執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士|登録2010年・修習63期・交通事故主任
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士|弁護士法人ブライト代表
【結論】過失割合に納得できなければ、弁護士に依頼して争える
- 保険会社が提示する過失割合は「交渉の出発点」にすぎない。同意するまでは確定しない。
- 過失割合が10%変わるだけで慰謝料・賠償額が数十万〜数百万円変わる。
- ドライブレコーダー・目撃証言・判例タイムズの修正要素を使って弁護士が覆した事例は多い。
- 弁護士費用特約(LAC)があれば費用ほぼ無料で依頼可能。特約なしでも着手金0円・成功報酬制で対応可。
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目次
過失割合とは何か――誰が決め、どう計算するのか
交通事故における過失割合とは、事故発生について加害者と被害者それぞれが「どの程度責任を負うか」を百分率で示したものです。たとえば「過失割合10対90」なら、被害者側に10%の責任があり、加害者側に90%の責任があるという意味です。
過失割合は損害賠償額に直結します。被害者が受け取れる賠償額は、認定された損害総額から被害者の過失分(過失相殺)を差し引いた額になります。
| 被害者の過失割合 | 過失相殺額 | 実際に受け取れる額 |
|---|---|---|
| 0%(過失なし) | 0円 | 500万円 |
| 10% | 50万円 | 450万円 |
| 20% | 100万円 | 400万円 |
| 30% | 150万円 | 350万円 |
ここで知っておきたいのが、過失相殺で差し引かれた分を、ご自身が加入している人身傷害保険で補える可能性があるという点です。人身傷害保険は自分の過失割合に関係なく実際の損害額を基準に保険金が支払われる仕組みのため、相手方との示談交渉とは別ルートで満額に近い回収を目指せるケースがあります。制度の詳しい使い方は人身傷害保険(人傷)完全ガイドで解説しています。
過失割合は誰が決めるのかという点が重要です。法律上、確定した過失割合というものは事故直後には存在しません。当事者間の示談交渉、または裁判所の判決で初めて確定します。保険会社が事故直後に提示する過失割合は「保険会社側の主張」であり、あなたが同意するまで確定しません。
実務上、過失割合の基準として最もよく使われるのが「判例タイムズ(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)」です。東京地裁などが蓄積した事故類型ごとの過失割合の「基本割合」と、それを修正する要素が図表で示されており、保険会社も弁護士もこれを基礎として交渉・訴訟を行います。
過失割合はなぜもめるのか――保険会社が提示する3つの問題
ブライト事務所に寄せられる相談の中で、過失割合がもめる理由として最も多いのは以下の3点です。
問題①:保険会社の提示が「自社に有利な解釈」になっている
保険会社の担当者は、判例タイムズの基本割合を参照しつつも、修正要素の解釈で自社(加害者側)に有利な方向に寄せる傾向があります。たとえば「ドライブレコーダーがない」「目撃者がいない」という状況で、被害者側の過失を大きく見積もることがあります。被害者が「なぜ自分が悪いんですか」と抗議しても、具体的な根拠を示さずに「基準上そうなっています」と押し切られてしまうケースが実際に多くあります。
問題②:事故の経緯を証明する証拠が少ない
目撃者がおらず、ドライブレコーダーもない事故では、当事者の証言のみが証拠になります。警察が作成する実況見分調書が重要な証拠になりますが、当事者の供述を基にしているため、その後の争いで「調書の記載が事実と異なる」という問題が出ることもあります。
問題③:被害者が法的知識を持っていない
「判例タイムズ」「修正要素」「過失相殺」という概念を被害者が知らないまま交渉が進むと、保険会社の言いなりになってしまいます。弁護士費用特約(LAC)があれば弁護士費用を保険で賄えますが、「特約を使えること自体を知らない」ために自分で交渉してしまう被害者が後を絶ちません。
修正要素とは何か――基本割合を変える13の要素
判例タイムズの基本割合は「典型的な状況」を前提にしており、実際の事故では以下のような修正要素によって基本割合が増減します。弁護士が過失割合を争う際は、これらの修正要素の適用可否が主戦場になります。
| 修正要素 | 加害者の過失への影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 著しい速度超過(30km/h以上) | +15〜20% | 判タ各図 |
| 信号無視(赤信号での進入) | 基本過失で大幅加算(事故類型で異なる) | 判タ各図 |
