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労災死亡事故で会社の安全配慮義務違反を立証する方法|証拠収集から損害賠償請求まで【弁護士解説】

監修弁護士

笹野 皓平(弁護士法人ブライト 労災部部長)
弁護士登録:2011年(修習64期)/弁護士歴14年
大阪弁護士会所属。建設・製造・運輸業の死亡労災・重篤後遺障害事案を多数担当。

和氣 良浩(弁護士法人ブライト 代表)

労災死亡事故が起きたとき、遺族の皆様が最初に直面する問いは「会社に責任を取らせることができるか」です。答えは「できます」。ただし、会社の安全配慮義務違反を法的に立証するには、早期からの証拠保全と適切な請求構造の組み立てが不可欠です。本記事では、弁護士法人ブライトが死亡労災事件で実際に用いる立証プロセスを詳述します。

この記事でわかること

  • 安全配慮義務違反の立証に必要な3要素(予見可能性・結果回避義務・因果関係)
  • 死亡事故直後に取得すべき証拠リストと入手方法
  • 労基署・行政調査報告書を民事訴訟で活用する方法
  • 損益相殺(労災保険給付との調整)の実務的な計算構造
  • 弁護士に早期依頼する理由(証拠消失タイムリミット)

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第1章:安全配慮義務とは何か──労働契約法5条の意味

安全配慮義務は、労働契約法5条に明文化された使用者の義務です。「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。

この義務の原型は、最高裁判所昭和50年2月25日判決(陸上自衛隊八戸車両整備工場事件)で確立されました。その後、最高裁昭和59年4月10日判決(川義事件)で雇用主の労働環境整備義務が明確化され、2008年施行の労働契約法5条で立法化されました。実務では債務不履行責任(民法415条)と不法行為責任(民法709条・715条)を並列で主張します。

両根拠を並列で主張するのは、時効の起算点が異なるためです。債務不履行は主観的起算点から5年(民法166条1項1号・2020年改正)、不法行為は損害および加害者を知った時から5年(民法724条の2・生命・身体侵害の場合)です。

安全配慮義務違反を構成する3つの要素

要素内容死亡事案での具体例
①予見可能性事故が起きることを予見できたかヒヤリハット記録・行政指導歴・類似事故統計の有無
②結果回避義務合理的な措置で事故を防げたか安全帯未支給・墜落制止用器具の不備・手順書不整備
③因果関係義務違反と死亡との間の法的因果関係「安全帯があれば墜落しなかった」「2人作業基準があれば巻き込まれなかった」

第2章:死亡事故直後の証拠保全──取得すべき資料と期限

死亡労災事件で最も重要なのは、事故直後の迅速な証拠保全です。会社側は事故後に安全衛生管理記録を「整理」する場合があります。また、物証(墜落現場・機械設備)は事故後に修繕・撤去されます。弁護士への依頼が早いほど保全できる証拠の範囲が広がります。

証拠の種類入手先タイムリミット
事故現場の写真・動画現場保存・警察・消防可及的速やか(修繕前)
労働者死傷病報告(様式23号)行政文書開示請求報告後30日で開示可
安全衛生教育の記録(受講名簿・教材)会社への証拠保全申立て弁護士介入後すぐ
作業手順書・リスクアセスメント記録同上同上
過去のヒヤリハット記録同上同上
労働時間記録(タイムカード等)会社・賃金台帳改ざん防止のため早期

証拠が消える前に、今すぐご相談ください

事故から時間が経つほど、現場写真・安全管理記録・目撃者証言が散逸します。弁護士法人ブライトでは、ご相談いただいたその日から証拠保全の方針をお伝えします。

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第3章:行政調査報告書の入手と民事訴訟での活用

労働死亡事故が発生すると、労働基準監督署(労基署)が現場調査を行い、労働安全衛生法違反の有無を調査します。この行政調査の結果として作成される報告書類は、民事訴訟において極めて強力な証拠になります。

