残業代を請求された会社がとるべき初動対応 ある日突然、元社員の弁護士から内容証明が届いた。請求額は数百万円。こういった場面で会社が最初にすべきことは何か。この記事では、初動の対応ステップと見落としがちなリスクを整理します。 残業代請求は「放置」が一番危険 残業代請求を受けた会社が最初にしがちな判断ミスが「とりあえず様子を見る」です。 請求書が届いても無視を続けると、相手は労働審判や訴訟に移行します。 そうなると弁護士費用もかかり、裁判所が算定した額を払う結果になることも珍しくありません。 残業代請求への対応は、受け取った瞬間から始まると考えてください。 STEP1|請求内容を正確に把握する まず内容証明や請求書を読み込み、以下を確認します。 請求対象の期間(いつからいつまで) 請求額の算定根拠(時給・残業時間の計算方法) 未払いとされる残業代の種類(法定外残業・深夜・休日) 請求者が主張する「残業時間」が、会社の記録と一致しているかを確かめるのが最初の作業です。 STEP2|タイムカード・労働時間の記録を揃える 会社側の反論に使えるのは、客観的な労働時間記録です。 タイムカード・勤怠システムのログ PCのログイン・ログアウト記録 交通系ICカードの入退館記録 これらを、請求対象期間にさかのぼって保全します。 データの廃棄や改ざんは絶対にしないでください。後に証拠隠滅として不利に働きます。 STEP3|賃金規程・就業規則を確認する 「固定残業代」「みなし労働時間」を設けている会社は、その制度が法的に有効かどうかを確認します。 固定残業代は、要件を満たしていなければ「残業代ゼロ」の合意として認められません。 就業規則や雇用契約書の記載内容が適切かを、弁護士に確認してもらうことをすすめます。 STEP4|弁護士に相談し、対応方針を決める 請求額・証拠・会社の事情を整理した上で、弁護士と以下の方針を検討します。 請求の全部または一部が正当かどうか 争う場合は労働審判・訴訟での見通し 和解交渉で早期解決を目指すかどうか 請求額が比較的小さければ和解で解決する方が費用対効果が高いケースもあります。 一方、算定根拠に明らかな誤りがあれば、争って減額できる場合もあります。 STEP5|労基署調査への対応も視野に入れる 残業代請求に合わせて、元社員が労働基準監督署(労基署)に申告するケースがあります。 労基署が調査に入れば、会社全体の労働時間管理を問われます。 「一人の問題」が「会社全体の問題」に波及することがあります。 そのため、問題のある社員一人への対応だけでなく、労務管理全体の見直しをあわせて進めることが重要です。 ご相談はお早めに → ご相談はこちら:/corporationlaw/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) よくある相談例 ある製造業の会社では、退職した社員から「月30時間分の残業代が未払いだ」と主張する請求書が届きました。 会社側は「固定残業代として月2万円を支払っていた」と説明しましたが、雇用契約書に固定残業代の記載がなく、規程の整備が不十分だったことが問題になりました。 弁護士が介入して交渉した結果、請求額より大幅に減額した金額での和解が成立しました。 また、別のIT系企業では、在籍中の社員が複数人で弁護士をつけて一斉請求してきたケースがありました。 会社には裁量労働制を適用していましたが、その要件(専門業務型・企画業務型のどちらか)を満たしていないことが判明し、相当額の支払いに至りました。 裁量労働制は「残業代ゼロにできる制度」ではありません。要件を正確に理解して運用することが必要です。 顧問弁護士がいれば「事前防止」ができる 残業代請求が起きた後の対応も大切ですが、より重要なのは起きる前に防ぐことです。 顧問弁護士がいれば、以下のような予防策をあらかじめ整えられます。 固定残業代・みなし労働時間の制度設計 就業規則・雇用契約書の法的チェック 労働時間管理の仕組みづくり 問題社員への初期対応アドバイス 「請求を受けてから弁護士を探す」より「普段からついている弁護士に相談する」方が、対応が早く・費用も抑えられます。 まずはご相談ください → みんなの法務部サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/service/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 関連記事 労働審判とは?会社側の対応手順と費用 業務委託と雇用の違い・偽装請負のリスク 顧問弁護士の必要性 よくある質問 Q. 固定残業代を設定していれば残業代を追加で支払わなくていいですか? A. 固定残業代が有効と認められるためには、①固定残業代の金額と対応する残業時間数が雇用契約書・就業規則に明示されていること、②固定残業時間を超えた分は別途支払うことなど一定の要件が必要です。要件を満たしていない場合、「残業代ゼロ」の合意として認められないことがあります。 Q. 退職した社員からの残業代請求は何年前まで遡られますか? A. 2020年4月以降の残業代については消滅時効が3年とされています(それ以前は2年)。請求書を受け取った際は、対象期間を確認した上で早めに弁護士にご相談ください。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 事案の内容・複雑さによって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。 よくある質問 Q. 残業代請求を受けたら、どのタイミングで弁護士に相談すべきですか? A. 請求書が届いた直後の初動対応が重要です。請求内容の把握や労働時間記録の保全は受け取った瞬間から始まります。放置すると労働審判や訴訟に移行し、費用が増加する傾向にあるため、できるだけ早期に弁護士に相談されることをお勧めします。 Q. 固定残業代を設定していても追加で残業代を支払わなければならない場合がありますか? A. はい。固定残業代が法的に有効と認められるには、金額・対応時間を雇用契約書に明示し、超過分は別途支払うなど一定要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合、追加支払いが生じることがあります。ご自身の規程が適切かどうか弁護士にご相談ください。 Q. タイムカード記録が請求者の主張と異なる場合、会社側が有利になりますか? A. 客観的な労働時間記録は会社の重要な反論材料になります。ただし結果は記録内容や請求の詳細により異なるため、一概には申し上げられません。記録を保全した上で、弁護士と一緒に証拠の妥当性を検討されることが重要です。