガの因果関係を争われる可能性が高いという見立てを立て、それを前提に方針を組んだことがあります。逆に、事故から初診まで期間が空いた事案では、その理由を説明する疎明資料の一部として映像を使っています。
③編集した映像は、証明力を争われる余地を作るから。切り出し・変換をした映像でも証拠として使えないわけではありませんが、「都合の悪い部分を落としたのではないか」と言われる余地が生まれます。元ファイルをそのまま保全しておければ、その反論を封じられます。すでに元データがない場合でも、車両の損傷状況など他の資料と整合していれば十分に使えますので、諦めずにご相談ください。
いますぐお願いしたいこと
ドラレコの多くは上書き式です。走り続けると事故の映像が消えます。SDカードを本体から抜くか、パソコンに元ファイルのままコピーしてください。これだけは、ご相談の前でも今日中にお願いしています。
映像を「事故類型」に当てはめる作業が、過失割合の本体
ここまでの7つのポイントは、すべて「事実を確定する」作業です。過失割合の本体は、その次にあります。
実務では、確定した事故態様を事故類型ごとの基本の割合に当てはめ、そこに修正要素を加減して結論を出します。この基準として、裁判所も保険会社も弁護士も参照しているのが、東京地裁民事交通訴訟研究会が編集し判例タイムズ社が刊行している『別冊判例タイムズ39号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕』です。信号の有無、道路の優先関係、車両の種類、事故の態様ごとに、基本の割合と修正要素が細かく整理されています。
作業は次の順で進みます。
| ステップ | やること | 動く幅の目安 |
|---|---|---|
| ①事実の確定 | 映像から時系列・合図・減速・停止・位置関係を確定する | — |
| ②類型の選択 | その事故を実務基準のどの類型として扱うかを決める | 20〜40%動くことがある |
| ③基本割合の適用 | 選んだ類型の基本の割合をスタート地点にする | — |
| ④修正要素の加減 | 著しい過失・重過失・合図なし・速度・夜間・幹線道路などを加減する | 1要素あたり5〜20%程度 |
ご覧のとおり、いちばん大きく動くのは②の類型選択です。保険会社の提示に納得できないとき、多くの方は④の修正要素で反論しようとされます。しかし本当に見直すべきは②であることが少なくありません。弁護士が映像を見るときに「どちらが先にそこにいたか」を執拗に確認するのは、②を動かせるかどうかを見ているからです。
なお、この基準は事故類型の分類と配列そのものが編集著作物にあたりうるため、当事務所では書籍の表や図番号をそのまま転載するかたちでの公開はしていません。ご相談いただければ、ご自身の事案がどの類型に当たり、基本の割合がいくつで、どの修正要素が使えるかを口頭で具体的にご説明します。
あなたの事故がどの類型に当たるか、映像を見て判断します
類型が変われば、スタート地点の数字が丸ごと変わります。
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ドラレコがあると、交渉と裁判はこう変わる
ドラレコがあると、手続の進み方そのものが変わります。
示談交渉では、争点が絞られます。「言った・言わない」の水掛け論がなくなるので、議論は最初から「この映像をどう評価するか」に集中します。これはこちらに有利にも不利にも働きます。
訴訟では、尋問が省かれることがあります。当事務所が担当した事案では、双方のドライブレコーダー映像が証拠として提出されていたため、裁判所が証人尋問を行うことに消極的な姿勢を示しました。運転者が後方の安全確認について何を認識していたかは過失割合の修正要素にならない、という整理です。
これは重要な点です。映像が両方あると、裁判所は「本人に聞くまでもなく映像を見れば分かる」と考えます。つまり法廷で「自分はこう思っていた」と説明する機会が、そもそも設けられないということです。運転者が何を認識していたかは、多くの場合、過失割合の修正要素になりません。
裏を返せば、勝負は映像の読み方と、それを書面でどう構成するかで決まります。本人が誠実そうに見えるかどうかでは決まりません。ここが、ドラレコ事案で弁護士の書面作成能力が結果に直結する理由です。
