「これはカスハラだと思うが、会社として何かできるのか」と感じたとき 「お客様は神様」という言葉が、長い間日本のビジネス文化に根付いてきました。その言葉のせいで、顧客からの理不尽な要求や罵倒に対して、「多少のことは我慢しなければ」「対応できなかった従業員の問題かもしれない」と、会社側が自分たちを責め続けてしまうケースが少なくありません。 でも、社長の胸の中には、こんな疑問があるのではないでしょうか。「あの顧客の要求は、明らかに一線を越えていた。うちの従業員は悪くない。会社として何か対抗できないのか」と。 答えは「できます」。顧客であっても、不法行為を行えば損害賠償や慰謝料の請求対象になります。ただし、それは「感情的に正しい」だけでは足りない。法的に動くためには、何を記録し、どう動くべきかという準備が必要です。この記事では、カスハラに対して会社が慰謝料を請求できる条件と、そのための実務的な対応を解説します。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ「カスハラかどうか」の判断が遅れるのか 【図解】「これはカスハラだと思うが、会社として何への対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 カスハラへの対応で最も多い失敗は、「これはカスハラだ」と認識するまでに時間がかかりすぎることです。その原因は、経営者や管理職が「クレームとカスハラの境界線」を明確に持っていないことにあります。 正当なクレームは、サービスや商品に問題があり、その改善や補償を求めるものです。一方、カスハラは、要求内容が不当であったり、手段が脅迫・暴言・長時間拘束など社会通念上許容されないものです。この区別が現場でできていないと、従業員は「お客様だから耐えなければ」と判断し、上司に報告が上がらなくなります。 そして、報告が上がったときにはすでに従業員が精神的に追い詰められ、証拠も残っていない状態になっています。経営者が「もっと早く言ってほしかった」と思うのは当然ですが、現場が言えなかった構造の問題こそ、先に解決すべきことです。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) カスハラで慰謝料を請求できる条件とは 会社がカスハラをした顧客に対して慰謝料を請求するには、民法上の不法行為(民法709条)の要件を満たす必要があります。具体的には、次のような行為が対象になります。 長時間にわたる拘束・居座り(業務妨害) 従業員への暴言・侮辱・脅迫 SNSや口コミサイトへの虚偽の書き込み 過剰・不当な金銭的要求の繰り返し 謝罪・土下座の強要 身体的な接触・暴力行為 これらの行為が「社会通念上許容される範囲を超えている」と認められた場合、裁判所は不法行為に基づく損害賠償を認めています。実際に、長時間の拘束を伴う過剰クレームに対し企業の慰謝料請求が認容された裁判例や、繰り返される威圧的クレームに対して損害賠償が認められた裁判例が複数存在します。 ただし重要なのは、「カスハラだった」と思うだけでは不十分だという点です。どのような言動が、いつ、どこで、どのくらいの時間行われたのか——これを立証できる証拠が、請求の土台になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること——予防策と体制整備 カスハラへの最善の対処は、「発生したときにどう動くか」を事前に決めておくことです。現場が「これはカスハラだ」と判断できるようにすること、そして「判断したらどう動けばいいか」を明確にしておくことが、被害を最小限に抑える最大の予防策です。 ①カスハラ対応規程を就業規則に組み込む 「顧客からの不当な要求・行為に対しては、会社として毅然と対応する」という方針を、就業規則や社内規程に明記してください。現場の従業員が「断っていいんだ」「会社が守ってくれる」と認識できることが、報告の迅速化につながります。 ②初動対応フローを現場に共有する 「上司に報告 → 対応記録を作成 → 必要に応じて弁護士相談」という流れを、誰もが迷わず動けるように整備しておきましょう。特に「記録を残す」という行動を、対応フローに組み込むことが肝心です。 ③顧問弁護士に「カスハラかどうか」を判断してもらう仕組みを作る 揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないために弁護士を使う。顧問弁護士がいれば、「この顧客対応をカスハラとして記録していいか」「どこまでなら対応義務があるか」を事前に確認できます。現場の初動が変わります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー——証拠の残し方が勝負を分ける カスハラが発生した、あるいは今進行中だという場合、まず優先すべきは記録を残すことです。証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。 