監修弁護士
笹野 皓平(弁護士法人ブライト 労災事故部統括)
弁護士登録:2011年(修習64期)/弁護士歴15年
大阪弁護士会所属。死亡労災の損害賠償請求・示談交渉を多数担当。
和氣 良浩(弁護士法人ブライト 代表)
「いくらもらえるか」──死亡労災の遺族から最初に聞かれる質問です。結論から言うと、年収・年齢・家族構成によって総額は数千万円から1億円超まで変わります。本記事では、弁護士法人ブライトが実際の交渉で使う損害額の算定構造と増額交渉の論点を詳述します。
この記事でわかること
- 死亡労災の賠償項目の全体像(逸失利益・慰謝料・葬儀費など)
- 逸失利益の計算式とライプニッツ係数(年収・年齢別シミュレーション表)
- 労災保険給付との損益相殺(何が差し引かれて何が差し引かれないか)
- 会社側の示談打診タイミングと応じてはいけない理由
- 増額交渉で弁護士が使う論点
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第1章:死亡労災で請求できる損害賠償の項目全体像
会社の安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条・709条)を根拠とした損害賠償は、以下の項目で構成されます。
| 損害項目 | 内容 | 相場・計算基準 |
|---|---|---|
| 死亡慰謝料(本人分) | 被災者本人の精神的苦痛に対する賠償 | 2,000万〜2,800万円(一家の支柱:2,500万〜2,800万円・独身:2,000万〜2,200万円) |
| 近親者慰謝料 | 配偶者・子・親等の近親者への慰謝料 | 配偶者:200万〜400万円程度、子・親:100万〜300万円程度 |
| 逸失利益 | 将来得られたはずの収入の損失 | 基礎収入×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数 |
| 葬儀費用 | 葬儀・埋葬に要した実費 | 実費(概ね130万〜170万円の範囲で認定される傾向) |
| 入院中の休業損害 | 死亡直前の入院期間中の収入損失 | 基礎日額×実入院日数 |
| 弁護士費用 | 弁護士への依頼費用 | 認容額の10%程度(裁判所が損害として認定) |
| 遅延損害金 | 事故日からの法定利率 | 年3%(2020年4月1日以降発生事故) |
これらのうち、慰謝料・弁護士費用・遅延損害金は労災保険では一切支払われません。労災保険給付だけで終わりにすると、最も大きな損害項目を丸ごと取り逃します。
第2章:逸失利益の計算構造──ライプニッツ係数と年収別シミュレーション
死亡労災の損害賠償で最も高額になるのが逸失利益です。「事故がなければ将来にわたって得られたはずの収入」を現在価値に換算した金額です。
逸失利益の計算式
逸失利益 = 基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × ライプニッツ係数
- 基礎収入:事故前年の実収入(給与・賞与含む)。職種・年齢・性別によって賃金センサスの平均賃金が用いられる場合もある
- 生活費控除率:被災者が生存していれば自分の生活費として使ったはずの分を控除。一家の支柱(妻子あり)は30〜40%、独身は50%が目安
- ライプニッツ係数:将来の収入を現在価値に換算するための係数(中間利息控除)。法定利率3%(2020年4月1日以降)に基づく係数表から就労可能年数に応じて選択する
- 就労可能年数:67歳(原則)から被災時の年齢を引いた年数が標準。ただし65歳以上の高齢者も状況に応じて就労可能年数が認められる場合がある
年収・年齢別 逸失利益シミュレーション(生活費控除率40%・ライプニッツ3%)
| 年収 | 被災時年齢 | 就労可能年数 | ライプニッツ係数 | 逸失利益(概算) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 30歳 | 37年 | 22.167 | 約3,990万円 |
| 400万円 | 35歳 | 32年 | 20.389 | 約4,893万円 |
| 500万円 | 40歳 | 27年 | 18.327 | 約5,498万円 |
| 600万円 | 45歳 | 22年 | 15.937 | 約5,737万円 |
| 700万円 | 40歳 | 27年 | 18.327 | 約7,697万円 |
