監修:和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会 大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。 「法務担当者を採用すべきか、顧問弁護士で足りるのか」——中小企業の経営者から繰り返しいただくご相談です。人を採るか外に出すかの二択で考えると判断を誤ります。両者は代替関係ではなく、担える機能が構造的に違うためです。 当事務所では、社内の法務担当者が続けて退職し、法務のレビュー機能が止まりかけた会社について、受任範囲を広げた契約へ切り替えた経験があります。この記事では、その経験も踏まえて機能の違い・法務担当者1名体制の構造的リスク・規模別の併用パターンを整理します。 機能で比べる:法務部と顧問弁護士は何が違うのか 「社内か社外か」ではなく、担える機能で比べると差がはっきりします。 機能 社内法務部(担当者) 顧問弁護士(外部) 事業の細部の理解 ◎ 日常の会話・現場の空気まで把握できる △ 説明を受けて把握する。継続契約で徐々に深まる 反応の速さ(日常の軽い確認) ◎ 席で聞ける ○ 連絡手段の設計次第。チャット運用なら実務差は小さい 訴訟・労働審判・保全の代理 ✕ 弁護士でなければ代理できない ◎ 本来業務 相手方名義での交渉・通知 △ 会社名義に限られる ◎ 弁護士名義の重みが使える 専門分野の幅(M&A・英文契約・労務・知財) △ 担当者の経歴に依存する ◎ 事務所内で分野の異なる弁護士に振り分けられる コストの性質 固定費(人件費・社会保険・採用コスト) 月額+個別事件の変動費 業務量の波への対応 △ M&Aなど一時的に集中すると回らない ◎ 波のある業務ほど外部が向く 担当者不在時の継続性 ✕ 退職・休職で機能が止まる ◎ 組織として継続する 社内への浸透・教育 ◎ 現場に定着させられる ○ 研修・雛形提供で支援する この表を見ると、法務部が強いのは「日常の密度」、顧問弁護士が強いのは「専門性・代理権・継続性」だとわかります。どちらかがあれば足りるという関係ではありません。 自社にどちらが必要かの整理からご相談ください 採用と外部委託のどちらが向くかを、事業の状況からご一緒に整理します。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、法務部がない会社の外部法務部です。顧問先130社以上を実名で公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る お問い合わせフォームへ(電話 0120-929-739) 法務担当者の退職で法務機能が止まりかけた会社の例 当事務所が経験したなかでもっとも切迫したご相談は、社内の法務担当者が続けて退職し、法務のレビュー機能そのものが止まりかけたというものでした。 この会社が当時抱えていた法務案件は、次のように幅の広いものでした。 組織再編の手続とスケジュールの策定 海外取引に関する英文契約書のレビュー 退職した従業員に関する立替金の回収 在籍社員からのハラスメント報告への対応手順の整備 取引先からの契約解除通知への対応 この幅を担当者1名で回すことは、そもそも構造的に無理があります。分野が労務・会社法・国際契約・不動産と分散しているため、当方も複数名の弁護士で分担する体制で対応しました。 結果として、この会社では通常の顧問契約より受任範囲を広げた契約に切り替え、社内法務が担っていた業務を外部で引き受ける形をとりました。 この経験からお伝えしたい実務上の注意点が一つあります。契約の切り替えは、範囲と情報の流れを事前に文書で詰めておかないと機能しません。「どこまでを外部が担うのか」「社内の各部門から誰に連絡が来るのか」「資料はどこに置くのか」——ここが曖昧なまま始めると、移行期に必ず認識のずれが生じます。外部委託を検討される会社は、この設計を契約前に固めてください。 法務担当者1名体制は「単一障害点」になる 上記の事例から抽出できるいちばん重要な論点がこれです。法務担当者が1名の会社では、その1名が単一障害点(そこが止まると全体が止まる箇所)になります。 発生事象 1名体制で起きること 退職 進行中の契約交渉・紛争対応の経緯が引き継がれない。契約書の保管場所すら不明になることがある 休職・産休・育休 数か月〜1年、法務のレビューが止まる。現場は「確認なしで押印」に流れる 業務量の急増(M&A・訴訟) 日常のレビューが後回しになり、通常業務側でリスクが積み上がる 専門外の論点 英文契約・知財・労働審判など、担当者の経歴外の分野で判断が止まる 採用によってこれを解消しようとすると、2名以上の法務体制が必要になり、固定費が跳ね上がります。1名法務+顧問弁護士という組み合わせは、固定費を抑えながら専門性と継続性を確保するための有効な選択肢のひとつです。どの体制が適するかは業種・規模・案件の量によって変わります。 