未収金があると診療を断れる?応招義務と医療費不払いの判断枠組み|病院・クリニック向け【弁護士解説】

未収金があると診療を断れる?応招義務と医療費不払いの判断枠組み|病院・クリニック向け【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪を拠点に、中小企業・医療法人の企業法務と顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

医療費が未収のままの患者さんが、また来院された。院内からは「次はお断りしてよいのではないか」という声が出る。しかし本当に断ってよいのか、判断がつかない——。病院・医療法人・クリニックの院長や事務長から、実務上よく寄せられる論点です。

結論から申し上げます。未収金があるというだけでは、診療を断ることは正当化されません。これは、厚生労働省が令和元年(2019年)12月25日に発出した通知(医政発1225第4号)が明確に示している整理です。一方で、断ることが正当化される余地がまったくないわけでもありません。判断は「未収金の有無」という一点ではなく、複数の要素を組み合わせて行うことになります。

この記事では、医師法19条1項が定める応招義務の法的な位置づけから、厚生労働省通知が示した判断枠組み、そして「断る」以外に医療機関が現実に取りうる設計までを整理します。大阪の弁護士法人ブライトが、医療機関の実務目線でまとめました。

なお、実際にどう対応するかは、患者さんの病状・診療科・診療時間・これまでの経緯といった個別事情によって変わります。本記事は一般的な判断枠組みの解説であり、個別の事案についての結論を示すものではありません。

未収金の対応方針、院内だけで決めていませんか

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未収金を理由に診療を断れるか|まず押さえる3つの前提

結論:未収金があることだけでは断れない

厚生労働省の通知は、医療費不払いについて次のように整理しています。

以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しないことは正当化されない。しかし、支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される。

(厚生労働省医政局長通知「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」令和元年12月25日・医政発1225第4号)

ここは二段構えになっています。原則として「未収金がある」だけでは断る理由にならない。ただし「支払能力があるのに悪意をもってあえて支払わない」といった事情が加われば、断ることが正当化されうる。院内で「前回払っていないから今回は断る」という運用を作ってしまうと、この原則の側に正面からぶつかります。

前提1:応招義務は「国に対する公法上の義務」

応招義務は、医師が患者個人に対して負う契約上の義務ではありません。同じ通知は、この点をはっきり示しました。

医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項に規定する応招義務は、医師又は歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師又は歯科医師の患者に対する私法上の義務ではないこと。

この位置づけは実務上、意味を持ちます。診療を断ったことが応招義務との関係で問題になる場面と、患者さんから民事上の責任を追及される場面は、判断のルートが別だということです。応招義務に反しないから民事上も一切問題ない、とは直ちには言えませんし、その逆も同様です。

前提2:医師個人の義務と、医療機関の責務は別に存在する

応招義務は、医師法19条1項・歯科医師法19条1項において、医師・歯科医師が「個人として」負担する義務として規定されています。勤務医として医療機関に勤務している場合でも、応招義務を負うのは個人としての医師である、と通知は述べています。

他方で、組織としての医療機関にも別途、患者からの診療の求めに応じて必要にして十分な治療を与えることが求められ、正当な理由なく診療を拒んではならない——という責務があるとされています(昭和24年9月10日・医発第752号「病院診療所の診療に関する件」の整理を、令和元年通知が引き継いでいます)。

つまり「医師個人」と「医療機関」の二層で考える必要があります。院長が個人として判断した内容が、そのまま法人としての対応方針になるわけではありません。未収金対応のルールを作るときは、法人としての受付・会計フローと、現場の医師の判断のどちらに何を担わせるのかを、あらかじめ切り分けておくことが実務的です。

前提3:「応召義務」と「応招義務」の表記

検索でも院内文書でも両方の表記が使われます。医師法・厚生労働省通知の表記は「応招義務」で、令和元年通知のタイトルも「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」です。文献や一般的な解説では「応召義務」も広く使われてきましたが、指している内容は同じです。院内規程を新たに作る場合は、根拠資料と照合しやすいよう「応招義務」で統一しておくと便利です。

⚖️ 医師法19条1項(応招義務)

