執筆:松本 洋明 弁護士(弁護士登録2010年・修習63期・交通事故担当主任)
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表・弁護士歴平均14年以上の法律事務所)
この記事でわかること
- 大腿骨骨折後に偽関節・不全癒合が残った場合の後遺障害等級(8級9号・7級10号)の違い
- 髄内釘(ボルト)が体内に残っている状態で「7級10号」を狙える条件と現実の壁
- 症状固定時期・異議申し立てのタイミングと医師への照会方法
- 弊所実際の受任事例(偽関節案件の等級認定・賠償交渉の経緯・匿名化)
- 赤い本基準での慰謝料・逸失利益のシミュレーション数値
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(平日9〜18時)
交通事故で大腿骨骨折を受傷し、術後も骨がくっつかない「偽関節(偽性関節とも)」または「骨折不全癒合」が残る場合、後遺障害等級は8級9号(偽関節)か7級10号(偽関節+著しい運動障害)のいずれかが問題になります。この差は慰謝料・逸失利益において数百万円単位の違いを生みます。
本記事では、弊所で実際に受任した偽関節案件(匿名化)の経緯を通じて、等級の分岐ポイント・異議申し立て戦略・医師への働きかけ方を弁護士が解説します。大腿骨骨折全般の等級・慰謝料については 大腿骨骨折 後遺障害・等級・賠償の完全解説 もあわせてご覧ください。
大腿骨の偽関節・不全癒合でお悩みの方へ
「骨がくっついていないのに8級と言われた」「7級を目指せるか確認したい」という方は、症状固定前に弁護士にご相談ください。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(平日9〜18時)
偽関節とは何か:後遺障害認定の文脈での定義
「偽関節(pseudarthrosis)」とは、骨折後に本来は骨癒合すべき部分が癒合しないまま症状固定を迎え、骨折部が独立した可動性を持つ状態です。後遺障害等級の認定においては、自賠責施行令別表第2の8級9号「一下肢に偽関節を残すもの」に該当します。
「骨折不全癒合」は偽関節より軽度で、骨は一応つながっているが強度が不十分な状態です。実務上は、骨折不全癒合でも後遺障害認定では偽関節として評価されることがあります。判断は主治医の画像(X線・CT)所見と後遺障害診断書の記載内容に依存します。
8級9号と7級10号:等級の分岐点
| 等級 | 要件 | 後遺障害慰謝料(赤い本) | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 8級9号 | 一下肢に偽関節を残すもの | 830万円 | 45% |
| 7級10号 | 一下肢に偽関節を残し、かつ、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 | 56% |
8級と7級の差は慰謝料170万円・労働能力喪失率11%です。逸失利益を加味すると、年収・年齢によっては総額で数百万円〜1,000万円超の差になります。
「著しい運動障害」の認定基準
7級10号の「著しい運動障害」は、単に痛みがあるというだけでは不十分です。実務上は以下が判断基準とされています。
- 患肢の股関節または膝関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されていること(関節機能障害の程度基準)
- 偽関節部位の異常可動性(病的可動性)が画像および診察で確認されること
- 硬性補装具(体外に装着する装具)を常に必要とする状態であること
実務上の壁:髄内釘は「硬性補装具」にならない
骨折後に髄内釘(体内に残る金属ボルト)が補助支持をしている状態でも、現行の認定基準では「体外に装着する補装具」とは解釈されません。自賠責の審査では「内固定材によって歩行が維持されている=8級」という運用が定着しており、7級を勝ち取るには硬性補装具(体外装着)の使用実態を医学的に証明する必要があります(後掲の弊所受任事例A参照)。
「8級と言われたが7級を狙えるか確認したい」という方
偽関節の等級は医師への働きかけと自賠責への主張次第で変わります。弁護士法人ブライトにご相談ください。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113
弊所受任事例(匿名化)
事例A:40代男性Aさん — 大腿骨骨幹部骨折→偽関節残存・髄内釘・8級9号vs7級10号論争
交通事故で大腿骨骨幹部骨折を受傷し、髄内釘固定術を受けたAさん(40代男性)。受傷から1年半が経過しても骨癒合がなく、弊所協力医(整形外科専門医)も「依然として偽関節が残存している」との見解を示しました。
Aさんは「髄内釘が体の中で補装具のように支えているのだから7級に相当するはずだ」という主張を持っていました。松本弁護士はこの点を精査した上で、Aさんに以下のように説明しました。
「7級10号が認められるための『常に硬性補装具を必要とするもの』という要件は、現在の実務では『体外に装着する金属やプラスチック製の装具』を指すと厳格に解釈されています。髄内釘は医学的に内固定材として扱われ、これを補装具に読み替える解釈は現時点の裁判例でも確立されていません。根拠の薄い状態で7級を主張し続けると、裁判所から過大請求と見られるリスクがあります。8級の中で最大限の評価(慰謝料・逸失利益の算定)を勝ち取ることがAさんにとって最善の道です。」