規模別:3つの併用パターン パターンA:法務部なし(担当者0名)——顧問弁護士を外部法務部として使う 従業員数十名までの会社で多い形です。総務・経理の担当者が法務を兼務し、判断が必要な場面だけ顧問弁護士に振ります。 この形で成果を出すには、「誰が・どの経路で・どこまで相談してよいか」を最初に決めることが要になります。社長だけが窓口になっていると、現場のトラブルが社長に上がるまでのタイムラグでリスクが育ちます。 当事務所が「みんなの法務部」というサービス名を用いているのは、まさにこの形——法務部がない会社の外部法務部——を想定しているためです。 パターンB:法務担当者1名——日常は社内、専門性と代理権は外部 もっとも設計が重要なパターンです。役割分担の目安は次のとおりです。 担当 担う業務 社内法務担当者 定型契約のレビュー(雛形との差分チェック)/社内からの一次窓口/契約書の管理と期限管理/規程の運用/弁護士への相談内容の整理 顧問弁護士 非定型・高額・長期の契約/紛争化した案件/訴訟・審判の代理/M&A・組織再編/英文契約/規程の新規策定/担当者不在時のバックアップ この形の利点は、雛形と判断基準を外部が作り、運用を社内が担うという分業が成立することです。 当事務所が顧問先で実践しているのは、個別の契約書レビューで終わらせず、その前段の業務フローに踏み込む進め方です。たとえばキャンセル料の未収やクレームが繰り返し起きている会社では、まず「営業から契約締結までのフローが言語化・ルール化されているか」を確認します。急成長した会社では、ここが言語化されていないことがほとんどです。 そこで、申込書の様式・キャンセルポリシーの明記・請求の手順までまとめて設計し、書式を雛形化します。雛形と手順が整えば、社内の1名でも運用が回ります。 パターンC:法務部あり(複数名)——上流と有事に外部を使う 法務部が機能している会社では、顧問弁護士の役割が変わります。日常のレビューは社内で完結するため、外部に求められるのは次の2点です。 上流の設計:M&Aや組織再編で、条件が固まる前のスキーム検討に入る 有事の代理:訴訟・労働審判・第三者委員会など、社内では担えない局面 M&Aについて当事務所が顧問先にお伝えしているのは、「契約書ができてからレビューを求められても、その会社が本来望んでいたかたちを実現できないことがある」という点です。譲渡価格・スキーム・表明保証の枠組みが固まる前、つまり交渉段階から関与するほうが、動かせる条件が多くなります。 法務部があっても、M&Aのように一時的に業務量と専門性がスパイクする局面は外部と組むほうが選択肢が広がります。 1名法務のバックアップからご相談いただけます 法務担当者の退職・休職に備えた体制づくりもお手伝いしています。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、法務部がない会社の外部法務部です。顧問先130社以上を実名で公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る お問い合わせフォームへ(電話 0120-929-739) 予防法務は「外部の定期診断」と相性が良い 法務部の有無にかかわらず、社内だけで回りにくいのが予防法務です。日常業務に追われると、「まだ起きていない問題」に手をつける時間が取れません。 当事務所では、労務分野に的を絞った定期診断「法務ドック」をご用意しています。労務を先に見るのは、問題が発生しやすく、かつ迅速な対応が求められる領域だからです。企業経営の根幹である「人」に関わる部分に集中的に目を向けることが、問題の未然防止と早期解決につながります。 とくにご相談が多いのは、業務委託で働いている方を正社員として雇用するといった雇用形態の変更を予定している局面です。労務リスクが集中するタイミングなので、体制の整備を先行させるという判断は理にかなっています。創業期のスタートアップからも、このタイミングでのご相談をいただいています。 予防法務に関心のある方は、法務ドックの無料・匿名診断(所要5分)もご利用ください。 どちらを選ぶかの判断フロー 会社の状況 まず検討すべきこと 法務担当者なし・紛争は年数件 顧問弁護士(外部法務部型)。採用より先に、相談の入口と雛形を整える 法務担当者なし・契約書の量が多い 顧問弁護士+雛形整備。定型契約を社内で処理できる状態を作ってから採用を検討 法務担当者1名・専門外の案件で止まる 顧問弁護士を併用。バックアップ範囲を契約で明示する 法務担当者1名・退職リスクが不安 顧問弁護士を併用し、契約書・進行案件の情報を外部にも共有しておく 法務部あり・M&Aや海外展開を予定 上流(交渉段階)から外部を入れる。契約書レビューだけの依頼にしない 法務機能が実質止まっている 受任範囲を広げた契約(法務のアウトソーシング)を検討。範囲と情報の流れを契約前に文書化する 確認しておきたい「相談そのものに費用が発生するか」 顧問契約でもっとも見落とされやすいのが、相談そのものの課金方式です。