会社で暴力を受けたら社長がすべきこと|初動対応から再発防止まで徹底解説

会社で暴力を受けたら社長がすべきこと|初動対応から再発防止まで徹底解説

「うちの職場でそんなことは起きない」――そう思っていた社長ほど、いざ起きたときに動けなくなります。従業員同士のトラブルが暴力に発展した、取引先の担当者から社員が殴られた、酔った上司が部下を叩いた……。形はさまざまですが、共通するのは「会社として、いったい何をすればいいのかわからない」という社長の焦りです。警察に任せるべきなのか、まず本人同士で話し合わせるべきなのか、人事的な処分はどのタイミングで動かすべきなのか。何もわからないまま時間だけが過ぎていく。その間にも被害者の怒りは積み重なり、対応の遅さ自体が会社への不信につながっていきます。

この記事は、職場内暴力が発生したときに社長・経営者がどういう順番で何を判断すべきかを整理したものです。法律の難しい話より先に、「何から手を付けるか」を具体的にお伝えします。

なぜ「会社で暴力が起きたとき」の判断はこれほど難しいのか

暴力事案で社長の判断が遅れる理由は、構造的なものがあります。まず、「当事者同士の問題」と「会社の問題」の境界線が見えにくいという点です。「個人的な喧嘩に会社が首を突っ込むのはどうか」「二人の間で解決してくれれば」という感覚は自然です。しかし、職場で起きた暴力は原則として会社が対処しなければならない「職場環境の問題」であり、放置すれば会社自身が安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

次に、「加害者が重要な戦力だったとき」の判断の歪みがあります。営業成績がトップの社員が後輩に手を上げた、というケースでは、処分の重さを無意識に軽くしようとする力学が働きます。しかしそれは被害者への二次加害であり、後から法的リスクに直結します。

さらに、証拠の確保が後回しになる問題があります。「まず当事者を落ち着かせよう」と動いている間に、記憶は薄れ、メッセージは消え、目撃者は「よく覚えていない」と言い始めます。暴力事案では初動の48時間が証拠保全の勝負どころです。

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問題が起きる前にできること――予防の段階で整えておくべきもの

【図解】なぜ「会社で暴力が起きたとき」の判断はこへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

暴力が起きてから動くのでは遅い局面があります。だからこそ、問題が発生する前の体制整備が重要です。

  • 就業規則への暴力禁止条項の明記:「職場内での暴力行為は懲戒解雇の対象とする」という規定が明文化されているかを確認してください。抽象的な「品位を欠く行為を禁止する」だけでは、処分の根拠として弱くなります。
  • ハラスメント相談窓口の設置:労働施策総合推進法の改正により、一定規模の会社にはパワハラ防止措置の義務があります。身体的な攻撃はパワーハラスメントの類型の一つであり、相談窓口がないこと自体が義務違反になりえます。
  • 研修と周知:「うちは大丈夫」と言えるのは、全員がルールを知っていて初めて成立します。年1回でも、ハラスメントの定義と会社方針を全社に伝える機会を持ってください。
  • 顧問弁護士との事前すり合わせ:「もし暴力事案が起きたら最初に何をすべきか」を、問題が起きる前に弁護士と話しておくことが最も費用対効果の高い準備です。実際に起きてからでは相談の時間も限られます。

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問題発生時の対応フロー――証拠の残し方を含めた具体的な手順

職場内暴力の報告を受けた瞬間から、会社の対応が始まります。以下の順番で動いてください。

① 被害者の安全確保と分離

まず、被害者と加害者を物理的に引き離します。同じ部署・同じフロアで業務を続けさせることは、被害者への配慮義務の点でアウトです。被害者を別室に案内し、落ち着いた状態で話を聞ける環境を整えます。

② 事実の記録(この段階が最重要)

被害者・目撃者からの聴き取り内容を、その場でテキストに起こしてください。後から書き直すと「それはそう言っていない」というトラブルになります。聴き取りの際に確認すべき項目は以下の通りです。

  • 発生日時・場所
  • 加害者・被害者の氏名と関係性
  • 具体的な行為の内容(殴った、蹴った、物を投げた等)
  • 目撃者の有無と氏名
  • 負傷があれば医療機関への受診状況
  • カメラ映像・SNSメッセージ等の存在

録音・録画データ、防犯カメラの映像は速やかに保全します。上書きや削除が懸念される場合は、担当者に指示してデータをバックアップしてください。

③ 被害者が警察への届け出を希望する場合

暴力は刑事事件(暴行罪・傷害罪)にあたる可能性があります。被害者が警察に届け出ることは本人の権利であり、会社が止めることはできませんし、止めるべきでもありません。むしろ、被害者が希望する場合は会社として届け出に協力する姿勢を示すことが重要です。会社が「内々に収めたい」という態度を示すと、それ自体が被害者との信頼関係を壊す原因になります。

④ 加害者への事実確認と処分の検討

被害者・目撃者の話を聞いた後、加害者本人からも事実確認を行います。弁明の機会を与えることは、後の懲戒処分を有効なものにするための重要な手続きです。この段階で弁護士に相談し、処分の重さ(戒告・降格・出勤停止・懲戒解雇)の選択肢と根拠を確認してください。

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失敗事例の構造――なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか

実際の職場内暴力事案で、会社が後手に回るパターンには共通する構造があります。

ケース①:「大げさにしたくない」が最初の判断ミスになったケース
同じチームの社員A(先輩)が社員B(後輩)に対し、打ち合わせ中に資料を投げつけた。BはAに気を遣って会社への報告を遅らせた。社長がこれを知ったのは1か月後、Bが労働基準監督署に申告した後だった。このとき、現場の状況を覚えている目撃者はおらず、防犯カメラの映像も上書きされた後。会社は安全配慮義務を問われる立場になったが、対応した記録が一切なかった。

なぜ相談が遅れたのか:「もう少し様子を見よう」という空気が組織の中にあり、上司も「Aは実績がある人だから……」と報告を躊躇していた。

ケース②:処分したが根拠が薄くて訴訟になったケース
被害者からの申告を受け、会社はすぐに加害者を懲戒解雇にした。しかし就業規則に暴力を解雇理由とする条項がなく、加害者側から「解雇無効」として提訴された。証拠はあったが、処分の根拠規定がなかった。

なぜ証拠が機能しなかったのか:証拠はあっても、それを処分に結びつける就業規則の規定が整備されていなかった。証拠と規程のセットが整っていて初めて、適正な処分が成立します。

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結局、うちの会社ではどう考えればいいのか

規模や業種を問わず、会社で暴力が起きたときの会社の立ち位置は一つです。「当事者間の問題」ではなく「職場環境の問題」として経営者自身が動くということです。

規模が小さい会社ほど、「うちはみんな家族みたいなものだから」という空気が働きます。しかしその空気が、被害者を泣き寝入りさせ、加害者を野放しにし、後から会社を法的リスクに引きずり込む原因になります。

実際に判断が必要なのは、次の3つの分岐点です。

  1. 被害者への対応:安全確保・医療手当・業務上の配慮・相談窓口の案内
  2. 加害者への対応:事実確認・弁明機会の付与・就業規則に基づく処分
  3. 会社としての記録管理:対応履歴の文書化・再発防止策の文書化

この3つを同時並行で進めなければならないのが職場内暴力対応の難しさであり、だからこそ「一人で考えない」ことが大切です。

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再発防止策――一件対応して終わりにしない体制の作り方

暴力事案を一件処理した後、多くの会社は「とりあえず解決した」と動きを止めます。しかしその後に何も変わらなければ、同じ問題はまた別の形で起きます。再発防止に必要なのは以下の3点です。

  • 就業規則の見直し:暴力行為の禁止と懲戒処分の根拠を条文レベルで整備する。「規定がなかった」という事態を次に起こさないための最低限の作業です。
  • 相談しやすい文化の構築:被害者が最初に萎縮して報告しないケースが多い。「相談して損をすることはない」という実績を会社として積み上げていくことが、次の被害者を守ることにつながります。
  • 管理職への教育:現場の管理職が「どこまでが暴力にあたるか」「報告を受けたら何をするか」を知らないと、事案が社長まで届かずに握りつぶされます。管理職向けの研修を年1回以上実施してください。

職場内暴力への対応は、一件対応して終わりにしてはいけません。発生した事案を就業規則・社内規程の整備に反映し、次の事案が起きたときに迷わず動ける体制を整えることが経営者の責任です。弁護士法人ブライトでは、暴力事案の個別対応にとどまらず、就業規則の条項整備やハラスメント対応規程の作成、管理職研修の設計まで、継続的な体制づくりを支援しています。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが顧問先 142社 の実名を公開しながら向き合っている「みんなの法務部」として、一件ごとの相談ではなく、社長の判断を日常的に支える体制をご提供しています。

よくある質問

Q. 従業員同士の暴力について、会社は必ず対応しなければならないのですか?

A. はい。職場内で起きた暴力は、会社の安全配慮義務の範囲内の問題です。「当事者間で解決してほしい」という姿勢で放置した場合、被害者から会社に対して損害賠償請求が起きるリスクがあります。特に、上司・先輩から部下・後輩への暴力はパワーハラスメントとして会社の法的責任が問われやすい類型です。

Q. 加害者を懲戒解雇したいのですが、どんな証拠が必要ですか?

A. 懲戒解雇には「事実の証明」と「就業規則上の根拠」の両方が必要です。証拠としては、被害者・目撃者の供述書、防犯カメラ映像、受診記録(診断書)、当時のメッセージ記録などが有効です。ただし証拠があっても就業規則に懲戒解雇の根拠条項がなければ処分が無効になる可能性があります。処分を決める前に必ず弁護士に確認してください。

Q. 被害者が「警察に届けたい」と言っています。会社としてどう対応すればいいですか?

A. 被害者が警察に届け出ることは法的な権利であり、会社はそれを阻止したり、自重させたりすることはできません。むしろ「会社としても協力する」という姿勢を明確に示してください。警察の捜査が始まった場合、会社は求められた資料(防犯カメラ映像等)を速やかに提供できるように準備しておく必要があります。

Q. 加害者が「自分は手を出していない」と言い張っています。どうすればいいですか?

A. 加害者の否認は珍しくありません。だからこそ、被害者・目撃者からの初期聴き取りと証拠保全が重要なのです。加害者の供述と被害者・目撃者の供述を突き合わせ、客観的な証拠(映像・医療記録等)と照合した上で判断してください。「言い分が食い違う」という状態でも、証拠の積み重ねによって事実認定は可能です。この作業は弁護士と共同で進めることをお勧めします。

職場内暴力・ハラスメント対応・問題社員への懲戒処分など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先 142社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

「みんなの法務部」というブライトの考え方

中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、142社の顧問先と向き合っています。

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