記録すべき内容(具体的に) 日時・場所・対応した従業員名 顧客の言動(できるだけ一言一句を記録・録音) 対応時間(何時から何時まで拘束されたか) 要求内容(金銭的要求・謝罪要求・その他) 対応後の従業員の状態(精神的ダメージがあれば医師の診断書も取得) 電話でのクレームは録音し、来店での応対は社内に複数人で対応することで、後の証言の信頼性を高められます。従業員が一人で対応している状況を作らないことは、証拠確保と安全確保の両面で重要です。 また、SNSや口コミサイトへの書き込みがあった場合は、スクリーンショットを日時情報とともに保存してください。書き込みは削除される可能性があるため、早期の保全が必須です。 そのうえで、顧問弁護士または弁護士に「これは法的に対応できる案件か」を判断してもらい、内容証明郵便の送付・訴訟提起などの次の手を決めていきます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れ、証拠が消えるのか カスハラ対応において、最も多い失敗パターンは次の三つです。 ①「クレームかもしれない」と思って記録を取らなかった 最初は「ちょっとクレームが激しいお客さん」として対応していた。従業員も「自分が悪かったのかも」と思い込んでいた。気づいたら数ヶ月が経過し、誰が何をどの順番で言ったのか、記憶も証拠も残っていない。これが最もよくある失敗です。 ②「事を荒立てたくない」という経営判断で泣き寝入りした 「弁護士を入れたら顧客との関係が悪化する」「騒ぎを大きくしたくない」という判断は理解できます。しかし、このまま対応を続ければ従業員が離職したり、精神疾患で休職・賠償問題に発展したりすることの方がリスクは大きい。泣き寝入りはリスク管理ではなく、リスクの先送りにすぎません。 ③従業員の精神的被害が深刻になってから相談してきた 「もっと早く言ってくれれば」という場面は少なくありません。従業員が心療内科を受診してから初めて会社が事態の深刻さに気づき、弁護士に相談する。この段階では、相手への請求よりも会社の安全配慮義務違反を問われるリスクの方が先に浮上します。カスハラ対応の遅れは、会社自身のリスクにもなるのです。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか——規模・業種別の視点 「慰謝料請求まで検討するのは大企業の話では」と思っている経営者は多いです。しかし、カスハラの被害を受けるのは中小企業・個人事業主も同じです。むしろ、法務体制が整っていない分、現場の被害が表面化しにくく、対応が遅れやすいという現実があります。 業種によっても特徴があります。飲食・小売・介護・サービス業は対面でのカスハラリスクが高く、BtoBビジネスでは取引先からの無理な要求がカスハラに該当するケースもあります。「うちは関係ない」ではなく、「うちの業界・現場ではどんな形のカスハラが起きやすいか」を先に考えることが出発点です。 また、慰謝料請求を「勝てるかどうか」だけで考えると判断を誤ります。請求そのものが、相手に「この会社は毅然と対応する」というシグナルを送る効果を持ちます。一件の毅然とした対応が、その後のカスハラ抑止につながることもあります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策——一件対応して終わりにしない体制を作る カスハラへの対応を「一件ずつ消火する」という発想から抜け出すことが、真の再発防止につながります。 対応記録のフォーマット化:誰が対応しても同じ形式で記録が残るよう、記録票を整備する エスカレーション基準の明確化:「この言動があったら即上長報告」という基準を設け、現場の判断負荷を下げる サービス提供の制限・お断り基準の設定:特定の行為が認められた顧客への対応を打ち切る判断基準と手続きを規程化する 定期的な従業員ヒアリング:表面化していないカスハラを早期発見するためのルート確保 従業員への法的サポートの周知:「会社が守る」という方針を実際の制度として示す これらを「やった方がいいこと」のリストとして終わらせないために、経営者自身が「法務の問題ではなく、経営の問題」として位置づけることが必要です。 カスハラは一件対応しても次が来ます。重要なのは”その都度の消火”ではなく、カスハラ対応規程を就業規則に組み込み、現場が迷わず動ける体制を整えることです。弁護士法人ブライトでは、顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上のチームが条項整備から現場の初動相談まで継続的にサポートしています。スポットの相談対応だけでなく、「みんなの法務部」として経営判断に寄り添う体制こそが、カスハラリスクを構造から変えていく土台になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) よくある質問 Q. 