顧問料の建て方は事務所によって異なり、月額の中で相談できる方式と、相談のたびに時間単位の費用が加算される方式があります。どちらの方式にも合理性がありますが、当事務所は「費用を気にせず、トラブルが小さいうちに相談できる環境」をつくることを重視しています。早い段階でご相談いただけるほど、打てる手は多く、総額も抑えられるためです。 そのため、契約前に次の3点を確認してください。 日常の法律相談は月額に含まれるか(相談のたびに費用が加算される方式か) 月額に含まれる業務時間の目安はどのくらいか その時間を超えたとき、費用が発生する前に説明があるか(気づかないうちに加算されない仕組みか) 当事務所「みんなの法務部」の場合 弁護士法人ブライトでは、プランごとに設定した「月あたりの業務時間の目安」の範囲内であれば、日常の法律相談は追加費用なしでお受けしています。相談1件ごと・1回ごとに費用が加算される方式はとっていません。回数で区切るのではなく、時間の目安で運用しているかたちです。 プラン 月額(税別) 月あたりの業務時間の目安 主な内容 お試し3ヶ月 3万円 1時間 法律相談 Standard 5万円 2時間 法律相談/経営・新規ビジネス相談/法務ドック/個別案件の着手金20%割引 Advanced 10万円 5時間 上記に加え、着手金30%割引 従業員数十名規模までの会社であれば、日常の法務相談・契約書のレビュー・トラブルの初動判断は Standard(月額5万円・月2時間の目安)の範囲で収まることが多くあります。もちろん案件の状況によって必要な時間は変わります。法務部を1名採用する場合の人件費と比べて検討される会社も少なくありません。 そして重要なのは、この時間を相当超える見込みになった場合、費用が発生する前に必ず当方からお伝えし、ご了解をいただいたうえで着手するという運用にしている点です(超過分は1時間あたり3万円・税別)。頻繁に超過する場合は、その都度課金を積み上げるのではなく上位プランへの変更をご案内します。気づかないうちに請求が膨らむことはありません。 ただし、訴訟・労働審判・本格的な交渉代理・M&Aの実行支援といった個別案件は月額とは別に費用が発生します。この境界は契約時に書面で明示しています。プランの詳細は顧問弁護士の費用相場・プラン一覧とみんなの法務部のサービス内容をご覧ください。 よくあるご質問 法務担当者を採用したら顧問弁護士は不要になりますか 不要にはなりません。弁護士でなければ訴訟・労働審判の代理はできず、弁護士名義での通知も出せません。また、担当者1名では専門分野の幅と不在時の継続性を担保できません。むしろ採用後は、顧問弁護士の使い方が「日常相談」から「専門性と有事」へ移り、費用対効果が上がることが多いです。 顧問弁護士は社内の事情をどこまで理解してくれますか 継続契約であれば、業種特有の商流・過去のトラブル・社内の力学まで蓄積されていきます。当事務所の顧問先では、組織再編から日常の労務相談まで幅広くご相談いただいています。短期のスポット依頼と継続的な顧問契約では、この点が決定的に違います。 法務のアウトソーシングはどこまで任せられますか 組織再編の手続、英文契約書のレビュー、労務問題、ハラスメント対応手順の整備、社内各部門との連絡フローの設計まで担った例があります。ただし業務範囲の定義と情報管理の方法を最初に文書で固めることが前提です。ここが曖昧なまま始めると、移行期に必ず認識のずれが出ます。 費用はどちらが安く済みますか 単純比較はできませんが、構造として法務部は固定費、顧問弁護士は月額+変動費です。案件が波打つ会社、専門分野が広い会社では外部のほうが総額を抑えやすくなります。費用の内訳は顧問弁護士の追加費用と顧問弁護士の費用相場をご覧ください。 法務体制の設計からご相談ください 採用・外部委託・併用のどれが向くか、事業の状況を伺って整理します。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、法務部がない会社の外部法務部です。顧問先130社以上を実名で公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る お問い合わせフォームへ(電話 0120-929-739) 関連情報・ご相談 ▶ 顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る ▶ 顧問弁護士の選び方|7つのチェックポイントを読む ▶ 法務ドック(無料・匿名の予防法務診断)を試す ▶ 顧問弁護士の見直し・セカンドオピニオン ※本記事は一般的な法律情報の解説であり、個別案件についての法的助言ではありません。記載した費用の水準・期間は、大阪の中小企業から当事務所に寄せられるご相談の傾向をもとにした一般的な目安であり、事案の内容・相手方の対応・裁判所の判断により変わることがあります。実際の対応方針は必ず弁護士にご確認ください。