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Amazon出品で最も多い法的トラブルは知的財産権の侵害です。商標権・著作権の基礎を知ることがアカウント保護の第一歩です。
Amazonセラーと知的財産権の関係
Amazonで商品を出品する行為は、知的財産権(IP)リスクの入口です。出品する商品・商品画像・説明文・ブランド名のいずれもが、他者の知的財産権を侵害する可能性を持っています。
出品=知財リスクの入口
知的財産権には主に商標権・著作権・特許権・意匠権の4種類があります。Amazonへの出品においては、特に商標権と著作権の侵害が問題になるケースが多く、年間数十万件を超えるIP申告がAmazon上で処理されています。知財リスクは大企業だけの問題ではなく、中小セラーや個人事業主も同様に直面する現実的なリスクです。
IP申告(IP Complaint)の仕組みとAmazonの自動対応
Amazonは権利者が知財侵害を申告できる「IP申告システム」を運営しています。権利者はAmazon Brand RegistryやAmazon IP Acceleratorを通じて申告を行い、Amazonは申告を受理すると自動的に出品の削除・ASIN停止・アカウント警告を実施します。
この自動処理の速度は極めて速く、申告から数時間以内に出品が停止されるケースも珍しくありません。Amazonは「申告があった時点でまず停止」という方針を取っており、後から反論が認められても、停止期間中の損失は回復できません。
年間数万件の申告件数と虚偽申告の実態
Amazonへの知財申告の中には、競合セラーを不正に排除することを目的とした「虚偽申告」が含まれているのが実態です。存在しない権利を主張したり、並行輸入品(適法)を知財侵害と偽って申告するケースが報告されています。虚偽申告は違法行為であり、Amazon競合からの嫌がらせ・不正申告への法的対処法で詳しく解説しています。
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商標権の基礎知識
商標権とは何か(登録・未登録の違い)
商標権とは、商品・サービスを識別するために使用する文字・図形・記号などの標識を独占的に使用する権利です。日本では特許庁に登録することで発生し(登録商標)、登録から10年間有効です(更新可能)。
未登録商標は商標権として保護されませんが、長期間・広範に使用されてきた場合は「周知表示」として不正競争防止法の保護を受ける可能性があります。Amazonでの実務上は「登録商標の有無」が申告の根拠となるため、自社ブランドの商標登録が重要です。
商標権侵害になる出品パターン5例
以下のような行為は商標権侵害として申告されるリスクがあります。
- ①ブランド名の無断使用:他社の登録商標をASINタイトル・説明文・検索キーワードに無断で使用する
- ②類似ブランド名の使用:既存の登録商標と類似する名称でブランドを設立・出品する
- ③模倣品・コピー商品の販売:ブランドロゴを模倣した商品を出品する
- ④真正品と誤認させる出品:正規ルート外から入手した商品を正規品として出品する
- ⑤バンドル品への無断ブランド名使用:他社ブランド商品と自社商品をセットにして販売する際の商標名使用
Amazon Brand Registry(ブランドレジストリ)の仕組み
Amazon Brand Registryは、登録商標を持つブランドオーナーがAmazonに自社ブランドを登録し、ブランド保護ツールを利用できるプログラムです。登録するとブランドオーナーとしての優先的な出品権限、IP申告ツールへのアクセス、不正出品者への直接対処権限が付与されます。逆に言えば、Brand Registryへの登録が攻撃的なIP申告の手段として悪用されるリスクもあります。
並行輸入品と商標権の関係(適法な場合とNG)
並行輸入品とは、メーカーの正規代理店ルート以外から購入した正規品を指します。日本の最高裁判例(H15.2.27)では、一定の条件を満たす並行輸入品の販売は商標権侵害にならないと判示しています。
適法とされる条件は①商標権者または使用許諾を受けた者が商品に商標を付した正規品であること、②商品の品質が国内流通品と同等であること、③輸入品の出所について消費者を誤認させないことです。これらを外れると商標権侵害となるため、仕入れルートの証明書類を常に保持しておくことが必要です。
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著作権の基礎知識
著作権とは何か(登録不要で自動発生)
著作権は、創作物(文章・写真・イラスト・映像・音楽など)を創作した瞬間に自動的に発生する権利です。商標権や特許権とは異なり、登録手続きは一切不要です。このため、「登録されていないから使っていい」という誤解が知財侵害の原因となるケースが非常に多く見られます。
著作権の保護期間は創作者の死後70年間(法人は公表後70年間)です。保護期間内の著作物を無断で使用・複製・転載することは著作権侵害となります。
商品画像・説明文の著作権問題
Amazonの出品において著作権侵害が最も多いのは商品画像と商品説明文の転用です。具体的には以下のケースが問題となります。
- メーカー提供の商品画像を無断転用:メーカーサイトや他のセラーの商品ページから画像を無断コピーして使用する
- 他セラーの商品説明文をコピー:既存のASINの説明文・箇条書きをそのまま転用する
- 雑誌・ウェブサイトの写真を無断使用:ネット上で見つけた商品写真を権利者の許可なく使用する
- インフルエンサー投稿の画像を無断転用:SNSの投稿写真を無断でA+コンテンツに使用する
OEM品・自社ブランドと著作権