  • 労働者死傷病報告(様式第23号・第24号):会社が労基署に提出する報告書。事故の経緯・発生状況・原因の記載あり
  • 労基署の調査報告書・是正指示書:行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく開示請求で取得可能
  • 送検資料(書類送検された場合):不起訴処分後であれば検察庁への不起訴記録開示申請が可能(刑事訴訟法53条・民事訴訟法223条)
  • 安全衛生点検記録・指導票:会社への過去の行政指導を証明する

行政文書開示請求は、事故が発生した管轄の都道府県労働局長または労働基準監督署長宛に行います。弁護士が代理人として請求する場合は、遺族の委任状とともに請求書を提出します。開示決定まで30日以内(行政機関情報公開法10条1項)。

実務書では「行政調査記録は民事賠償の立証において補助証拠として重要な機能を果たす」とされており(三柴丈典「労働安全衛生法コンメンタール」等参照)、是正勧告・使用停止命令が出ていた場合は会社の安全管理の構造的欠陥を証明する一次証拠となります。

第4章:予見可能性の立証──ハザード記録の読み方

安全配慮義務違反の立証で最大の争点になるのが「予見可能性」です。会社側は「まさかあのような事故が起きるとは予見できなかった」と主張するのが定石です。

  • リスクアセスメント記録:労働安全衛生法28条の2で一定業種に義務化(2006年から)。記録が存在する場合、会社は危険性を認識していたことになる
  • ヒヤリハット報告書:「ニアミスがあったのに対策しなかった」を証明する最強の証拠
  • 同業他社・同種業種の過去災害統計:厚生労働省「労働災害統計」で公開。同業種で類似事故が多発していれば会社は認識すべきだったと評価される
  • 社内安全委員会の議事録:会社が内部で危険性を議題にした記録があれば予見可能性の強力な証拠
  • 過去の行政指導・改善命令:労基署から同種リスクについて指導を受けた記録

第5章:損害賠償の算定構造──労災保険給付との調整(損益相殺)

死亡労災事件では、労災保険から遺族補償給付を受け取りつつ、会社への損害賠償請求も行います。同一の損害について二重取りになる部分は損益相殺が行われます。

損害項目労災保険給付損益相殺
死亡慰謝料(2,000万〜2,800万円)なしなし(重複しない)
逸失利益遺族補償年金(一定期間)受領済給付額を控除
葬祭費葬祭料(約100万円)受領額を控除
入院中の休業損害休業補償給付(基礎日額の60%)実損との差額は請求可

重要なのは「慰謝料は労災保険では一切支払われない」点です。死亡慰謝料(本人分2,000万〜2,800万円)および近親者慰謝料は、会社への損害賠償請求でしか回収できません。

逸失利益 = 基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × ライプニッツ係数

年収年齢就労可能年数ライプニッツ係数(3%)逸失利益(概算)
400万円35歳30年19.600約4,704万円
600万円45歳20年14.877約5,356万円
800万円40歳25年17.413約8,358万円

第6章:会社側が使う反論とその対処法

反論①:被災者本人の過失(素因減額・過失相殺)

会社側は「被災者が安全帯を着用しなかった」「手順書を無視した」と主張し、損害額を減額させようとします。これに対しては、「会社が安全帯を支給・装着を義務付けていなかった」「手順書自体が存在しなかった・周知されていなかった」を反証します。

反論②:下請け・一人親方だから責任はない

元請けが「請負契約だから安全配慮義務はない」と主張するケースがあります。しかし、実質的に指揮命令関係がある場合(作業時間・方法・場所を元請けが指定)は、複数の裁判例により安全配慮義務が認められています。形式的な契約形態より実態で判断されます。

反論③:労災保険を受け取っているから二重取りになる

損益相殺の範囲を実際より広く主張することで賠償総額を圧縮しようとします。正確な損益相殺の範囲(逸失利益・葬祭費の一部のみ。慰謝料・弁護士費用・遅延損害金は相殺されない)を明確に示して反論します。

