交通事故で車を修理した後、「評価損(格落ち損)は請求できるのか」と調べると、必ずぶつかるのが「年式が古すぎる」「走行距離が多すぎる」と保険会社から断られたという壁です。
しかし、その「断り」は本当に正しいのでしょうか。専門書(園部厚著『交通事故物的損害の認定の実際』)に収録された裁判例を確認すると、年式や走行距離だけで評価損の可否が決まるわけではないことが分かります。
- 外国高級車・国産人気車の目安:初度登録から5年・走行距離6万km程度が評価損認定のおおよその上限ライン(個別事情で異なる)
- 国産一般車の目安:初度登録から3〜4年・走行距離4万km程度が実務上の目安(ただし車種・損傷次第)
- 高級車・限定車・外国車は年式が経過しても認められた裁判例がある(ランボルギーニ・ロールスロイス等)
- 骨格損傷・高額修理費があれば、目安を超えても認められる可能性がある
- 保険会社の「払えない」は終わりではない——弁護士が裁判例を示して交渉・訴訟できる
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評価損とは——年式・走行距離が問題になる理由
評価損(格落ち損)とは、交通事故で車が損傷し、修理によって外見上は元に戻っても、中古市場における車両価値が事故前より下がってしまう損害のことです。
評価損には2種類あります。①修理しても機能・外観に欠陥が残る「技術上の評価損」と、②修理により欠陥は残存しないが事故歴・修理歴により交換価値が下がる「取引上の評価損」です(赤い本2026年版下巻・満田智彦裁判官講演録参照)。実務上問題になるのは主に②です。
年式と走行距離が問題になるのは、中古市場での車両価値と連動しているからです。年式が古く走行距離が多い車は、事故前からすでに価値が低下しています。そのため「さらに事故歴がついても、もともと安い車なので価値の下落幅は小さい」と判断され、評価損が認められにくくなります。
しかし、これはあくまで傾向であり、年式・走行距離だけで一律に否定されるわけではありません。車種(高級車・外国車・限定車かどうか)、損傷部位(骨格損傷の有無)、修理費の高額さ、中古市場での人気度などの個別事情が複合的に判断されます。
諦める必要はありません。高級車・外国車・骨格損傷がある場合は、年式・走行距離の目安を超えても認められた裁判例が複数あります。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(通話料無料・平日9:00〜18:00)
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評価損が認められる年式・走行距離の目安(車種別)
専門書(園部厚著『交通事故物的損害の認定の実際』)と赤い本2026年版下巻の裁判例分析から、実務上のおおよその目安をまとめます。ただし、これはあくまで「目安」であり、個別の事情によって異なります。
| 車種カテゴリ | 年式の目安 | 走行距離の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 外国高級車(ベンツ・BMW・ポルシェ等) | 初度登録から5年程度まで | 6万km程度まで | 車両価格・骨格損傷の有無で幅がある |
| 国産人気車(レクサス・高級セダン等) | 初度登録から3〜5年程度 | 4〜6万km程度 | 車両価格が高ければ年式の幅が広がる |
| 超高級車・限定車(ロールスロイス・ランボルギーニ等) | 10年超でも認められた事例あり | 1〜2万km以上でも認められた事例あり | 生産台数・新車価格・中古市場評価が重視される |
| 国産一般車(カローラ・アコード等) | 初度登録から1〜2年程度 | 1万km程度まで | 条件が揃わなければ認められにくい |
この表は専門書の裁判例を整理したものですが、実際の判断は事案ごとに異なります。「目安を超えているから諦めよう」と判断する前に、必ず弁護士に相談することをお勧めします。
裁判例で見る年式・走行距離の実際——外国高級車編
ここでは、園部厚著『交通事故物的損害の認定の実際』に収録された裁判例をもとに、年式・走行距離が争点になった具体的な事例を解説します。
【認定】初度登録4年半・走行4万7741km——ベンツCL600で修理費30%
初度登録から約4年半が経過し、事故当時の走行距離が約4万7741kmのメルセデス・ベンツCL600(正規本体購入価格1774万5000円)について、車体骨格部分の損傷が存在すると認めることは困難であり、格落ち損が存在すると評価することは困難であるが、正規本体購入価格が1774万5000円の高級輸入車であり、中古車市場でも一定の高価値を有していることを考慮し、相当修理費の30%相当(51万7230円)の格落ちを認めた(京都地判平18・9・22 自動車保険ジャーナル1678号12頁)。
