【監修者情報】
松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士
弁護士法人ブライト 交通事故主任弁護士
大阪弁護士会所属・登録2010年(修習63期)
弁護士歴14年以上。交通事故の後遺障害・慰謝料交渉を専門に多数の案件を担当。
和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士
弁護士法人ブライト 代表弁護士
大阪弁護士会所属
交通事故で大腿骨骨折を負ったとき、「慰謝料はいくらもらえるのか」「計算方法がわからない」という相談が後を絶ちません。大腿骨は人体最大の骨であり、骨折すると後遺障害が残りやすく、慰謝料・逸失利益を合わせると数百万〜数千万円の賠償請求になるケースも珍しくありません。
しかし、保険会社が最初に提示する金額は、弁護士基準(裁判基準)の3分の1から2分の1にとどまることが多く、適切な等級認定と計算方法を知らなければ大幅な損をするリスクがあります。
本記事では、大腿骨骨折で認定される後遺障害等級別の慰謝料相場・逸失利益の計算式・属性別シミュレーション3パターン・弁護士介入による増額幅を、ブライトの実案件データをもとに具体的に解説します。
この記事でわかること
- 大腿骨骨折の後遺障害等級(8・10・12・13・14級)の認定基準
- 等級別・属性別の慰謝料シミュレーション(3パターン)
- 逸失利益の計算式とライプニッツ係数(法定利率3%)
- 自賠責基準と弁護士基準の差額・弁護士介入の増額効果
- 偽関節(骨癒合不全)で等級が大幅に上がる実例
【無料相談・LINE相談】大腿骨骨折の後遺障害・慰謝料について
弁護士法人ブライトの交通事故専門チーム(松本洋明 主任弁護士)が、後遺障害等級認定から慰謝料増額まで一貫してサポートします。
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大腿骨骨折の後遺障害等級と認定基準
大腿骨骨折の後遺障害は5つの系統に分かれます。等級によって慰謝料額と逸失利益が大きく変わるため、まずここを正確に理解することが重要です。
| 後遺障害の種類 | 自賠責等級 | 認定要件の概要 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|---|
| 偽関節・著しい運動障害 | 8級8号 | 常に硬性補装具を必要とする偽関節 | 830万円 |
| 偽関節・運動障害なし | 10級9号 | 骨癒合不全が画像で確認できる(著しい運動障害なし) | 550万円 |
| 機能障害・著しい機能障害 | 8級7号 | 可動域が健側の2分の1以下 | 830万円 |
| 機能障害・機能障害 | 10級10号 | 可動域が健側の4分の3以下 | 550万円 |
| 変形障害 | 12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 290万円 |
| 短縮障害・3cm以上 | 10級8号 | 下肢が3cm以上短縮 | 550万円 |
| 短縮障害・1cm以上 | 13級8号 | 下肢が1cm以上短縮 | 180万円 |
| 神経症状 | 14級9号 | 神経症状が医学的に説明可能 | 110万円 |
※後遺障害慰謝料は弁護士基準(赤い本2024年版)の金額です。自賠責基準は上記の3分の1前後にとどまります。
偽関節(骨癒合不全)は等級が劇的に変わる最重要論点
大腿骨骨折で最も等級認定上の論点になるのが「偽関節(骨癒合不全)」です。ブライトが実際に扱ったバイク事故の案件では、自賠責認定が14級9号(神経症状)だったものを、訴訟において10級9号(偽関節)として争った事例があります(H様案件。詳細は後述)。
14級と10級では後遺障害慰謝料だけで110万円→550万円と440万円の差が生じます。さらに逸失利益(労働能力喪失率)は14級5%→10級27%と5倍以上の差になるため、請求総額で数千万円の開きが出ます。著しい運動障害が認められれば8級8号(830万円・喪失率45%)の認定も視野に入ります。
偽関節の認定には、骨折後10カ月以上が経過したCT画像で骨癒合不全が確認できることが実務上の重要な要件とされています。自賠責による事前認定で14級とされた場合でも、CT画像の追加取得による異議申立や訴訟での立証が可能です。
慰謝料の計算方法——3つの基準と弁護士基準の優位性
【3基準の比較】後遺障害10級の後遺障害慰謝料
- 自賠責基準:187万円(固定)
- 任意保険基準:250〜350万円程度(各社非公開・目安)
- 弁護士基準(赤い本):550万円
→弁護士基準は自賠責基準の約3倍。弁護士が交渉することで初めて裁判基準に近い金額を請求できます。
大腿骨骨折は手術・リハビリを含めると入院3〜6カ月・通院1〜2年に及ぶことが多く、傷害慰謝料(入通院慰謝料)も相当額になります。弁護士基準(赤い本)の傷害慰謝料は別表Ⅰ(重傷用)を用います。入院3カ月・通院12カ月の典型例では傷害慰謝料だけで約196万円になります。