| 800万円 | 50歳 | 17年 | 13.166 | 約6,320万円 |
| 1,000万円 | 45歳 | 22年 | 15.937 | 約9,562万円 |
この逸失利益から、遺族補償年金など労災保険の給付額は損益相殺(控除)されます。控除後の差額が会社への請求額になります。
「いくらもらえるか」を正確に計算します
年収・年齢・家族構成をお伝えいただければ、概算の賠償額を試算します。相談は何度でも無料です。
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第3章:死亡慰謝料の相場と増額要因
死亡慰謝料は、被災者本人分と近親者(遺族)分があります。実務では交通事故の裁判基準(いわゆる「赤い本」=民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)の考え方が労災死亡事案でも参照される傾向があります。
死亡慰謝料の基本相場
| 属性 | 本人慰謝料の目安 |
|---|---|
| 一家の支柱(被扶養家族あり) | 2,500万〜2,800万円 |
| 配偶者・母親 | 2,400万〜2,700万円 |
| 独身・子なし | 2,000万〜2,500万円 |
慰謝料が増額されるケース
以下の事情があると、上記基本額より慰謝料が増額されることがあります。
- 会社の悪質性・故意に近い過失:過去に行政指導を受けながら改善しなかった、ヒヤリハット多発にもかかわらず放置したなど
- 被災者が長時間苦痛を経験した:即死ではなく、事故から死亡まで数日の入院期間があった場合
- 遺族の精神的打撃が重大:子どもが複数いる・遺族が重篤な精神的障害を発症した
- 使用者側の事故後の対応が不誠実:謝罪なし・証拠隠滅・労基署への虚偽報告
第4章:損益相殺──労災保険給付との調整
労災保険給付のうち、同一損害を填補するものは民事賠償から控除(損益相殺)されます。ただし控除されない項目も重要です。
| 損害項目 | 労災保険給付 | 損益相殺の有無 |
|---|---|---|
| 逸失利益 | 遺族補償年金(受給済額) | あり(受領済み部分のみ控除) |
| 葬祭費 | 葬祭料(約100万円) | あり(受領額を控除) |
| 慰謝料 | なし | なし(控除不可) |
| 弁護士費用 | なし | なし(控除不可) |
| 遅延損害金 | なし | なし(控除不可) |
重要な実務上の論点として、遺族補償年金は現在受領済み部分のみ損益相殺の対象であり、将来受け取る予定の年金部分を先取りして控除することは認められません(最高裁昭和52年10月25日判決の法理)。会社側がこの点を誤って(または意図的に)主張することがありますが、弁護士が正確に反論します。
第5章:会社側の示談打診タイミングと応じてはいけない理由
死亡労災事故後、会社・会社の保険会社が示談を打診してくるタイミングがあります。遺族が単独で応じることには大きなリスクがあります。
示談打診の典型タイミング
- 事故直後(1〜2週間以内):遺族の判断力が低下している時期を狙った早期解決オファー
- 葬儀直後:「早く解決したい」という遺族の心理を利用
- 労災保険給付が決定した直後:「労災保険も出るので、あとは一定額で解決したい」という提案
弁護士なしで応じてはいけない理由
- 金額が正当かどうか判断できない:逸失利益・慰謝料の計算構造を理解せずに金額の妥当性を判断するのは困難
- 損益相殺の誤り:会社側が将来受け取る労災年金分まで先取り控除した金額を提示することがある
- 示談後は増額請求できない:示談書に「示談金全額をもって一切の損害賠償義務を免れる」という条項が入ると後から増額請求は原則できない
- 弁護士費用・遅延損害金が含まれていない:会社が提示する示談額には弁護士費用・遅延損害金(年3%)が含まれていないことが多い
示談書にサインする前に必ず弁護士に相談してください
会社側から示談書が提示されたら、署名する前に弁護士に確認することが最も重要です。一度サインすると取り消しは原則できません。
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第6章:増額交渉で弁護士が使う論点
論点①:基礎収入の引き上げ