会社側の代理人が付いてからでは交渉が困難になります

会社が弁護士を立てる前に、遺族側も弁護士を立てることが重要です。弁護士法人ブライトでは、初回相談無料・着手金0円・完全成功報酬制で対応します。

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第7章:民事訴訟・示談交渉の流れ

  1. 内容証明郵便による損害賠償請求:弁護士名義で会社に請求書を送付。この時点から遅延損害金(年3%)が発生します
  2. 示談交渉:会社・保険会社との交渉。多くの死亡事案は訴訟前に示談が成立する
  3. 民事訴訟:交渉が決裂した場合。地方裁判所に提起(高額案件のため地裁管轄が標準)
  4. 判決・和解:訴訟中の和解も多い。判決で認められた場合は遅延損害金込みで受け取れる

第8章:時効──いつまでに請求すればよいか

根拠時効期間起算点
債務不履行(民法166条1項1号)5年権利を行使できることを知った時
不法行為(民法724条の2)5年損害および加害者を知った時(生命・身体侵害)
不法行為(民法724条)20年不法行為の時(客観的起算点)

事実上、死亡事故の翌日から5年以内に請求することが安全ですが、時効完成直前に弁護士に相談する案件も少なくありません。時効を防ぐために内容証明郵便による催告(民法150条・6ヶ月延長)も活用します。

第9章:弁護士法人ブライトの取り組み

弁護士法人ブライトでは、労災部部長・笹野皓平弁護士(修習64期・弁護士登録2011年・弁護士歴14年)が死亡労災・重篤後遺障害事案を専門的に担当しています。建設・製造・運輸業の重大事故において、安全配慮義務違反の立証・行政調査報告書の取得・損害賠償請求の全プロセスをサポートします。

顧問先130社以上の実名公開実績から、会社側の安全管理体制・経営判断プロセスを熟知しており、会社側弁護士の反論に対して有効な立証を組み立てられます。

FAQ:よくある質問

Q1:労災保険を受け取っていても会社に損害賠償請求できますか?

はい、できます。労災保険給付と会社への損害賠償請求は別の制度です。損益相殺はありますが、慰謝料・弁護士費用・遅延損害金は控除されません。

Q2:下請け会社の労働者が元請けの現場で亡くなった場合、元請けに請求できますか?

実質的な指揮命令関係がある場合(作業方法・時間・場所を元請けが指定していた等)、元請けへの安全配慮義務違反を根拠とした損害賠償請求が認められる場合があります。

Q3:会社が「労災は認定されたが賠償はできない」と言っています。どうすればよいですか?

労災認定と会社の民事責任は別の判断です。労災認定後でも会社は「安全配慮義務違反はなかった」と主張できます。弁護士が安全配慮義務違反の立証を行い、民事上の賠償責任を追及します。

Q4:会社が廃業・倒産した場合でも請求できますか?

法人消滅後は、取締役個人への責任追及(会社法429条・民法709条)、親会社・元請けへの責任追及、破産手続への参加など複数の手段があります。早期に弁護士に相談することが重要です。

Q5:証拠が何もない状態でも依頼できますか?

はい。弁護士が証拠保全申立て・行政文書開示請求・調査嘱託などの法的手段で証拠を収集します。「証拠がないから無理」と判断するのは弁護士の仕事です。まず相談してください。

Q6:費用はどのくらいかかりますか?

弁護士法人ブライトでは、初回相談無料・着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。費用は解決後の回収額から一定割合をいただく形になります。

まとめ

死亡労災事故における安全配慮義務違反の立証は、予見可能性・結果回避義務・因果関係の3要素を証拠で裏付けることが核心です。行政調査報告書・ヒヤリハット記録・社内安全委員会議事録などは弁護士の法的手段で取得できます。慰謝料(死亡慰謝料2,000万〜2,800万円)は労災保険では一切支払われないため、会社への損害賠償請求は遺族にとって必須の選択です。

詳しくは死亡労災・遺族の完全ガイド(ハブ記事)もあわせてご覧ください。

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  • この記事を書いた人

笹野 皓平

弁護士法人ブライト パートナー弁護士: あなた自身や周りの方々がよりよい人生を歩んでいくために、また、公正な社会を実現するために、法の専門家としてサポートできることを日々嬉しく感じています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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  • パートナー弁護士 笹野 皓平

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  • 弁護士 有本 喜英

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事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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