OEM(相手先ブランド製造)商品の場合、商品のデザイン・パッケージ・説明書などの著作権が製造委託先(工場)に帰属する可能性があります。OEM契約においては著作権の帰属・ライセンスを明確に定めておくことが必要です。また、海外工場に発注したPB(プライベートブランド)商品のデザインについても、契約書に著作権の帰属を明記しない場合、紛争の原因となります。
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知財申告(IP Complaint)を受けた場合の対応手順
IP申告を受けた場合の初動対応は、アカウント停止を防ぐ上で極めて重要です。以下の手順を参考に、迅速かつ適切に対応してください。
申告内容の確認(商標番号・権利者情報)
Seller Centralに届く申告通知には、申告者の名称・商標登録番号・申告の根拠が記載されています。まず以下の点を確認します。
- 申告された商標の登録番号が実際に特許庁(USPTO等)に登録されているか
- 申告者が商標権者本人または代理人であるか
- 申告された商品カテゴリー・商標区分と自社商品が一致しているか
- 商標の有効期限が切れていないか
正当性のチェック(失効・不使用・権利者でない)
申告の正当性を確認する際のチェックポイントです。
- 失効:登録商標の有効期限が切れていれば権利主張はできない
- 不使用取消:登録から3年以上不使用の商標は取消審判で無効にできる(日本の場合)
- 権利者でない:申告者が実際の商標権者でない場合(例:ライセンシーが権限なく申告)
- 区分不一致:商標登録されている商品区分と申告された商品が異なる場合
Retraction Requestと異議申し立て
正当な根拠があると判断した場合は、Seller Central上で「申告の撤回依頼(Retraction Request)」を申告者に求めるか、Amazonに対して異議申し立てを行います。異議申し立てには、正規品であることを証明する書類(仕入れ先の請求書・ブランドオーナーからの許諾書など)の提出が求められます。AmazonのPOAでアカウント復活させる完全ガイドも参考にしてください。
弁護士が取り得る法的手段
IP申告への対応で弁護士が取れる法的手段には以下があります。
- 申告者への内容証明送付:虚偽申告の事実を指摘し、Amazonへの撤回を求める
- 不正競争防止法に基づく損害賠償請求:虚偽申告による営業妨害を法的に追及する
- 商標登録無効審判の申立て:権利濫用的な商標に対して無効を申し立てる
- Amazonに対する提訴・仮処分申請:不当なアカウント停止に対する法的手続き
自社を守るための知財登録の勧め
商標登録のコストと期間(日本・米国)
自社ブランドを守るための商標登録の概要は以下のとおりです。
- 日本での商標登録:出願料約12,000円〜(区分数による)+弁理士費用。審査期間は約6〜12ヶ月。登録後10年間有効(更新可能)
- 米国での商標登録(USPTO):出願料250〜350ドル/区分+弁理士費用。審査期間は約12〜18ヶ月
- Amazon Brand Registry申請要件:日本または米国の登録商標(出願中でも一部利用可能)が必要
Amazon Brand Registryの申請手順
Brand Registryへの登録は以下の手順で行います。
- ①登録商標の商標登録証(または出願番号)を準備
- ②Amazonの Brand Registry登録ページにアクセス
- ③ブランド名・商標登録番号・商標の使用カテゴリーを申請フォームに入力
- ④Amazonによる審査(通常1〜2週間)
- ⑤承認後、ブランド保護ツールが利用可能になる
商標出願から登録までの流れ
日本での商標登録の流れを簡単に説明します。まず弁理士に相談し、使用したいブランド名・ロゴの先行商標調査を実施します。問題がなければ特許庁に出願し、方式審査・実体審査を経て登録査定が下ります。登録料を納付すると商標権が発生します。Amazonアカウント停止・凍結から復活する方法やAmazon売上金凍結を弁護士が法的回収する方法もあわせて参考にしてください。
よくある質問(Q&A)
Q1:メーカーから仕入れた正規品でも知財申告されることがありますか?
あります。特に並行輸入品(正規代理店ルート外からの仕入れ)の場合、メーカーまたは独占輸入代理店から商標権侵害を申告されるケースがあります。また、競合セラーが虚偽申告を行うケースも存在します。このような場合に備えて、仕入れ先の請求書・仕入れ契約書・ブランドオーナーからの許諾書を保管しておくことが重要です。Amazonアカウント売買後の停止・凍結トラブルへの法的対処法も参考にしてください。
Q2:申告者が権利を持っていない場合でも停止されますか?
Amazonは申告内容の真偽を深く審査せず、申告があった時点で出品を停止することが多いです。権利がない者による申告であっても、形式的な申告要件を満たしていれば停止処置が取られます。停止後に異議申し立てを行い、申告者に権利がないことを証明することで出品再開を求めることができますが、弁護士の関与が有効です。
Q3:自分の商標を他社に申告されたらどうすればいいですか?
自社の登録商標を他社が勝手にBrand Registryに登録し、IP申告に悪用するケースが報告されています。このような場合、①Amazonに対してブランドの真正な所有者であることを証明する資料を提出する、②申告者に対して不正競争防止法・商標法に基づく法的手続きを取る、③Amazonの商標紛争解決プログラムを利用する、という3段階の対応が考えられます。早期の弁護士相談が解決を早めます。
監修弁護士
嶋本 敦(しまもと あつし)
弁護士法人ブライト パートナー弁護士
登録2008年・修習61期・京都大学法学部出身
企業法務・契約トラブル・取引紛争を中心に多数の案件を担当
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