逸失利益の計算式とライプニッツ係数
逸失利益の計算式
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(就労可能年数対応)
現行ライプニッツ係数(法定利率3%・2020年民法改正後)
- 5年:4.5797
- 10年:8.5302
- 17年:13.1661
- 20年:14.8775
- 30年:19.6004
- 32年:20.3888
- 40年:23.1148
- 45年:24.5187
2020年4月1日施行の改正民法(第404条)により法定利率が年5%から3%に引き下げられたことで、ライプニッツ係数が大幅に増加しました。これにより、同じ等級・同じ年収でも2020年以前の計算より逸失利益が増加しています。
| 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
|---|---|
| 8級8号(偽関節・著しい運動障害)・8級7号(著しい機能障害) | 45% |
| 10級9号(偽関節)・10級10号(機能障害)・10級8号(3cm以上短縮) | 27% |
| 12級8号(変形障害) | 14% |
| 13級8号(1cm以上短縮) | 9% |
| 14級9号(神経症状) | 5% |
属性別シミュレーション3パターン
パターン1:30代会社員・10級9号(偽関節)
| 項目 | 金額・根拠 |
|---|---|
| 基礎収入 | 500万円(年収) |
| 後遺障害等級 | 10級9号(偽関節) |
| 労働能力喪失率 | 27% |
| 就労可能年数 | 32年(67歳-35歳) |
| ライプニッツ係数 | 20.3888(32年・法定利率3%) |
| 逸失利益 | 500万×27%×20.3888 = 約2,753万円 |
| 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 550万円 |
| 傷害慰謝料(入院3M・通院12M) | 196万円 |
| 合計(慰謝料+逸失利益) | 約3,499万円 |
※このほか入院費・休業損害・交通費等が別途発生します。過失割合がある場合は比例減額されます。著しい運動障害が認められ8級8号に格上げされた場合は、逸失利益が500万×45%×20.3888=約4,588万円となり、後遺障害慰謝料も830万円に増額されます(合計約5,614万円)。
パターン2:50代自営業者・12級8号(変形障害)
| 項目 | 金額・根拠 |
|---|---|
| 基礎収入 | 400万円(確定申告ベース・実務では賃金センサス比較あり) |
| 後遺障害等級 | 12級8号(変形障害) |
| 労働能力喪失率 | 14% |
| 就労可能年数 | 17年(67歳-50歳) |
| ライプニッツ係数 | 13.1661(17年・法定利率3%) |
| 逸失利益 | 400万×14%×13.1661 = 約737万円 |
| 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 290万円 |
| 傷害慰謝料(入院2M・通院12M) | 181万円 |
| 合計(慰謝料+逸失利益) | 約1,208万円 |
自営業者の場合、事故当年の確定申告所得が低くても、賃金センサス(平均賃金)との比較により高い基礎収入を主張できる場合があります。ブライトの実案件(H様)では、事故当年所得178万円に対して賃金センサス636万円での主張が行われました。
パターン3:20代フリーター・14級9号(神経症状)
| 項目 | 金額・根拠 |
|---|---|
| 基礎収入 | 355万円(全年齢平均賃金センサス・男性)または267万円(女性) |
| 後遺障害等級 | 14級9号 |
| 労働能力喪失率 | 5% |
| 就労可能年数 | 45年(67歳-22歳) |
| ライプニッツ係数 | 24.5187(45年・法定利率3%) |
| 逸失利益(男性) | 355万×5%×24.5187 = 約435万円 |
| 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 110万円 |
| 傷害慰謝料(入院1M・通院6M) | 136万円 |
| 合計(慰謝料+逸失利益) | 約681万円 |
【無料相談】慰謝料シミュレーションを個別に試算します
上記はあくまで一般的な計算例です。実際の請求額は過失割合・治療期間・症状・職業により大きく変わります。弁護士法人ブライトでは、お電話またはLINEで個別の試算が可能です。
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弁護士介入による増額効果——実際の差額
| 等級 | 保険会社初回提示(目安) | 弁護士交渉後(目安) | 増額幅(目安) |
|---|---|---|---|
| 8級(偽関節・著しい運動障害または著しい機能障害) | 1,500〜2,000万円 | 4,000〜6,000万円 | 2〜4倍 |