また、実務では「事故後の事情で過失割合が変わることはない」とされています。当事務所でも、相手方から、謝罪の有無を過失割合の条件とするような提案を受けたことがありますが、賠償実務上そうした事後の事情を過失割合の修正条件とすべきではない、という考え方で対応しています。過失割合は事故の瞬間までの事実で決まります。映像に映っている範囲がすべてだ、ということです。
ドラレコがない場合はどうなるか
ドラレコが付いていなかった、電源が入っていなかった、上書きされてしまった——これも珍しくありません。
正直に申し上げると、映像がないと動かせる幅は小さくなります。当事務所の検討メモにも「ドラレコがない場合、基本の割合から修正することは難しい」という趣旨の記載があります。実務の感覚としても、映像がない事案では、弁護士が入っても時間がかかるわりに結論が変わらないことがある、というのが正直なところです。
それでも、次の手は残っています。
- 相手方のドラレコを開示させる。相手が映像を持っていれば、そこにこちらの正当性が映っている可能性があります。示談段階では開示義務がないため任意の要請になりますが、訴訟になれば提出させる道があります。
- 防犯カメラ・第三者のドラレコを探す。前述のとおり時間との勝負です。
- 実況見分調書・物件事故報告書を取り寄せる。警察が記録した停止位置や見通し状況は、映像に代わる客観資料になります。
- 車両の損傷から事故態様を立証する。接触部位と角度は、双方の主張のどちらが物理的に成り立つかを判定します。
また、相手方が映像を持ちながら開示しないケースでは、こちらの立場を明確にすることが交渉の軸になります。当事務所でも、相手方が映像の開示に応じない事案で、開示がない以上、基本の割合から相手方に有利な方向へ動かす根拠はないという立場をはっきり伝えて交渉した例があります。開示しない側が、開示しないまま自分に有利な修正を求めることはできない、という考え方です。
そして、過失割合を動かせない場合でも、受け取れる金額を増やす方法はあります。ご自身が加入している人身傷害保険は、自分の過失割合にかかわらず実際の損害額を基準に保険金が支払われる仕組みです。過失相殺で削られた分を、相手方との交渉とは別のルートで回収できることがあります。
弁護士に映像を見せるときにご用意いただきたいもの
ご相談の際、次のものがあると初回でかなり具体的なところまでお話しできます。すべて揃っていなくても構いません。
| もの | なぜ必要か | 優先度 |
|---|---|---|
| ドラレコの元ファイル(SDカードごと可) | 編集前のデータが最も証拠価値が高い。音声も使う | 最優先 |
| 交通事故証明書 | 事故の日時・場所・当事者を確定する | 高 |
| 保険会社からの過失割合の提示書面 | 相手がどの類型を前提にしているかが分かる | 高 |
| 事故現場の写真・地図 | 見通し、標識、規制の有無を確認する | 中 |
| 車両の損傷写真・修理見積書 | 接触部位から事故態様を裏づける | 中 |
| ご自身の保険証券 | 弁護士費用特約・人身傷害保険の有無を確認する | 高 |
| 診断書・通院先の情報(ケガがある場合) | 人身部分の見通しを立てる | 高 |
とくにご自身の保険証券は必ずご確認ください。弁護士費用特約が付いていれば、多くの場合、弁護士費用の自己負担はほぼ発生しません。ご本人の保険だけでなく、ご家族の保険、同居していないお子さまの保険、クレジットカードの付帯保険から使えることもあります。「特約はないと思う」とおっしゃっていた方が、確認したら使えたという例は非常に多いです。
特約がない場合も、当事務所は交通事故のご依頼について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。回収できた金額の中からご精算いただく形ですので、持ち出しのご負担なくご依頼いただけます。
映像をお持ちいただければ、その場で見通しをお伝えします
SDカード・スマートフォンに保存した映像、どちらでも構いません。
交通事故専用フリーダイヤル・相談は無料/平日9:00〜18:00(土日要予約)
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よくある質問(FAQ)
