小売・EC事業でよくある法律トラブルと弁護士が必要なタイミング 小売・EC事業では、インターネットを通じたトラブルが国境をまたいで発生することがあります。 著作権の無断使用、再販売価格の管理問題、越境ECの薬機法・輸出規制——こうした問題は、気づかないうちに積み重なり、ある日突然請求や警告として届くことがあります。 早めに弁護士に確認することで、リスクを事前に封じ込められます。 小売・EC事業でよくある法律トラブル5選 1. 著作権・画像の無断使用クレーム EC事業では、商品説明・マーケティング資料・SNS投稿に他者の画像・イラスト・文章を無断で使うトラブルが頻発しています。 「出典を書けばOK」と思っている方が多いですが、出典の明記だけでは著作権侵害の免責にはなりません。 事前の利用許諾が原則です。 悪意がなかった場合でも、著作権侵害は成立します。 ただし、早期に誠意ある謝罪と補償提案を行うことで、紛争に発展せず解決できるケースがほとんどです。 社内での著作物使用ルールを明文化し、スタッフ全員に周知することが最大の予防策です。 2. 卸先・EC販売先による無断出品・価格破壊 自社製品を卸した取引先が、Amazon・楽天・ヨドバシEC等に無断出品し、価格を大幅に下げて販売していることがあります。 「うちは自社EC以外への出品はしないでほしい」と口頭で伝えていても、書面がなければ法的な根拠になりません。 また、卸先に対して販売価格を直接指定すること(再販売価格の維持強制)は独占禁止法違反になるため注意が必要です。 独占禁止法に抵触しない形での対策としては、「正規販売店の認定制度の設定」「自社ブランド画像・ロゴの使用条件」「未承認サイトへの出品禁止を契約書に明記する」などが有効です。 取引契約書にこれらの条項を盛り込むことで、将来のトラブルを大幅に防げます。 3. 越境EC・輸出における薬機法・各国輸入規制 日本の市販薬や健康食品を海外向けに販売・輸出するとき、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)上の許可が必要かどうかは、慎重に確認する必要があります。 日本国内で販売されている薬をパッケージ・内容物を変更せずに輸出する場合、薬機法上の製造・販売業許可は不要とされるケースがあります(ただし行政見解・状況によって異なります)。 しかし相手国の輸入規制・通関規制は別途確認が必要です。 「相手国で問題がないか」を確認せずに販売を始めると、現地での税関差し止め・罰則・撤退コストが発生します。 越境EC事業を始める前に、弁護士と関係機関に確認することをお勧めします。 4. フリーランス・インフルエンサーとの業務委託トラブル EC・小売事業では、SNSインフルエンサーや外注クリエイターへの業務委託が増えています。 2024年11月施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、EC事業者にも適用されます。 発注書の必須記載事項・報酬減額禁止・成果物のやり直し指示の制限——これらに対応していない場合、行政指導・紛争のリスクがあります。 特に、インフルエンサーとの業務委託では、成果物(投稿・動画)の著作権帰属と利用条件を明確に定めておくことが重要です。 「投稿後に権利を主張された」「削除を求められた」という事態を防ぐため、契約書の整備を弁護士に依頼することをお勧めします。 5. 贈賄・利益相反リスク(BtoB越境EC・プロモーション事業) 海外企業・行政機関との取引が絡む越境ECやプロモーション事業では、「紹介料・成功報酬」の支払いが贈賄にあたるリスクがあります。 元官僚や公務員への紹介料支払いは、国内法(不正競争防止法)だけでなく、FCPA(米国外国腐敗行為防止法)等の海外法規制にも抵触する可能性があります。 また、社内の役員・担当者が外部事業者と利益相反関係にあることが発覚した場合も、迅速な対応が必要です。 「グレーゾーンかもしれない」という段階で、早めに弁護士に確認してもらうことが重要です。 よくある相談例 あるEC事業者では、業務委託したフリーランスクリエイターの既存作品を説明資料に無断使用し、著作権侵害を指摘されました。 誠実な謝罪と補償提案を早期に行うことで、紛争化せずに解決した事例があります。 別のケースでは、自動車用品メーカーの卸先がヨドバシECサイトに無断出品し、Amazon価格への波及が問題になりました。 独占禁止法に抵触しない形で販路コントロール条項を設計し、取引契約書に盛り込んだ事例があります。 また、越境ECプロモーション事業者が、取引先とのアライアンス契約に贈賄リスクのある条項が含まれていることに気づき、弁護士に照会して契約内容を見直した事例もあります。 弁護士が必要なタイミング 以下のいずれかに該当する場合は、早めにご相談ください。 著作権侵害の指摘を受けた 卸先が契約外のECサイトに自社製品を出品している 越境ECで薬機法・輸出規制の適法性が不安 フリーランス新法への対応ができているか確認したい 海外取引先との契約に贈賄リスクがないか心配 インフルエンサーとの契約書がなく、成果物の権利関係が不明確 ご相談・お問い合わせはこちら → 企業法務・顧問弁護士サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 小売・EC業界に強い顧問弁護士とは 小売・EC事業は、デジタルと実店舗が混在し、法律の対象範囲も広いです。 著作権法・独占禁止法・薬機法・フリーランス新法・外国腐敗行為規制——業界に関係する法律は多岐にわたります。 