| 10級(偽関節・機能障害) | 700〜1,200万円 | 2,500〜4,000万円 | 2〜3倍 |
| 12級(変形障害) | 200〜400万円 | 500〜1,000万円 | 2倍前後 |
| 14級9号(神経症状) | 100〜200万円 | 300〜600万円 | 2〜3倍 |
ブライトの実案件:偽関節で14級→上位等級を争った事例
【実案件】バイク事故・右大腿骨開放骨折・偽関節争い(H様・匿名化済み)
40代男性・個人事業主が、四輪車の歩道からのバック進入により衝突されバイクから転倒。右大腿骨開放骨折・骨盤骨折を負い、2回の手術(初回手術+プレート再固定)を経ても骨癒合不全(偽関節)が残存。
問題点:自賠責による事前認定は14級9号(神経症状)。これを受け入れると請求総額500万円未満にとどまる。
ブライトの対応:協力整形外科医が画像を精査し「骨癒合が得られていない可能性」を指摘。症状固定後のCT検査(骨折後10カ月以上経過時点)で偽関節を立証する戦略を採用。自賠責の異議申立を並行しながら訴訟において偽関節による上位等級を主張。
上位等級認定時の請求総額試算:約5,700万円(14級前提500万円未満との差=約5,200万円の増額)
相手方が「当方の過失20%」と主張するところ、歩道からのバック進入という明確な違反行為を根拠に0〜10%への圧縮を目指した。
大腿骨骨折の慰謝料で注意すべき3つのポイント
1. 症状固定のタイミングが等級を左右する
保険会社は早期に「症状固定」として治療を打ち切ろうとします。大腿骨骨折では骨癒合に6〜12カ月以上かかるケースがあり、早期症状固定は等級の低下につながります。特に偽関節の診断にはCT画像での「10カ月以上経過後の評価」が重要であるため、治療期間の延長を主治医と相談することが必要です。
2. 可動域測定は必ず他動運動で記録する
機能障害(8級7号・10級10号)の認定には、股関節・膝関節の可動域が健側の2分の1(8級7号)または4分の3(10級10号)以下であることが要件です。後遺障害診断書の可動域測定は「他動運動(医師が動かす)」の数値で評価されます。自動運動(自分で動かす)しか記録されていない場合は、不利な等級認定になる可能性があります。
3. 素因減額に備える
高齢者や骨粗鬆症の既往症がある場合、加害者側から「素因減額」の主張がなされることがあります。ブライトの実案件(後縦靭帯骨化症・脊柱管狭窄症事例)では、「骨折ありの事例は素因減額すべきでない」という判例調査での主張が有効でした。骨折という結果が事故に由来することは否定できないためです。
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よくある質問(FAQ)
Q. 大腿骨骨折で後遺障害なしと判断された場合、慰謝料はもらえますか?
A. 後遺障害が認定されなかった場合でも、治療期間に応じた傷害慰謝料(入通院慰謝料)は請求できます。大腿骨骨折で骨癒合が確認されていても痛みが残る場合は、14級9号の認定を目指す価値があります。
Q. 人工骨頭置換術を受けた場合、後遺障害等級はどうなりますか?
A. 人工骨頭置換術(THR)は股関節の骨頭を人工物に置換する手術です。術後に股関節の可動域制限が残る場合は機能障害(10級10号・8級7号)として評価されます。主治医への後遺障害診断書の記載依頼と弁護士の関与が不可欠です。
Q. 自賠責保険の慰謝料だけでは足りない場合はどうすれば良いですか?
A. 自賠責保険には支払限度額(後遺障害最高4,000万円〔1級〕・傷害120万円)があります。大腿骨骨折で上位等級が認定され逸失利益が大きい場合は、相手方の任意保険会社への請求(弁護士基準での交渉)が必須です。弁護士費用特約がない場合でも、着手金の設定が異なる受任形態が可能な場合があります(ブライトまでご相談ください)。
まとめ
- 自賠責認定の等級が最終回答ではない(異議申立・訴訟で上位等級を目指せる)
- 偽関節はCT画像(骨折後10カ月以上)で立証する
- 逸失利益はライプニッツ係数3%基準(2020年改正後)で計算する
- 弁護士基準は自賠責基準の2〜3倍の慰謝料が認められることが多い
- 自営業者・フリーターでも賃金センサスとの比較で基礎収入を主張できる
保険会社の示談提示を受け取ったら、サインする前に弁護士に確認することを強くお勧めします。
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弁護士法人ブライト 交通事故専門チーム(松本洋明 主任弁護士・和氣良浩 代表弁護士)
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大腿骨骨折の後遺障害認定の全体像については、大腿骨骨折の後遺障害認定と慰謝料増額|等級・相場・弁護士に依頼すべき理由もあわせてご覧ください。
腰椎圧迫骨折の慰謝料シミュレーションについては、腰椎圧迫骨折の慰謝料シミュレーションも参考にしてください。