Q. ドラレコの映像があれば、過失割合0にできますか?
A. 映像だけで0になるとは限りません。相手方に一方的な違反があり、こちらに結果を回避する手立てがなかったといえる場合には、0を主張できることがあります。当事務所でも、映像から強引な車線変更による接触と評価できた事案で、こちらの過失0%という主張を組み立てたことがあります。一方で、こちらにも減速や警音器の使用で回避できた余地があると評価されると、無過失の主張は難しくなります。映像を拝見して、0を狙えるかどうかを率直にお伝えします。
Q. 映像を見せたら、かえって不利になることはありませんか?
A. あります。ご自身の映像には、ご自身の速度や減速の有無も映っているためです。当事務所では、開示することでこちらの過失が加算されうると判断した事案で、必要性が認められるまで開示を控える方針をとったことがあります。だからこそ、保険会社に渡す前に弁護士にご覧に入れていただきたいのです。詳しくは「保険会社に提出すべきか」を扱った記事でご説明しています。
Q. 相手がドラレコを持っているのに見せてくれません。どうすればよいですか?
A. 示談交渉の段階では、相手方に開示の義務はありません。任意の開示を求めるほかなく、拒否されることも実際にあります。ただし訴訟になれば、証拠として提出させる手続があります。当事務所では、開示がない以上こちらから譲る理由はないという立場を明確にし、その前提で方針を立てた事案があります。
Q. スマートフォンで撮り直した映像でも証拠になりますか?
A. 証拠として使えないわけではありませんが、証拠としての価値は下がります。画面を撮影した映像はタイムコードやメタデータが失われ、編集の疑いを招く余地も生まれます。可能な限り元ファイルのままご提供ください。SDカードをお持ちいただければ、こちらでコピーしてお返しします。
Q. 事故から時間が経ってしまいました。まだ間に合いますか?
A. 示談が成立していなければ、過失割合はまだ争えます。ただし防犯カメラは1週間から1か月程度で上書きされることが多く、ドラレコも走り続けると上書きされます。時間が経つほど補強材料は減りますので、早めにご連絡ください。なお、人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の時効は、損害および加害者を知った時から5年です(民法724条の2)。この5年は2020年4月1日施行の改正で3年から延長されたもので、同日の時点で改正前の3年の時効が完成していなかった事故にも適用されます(改正法附則35条2項)。したがって、2020年より前の事故でも5年が適用される場合があります。物的損害の部分は3年のままです。ご自身の事案でいつまでかは、事故日をお知らせいただければお調べします。
Q. ドラレコを警察に提出しました。手元にコピーがありません。
A. 人身事故として捜査されている場合、映像は刑事記録に編てつされ、刑事事件の終了後に一定の範囲で取り寄せられることがあります。取り寄せには時間がかかりますので、可能であれば提出前に元ファイルのコピーをとっておくことをおすすめしています。すでに提出済みの場合も、取り寄せの手続はこちらで進められます。
Q. 弁護士に頼むと費用倒れになりませんか?
A. 弁護士費用特約が使える場合は、費用のほとんどが保険から支払われるため、費用倒れの心配はほぼありません。特約がない場合も着手金0円・完全成功報酬制ですので、着手時のご負担はありません。物損のみで金額が小さい事案など、費用倒れの可能性があるケースでは、初回相談の時点で率直にその旨をお伝えします。
まとめ
- ドラレコがあっても過失割合は自動的には決まらない。映像は事実を確定するが、評価は別の作業。
- 弁護士が見るのは、合図・減速・一時停止・速度・位置関係・死角・事故前後の7点。
- 最も大きく動くのは「この事故をどの類型として扱うか」という入口の判断。修正要素より先にここを見る。
- 映っていないことも情報。防犯カメラは1週間〜1か月で上書きされるため、早く動く必要がある。
- 映像が両方あると裁判所は尋問に消極的になる。読み方と書面の構成が結果を決める。
- 示談書に署名すると原則として覆せない。同意する前にご相談ください。
ドラレコ映像をお持ちの方は、示談に同意される前に一度お持ちください。映像から見通しを整理し、いまの提示が妥当なのか、争うとどこまで動く可能性があるのかを、その場でご説明します。
ドラレコ映像を、示談の前に弁護士に見せてください
弁護士費用特約があれば自己負担はほぼ発生しません。
特約がない場合も、着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。
平日9:00〜18:00(土日要予約)
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