Amazonアカウント停止後に問題となるFBA在庫は、売上金の留保と同じではありません。在庫は「どの商品が何点あり、誰の所有物で、返送・廃棄がどの規約と通知に基づいて処理されたか」、売上金は「どの取引から生じた金銭を、どの理由で留保しているか」を別々に整理します。
停止直後に在庫証拠を保存する
- 在庫スナップショット、FNSKU・SKU・ASIN、数量、コンディション
- 納品プラン、受領差異、倉庫間移動、返送・廃棄依頼と処理状況
- 仕入請求書、支払・輸送記録、商品ごとの取得原価
- 保管料、返送・所有権放棄手数料等の請求明細
- 追跡番号、受領写真、破損・不足の開封記録
- 停止・真贋・権利侵害に関する通知と提出物
画面はPDF保存に加え、CSV等の元データも保存し、取得日時とレポート名が分かるファイル名にします。スクリーンショットだけでなく、数量計算を再現できるデータを残してください。
通知趣旨の要約例と対応表
| 通知・状態 | 確認事項 | 避けたい対応 |
|---|---|---|
| 返送可能 | 返送先、数量、期限、手数料、追跡 | 数量表を保存せず一括依頼 |
| 所有権放棄・廃棄 | 選択主体、対象商品、処理時点、費用 | 権利関係を見ずに一律廃棄 |
| 返送制限・保留 | 真贋・危険物・知財等の理由と通知 | 理由を在庫不足と決めつける |
| 数量不足・破損 | 依頼数、発送数、受領数、状態、写真 | 総額だけを請求し商品別根拠を残さない |
| 保管料が継続 | 在庫年齢、処理状況、請求期間・料率 | 停止したから費用も止まると考える |
返送・廃棄・保管料の仕組み
AmazonのFBA料金案内では、在庫保管手数料は在庫が占める保管スペース等を基に計算され、返送・所有権放棄手数料は返送・放棄された商品ごとに請求されます。 出典はAmazon Seller Centralの「FBA料金」案内です(2026年10月16日確認)。またAmazon Newsが2026年3月17日に公開した「FBA在庫の返送/所有権の放棄依頼手数料が、各商品が処理されるごとに請求されるようになります」では、2026年4月1日以降に新規作成された依頼について、各商品が処理される時点で手数料を請求する運用が示されています(2026年10月16日確認)。料金・処理時点は変更され得るため、依頼時の最新画面と明細を保存します。
真贋・権利侵害がある在庫は一律返送・廃棄しない
真正性、所有権、危険物、知的財産権等が問題になっている場合、返送できるか、返送先、処分の可否は通知と権利関係によります。廃棄すると現物確認の機会を失うことがあり、返送して再販売すれば別の紛争が生じることもあります。サンプル保全、写真、ロット・シリアル、仕入経路を確保し、通知に沿って判断します。
損害を検討するときの計算項目
請求可能性は契約・規約・帰責性で変わりますが、事実の記録として、商品別の取得原価、返送・廃棄・保管料、輸送費、返送品の破損・不足、販売不能となった期間と代替販売の実績を分けます。将来利益は「通常売れたはず」という主張だけでなく、過去販売、季節性、返品率、他販路、回避できた費用等を踏まえる必要があります。
留保金との違い
| 論点 | 中心証拠 | 求める対応 |
|---|---|---|
| FBA在庫 | 数量・状態・所有・取得原価・処理履歴 | 返送、処理説明、商品価値・費用等 |
| 売上金留保 | 注文・送金・残高・返金・控除明細 | 計算根拠、契約上の支払、留保理由等 |
在庫記事では留保額による一律の相談足切りを設けません。在庫価値、証拠、処理の緊急性、費用対効果を個別に見ます。
状態別に確認すること
| 状態 | 直ちに確認すること | 主な資料 |
|---|---|---|
| 返送拒否 | 拒否理由、対象SKU、規約・通知、解除条件 | 返送依頼、エラー画面、サポート回答 |
| 廃棄予告 | 対象・数量・予定日、選択主体、異議・保全の期限 | 予告全文、在庫CSV、仕入・権利資料 |
| 実際に廃棄 | 処理日、数量、根拠、現物・代替証拠、処理費 | 処理レポート、通知、直前在庫、商品写真 |
| 費用控除 | 費目、単価、数量、請求時点、二重計上 | 料金表保存、トランザクション・請求明細 |
所有・返還請求と損害賠償を分ける
在庫については、誰が所有者か、Amazonがどの契約に基づき占有・保管しているか、返還時期・方法、返送制限又は廃棄権限がどう定められているかを確認します。返還請求の可否と、既に失われた商品について金銭賠償を求める可否は別です。
損害賠償では、民法415条・416条(e-Gov法令検索、2026年10月16日確認)を踏まえ、契約違反等の根拠、相手方の帰責性、通常損害・予見可能な特別損害、因果関係、損害回避可能性、免責・責任制限条項が問題になります。取得原価は商品価値を示す一資料ですが、当然にその全額が賠償額になるわけではありません。返送されて換価できた価値、保険・補償、売却費用、通常生じたであろう費用等も区別します。逸失利益を求めるなら、過去販売と利益率、販売可能期間、季節性、他販路、返品率を具体化します。
緊急保全を混同しない
売上金や損害賠償という金銭債権の将来の執行を確保する仮差押えと、特定在庫の廃棄・処分を止めるために検討する係争物に関する仮処分等は目的と要件が異なります。民事保全法13条(e-Gov法令検索、2026年10月16日確認)の権利・必要性の疎明が共通して問題となり、金銭仮差押えには同法20条、在庫処分については同法23条等の要件を個別に検討します。廃棄予告だけで必ず発令されるものではなく、対象在庫の特定、所有・返還の根拠、処分の切迫性、担保等が必要です。
よくある質問
Q1. 返送依頼を出せば保管料は直ちに止まりますか?
依頼時ではなく商品ごとの処理時点が料金上問題になることがあります。最新料金案内、処理状況、請求明細を確認してください。
Q2. 廃棄されたら仕入額全額を請求できますか?
当然には言えません。廃棄権限、契約違反、帰責性、因果関係と損害額を立証し、残存価値や回避可能性等も検討します。
Q3. 売上金の仮差押えで在庫廃棄も止まりますか?
目的が異なります。金銭債権の仮差押えと、特定在庫の処分を止める仮処分等を混同せず、それぞれの権利と必要性を検討します。
共通相談から得られる抽象パターン
相談で問題になるのは、停止後も画面を見られると思って保存しない、返送依頼数と受領数を商品別に照合しない、廃棄後に現物を証拠にしたいと考える、在庫原価と留保売上金を一つの金額で請求する、という型です。まず二つの台帳に分けることが、交渉・請求の出発点です。
弁護士に相談するときの資料
通知全文、規約・料金画面の保存、在庫CSV、返送・廃棄履歴、追跡、受領記録、仕入・支払資料、売上金レポートを用意します。弁護士はAmazon内手続、契約上の請求、交渉、必要に応じた訴訟の対象と費用対効果を分けて検討します。
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