| 飲酒運転(酒気帯び) | 著しい過失:+10% | 判タ各図 |
| 飲酒運転(酒酔い) | 重過失:+15〜20% | 判タ各図 |
| 前方不注視 | +5〜10% | 判タ各図 |
| スマートフォン操作(ながら運転) | +5〜10% | 実務例 |
| 著しい不注意(被害者側) | 被害者−5〜10% | 判タ各図 |
| 幹線道路走行(優先道路) | 非優先側+10% | 判タ各図 |
| 夜間・悪天候 | +5〜10% | 判タ各図 |
| 合図なし(ウィンカーなし) | +5〜10% | 判タ各図 |
重要なのは、「修正要素が複数重なっても、加害者の過失割合は最大100%まで」という実務上の上限があることです。また、保険会社が修正要素を認めない場合、弁護士が証拠(ドラレコ映像・実況見分調書・目撃者証言)を用いて適用を主張することになります。
典型パターン別の過失割合と「納得いかない」事例
追突事故(後ろから突っ込まれた)
最も典型的な「被害者過失0、加害者100」のケースです。ただし、被害者の急ブレーキ・車線変更直後の追突など「被害者側の行動が遠因」とされると修正が入ることがあります。追突直前の動きをドライブレコーダーで確認することが重要です。
交差点での出会い頭・右直事故
信号のない交差点や、信号のある交差点で右直事故が起きた場合の基本割合は、左方優先・幹線道路優先などのルールで決まります。右折車と直進車の衝突(右直事故)では、右折車が有責とされやすいですが、直進車に速度超過があれば修正が入ります。
センターラインオーバー・逆走
センターラインをオーバーしてきた車との正面衝突では、センターラインを越えた側の過失が90%以上とされることが多く、被害者側の過失は限定的です。ただし、双方がセンターラインを越えていたケースや、道路幅が狭い山間部での事例では修正が入ることがあります。
歩行者・自転車の事故
歩行者・自転車は「交通弱者」として保護される立場です。横断歩道外横断でも、車が速度を落とさなかった場合は車側が70〜80%の過失とされるケースがあります。ただし、信号無視・飛び出しなど歩行者側に著しい不注意がある場合は修正されます。
弁護士が過失割合を覆した実例(ブライト事務所の実案件)
実例1:バイク右直事故 30対70→10対90に修正
バイクで直進中に右折してきた車と衝突した事案。保険会社は「バイクの速度超過」を主張して当方30対相手70を提示。弁護士が介入し、ドライブレコーダー映像から速度超過がないことを証明し、相手方の右折時の前方不注視(スマートフォン使用の痕跡)を指摘。最終的に10対90での解決に至りました。損害総額400万円の事案で、過失割合の修正により実際に受け取れる額が280万円から360万円に増額(約80万円の差)となりました。
実例2:駐車場内バック事故 相手主張50対50→30対70に修正
コンビニ駐車場内でバック中の相手車両と接触した事案。相手保険会社は「駐車場内事故は双方過失50対50」と主張。ブライト弁護士が判例タイムズ335図・336図を適用し、「出庫車が入庫車に優先的に進路を譲る義務」を主張。コンビニの防犯カメラ映像(14日以内に証拠保全を行い確保)を証拠として提出し、30対70での解決に至りました。
実例3:追突事故で相手が「急ブレーキ」を主張 0対100を維持
後方からの追突被害にもかかわらず、加害者側が「前方車両が急ブレーキをかけた」と主張して10対90の修正を求めてきた事案。弁護士が実況見分調書・制動痕の分析・目撃者証言を組み合わせ、急ブレーキの事実がないことを立証。0対100のまま示談を成立させました。
過失割合を争う具体的な手順
- 事故直後の証拠確保:ドライブレコーダー映像・現場の写真・防犯カメラ映像(コンビニ等は14日以内に申請しないと上書きされる)・目撃者の連絡先。
- 警察への申告:人身事故として警察に届け出る。物損のみでは実況見分が行われず、過失割合の争いで不利になる。
- 弁護士費用特約の確認:自分の自動車保険・火災保険・クレジットカード付帯保険に弁護士費用特約が付いているか確認する。あれば弁護士費用を保険で賄える。
- 弁護士に相談・依頼:保険会社の提示に同意する前に弁護士に相談する。一度同意した示談は原則として覆せない。
- 交渉または紛争処理センター・訴訟:任意交渉が決裂した場合、交通事故紛争処理センター(ADR)または民事訴訟によって過失割合を確定させる。
各シーン別の詳細解説記事(内部リンク一覧)
以下の記事では、事故類型ごとの過失割合の詳細(判例タイムズの図番号・修正要素・弁護士が争うポイント)をさらに掘り下げて解説しています。
丁字路(T字路)事故の過失割合
直進・右折・左折の3パターン別に、判例タイムズの基本割合と修正要素を解説。見通しの悪い丁字路で多発するもめ方とその対処。
駐車場内事故の過失割合