この事例のポイントは、「4年半・4万7741km」という条件であっても、車両価格の高さを理由に評価損が認められた点です。骨格損傷すら認定しなかったにもかかわらず、修理費の30%という高い割合が認められています。
【認定】初度登録1年未満・走行4000〜5000km——ベンツE320で車両価格の1割
新車を750万円で購入し、初度登録から1年未満・走行距離4000〜5000km程度のメルセデス・ベンツE320について、当時の車両価格650万円の1割(約65万円)を評価損と認めた(京都地判平11・7・6 自動車保険ジャーナル1328号3頁)。新規登録から1年未満の高級車に事故経由の烙印が押されることからすれば、評価の下落損が生じることは否定できないとされました。
【認定】初度登録4か月・走行2856km——外国車で修理費3割超
事故当時新車登録後4か月しか経過していない走行距離2856kmの外国車について、修理費として713万6800円を要した事案で、修理費の3割程度214万1040円の評価損を認めた(東京地判平23・3・29 判タ1375号164頁・自保ジャーナル1850号81頁)。
【認定】初度登録4か月余り——ポルシェカレラ911で150万円
修理代金222万3273円で、購入代金が約1600万円の純粋スポーツカーであるポルシェカレラ911について、事故により枢要部分に損傷が及び、機能上の損傷が完全には回復していない可能性が否定できず、ポルシェ取扱業者からサーキット走行等の高速走行は避けた方がよいと言われ、初度登録後4か月余りで事故に遭い、複数見積もりをとっても850万円でしか売却できないことなどから、150万円の評価損を相当とした(大阪高判平21・1・30 判時2049号30頁)。
【認定】初度登録2年10か月・走行約3万1100km——ロールスロイス・ファントムで修理費30%
初度登録から約2年10か月経過のロールスロイス・ファントム(購入価格3530万円)について、本事故から約3か月後の走行距離が約3万1100kmであり、構造部分に及んでいないことを踏まえながら、修理費(348万7970円)の約3割に当たる105万円を評価損と認めた(大阪地判平25・3・22 自保ジャーナル1905号157頁)。
【認定】初度登録から約10年・走行約1万5000km——ランボルギーニ・ディアブロGTで修理費30%
初度登録から約10年経過した新車価格3700万円のランボルギーニ・ディアブロGT(生産台数80台の限定車)について、事故後の走行距離が約1万5000kmで、修理箇所は構造部分に及んでいないことなどから、修理費(120万7500円)の約3割に当たる36万円の評価損とした(大阪地判平25・6・14 自保ジャーナル1910号164頁)。
この事例は、初度登録から約10年が経過していても評価損が認められた点で非常に重要です。ただし、生産台数80台という希少な限定車・新車価格3700万円という超高額車であり、中古市場での価値が高水準を維持していることが考慮されています。
ランボルギーニ(10年超)・ロールスロイス(2年10か月・3万km超)でも認められた裁判例があります。まずは無料相談でお伝えください。
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裁判例で見る年式・走行距離の実際——国産車編
【認定】国産車・初度登録3年半・走行約2万km——トヨタアルファードで修理費10%
価格320万円のトヨタアルファードGのMSで、事故当時初度登録から約3年半経過し、時価が233万5000円で、事故による損傷が基本的構造部分に及んでおり、修理費用が192万7936円となるものについて、修理費の約1割19万2794円の評価損を認めた(名古屋地判平22・7・9 交民集43巻4号848頁)。
3年半・約2万km超の国産ミニバンでも骨格(基本的構造部分)への損傷が認定されたため、修理費の10%が認められています。骨格損傷が国産車での評価損認定における重要な鍵となっています。
【認定】国産車・初度登録2年10か月・走行約3万8600km——ホンダステップワゴンで修理費20%
初度登録から約2年10か月のホンダステップワゴンで、走行距離が約3万8600kmに達していた事案について、修理見積額の約2割である16万5000円の評価損を相当とした(岡山地判平18・1・19 交民集39巻1号40頁)。損傷の程度や損傷部位を総合考慮した結果です。
【認定】国産車・初度登録1年6か月・走行8809km——日産サニーで修理費10%
初度登録後1年6か月・走行距離8809kmの日産サニースーパーサルーン1500について、修理費見積額の10%相当額の評価損を認めた(名古屋地判平10・7・24 交民集31巻4号1104頁)。
【否定】国産車・初度登録1年以上・走行1万2254km——トヨタカローラIIで評価損ゼロ