最終的に、弊所では8級9号(偽関節残存)として逸失利益・慰謝料の最大化を目指す方針で自賠責への異議申し立てを進め、適切な等級認定と賠償額の確保につながりました。
事例B:50代男性Bさん — 特発性大腿骨頭壊死との事故起因性立証
交通事故後に大腿骨骨頭壊死と診断された50代男性Bさんの案件です。保険会社は「特発性大腿骨頭壊死は事故以前からの既往症」として因果関係を争いました。
この案件で決定的だったのは傷病名の正確な記載でした。「大腿骨頭壊死」ではなく「特発性大腿骨頭壊死」と明記することで、「事故以前から潜在していた可能性がある疾患」という保険会社の主張と整合的な事実が後遺障害診断書に記載されてしまっていました。弁護士介入により、事故受傷から壊死が生じるまでの経過(受傷→血流障害→壊死の医学的メカニズム)を示す文献と主治医意見書を準備し、因果関係の立証を強化しました。
ポイント:傷病名の正確な記載が等級認定を左右する
後遺障害診断書の傷病名欄に「特発性〇〇」と記載されると、自賠責の審査官は「事故起因性が弱い」と判断しやすくなります。症状固定前に弁護士が後遺障害診断書の作成方針を主治医と確認することが重要です。
偽関節・不全癒合の慰謝料シミュレーション
8級9号のシミュレーション例(40代男性・年収500万円・45歳→67歳=22年)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 後遺障害慰謝料(赤い本) | 8級 | 830万円 |
| 逸失利益 | 500万円 × 45% × ライプニッツ係数15.937(22年) | 約3,586万円 |
| 後遺障害分合計 | 約4,416万円 |
7級10号のシミュレーション例(同条件)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 後遺障害慰謝料(赤い本) | 7級 | 1,000万円 |
| 逸失利益 | 500万円 × 56% × ライプニッツ係数15.937(22年) | 約4,462万円 |
| 後遺障害分合計 | 約5,462万円 |
同一条件で8級と7級では後遺障害分合計に約1,046万円の差が生じます。等級の1段階の違いが大きい理由です。
「8級で示談を迫られているが、正しいか確認したい」方へ
示談書にサインする前に弁護士に相談することを強くお勧めします。一度サインすると原則として変更できません。
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異議申し立てのタイミングと戦略
偽関節の等級認定に異議を申し立てる場合、最も重要なのは「骨癒合の状況が変わっていない」または「当初の審査で画像が適切に評価されなかった」ことを医学的に示すことです。
画像証拠の確保(CT・X線の定期取得)
自賠責の異議申し立て(自賠責保険料率算出機構への申立)では、新たな医学的証拠の添付が求められます。症状固定から6ヶ月・1年の時点でのCT撮影記録を継続的に保存し、「依然として骨癒合していない」ことを示す医師の意見書(主治医または弊所協力医)を用意することが有効です。
主治医への照会文書の準備
弁護士が主治医に照会書を送付し、「偽関節の有無」「骨癒合の可能性」「日常生活・就労への影響」について具体的な回答を求めることで、後遺障害診断書の記載を補完する証拠を確保します。弊所では事例Aのように自賠責調査事務所との直接協議(追加画像提出)にも対応しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 偽関節で8級が認定されましたが、逸失利益を争えますか?
A. 等級は確定していても、逸失利益の算定(喪失率・期間)は交渉・訴訟で争うことができます。特に年収や職種(肉体労働か事務職か)によって保険会社の提示額が過小な場合があります。弁護士による精査が有効です。
Q. 再手術を受けたら偽関節の等級はなくなりますか?
A. 再手術によって骨癒合が成立した場合、症状固定後に偽関節が残っているという事実はなくなります。ただし、再手術後も可動域制限や神経症状が残れば別の後遺障害として認定される可能性があります。自賠責への手続きを進める前に再手術のタイミングについて弁護士に相談することをお勧めします(事例Aのように、異議申し立ての結果を待ってから再手術を検討するという戦略的判断が重要になることがあります)。
Q. 弁護士費用特約がない場合はどうなりますか?
A. 弁護士法人ブライトでは交通事故案件について完全成功報酬型の費用体系をご用意しています。費用の目安は無料相談でご説明します。
偽関節・不全癒合の後遺障害認定・賠償請求は弁護士法人ブライトへ
交通事故専任の松本洋明弁護士(弁護士登録2010年・修習63期)が等級認定から示談交渉・訴訟まで一貫してサポートします。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(平日9〜18時)
まとめ:偽関節・不全癒合で弁護士に依頼すべき理由
- 偽関節は8級9号か7級10号かで賠償総額に約1,000万円以上の差が生じる
- 髄内釘(体内固定材)は「硬性補装具」に該当しないというのが現行実務の壁
- 7級を目指すには体外装着の補装具使用実態と関節可動域制限の医学的証明が必要
- 異議申し立てには継続的なCT記録と主治医・協力医の意見書が不可欠
- 傷病名の正確な記載(「特発性」の有無)が因果関係立証に直結する
大腿骨の偽関節・後遺障害は弁護士法人ブライトへ
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