  • 条文:「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」
  • 義務の性質:医師・歯科医師が国に対して負担する公法上の義務。患者に対する私法上の義務ではない(令和元年通知)
  • 義務の主体:個人としての医師・歯科医師。勤務医であっても同じ。これとは別に、医療機関としての責務も存在する
  • 歯科:歯科医師法19条1項に同趣旨の規定があり、通知も両者を並べて整理している

根拠:医師法(昭和23年法律第201号)19条1項、歯科医師法(昭和23年法律第202号)19条1項、令和元年12月25日医政発1225第4号

厚生労働省2019年通知が示した判断枠組み

令和元年通知は、「どのような場合に診療の求めに応じないことが正当化されるか」を、それまでより踏み込んで整理した点に特徴があります。ここが本記事の核心部分です。

最も重要な考慮要素は「緊急対応が必要かどうか」

通知は、最も重要な考慮要素を「患者について緊急対応が必要であるか否か(病状の深刻度)」としています。未収金でも迷惑行為でも、まずこの軸が最初に来ます。病状が深刻な救急患者に対しては、他の事情の比重が大きく下がる、という構造です。

院内で判断に迷ったとき、最初に確認すべきは「これは緊急対応が必要な状態か」であり、「この人はいくら未収があるか」ではありません。会計側の情報が診療の可否判断に先に立つ運用になっていないか、点検する価値があります。

次に「診療時間内か、時間外か」「信頼関係」

2つ目の軸は、診療を求められたのが診療時間・勤務時間内か、時間外かです。診療時間とは医療機関として診療を提供することが予定されている時間、勤務時間とは医師が当該医療機関において勤務医として診療を提供することが予定されている時間を指す、と通知は説明しています。この軸が加わった背景には、勤務医の過重労働や医療機関相互の機能分化・連携といった医療提供体制の変化があります。

3つ目の軸が、患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係です。未収金の問題も、迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)の問題も、最終的にはこの信頼関係の軸で評価されます。ここが、未収金の話が単なる「お金の話」で終わらない理由です。

4つの場面に分けた通知の整理

通知は、「緊急対応が必要/不要」×「診療時間内/時間外」の組み合わせで、次のように整理しています。

場面 診療時間内・勤務時間内 診療時間外・勤務時間外
緊急対応が必要
(病状の深刻な救急患者等)
専門性・診察能力、当該状況下での医療提供の可能性・設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性(医療の代替可能性)を総合的に勘案し、事実上診療が不可能といえる場合にのみ、診療しないことが正当化される 応急的に必要な処置をとることが望ましいが、原則、公法上・私法上の責任に問われることはないとされる。医療設備が不十分なことが想定されるため求められる対応の程度は低く、救急対応が可能な医療機関へ対応を依頼するのが望ましいとされる
緊急対応が不要
(病状の安定している患者等)
原則として患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要がある。ただし正当化される場合は、上記の諸事情に加えて信頼関係等も考慮して緩やかに解釈される 即座に対応する必要はなく、診療しないことは正当化される。ただし、時間内の受診依頼や他の診察可能な医療機関の紹介等の対応をとることが望ましいとされる

未収金が論点になるのは、多くの場合「緊急対応が不要」かつ「診療時間内」の枠、つまり表の左下です。この枠は原則として応じる必要があり、例外が認められる場合も信頼関係等を考慮して判断されるという位置づけになります。院内で「断れるかどうか」を議論するときは、まず自分たちのケースが表のどこに当たるかを確認してください。

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「医療費不払い」は正当な事由になるのか

ここからが、医療機関の実務で最も知りたい部分です。令和元年通知は、個別事例の一つとして「医療費不払い」を正面から取り上げました。原文の整理を分解します。

原則:過去の不払いだけでは断れない

通知は「以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しないことは正当化されない」と述べています。「未収があるから断る」という単線のルールは、通知の整理と正面から衝突します。

さらに通知は、支払能力についてもこう述べています。「保険未加入等医療費の支払い能力が不確定であることのみをもって診療しないことは正当化されない」。つまり、「この人は払えないかもしれない」という見込みだけでは、断る理由にならないという整理です。無保険の方や、保証人がいない方を、その事情だけを理由に受付段階で切り分ける運用は、この記述に照らして慎重な検討が必要になります。

