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事業用テナントの立ち退き・明渡し請求への対応|正当事由・立退料・6ヶ月ルール

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

この記事の結論(先に要点)

  • 普通借家契約では、貸主からの更新拒絶・解約申入れに「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。正当事由がなければ、貸主は契約を終了させられず、借主はすぐに出ていく義務はありません。
  • 正当事由は、貸主・借主双方の建物使用の必要性を中心に、従前の経過・利用状況・建物の現況、そして立退料の提供を総合考慮して判断されます。立退料は正当事由を「補完」する一要素であり、立退料さえ払えば必ず明け渡させられる、というものではありません。
  • 期間の定めのある契約で貸主が更新を拒むには期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶の通知が必要で、期間の定めのない契約の解約申入れは申入れから6ヶ月の経過が必要です(借地借家法26条・27条)。
  • 立退料(補償)の金額は事案により大きく異なり、一律の「相場」はありません。営業補償・移転費用・内装造作の補償などを個別に積み上げて交渉します。
  • 定期借家契約は期間満了で確定的に終了するため、普通借家とは立ち退きの構造がまったく異なります(借地借家法38条)。まず自分の契約がどちらかを確認することが出発点です。
  • 「建替え」「老朽化」を理由とする明渡し請求でも、当然に正当事由が認められるわけではありません。安易に応じず、補償を含めて交渉する余地があります。

1. まず確認すべきは「普通借家か、定期借家か」

事業用テナントが貸主から立ち退き・明渡しを求められたとき、最初に確認すべきは契約の類型です。これによって取れる対応がまったく変わります。

契約類型終了の構造借主の保護
普通借家(一般の建物賃貸借)期間満了でも原則として更新される(法定更新)。貸主が終了させるには正当事由が必要強い。正当事由がなければ出ていく義務はない
定期借家(借地借家法38条)あらかじめ定めた期間満了で確定的に終了。更新がない弱い。期間満了による終了は争いにくい

契約書のタイトルや、「契約の更新がない」旨を記載した書面交付・説明が定期借家成立の要件です(借地借家法38条)。自分の契約がどちらかが分からない場合は、契約書一式を弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

2. 普通借家は「期間満了=出ていく」ではない — 法定更新の原則

普通借家契約は、期間が満了しても自動的に終了するわけではありません。

借地借家法26条は、期間の定めのある建物賃貸借について、当事者が期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に更新拒絶等の通知をしなかったときは、従前と同一条件で契約を更新したものとみなす、と定めています(法定更新)。

つまり、

  • 貸主が何も通知しなければ → 契約は自動的に更新される
  • 貸主が期間内に更新拒絶の通知をしても → その更新拒絶に「正当事由」がなければ効力がない(借地借家法28条)

「契約期間が終わるから出ていってほしい」と言われても、借主が直ちに明け渡す義務を負うとは限らないのが普通借家です。

3. 貸主の更新拒絶・解約申入れには「正当事由」が必要(借地借家法28条)

3-1. 正当事由とは

借地借家法28条は、貸主からの更新拒絶や解約申入れが認められるには「正当の事由」が必要だと定めています。条文が考慮要素として挙げているのは、おおむね次のとおりです。

  • 建物の貸主および借主が建物の使用を必要とする事情(最も中心的な要素)
  • 建物の賃貸借に関する従前の経過
  • 建物の利用状況
  • 建物の現況
  • 立退料その他の財産上の給付の申出(=立退料)

これらを総合的に考慮して、正当事由の有無が判断されます。

3-2. 立退料は「正当事由を補完する一要素」にすぎない

ここを誤解している方が非常に多いポイントです。

立退料は、貸主側の使用の必要性などがある程度認められる場合に、借主の不利益を金銭で補って正当事由を補強する位置づけです。貸主にまったく使用の必要性がないようなケースでは、立退料を提示されても正当事由が認められないこともあり得ます。

逆に、借主にとっては、正当事由が不十分な状況では、十分な補償(立退料)を得る交渉余地があるということでもあります。

4. 「解約申入れから6ヶ月」のルール(借地借家法27条)

期間の定めのない建物賃貸借(または期間満了後に法定更新されて期間の定めがなくなった場合など)で、貸主が解約を申し入れるときは、解約申入れの日から6ヶ月の経過によって契約が終了します(借地借家法27条)。

ただし、この解約申入れにも正当事由が必要である点は同じです(借地借家法28条)。

整理すると、

  • 期間の定めがある契約:期間満了の1年前〜6ヶ月前に更新拒絶の通知(26条)+正当事由(28条)
  • 期間の定めがない契約:解約申入れから6ヶ月経過(27条)+正当事由(28条)

「来月までに出ていってほしい」といった急な要求は、これらの法定の枠組みに照らしてそのまま受け入れる必要がない場合があります。

5. 立退料(補償)の考え方 — 「一律の相場」はない

事業用テナントの立ち退きで関心が高いのが立退料ですが、金額に一律の相場があるわけではありません。店舗かオフィスか、業種、立地、残存期間、移転の難易度などによって大きく異なります。

一般に、立退料の検討で積み上げられる要素には次のようなものがあります。

  • 営業補償:移転に伴う休業損失・売上減少など、事業への影響に対する補償
  • 移転費用:引越し費用、新規物件の取得・契約にかかる費用
  • 内装・造作の補償:既存テナントが設置した内装・造作が無駄になる分の補償
  • その他:得意先・顧客の喪失、告知費用 など