「駐車場内は50:50」は誤りです。バック衝突・通路・出入口のケースで異なる判タ基準(335図・336図)と証拠の取り方。
バイクすり抜け事故の過失割合
左側すり抜け・右側すり抜け・信号待ちすり抜けのパターン別解説。バイク側の修正要素と有利に争う証拠の使い方。
Uターン・サンキュー・ゼブラゾーン事故の過失割合
意外と知られていない3類型。ゼブラゾーンは「進入禁止ではない」が過失割合に影響する実務の論点を解説。
過失割合に納得できないときの対処法
弁護士が実際に過失割合を争って覆したケースと、交渉・ADR・訴訟の3ルートの使い分け方。
交通事故の過失割合に納得いかないときの対処法
過失割合を争うための基本的な知識と実践的な手順を弁護士が解説。
交通事故の過失割合の具体例と対処法
場面別・パターン別の過失割合事例を多数収録。自分のケースを探す際の出発点に。
弁護士に依頼するメリット・費用
弁護士が過失割合交渉で強みを発揮する3つの理由
理由1:判例タイムズの精密な適用 判タは数百の事故類型と修正要素を網羅していますが、「自分の事故がどの図に当たるか」「修正要素が適用されるか」の判断は法的知識を必要とします。弁護士はこれを正確に適用し、保険会社の恣意的な解釈を正します。
理由2:証拠の収集と保全 防犯カメラ映像は14日前後で上書きされます。弁護士が早期に証拠保全の申立て・コンビニ等への任意提供依頼を行うことで、重要な証拠を確保できます。
理由3:交渉の相手が変わる 被害者本人が保険会社と交渉すると、心理的な圧力に負けてしまうことがあります。弁護士が代理人になると、交渉の土俵が法律的な根拠に基づく対等なものになります。
弁護士費用の目安(弁護士費用特約なしの場合)
弁護士費用特約がない場合でも、交通事故案件では着手金0円・成功報酬制(弁護士が増額した分からいただく形式)で対応しています。増額できなければ報酬は発生しません。まずは無料相談で費用の見積もりをご確認ください。
FAQ:よくある質問
Q. 保険会社の提示した過失割合に一度同意してしまいました。覆せますか?
A. 示談書にサインした場合、原則として覆すことは非常に困難です。ただし、詐欺・錯誤・強迫があった場合は取消しの余地があります。まだサインしていない場合は、今すぐ弁護士に相談してください。
Q. ドライブレコーダーがなくても過失割合を争えますか?
A. 争えます。実況見分調書・目撃者証言・現場写真・防犯カメラ映像・事故直後の当事者の発言(SNS・LINE等)なども証拠になります。ドライブレコーダーがないと不利になりやすいですが、諦める必要はありません。
Q. 相手が無保険(任意保険未加入)の場合、過失割合を争う意味はありますか?
A. 自賠責保険は残るため、自賠責の範囲で請求できます(傷害120万円・後遺障害4000万円・死亡3000万円が上限)。また、加害者本人への直接請求(分割払い交渉・訴訟)や、自分の人傷保険の活用も含め、弁護士が複数の回収ルートを検討します。
Q. 時効はいつまでですか?
A. 2020年4月1日以降の交通事故(人身傷害)については、知った時から5年(改正民法724条の2)が原則です。傷害部分は事故発生日から5年、後遺障害部分は症状固定日から5年が起算点となります。物損部分は知った時から3年のままです。ただし時効の計算は複雑なため、早めに弁護士に相談してください。
Q. 弁護士費用特約の上限(300万円)を超えそうな案件でも依頼できますか?
A. 超過分は依頼者の自己負担となりますが、損害額が大きい案件では増額報酬で十分にカバーできることが多いです。弁護士費用の見通しは初回相談でご説明します。
Q. 過失割合と後遺障害等級はどちらが重要ですか?
A. 両方重要です。後遺障害等級が1段階上がると慰謝料が数百万円単位で変わります。また、過失割合は認定された損害額全体に乗じられるため、後遺障害等級が高い案件ほど過失割合の影響も大きくなります。後遺障害等級の詳細は後遺障害認定の完全解説をご参照ください。
過失割合に納得できないなら、今すぐ相談を
弁護士費用特約あり:費用ほぼ無料
弁護士費用特約なし:着手金0円・完全成功報酬制
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まとめ
- 過失割合は保険会社が決めるものではなく、当事者が合意するまで確定しない。
- 判例タイムズの基本割合+修正要素が基準。弁護士はここを正確に適用して争う。
- ドライブレコーダー・防犯カメラ映像・実況見分調書・目撃者証言が主な争いの材料。
- 弁護士費用特約があれば費用ほぼ無料。なくても着手金0円・成功報酬制で対応可能。
- 一度示談書にサインすると原則として覆せない。必ず同意前に弁護士に相談する。
事故の状況、相手方の主張、お手元の証拠を整理して、一度弁護士に話を聞いてみてください。相談は無料で、費用の見通しもその場でお伝えします。