例外:支払能力があるのに、悪意をもってあえて支払わない場合

他方で通知は、「支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される」としています。ポイントは2つです。

  • 支払能力があること——払えない人ではなく、払えるのに払っていない人であること
  • 悪意をもってあえて支払わないこと——支払いを忘れている、事情があって遅れている、という状態とは区別されること

この2つは、医療機関の側が説明できる形にしておかないと機能しません。「なんとなく払う気がなさそうだ」という現場の感触は、根拠としては弱いままです。督促をいつ・どの方法で行い、どう応答されたのかという記録が、ここで効いてきます。

「悪意のある未払いであることが推定される場合もある」という記述

通知には、さらに踏み込んだ一文があります。

また、特段の理由なく保険診療において自己負担分の未払いが重なっている場合には、悪意のある未払いであることが推定される場合もある。

「特段の理由なく」「重なっている」という2つの条件が置かれている点に注意してください。1回の未収が直ちにこの記述に当たるわけではありません。また「推定される場合もある」という控えめな表現であり、自動的に断ってよいという結論になるものでもありません。院内でこの記述を引用するときは、条件部分ごと引用しておくことをおすすめします。

保険診療と自由診療で扱いが分かれる部分

通知は、自由診療について次の整理を置いています。「医学的な治療を要さない自由診療において支払い能力を有さない患者を診療しないこと等は正当化される」。

「医学的な治療を要さない」自由診療という限定が付いている点が重要です。美容や自費のサービス提供的な領域と、医学的な治療が必要な領域とでは、同じ自由診療でも位置づけが変わりうるということになります。自費診療の比率が高い医療機関ほど、この線引きを院内で共有しておく必要があります。

ここまでの整理

院内でよくある状況 通知の整理に照らした位置づけ
前回の自己負担分が未収のまま、再度来院した それのみを理由に断ることは正当化されない
無保険で、支払えるかどうか分からない 支払能力が不確定であることのみを理由に断ることは正当化されない
特段の理由なく自己負担分の未払いが重なっている 悪意のある未払いが推定される場合もあるとされる。ただし緊急対応が必要な場合は別途の整理による
支払能力があるのに、悪意をもってあえて支払わない 診療しないことが正当化されうる。ただし「支払能力があること」「悪意があること」を医療機関側が説明できる状態が前提となる
医学的な治療を要さない自由診療で、支払能力がない 診療しないことは正当化されるとされる
病状が深刻で、緊急対応が必要 未収金の有無にかかわらず、緊急対応の枠組み(事実上診療が不可能といえる場合にのみ正当化)が先に立つ

表はあくまで通知の整理を並べたものです。実際の判断は、診療科・病状・経緯・時間帯によって変わります。「表のこの行に当たるから断ってよい」と機械的に運用することは想定されていません。

「悪意のある未払い」と言えるか、記録が足りていますか

断れる余地があるかどうかは、結局のところ院内に残っている記録の質で決まります。弁護士法人ブライトは、督促の記録の残し方から、実際の回収の継続受託まで一貫してお引き受けしています。

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迷惑行為(カスハラ)と未収金が重なったとき

現場で起きるのは、未収金が単独で存在する場面よりも、未収金と迷惑行為が重なっている場面です。窓口での大声、長時間の居座り、診療内容と関係のないクレームの繰り返し。そして会計はそのまま——という形です。

迷惑行為は「信頼関係の喪失」の枠組みで判断される

通知は、患者の迷惑行為について次のように整理しています。

診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないことが正当化される。

※として「診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続ける等」が挙げられています。

判断の軸は「行為の態様」と「信頼関係の喪失」です。一度声を荒らげたという事実だけで結論が出るものではなく、態様に照らして診療の基礎となる信頼関係が失われたと評価できるか、という判断になります。

2つの軸を混ぜずに整理する

実務上の要点は、未収金の軸と迷惑行為の軸を混ぜないことです。「未収もあるし態度も悪いから断る」とまとめてしまうと、どちらの理由でも説明が弱くなります。

  • 未収金の軸:支払能力があるか/悪意があるか/督促に対する応答はどうだったか
  • 迷惑行為の軸:行為の態様はどうか/診療内容と関係のあるものか/繰り返されているか/信頼関係が失われたと言えるか

