「8級は無理、11級がせいぜいです」——保険会社または担当医にそう告げられた方が、弊所に相談に来られます。
腰の激痛、長引く治療、そして「変形はあるが著しくない」という診断。11級と8級では慰謝料だけで410万円の差があります。「著しい変形かどうか」の判断は、医師の書き方と弁護士の立証次第で変わり得ます。
このページでは、その分岐点と8級認定を目指すための実務を整理します。
このページでわかること
- 8級は無理、11級がせいぜいと言われる本当の理由
- 認められた事案・否認された事案の分岐点
- 著しい変形の画像計測と運動障害の立証の具体的な方法
- 弁護士に依頼した場合・しなかった場合の金額差

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8級は無理、11級がせいぜいと言われる理由
8級と11級を分ける基準は、「脊柱の変形が著しいかどうか」と「運動障害を伴うかどうか」です。
8級2号:脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの
11級7号:脊柱に変形を残すもの
「著しい変形」とは、椎体の高さが原則として健側比1/2以下に減少した状態などを指します。保険会社は「1/2以上の圧潰がない」と判断されると11級を主張してきます。しかし、複数椎体の変形・運動障害の有無・MRIと単純X線の総合評価で争う余地があります。
認められた事案・否認された事案——分岐点はここだった
弊所が関わった腰椎圧迫骨折の事案を振り返ると、等級認定の分岐点はほぼ一点に集約されます。
「著しい変形の画像計測と運動障害の立証を、具体的な資料で示せたかどうか」
| 状況 | 結果 | 決め手 |
|---|---|---|
| 椎体高さ50%以上減少+腰椎伸展制限あり | 8級2号認定◎ | 画像計測値+可動域検査で運動障害を立証 |
| 椎体高さ40%減少・運動障害の立証なし | 11級7号 | 「著しい変形」の立証が不十分と判断 |
| 複数椎体に変形・隣接椎体への影響を主張 | 8級2号に変更(異議申立て) | 複数椎体の総合評価+後遺障害診断書記載修正 |
| 保険会社提示(11級)で示談 | (11級で確定) | 弁護士未介入・示談書署名 |
※実際の事案を抽象化した分岐パターンです(個人情報は含みません)