修理費43万6720円の小型自動車(トヨタカローラII)で、事故日より約1年1か月前に初度登録、走行距離1万2254kmの事案について、評価損の発生を認めるに足りないとして30万円の請求を棄却した(名古屋地判平9・5・14 交民集30巻3号711頁)。国産の一般的な大衆車は、中古市場での価値下落が外国車より大きく、評価損が認められにくい傾向があります。
【否定】国産車・初度登録4年2か月・走行8万7892km——ホンダアコードで評価損ゼロ
初度登録から事故まで約4年2か月が経過している走行距離8万7892kmのホンダアコード(国産車)について、事故による修理内容がリヤ正面の板金塗装が中心であることが認められ、事故と相当因果関係のある評価損が生じたとは相当でないとした(東京地判平18・7・31(平18ワ33328)判例秘書)。走行距離が8万km超という条件に加え、損傷が板金塗装中心の軽微なものにとどまったことが決め手となっています。
評価損が認められるかを左右する5つの要素
裁判例を整理すると、年式・走行距離以外にも評価損の可否・金額を左右する要素があります。
要素1:車種・車両価格(最も重要)
外国高級車・国産高級車・限定生産車は、中古市場での価値が高水準で維持されるため、年式・走行距離が目安を超えても評価損が認められやすい傾向があります。一方、国産の一般的な大衆車は中古市場での価値下落が早く、評価損が認められにくい傾向があります。
要素2:骨格(フレーム)損傷の有無
車体骨格(フレーム・サイドメンバー等)への損傷がある場合、技術上の修復限界と取引上の評価損の両方が問題となり、評価損の金額が高くなる傾向があります。ただし、ベンツCL600の裁判例(京都地判平18・9・22)のように、骨格損傷が認定されなくても高級外車であれば評価損が認められた事例もあります。
要素3:修理費の金額(高ければ高いほど有利)
修理費が高額であるほど、損傷が重大であることを示す証拠となります。修理費の10〜50%という割合で評価損が算定されることが多いため、修理費が高いほど評価損の絶対額も増加します。
要素4:修理後の残存不具合・機能回復の程度
修理後も不具合が残る場合(ポルシェ事例のように高速走行を避けるよう指示された場合等)は、技術上の評価損としても請求できる可能性があります。
要素5:中古市場での実際の価値下落(査定書)
一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)等が作成する「事故減価額証明書」は有力な証拠になりますが、それだけで評価損額が自動的に決まるわけではありません。裁判所が独自に判断することもあります(専門書参照)。
高級車は「一般車より長く・多く」認められる理由
高級車・外国車に評価損が認められやすい理由は、中古市場での価値構造が一般車と根本的に異なるからです。一般車は新車登録から3〜5年で大幅に価値が下落し、事故歴の有無による価値差が縮小します。一方、ベンツ・BMW・ポルシェ・ロールスロイス・ランボルギーニ等の高級車は、登録から年数が経過しても中古市場での需要が根強く、事故歴による価値の落差が長期間維持されます。
ランボルギーニ・ディアブロGT(大阪地判平25・6・14)の事例は、生産台数80台という希少性が10年後の中古市場での価値を支えており、それが評価損の根拠となりました。限定車・希少車の場合、年式・走行距離の一般的な目安が当てはまらないケースがあります。高級車・外車の評価損(格落ち損)総合ガイドもあわせてご確認ください。
弁護士に依頼すると評価損以外にも増える——総額で考える
個人では勝てない3つの理由
- ①評価損は保険会社の支払基準に存在しない——修理費・代車費用は支払基準が明確ですが、評価損は「対象外」として扱われます。請求しなければ0円で示談が終わります
- ②裁判例の説得力を使えるのは弁護士だけ——保険会社は「評価損は払えない」と言いますが、弁護士が裁判例を示して交渉・訴訟すれば動くケースが多々あります
- ③車両の専門査定(JAAI等)の活用方法を知らないと不利になる——査定書は有力証拠ですが、使い方を誤ると逆用されることもあります
遅延損害金(事故日から年3%)
交通事故による損害賠償請求権は不法行為に基づくため、事故日から遅延損害金(法定利率年3%・現行民法)が加算されます。示談では保険会社は遅延損害金を乗せてきません。訴訟・訴訟前提の和解で初めて満額に乗る項目です。
弁護士費用相当損害金(認容額の約1割)
不法行為訴訟では、認容額の約1割を弁護士費用相当損害金として加算するのが判例の扱いです。ただし、物損のみの案件では認められない裁判例もあります(人身損害と併存する高額物損案件では認められやすいとされています)。
弁護士費用特約(弁特)と精算の注意