この2つを別々の記録として残しておくと、後から第三者に説明するときに筋が通ります。逆に、1枚のメモに感情的な所感としてまとめて書かれていると、どちらの軸も証拠として使いにくくなります。

医療現場のカスタマーハラスメントへの備え方は、医療現場のカスタマーハラスメント対策|病院・クリニックの対応方針・法的手段で詳しく解説しています。金銭の要求を伴う場面での考え方は、カスハラの示談金相場はいくら?会社が払う前に知っておくべき判断基準もあわせてご覧ください。

断ることで解決しない|入口と出口で設計する

ここまで見てきたとおり、「断る」という手段は、使える場面が限られているうえに、使えるかどうかの判断も重くなります。未収金の問題は、診療を断ることではなく、入口(発生を減らす設計)と出口(発生後の回収設計)で解くのが現実的です。

入口1:金額と支払方法を、診療の前に伝える

未収の多くは「思っていたより高かった」「その日は持ち合わせがなかった」という形で始まります。自費部分が発生する場合や、入院で自己負担が大きくなる場合に、概算と支払時期・支払方法を事前に書面で渡すだけで、発生率は変わります。

支払方法の選択肢(クレジットカード・電子マネー・口座振替)を増やすことも、費用対効果の高い入口対策です。手数料負担と、未収の回収コスト・回収不能率を並べて比較すると、判断の材料が揃います。

入口2:公的制度の案内を受付フローに組み込む

高額療養費制度の限度額適用認定証は、事前に交付を受けていれば窓口負担が自己負担限度額までにとどまります。入院が決まった時点で案内する運用になっているかどうかは、未収金の発生量に直結します。

制度の案内は、医療機関にとっては回収コストの前倒し削減であり、患者さんにとっては負担の軽減になります。「断るか、断らないか」という対立の構図になる前に処理できる領域です。

入口3:身元保証書は「極度額」の記載を確認する

入院時の身元保証書に、連帯保証の条項を置いている医療機関は少なくありません。ここで注意が必要なのが、個人根保証契約の極度額です。

⚖️ 個人根保証契約には極度額の定めが必要(民法465条の2)

  • 対象:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)で、保証人が法人でないもの
  • 効果:保証人は、主たる債務の元本・利息・違約金・損害賠償その他その債務に従たる全てのもの等について、その全部に係る極度額を限度として履行の責任を負う
  • 重要な帰結:「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」(同条2項)
  • 実務上の確認点:入院時の身元保証書が、将来発生する診療費等を包括的に保証させる内容になっている場合、極度額の定めがないと保証の効力に問題が生じうる。書式の点検が必要

根拠:民法(明治29年法律第89号)465条の2第1項・第2項

2020年4月1日施行の改正民法で導入された規律です。それ以前から使い続けている身元保証書の書式が院内に残っていないか、一度確認する価値があります。なお、保証人の有無を入院受入れの可否に直結させる運用は、前述の「支払能力が不確定であることのみをもって診療しないことは正当化されない」という通知の整理との関係で、慎重な検討が必要になります。保証は「回収の設計」の話であって、「診療の可否」の話とは切り分けておくのが安全です。

出口1:督促を段階で設計する

発生してしまった未収金は、時間の経過とともに回収率が下がります。院内でよくあるのが、「会計から電話をかけたが不在だった」で止まり、次の手が決まっていないというパターンです。段階と担当を先に決めておくことで、止まりにくくなります。

段階 手段 院内での位置づけ
第1段階 電話・院内での声かけ 事務担当。日時・応答内容を記録に残す。ここで支払いの意思と事情を確認する
第2段階 文書での督促(普通郵便) 事務担当。金額・診療日・支払期限・支払方法を明記した定型書式を用意しておく
第3段階 内容証明郵便 法人としての意思表示。弁護士名で出すかどうかを含めて方針を決める段階
第4段階 支払督促・少額訴訟・通常訴訟 金額と回収可能性を見て選択。手続費用との見合いの判断が必要
随時 分割払いの合意 支払能力に問題がある場合の現実解。合意書の作り方で回収可能性が変わる