顧客に慰謝料を請求することは、会社のイメージ悪化につながりませんか? A. 確かにそのリスクはゼロではありません。しかし、カスハラを放置した結果として従業員が離職・休職し、採用コストや業務停滞が生じるリスクの方が、多くの場合で深刻です。また、毅然とした対応を取ることで「この会社はきちんと従業員を守る」という評判が社内外に広がり、採用ブランドにプラスに働くケースもあります。個別の状況によって判断は変わりますので、弁護士と相談のうえで戦略を決めることをお勧めします。 Q. 慰謝料請求のために弁護士を使うと費用はどのくらいかかりますか? A. 費用は案件の複雑さや請求金額によって異なります。顧問契約を結んでいる場合、相談・方針策定のコストは顧問料の範囲内で対応できることが多く、個別対応よりもコスト効率が上がります。また、訴訟になる前に内容証明の送付で解決するケースも多く、早期に弁護士を関与させることで総費用を抑えられる場合があります。まずは現状を相談し、費用対効果を含めた判断をすることが大切です。 Q. 録音は相手の同意なしに取っても証拠として使えますか? A. 自分が会話の当事者である場合(自社の従業員が顧客と会話している状況など)の録音は、一般的に違法ではなく、証拠として使えると解されています。ただし、第三者が秘密裏に録音する場合は違法性が問われることがあります。また、録音したデータの扱い方・提出方法によっては証拠能力に影響することもあるため、録音の前後の経緯も含めて弁護士に確認することをお勧めします。 Q. カスハラかどうか判断できないまま従業員が「もう限界です」と言ってきたら、何から始めればいいですか? A. まず従業員の状態を確認し、必要であれば心療内科への受診を促してください。同時に、これまでの対応を時系列で記録に起こしてもらい、どのような言動があったかを整理します。その記録を持って弁護士に相談すれば、「カスハラとして法的対応できるか」「会社として安全配慮義務上どう動くべきか」の両面でアドバイスをもらえます。どちらが先かで迷う必要はありません。従業員の保護と証拠保全を同時に進めることが出発点です。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『カスタマーハラスメント対策の実務』 — 向井蘭・森田梨沙/労務行政/2023年11月/分類:Q&A形式の実務解説書 『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』 — 厚生労働省/厚生労働省/2022年2月/分類:公的機関のガイドライン・Q&A 『問題社員・モンスター社員への法的対応の実務(第2版)』 — 石井妙子/民事法研究会/2024年4月/分類:Q&A形式の実務解説書 『ハラスメント・リスクマネジメント実務便覧』 — 岡崎教行・松田智裕/第一法規/2023年5月/分類:マニュアル・チェックリスト型 『労働法実務大系(第3版)』 — 山田省三・荒木尚志 他/中央経済社/2023年3月/分類:学術書・体系書 ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 参考裁判例 当事務所では本テーマに関する最新の裁判例を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした裁判例を以下に紹介します。 東京地判令和4年11月25日(令和3年(ワ)第30490号)「損害賠償請求事件」要旨: 顧客の過剰クレーム・長時間拘束が不法行為に当たり、企業の慰謝料請求が認容された。 大阪地判令和3年12月2日(令和3年(ワ)第4028号)「損害賠償請求事件」要旨: 繰り返しの威圧的クレームにつき、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)が認められた。 東京地判令和2年3月4日(令和元年(ワ)第28272号)「慰謝料請求事件」要旨: 顧客の暴言・脅迫的言動により従業員が被った精神的苦痛に対し、慰謝料が認定された。 大阪地判令和5年6月29日(令和4年(ワ)第9421号)「不当利得返還請求事件」要旨: 不当な金銭要求を繰り返した顧客につき、会社側の損害賠償請求が一部認容された。 東京高判令和3年4月21日(令和2年(ネ)第6245号)「損害賠償等請求控訴事件」要旨: 長期にわたるクレーマー行為の不法行為性を認め、慰謝料を含む損害賠償が確定した。 ※ 裁判例情報は判例秘書INTERNETから取得した参照情報です。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 カスハラ対応・問題社員・解雇・退職勧奨など経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、130社以上の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料)