顧問弁護士がいることで、新しい取引・サービス・海外展開のたびに法的確認ができる体制が整います。 「これは大丈夫か」を事前に確認できる安心感が、事業のスピードを落とさずに守ることにつながります。 まずはご相談ください → みんなの法務部サービスの詳細はこちら:/corporationlaw/service/ 電話:0120-929-739(受付 9:00〜18:00) 関連記事 顧問弁護士の費用対効果 取引先から提示された契約書のチェックポイント カスタマーハラスメントへの会社の初動対応 よくある質問 Q. ECサイトで特定商取引法の表記が不十分だった場合、どのようなリスクがありますか? A. 業務改善指示や行政処分の対象となる可能性があります。事業者名・所在地・返品ポリシーなどの必須記載事項を定期的に確認することが一般的な対策です。弁護士にご相談ください。 Q. 消費者からの返品・返金要求を断ることはできますか? A. 通信販売には法定のクーリングオフはありませんが、消費者契約法や自社ポリシーの内容によって対応が変わります。合理的な返品ポリシーを整備しておくことが重要です。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 事案の内容・複雑さによって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。 よくある質問 Q. 商品写真をネットで見つけてECサイトに使用しました。出典を明記すれば問題ないでしょうか? A. 出典を明記するだけでは著作権侵害の免責にはなりません。著作権者から事前に利用許諾を得ることが原則です。無断使用が発覚した場合、悪意の有無にかかわらず損害賠償請求の対象となり得ます。使用前に権利者への確認を習慣化することが重要です。 Q. 卸先に「他のECサイトで安く売らないでほしい」と指示することはできますか? A. 卸先に対して販売価格を直接指定・強制することは、独占禁止法上の再販売価格維持行為として違法となる場合があります。ただし、正規販売店認定制度の設定や、未承認チャネルへの出品禁止を契約書に明記する方法など、適法な販路管理の手段はあります。事前に契約内容を整備することが重要です。 Q. フリーランス新法への対応として、最低限何を準備すればよいですか? A. 2024年11月施行のフリーランス新法では、発注時に業務内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示することが義務付けられています。また、報酬の不当な減額や、正当な理由のない成果物のやり直し指示も制限されます。既存の業務委託先との取引フローを見直し、発注書・契約書を整備することが最低限必要です。 Q. 越境ECで日本の健康食品を海外に販売したいのですが、どのような法律上の確認が必要ですか? A. 日本国内の薬機法上の許可要件に加え、輸出先国の輸入規制・通関ルール・成分規制を個別に確認する必要があります。国によっては日本で合法な成分が禁止されている場合もあり、税関差し止めや現地当局からの処分を受けるリスクがあります。販売開始前に関係機関および法律の専門家への確認を強くお勧めします。 具体的な対応手順・ケース例 以下は、EC事業者がよく直面するトラブルへの対応手順の例です。 【ケース例:卸先による無断出品が発覚した場合】 事実確認:該当の出品ページのスクリーンショットやURLを保存し、出品日・価格・出品者情報を記録します。 既存契約の確認:卸先との契約書・発注書・口頭合意の記録を確認し、出品禁止に関する取り決めの有無を整理します。 卸先への通知:書面または記録が残る方法(メール等)で、出品の事実を指摘し、対応を求めます。口頭のみの連絡は避けてください。 プラットフォームへの申告:自社の商標権・画像著作権を侵害している場合は、Amazon・楽天等の各プラットフォームの権利者申告窓口に通報する方法もあります。 再発防止策の整備:今後の取引契約書に、販売可能チャネルの明示・未承認出品の禁止・違反時の解約条項を盛り込みます。独占禁止法に抵触しない文言の設計が重要です。 書面による証拠確保と、独禁法を踏まえた契約条項の整備が、この種のトラブル対応の核心です。 まとめ・確認チェックリスト □ 商品画像・文章・イラストの使用前に著作権者から利用許諾を取得している □ 卸先・販売パートナーとの取引契約書に販路・出品チャネルの制限条項を明記している □ 再販売価格の維持強制にあたらない形で販路管理の仕組みを設計している □ フリーランス・外注クリエイターへの発注時に書面(発注書・契約書)を交付している □ インフルエンサーとの契約で成果物の著作権帰属と利用条件を明確に定めている □ 越境ECを行う際に輸出先国の輸入規制・成分規制を事前確認している □ 海外取引先への紹介料・成功報酬の支払いが贈賄リスクを含まないか確認している □ 新規取引・海外展開・新サービス開始前に法的リスクの事前確認を習慣化している 関連記事 建設業でよくある法律トラブルと弁護士が必要なタイミング IT・SES業界でよくある法律トラブルと弁護士が必要なタイミング 製造業でよくある法律トラブルと弁護士が必要なタイミング 監修・著者情報 和氣 良浩(わき よしひろ)弁護士 弁護士法人ブライト 代表弁護士|大阪弁護士会所属弁護士登録:2006年(弁護士歴 20年)取扱分野:企業法務・労務問題・契約トラブル・M&A・債権回収