内容証明郵便の具体的な書き方は売掛金の内容証明郵便の書き方|回収率を上げる5つのポイントと文例を、分割・猶予を求められたときの判断は支払猶予を求められたときの対応|合意書の作り方と回収リスクの見極めをご覧ください。いずれも医療機関以外の債権にも共通する実務の型です。

出口2:時効の管理を忘れない

診療費の債権にも消滅時効があります。改正前の民法には、医師の診療に関する債権について3年の短期消滅時効の定めがありましたが、2020年4月1日施行の改正でこの規定は削除されました。現行民法では、債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」等に時効によって消滅するとされています(民法166条1項)。

ただし、施行日より前に生じた債権については改正前の規律が適用される場面があります。古い未収金を棚卸しする場合は、発生時期で分けて確認する必要があります。「まとめて何年」と一律に処理しないことが大切です。

出口3:院内で抱え込まず、外に出す判断を持つ

未収金対応の一番のコストは、実は金額そのものではなく事務スタッフの時間と精神的な負担です。督促の電話を繰り返し、窓口で強い言葉を受け、それでも回収できない。この負担が離職につながる例は珍しくありません。

弁護士法人ブライトでは、病院・医療法人向けに医療費・未収金回収の継続受託をご提供しています。単発の請求代行ではなく、院内の運用に合わせて継続的にお引き受けし、法的判断が必要な場面は弁護士が担当する形です。

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断り方を誤ったときに、何が起きるか

行政上のルート

医師法19条1項に違反した場合の罰則は、医師法上には置かれていません。もっとも、医師法7条1項は、医師が同法4条各号のいずれかに該当し、または医師としての品位を損するような行為のあったときは、厚生労働大臣が①戒告、②3年以内の医業の停止、③免許の取消しの処分をすることができると定めています。応招義務との関係が、行政上の判断において考慮されうる余地があるということです。

加えて、都道府県・保健所からの照会や指導という形で、事実関係の説明を求められる場面もあります。そのときに院内から出てくる資料が「担当者の記憶」しかない、という状態は避けたいところです。

民事上のルート

応招義務は国に対する公法上の義務であって、患者に対する私法上の義務ではないと整理されています。したがって患者さんとの間の民事上の責任は、診療契約や不法行為の枠組みで別途判断されることになります。応招義務違反の有無がそのまま民事の結論になるわけではありませんが、断った経緯や説明の内容が事実として評価されることは十分に考えられます。

評判のルート

実務上、最も早く現れるのがこのルートです。断られた経緯が口コミサイトやSNSに書き込まれ、事実関係が整理されないまま広がる。行政・民事のいずれよりも直接的な影響が出る場面があります。ここでも効くのは「どういう基準で、誰が、何を確認して判断したのか」を説明できる状態にしておくことです。基準がある医療機関は説明ができ、基準がない医療機関は担当者個人の対応の問題として処理されてしまいます。

院内に用意しておきたいのは、①緊急対応の要否 → 診療時間内か → 未収金・迷惑行為の経緯、の順で確認する判断フロー1枚、②督促の日時・手段・応答内容と、迷惑行為の態様を欄を分けて事実ベースで残す記録書式、③現場が「自分では決めない」と判断したときの上げ先、の3点です。いずれも法律の知識より先に、院内の合意と書式整備の問題です。

弁護士に相談すべきケース

特定の患者について「次回から断る」を検討している

最も慎重な検討が必要な場面です。未収金の額、支払能力に関する情報、督促の経緯、迷惑行為の有無と態様、病状、診療科——確認すべき要素が多く、院内だけで結論を出すにはリスクがあります。判断の前に外部の目を入れることをおすすめします。

未収金がまとまって滞留している/書式を長く見直していない

まとまった量の棚卸しが必要な段階では、発生時期で分けた時効の確認、金額帯ごとの回収方針、手続費用との見合いを、仕組みとして設計したほうが効率的です。あわせて、2020年4月1日施行の民法改正以降に身元保証書・同意書の書式を点検していない場合は、極度額の定めの有無を確認する価値があります。

窓口での迷惑行為が続いている/院内に判断基準がない

未収金と迷惑行為が重なっている場合、対応の順序を誤ると両方がこじれます。記録の残し方、警告書の要否、出入禁止の検討まで段階を踏んだ設計が必要です。また「そのつど院長が判断している」状態は属人的で、院長の負担も大きくなります。基準を作っておくこと自体が、現場を守る仕組みになります。

医療機関の未収金対応を、大阪の弁護士がご一緒します

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よくある質問

未収金がある患者さんが再来院しました。次回から診療を断ってよいですか?