弁護士費用特約がある場合、判決や和解で相手方から弁護士費用相当額が支払われたときは、特約の保険会社との間で精算(返金・控除)が必要になることがあります。遅延損害金は誰でも純増となり、精算の対象にはなりません。詳しくは高級車物損と弁護士費用特約の使い方をご覧ください。
弁護士費用特約をご利用の場合、判決などで相手方から弁護士費用相当額が支払われたときは、特約の保険会社との間で精算(返金・控除)が必要になることがあります。詳しくはご相談ください。
評価損の請求に必要な証拠
- 車検証(初度登録年月・車種・型式)
- 修理見積書・修理明細書(修理費の算定根拠・損傷箇所の特定)
- 損傷箇所の写真(骨格部分への影響を示す資料)
- 走行距離の記録(車検記録・整備記録)
- 事故前後の査定書(一般財団法人日本自動車査定協会等)
- 修理工場の損傷診断報告書(骨格損傷の有無・修理方法の詳細)
弁護士法人ブライト 交通事故専門チームが選ばれる理由
- 交通事故主任:松本洋明弁護士(修習63期・登録2010年)が主担当——高級車評価損の交渉・訴訟を担当した実績
- 代表:和氣良浩弁護士が監修——弁護士歴20年以上・顧問先130社以上の実績
- 弁護士歴平均14年以上のチームが担当
- 着手金0円・完全成功報酬制(交通事故)
評価損の年式・走行距離でお悩みの方は、まず一度ご相談ください。弁護士法人ブライトが裁判例をもとに判断します。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(通話料無料・平日9:00〜18:00)
初回相談無料・着手金0円・完全成功報酬制。LINEでのご相談も受け付けています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 初度登録から5年を超えた外国車でも評価損は請求できますか?
車種・車両価格・骨格損傷の有無等によっては認められる可能性があります。ランボルギーニ・ディアブロGT(10年超)の裁判例のように、高価格・限定車は年式の一般的な目安が当てはまらないケースがあります。まずは弁護士に相談することをお勧めします。
Q2. 走行距離が6万kmを超えていますが評価損は諦めるべきですか?
走行距離だけで一律に否定されるわけではありません。高級外車・骨格損傷・高額修理費といった要素が揃えば、6万km超でも認められる可能性があります。諦める前に弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 骨格(フレーム)損傷がなければ評価損はゼロですか?
骨格損傷がなくても評価損が認められた裁判例があります。ベンツCL600(京都地判平18・9・22)では骨格部分の損傷を認定することが困難としながら、高価格輸入車であることを考慮して修理費の30%が認定されています。
Q4. 国産車で評価損が認められる条件は?
国産車の場合、初度登録から1〜3年・走行距離1〜3万km程度・骨格(基本的構造部分)への損傷あり・修理費が車両価値に対して相応に高額、といった条件が揃う場合に認められた裁判例があります。国産一般車は外国高級車より条件が厳しい傾向がありますが、個別の事情が重要です。
Q5. 保険会社が「評価損は認めない」と言った場合、どうすればいいですか?
弁護士に依頼して、裁判例を根拠とした交渉・訴訟を行うことが有効です。保険会社の支払基準に評価損の項目がなくても、裁判上認められている損害は請求できます。弁護士法人ブライトでは初回相談無料・着手金0円でご相談を受け付けています。
Q6. 評価損の時効はいつですか?
物損の損害賠償請求権の時効は、損害および加害者を知った時から3年です(民法724条)。事故から時間が経過するほど証拠の収集も難しくなりますので、早めのご相談をお勧めします。
Q7. 修理後に示談してしまいましたが、評価損を追加請求できますか?
示談書の内容によります。「物損について一切の請求を放棄する」という条項がある場合、追加請求が難しくなります。示談書に署名する前に弁護士に確認することを強くお勧めします。
評価損の年式・走行距離の「目安」はあくまで参考です。高級車・外国車・骨格損傷がある場合は、目安を超えても認められた裁判例が多数あります。保険会社の「払えない」を鵜呑みにせず、まず弁護士にご相談ください。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(通話料無料)
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監修弁護士
執筆:松本 洋明(まつもと ひろあき)弁護士
弁護士法人ブライト 交通事故主任。大阪弁護士会所属。登録2010年・修習63期。
監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士
弁護士法人ブライト 代表弁護士。大阪弁護士会所属。弁護士歴20年以上。顧問先130社以上の実績。




