交通事故による腰椎圧迫骨折の治療中に、保険会社から「そろそろ治療費の支払いを終了します」という連絡がくることがあります。いわゆる「治療費打切り(治療終了通告)」です。しかし、保険会社の通告に従う義務はありません。治療が必要な状態であれば、打切りを断り継続することが被害者の権利です。
【執筆・監修】
執筆:松本 洋明 弁護士(弁護士法人ブライト・交通事故主任)
登録:2010年/修習63期/交通事故・後遺障害を専門に担当
監修:和氣 良浩 弁護士(代表・弁護士歴14年以上)
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なぜ保険会社は治療費打切りを急がせるのか
相手方保険会社は、支払う賠償額を少なくするインセンティブがあります。治療費は治療を続けるほど増え続けるため、早期に打ち切ることで支払い総額を抑えようとします。また、治療期間が長くなるほど後遺障害が認定されやすくなり、後遺障害慰謝料・逸失利益の支払いが発生するリスクも高まります。
腰椎圧迫骨折の場合、骨の癒合には通常3〜6か月かかりますが、後弯変形が進んでいる場合や複数椎体が骨折している場合はさらに長期の治療が必要です。保険会社が「骨がくっついた」として3〜4か月で打切りを通告してきても、痛みやしびれが残っている段階では症状固定と判断するのは早すぎます。
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打切り通告を受けた日にすべき3つのこと
- 主治医に「まだ治療が必要か」を確認する:医師が「治療継続が必要」と判断している場合、その旨の診断書・意見書を書いてもらう
- 保険会社には口頭で応じない:「打切りを了承しました」という形の返答をしない。「弁護士に相談します」と伝えるだけで十分
- 弁護士に相談する:弁護士費用特約(弁特)がある場合、自己負担ゼロで弁護士に動いてもらえます。弁特がない場合も、早期相談で選択肢が増えます
弁護士法人ブライトの処理実績(PII匿名化):腰椎圧迫骨折で治療中の方が、受傷から約3か月で保険会社から「治療費支払いを終了する」と一方的に通告されたケースがありました。主治医は「骨折の癒合が完全ではなく、現時点での症状固定は早い」との見解でした。弁護士が保険会社と交渉し、整形外科医の意見書を根拠に治療継続を認めさせ、最終的に後遺障害11級7号の認定を獲得した実績があります。
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治療継続を主張するための医学的根拠
保険会社に治療継続を認めさせるためには、以下の医学的根拠が有効です。
- 主治医による「治療継続が必要」旨の診断書・意見書
- 骨癒合が未完了であることを示す画像所見(X線・CTで骨折線が残存)
- 神経症状(しびれ・疼痛)が持続していることを示す神経学的所見
- 日常生活・就労への支障を示す具体的記録
打切りに応じた場合・応じなかった場合の違い
| 項目 | 打切りに応じた場合 | 弁護士介入で継続した場合 |
|---|---|---|
| 治療費 | 以降は自費 | 症状固定まで相手方保険会社が支払い |
| 症状固定時期 | 早い段階で固定 | 医師の判断で適切な時期まで治療継続 |
| 後遺障害申請 | 画像・所見が不十分な状態で申請 | 十分な医学的資料を揃えて申請 |
| 最終的な補償額 | 低くなるリスク高 | 適正な等級・補償額を獲得できる可能性 |
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打切り後を見据えた準備:健康保険への切り替え
やむを得ず治療費打切りになってしまった場合でも、治療を中断する必要はありません。健康保険に切り替えて治療を続けることができます。
交通事故の治療には健康保険を使えないと思っている方が多いですが、これは誤解です。健康保険を使って自己負担3割で治療を続け、後日その費用を加害者側に請求するという方法が実務上も認められています。ただし、健康保険組合によっては「第三者行為届」の提出が必要です。
専門書籍・判例が示す症状固定の基準
「症状固定」とは「これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態」を指します。この判断は医師が行うものであり、保険会社が一方的に決定できるものではありません。
法律上の根拠として、最高裁昭和58年9月6日判決は「交通事故と相当因果関係のある損害の範囲は、症状固定時まで継続する治療費を含む」との判断を示しています。また、損害保険料率算出機構(自賠責保険の審査機関)の実務上、腰椎圧迫骨折については骨癒合の完了・後弯変形の安定を確認した上で症状固定と判断する運用が確立しています。
「交通事故損害額算定基準(青い本)」(日弁連交通事故相談センター)では、治療費の請求範囲として「症状固定日まで」が原則であり、保険会社の通告日ではないことが明確にされています。弁護士が介入する実益の一つは、この「症状固定日の正確な認定」を確保することにあります。
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よくあるご質問(FAQ)
Q1. 保険会社から「そろそろ症状固定ですね」と言われました。応じる必要がありますか?
応じる必要はありません。症状固定の判断は主治医が行うものです。主治医が「治療継続が必要」と判断しているなら、保険会社の打診を断ることができます。
Q2. 治療費が打ち切られたら、自費で払わないといけませんか?
健康保険に切り替えて治療を続け、後日その費用を相手方に請求する方法があります。また、弁護士が交渉することで打切り撤回を求めることも可能です。
Q3. 打切り通告から何日以内に対応が必要ですか?
法律上の期限はありませんが、打切り日以降の治療費は支払われなくなります。通告を受けたら早急に弁護士に相談し、対応方針を決めることをお勧めします。
Q4. 弁護士費用特約がない場合はどうすればよいですか?
弁護士費用特約がなくても相談はできます。治療費打切りに関する交渉は、増額分が弁護士費用を上回ることが多く、費用倒れになりにくいケースです。まずは無料相談でご確認ください。
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