厚生労働省の令和元年12月25日通知(医政発1225第4号)は、「以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しないことは正当化されない」としています。したがって、未収があるという一点だけを理由に断ることは想定されていません。断ることが正当化されうるのは、支払能力があるにもかかわらず悪意をもってあえて支払わない場合等とされています。実際の判断は病状の深刻度・診療時間内かどうか・これまでの経緯によって変わるため、個別に検討が必要です。

「応召義務」と「応招義務」は、どちらの表記が正しいのですか?

医師法および厚生労働省の通知では「応招義務」の表記が用いられています。令和元年通知のタイトルも「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」です。一方で、文献や一般的な解説では「応召義務」の表記も広く使われてきました。指している内容は同じものです。院内規程を新たに作成する場合は、根拠資料との照合がしやすいよう「応招義務」で統一しておくと便利です。

応招義務に違反すると、どのような不利益がありますか?

医師法19条1項に違反した場合の罰則は、医師法には置かれていません。ただし医師法7条1項は、医師としての品位を損するような行為があったとき等に、厚生労働大臣が戒告・3年以内の医業の停止・免許の取消しの処分をすることができると定めています。また、応招義務は国に対する公法上の義務であり患者に対する私法上の義務ではないと整理されているため、患者さんとの民事上の責任は診療契約や不法行為の枠組みで別途判断されることになります。

未収の診療費に時効はありますか?

あります。改正前の民法には医師の診療に関する債権について3年の短期消滅時効の定めがありましたが、2020年4月1日施行の改正で削除されました。現行民法166条1項は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき等に時効によって消滅すると定めています。ただし施行日より前に生じた債権には改正前の規律が適用される場面があるため、古い未収金は発生時期で分けて確認する必要があります。

大阪で、医療機関の未収金対応を継続的に相談できますか?

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まとめ|断る判断より先に、設計を見直す

この記事の要点を整理します。

  • 未収金があるというだけでは、診療を断ることは正当化されない(令和元年12月25日・医政発1225第4号)
  • 応招義務は、医師・歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であり、患者に対する私法上の義務ではない(医師法19条1項・歯科医師法19条1項)
  • 判断枠組みの最重要要素は緊急対応の要否。次に診療時間内か時間外か、そして信頼関係
  • 断ることが正当化されうるのは、支払能力があるのに悪意をもってあえて支払わない場合等。その説明ができる記録が前提になる
  • 迷惑行為は「態様」と「信頼関係の喪失」で判断される。未収金の軸と混ぜずに、別々に記録する
  • 現実的な解は「断る」ことではなく、入口(事前説明・支払方法・公的制度の案内・書式の点検)と出口(段階的な督促・時効管理・外部委託)の設計

未収金の問題を「断れるかどうか」の一点に集約すると、判断が重くなり、現場が疲れます。断る/断らないの手前に、発生を減らす設計と、発生後に淡々と回す設計を置く。そこまで含めて整えることが、結果として現場を守ります。

弁護士法人ブライトは、大阪で中小企業と医療法人の外部法務部として、判断基準づくりから実際の回収までをご一緒しています。企業法務全般のご相談は企業法務トップ、サービス内容は顧問弁護士サービス、医療費の未収金については医療費・未収金回収の継続受託をご覧ください。

※本記事は一般的な法令・通知の解説であり、個別の事案について結論を示すものではありません。実際の対応は、患者さんの病状・診療科・時間帯・経緯などの個別事情によって判断が変わります。具体的なご事情に応じた検討は、弁護士にご相談ください。

院内で判断を抱え込む前に、一度ご相談ください

未収金と患者対応は、基準がないまま現場に降りると必ず属人化します。弁護士法人ブライトは大阪の外部法務部として、判断フロー・記録書式・回収の実務まで一体でご一緒します。お電話は06-4965-9590、フォームからも承ります。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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