会社側は基礎収入を過去1年の平均給与で算定する場合がありますが、昇給が見込まれていた若年労働者や、将来の賃金上昇が明確だった場合は基礎収入の引き上げを主張します。賃金センサス(厚生労働省賃金構造基本統計調査)の上位データを活用することもあります。
論点②:生活費控除率の引き下げ
会社側は生活費控除率を高めに設定しようとします。被扶養家族の人数・被災者の家庭における役割(主な稼ぎ手かどうか)を主張して控除率を低く設定させます。
論点③:将来の遺族補償年金を損益相殺しないよう主張
最高裁判例の法理(昭和52年10月25日判決等)により、将来受領する予定の労災保険年金は損益相殺の対象外です。会社側がこれを超えて控除しようとする場合は明確に反論します。
論点④:慰謝料の増額事由の主張
会社の悪質性(過去の行政指導無視・証拠隠滅・事後対応の不誠実さ)を主張して慰謝料増額を求めます。また、入院期間が長かった場合は入院慰謝料・精神的苦痛の大きさを追加主張します。
論点⑤:弁護士費用・遅延損害金の加算
民事訴訟になった場合、裁判所は弁護士費用(認容額の10%程度)を損害として認めます。また、遅延損害金(事故日からの年3%)は事故から示談成立・判決確定まで累積します。長期化するほど遅延損害金が増えるため、早期解決の動機も生まれます。
第7章:弁護士費用と成功報酬の仕組み
弁護士法人ブライトでは、相談料は何度でも無料・着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。費用の支払いは解決後の回収額から一定割合をいただく仕組みのため、経済的負担なく依頼できます。
弁護士費用の相場(一般的な労災損害賠償案件の場合):
- 着手金:0円(成功報酬制)
- 成功報酬:回収額の15〜25%程度(事務所・案件によって異なる)
- 実費:印紙代・郵便料・証拠収集費用等(通常10万円未満)
FAQ:よくある質問
Q1:労災保険の遺族補償年金をもらいながら、会社にも損害賠償請求できますか?
はい。労災保険給付と会社への損害賠償請求は別の制度です。受け取った遺族補償年金額は逸失利益から損益相殺されますが、慰謝料・弁護士費用・遅延損害金は控除されません。
Q2:会社が「保険でカバーできる金額はこれが限界」と言います。どうすればよいですか?
会社の保険限度額は会社側の問題であり、遺族への支払い義務は保険限度額とは無関係です。保険でカバーできない分は会社自身の財産から支払う義務があります。弁護士に交渉を委任することで正当な金額を請求します。
Q3:示談金の相場はどのくらいですか?
年収・年齢・家族構成によって大きく変わります。年収500万円・40歳・妻子ありの場合、逸失利益5,000万円超+死亡慰謝料2,500万〜2,800万円+葬儀費等で、総額8,000万〜1億円超になることもあります。ただし損益相殺(労災保険受取額の控除)後の金額が実際の請求額になります。
Q4:弁護士費用は後払いでよいですか?
弁護士法人ブライトでは着手金0円・完全成功報酬制です。費用は解決後の回収額から一定割合をいただくため、依頼時に費用を用意する必要はありません。
Q5:示談交渉が決裂した場合、訴訟になりますか?
示談交渉が成立しない場合は民事訴訟になります。死亡労災の請求額は高額になるため地方裁判所に提起します。訴訟中も和解が成立するケースは多く、判決まで至るケースは全体の一部です。
Q6:葬儀が終わった後でも損害賠償請求できますか?
はい、できます。葬儀費用も損害賠償の項目の一つとして請求できます。時効(事故日から5年・民法724条の2)が成立するまでは請求可能です。ただし早期に弁護士に相談することで、証拠保全・交渉での有利な立場が確保できます。
まとめ
死亡労災事故の示談金・賠償額は、逸失利益(基礎収入×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数)+死亡慰謝料(2,000万〜2,800万円)+葬儀費等が基本構造です。慰謝料・弁護士費用・遅延損害金は労災保険では一切補填されないため、会社への損害賠償請求が遺族の権利です。
会社側の示談打診には単独で応じず、必ず弁護士に確認してください。増額交渉の余地は基礎収入・生活費控除率・損益相殺の範囲・慰謝料増額事由など複数あります。
詳しくは死亡労災・遺族の完全ガイド(ハブ記事)もあわせてご覧ください。
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