弊所が使う立証パターン3つ
パターン① 画像計測値の精緻化
椎体の高さ変化を正確に数値化することが最重要です。
事故前後の単純X線・CTの椎体高さを計測・比較(複数時点)、MRIでの脊髄・神経根への影響を確認、整形外科専門医による「著しい変形」の判定意見書——これらを組み合わせます。
パターン② 運動障害の客観的立証
8級2号の「運動障害」要件を満たすために、可動域測定を正確に行います。
腰椎屈曲・伸展・側屈の複数回測定(同条件)、測定値が健側比1/2以下であることの証明、日常生活での前屈・後屈制限を本人陳述書で補完——これらが必要です。
パターン③ 後遺障害診断書の内容精査
後遺障害診断書の記載が不十分だと、正当な等級が認定されません。
「変形の程度」欄に計測値が具体的に記載されているか、「運動障害」欄に可動域測定値が記載されているかを確認します。記載不足の場合は主治医への補記を依頼します。
弁護士に依頼した場合・しなかった場合の金額差
被害者Cさん(45歳・会社員・年収550万・腰椎圧迫骨折)の試算:
| 費目 | 11級(保険会社提示) | 8級(弁護士介入・等級アップ後) |
|---|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 420万円 | 830万円 |
| 逸失利益(22年分) ※就労可能年数22年・法定利率3%・ライプニッツ係数15.937 |
約1,753万円(20%) | 約3,944万円(45%) |
| 差額目安 | — | 約2,600万円規模の差 |
示談前に確認したい3ステップ
ステップ1 症状固定前に専門医受診・計測記録を確保する
圧迫骨折は経時的に椎体が潰れていくことがあります。症状固定のタイミングで再度X線・CTを撮影し、最も変形が大きい時点の画像を確保します。
ステップ2 後遺障害診断書の内容を確認する
「変形の程度(計測値)」「運動障害の有無(可動域数値)」が具体的に記載されているか確認します。
ステップ3 11級の認定通知を受けたら即座に弁護士へ
11級が来た段階でも、異議申立てにより8級に変更できる可能性があります。ただし自賠責の異議申立てには時効があります。
示談書に署名すると、原則として後から覆すことはできません。保険会社の提示が来た段階で、必ず弁護士に確認してください。
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11級7号・8級2号の等級基準をより詳しく知る
前章で「著しい変形か否か」「運動障害の有無」が分岐点と説明しました。ここでは自賠責認定実務上で使われる具体的な評価ポイントをさらに掘り下げます。
11級7号「脊柱に変形を残すもの」の評価ポイント
11級7号は、画像上で脊柱に変形が残存していると認められれば該当し得る等級です。具体的には次のような所見が評価されます。
- 骨折部の楔状変形(くさび型の変形)がレントゲン・CT上で確認できること
- 変形が画像上明確に認識できる程度に存在すること(「軽微」と判断されると非該当になる場合があります)
- 単純X線と側面CTを組み合わせた多方向評価で変形の実態を示すこと
ただし11級7号に該当するかどうかは、単純な「圧潰の有無」だけでなく、画像所見全体の評価によって判断されます。「変形はあるが軽微」と処理されてしまうと11級に至らない場合もあるため、後遺障害診断書に変形の程度を具体的に記載してもらうことが重要です。
8級2号「著しい変形または運動障害を残すもの」の評価ポイント
8級2号に認定されるルートは2つあります。
ルートA:著しい変形
椎体の高さが画像上著しく減少しているとされる場合です。実務では「前方椎体高の著しい減少」がメルクマールとして参照されることがありますが、具体的な認定は画像所見の総合評価によって行われます。単一数値での機械的判断ではなく、複数椎体への影響・事故前後の変化・撮影条件なども考慮されます。
ルートB:運動障害
脊柱の可動域が著しく制限されている場合です。前屈と後屈の合計可動域が参考可動域(腰椎は屈曲45°+伸展30°の合計75°が基準値)の1/2以下に低下していること、またはいずれか一方向の可動域が1/2以下に制限されていることが評価されます。
なお、脊柱がほぼ完全に動かなくなる強直状態(可動域がほぼゼロ)は6級5号(脊柱に著しい運動障害を残すもの)に相当し、8級よりもさらに上位の等級になります。
等級認定の見直しを検討されている方へ
「11級では納得できない」という方は、まずご相談ください
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可動域測定の「落とし穴」と精度を上げるための実務対策
8級2号のルートBを目指す上で、可動域測定の正確さは勝負を分けます。測定値が不正確だと、本来8級に相当する状態でも11級の認定にとどまることがあります。実務上よく見られる落とし穴を整理します。
- 主治医の測定指示が曖昧だと低く出がち:「無理しない範囲で動かしてください」という指示では、患者が自主的に制限してしまう場合があります。「今できる最大限」を引き出す測定環境が必要です。
- 痛みで動かせないのか、構造的に動かないのかの区別が重要:疼痛による随意的な制限は後遺障害としての評価が難しくなります。骨・靱帯・筋肉の構造的な損傷による制限であることを、画像所見と組み合わせて示す必要があります。
- ゴニオメーターによる複数回測定と再現性の確認:1回の測定値だけでは信頼性が疑われることがあります。同一日に複数回測定して再現性を示すことが説得力を高めます。
- 協力医・専門医による再測定の意義:主治医の測定値に疑義がある場合は、整形外科専門医による再測定と意見書の取得が有効な選択肢になります。
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後遺障害診断書の記載が等級を左右する
可動域測定の数値や画像所見が8級水準であっても、後遺障害診断書の記載が不十分だと自賠責審査で正当に評価されません。診断書を受け取ったら、以下の点を確認してください。
- 「変形の程度」欄:圧潰の状態(楔状変形・前方椎体高の変化)が具体的な計測値で記載されているか
- 「運動障害」欄:可動域測定値(屈曲〇°・伸展〇°・側屈〇°)が数値で記載されているか
- 画像との整合性:MRI・CT・X線の所見が診断書の記載内容と矛盾していないか
- 「日常生活への支障」欄:前屈・後屈の制限が日常生活や仕事に与えている具体的な影響(重い荷物の持ち上げ困難・長時間の座位不可など)が記載されているか
記載が不十分な場合は、主治医への補記依頼を弁護士と連携して行うことが効果的です。
労災認定を受けている場合——障害給付の差も見逃せない
通勤中の事故や業務中の事故で圧迫骨折が生じた場合、労災保険の障害給付も受け取ることができます(交通事故損害賠償との調整が行われます)。等級によって給付形態が大きく異なります。
| 等級 | 後遺障害慰謝料(裁判基準) | 労働能力喪失率 | 労災障害給付 |
|---|---|---|---|
| 11級7号 | 420万円 | 20% | 一時金(223日分) |
| 8級2号 | 830万円 | 45% | 年金(継続給付) |
| 6級5号(強直状態) | 1,180万円 | 67% | 年金(6級) |
8級と11級の差で慰謝料は410万円異なりますが、逸失利益(労働能力喪失分)を加えると総額で約2,600万円規模の差が生じることがあります(試算例:年収550万・22年・法定利率3%。年収・年齢・就労可能年数によって個別に異なります)。また労災障害給付については、11級は一時金ですが8級以上は年金形式での継続給付となり、長期にわたる受給総額の差は相当大きくなります。
通勤災害や業務災害で圧迫骨折を負われた方は、通勤中の圧迫骨折の慰謝料相場と請求手順も参照してください。
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まとめ
腰椎圧迫骨折の等級・賠償認定は「資料の揃え方」で結果が変わります。8級は無理、11級がせいぜいという言葉は交渉の出発点に過ぎません。示談書に署名する前に——まず一度、ご相談ください。
弊所に依頼したらどうなるか・3点
- 弁護士費用特約があれば費用負担を大幅に軽減できます——多くの自動車保険・火災保険に付帯。多くのプランで上限300万円まで保険から支払われます(ご契約の保険内容をご確認ください)
- 受任後は松本弁護士(交通事故専従)が担当します——弁護士歴15年以上・元損保側代理人の経験を持ち複雑事案に多数の実績
- 着手金・弁護士報酬は示談成立後の成功報酬型です——着手金ゼロ・成功報酬型。なお、通信費・印紙代等の実費は別途発生する場合があります

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執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士(弁護士法人ブライト パートナー弁護士)
登録2010年・修習63期・交通事故事件主任。元損保側代理人の経験を持ち、交通事故案件を年間多数担当。後遺障害・脊椎損傷・素因減額の争いなど複雑事案に多数の実績。
▶ プロフィール詳細
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士(弁護士法人ブライト 代表)
弁護士歴20年以上。交通事故・労災・企業法務を横断的に取り扱う。
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