これらをどこまで・どの程度認めるかは個別の事情と交渉によります。貸主の最初の提示額が適正とは限らないため、内訳を確認し、不足する補償項目を主張していくことが重要です。

6. 「建替え」「老朽化」を理由とする明渡し

貸主からの立ち退き理由として多いのが、「建物が老朽化したので建て替えたい」というものです。

しかし、老朽化・建替えを理由とすれば当然に正当事由が認められるわけではありません。

  • 建物が倒壊の危険があるほど老朽化しているのか、それともまだ十分に使用できるのか
  • 貸主の建替えの必要性・計画の具体性・資金計画はどの程度か
  • 借主がその場所で事業を続ける必要性はどの程度か
  • 立退料による補償がどの程度提示されているか

こうした事情を総合して判断されます。「古いから」「建て替えるから」という説明だけで明渡しに応じる前に、正当事由の有無と補償の十分性を検討する余地があります。

7. 定期借家の場合は構造が異なる(借地借家法38条)

契約が定期借家である場合、期間満了によって契約は更新されることなく確定的に終了します。正当事由による保護(28条)は基本的に働きません。

ただし、定期借家でも、

  • 定期借家として有効に成立しているか(書面による契約・事前の書面交付と説明などの要件を満たしているか)
  • 一定面積以上の居住用などで必要な終了通知がなされているか

といった点は確認すべきです。要件を欠く場合には、定期借家としての効力が認められないこともあり得ます。まずは契約書類を精査することが出発点です。

8. 借主(事業用テナント)が取るべき対応

  1. 安易に「分かりました」と応じない
    ・口頭での合意でも不利に働くことがあります。明渡し時期・条件を即答しないことが大切です。
  2. 契約類型を確認する(普通借家か定期借家か)
    ・これによって取れる対応がまったく変わります。
  3. 貸主の主張する「正当事由」を吟味する
    ・貸主・借主双方の使用の必要性、建物の現況、立退料の提示内容を確認します。
  4. 補償(立退料)の内訳を確認し、不足を交渉する
    ・営業補償・移転費用・造作補償などが十分か検討します。
  5. 早めに弁護士に相談する
    ・合意してしまう前のほうが、交渉の選択肢が広がります。

賃料の改定や用法をめぐる別のトラブルが絡むこともあります。あわせて次の記事もご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 契約期間が終わると言われました。すぐに出ていかなければいけませんか?

A. 普通借家契約であれば、期間満了でも原則として契約は更新され(法定更新/借地借家法26条)、貸主が終了させるには正当事由が必要です(同28条)。正当事由がなければ、直ちに明け渡す義務を負わない場合があります。まずは契約類型と通知内容を確認してください。

Q. 立退料を払うと言われたら、応じるしかないのですか?

A. 立退料は正当事由を補完する一要素にすぎず、立退料の提示だけで当然に明渡し義務が生じるわけではありません。提示された金額が営業補償・移転費用などに照らして十分かを検討し、不足があれば交渉できる場合があります。

Q. 「建物が古いので建て替える」と言われました。応じないといけませんか?

A. 老朽化・建替えを理由とすれば当然に正当事由が認められるわけではありません。建物の現況、貸主・借主双方の必要性、立退料の提示内容などを総合して判断されます。応じる前に正当事由と補償の十分性を検討する余地があります。

立ち退き・明渡し請求でお困りの事業用テナントの方へ|弁護士法人ブライト

「契約が終わるから」「建て替えるから」と立ち退きを求められても、普通借家では貸主側に正当事由が必要であり、安易に応じる必要はありません。十分な補償を得られないまま合意してしまうと、後から取り返すのは困難です。

なお、事業者である借主には消費者契約法は適用されません。だからこそ、借地借家法の枠組みと契約内容を踏まえた専門的な交渉が重要になります。

弁護士法人ブライトは、オフィス・店舗など事業用賃貸借のトラブル対応に注力しています。契約類型・正当事由の検討から、立退料・補償の交渉、書面・行政対応まで一貫してサポートいたします。

まずは無料相談で、契約書と貸主からの通知を確認します。お気軽にお問い合わせください。

事務所弁護士法人ブライト(担当弁護士:和氣 良浩)
所在地〒530-0057 大阪市北区曽根崎2-6-6 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL06-4965-9590
FAX06-6366-8771
Mailgenzyoukaihuku@wk-gl.com

立ち退きリスクは、トラブルが起きてからでは対応の幅が限られます。契約類型(定期/普通)や特約の内容は、契約を締結する前に把握しておくべきものです。これから契約する方も、すでに契約中の方も、早めの確認をおすすめします。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的とするものであり、個別の事案については弁護士にご相談ください。

  • この記事を書いた人

笹野 皓平

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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顧問弁護士担当弁護士

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    笹野 皓平

    2008年

    京都大学 法学部(Kyoto University Faculty of Law)卒業

    2010年

    司法試験合格・立命館法科大学院修了

    2011年

    弁護士登録(大阪)

    2019年

    大阪弁護士協同組合 総代

    法人向け・個人向けを問わず、幅広い業務に取り組んできました。その場しのぎの単なる助言だけで終わるのではなく、最終的な局面を見据えた「真の問題解決」を目指す姿勢を大切にしています。

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事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
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