この記事の執筆弁護士
弁護士 松本 洋明(弁護士法人ブライト 交通事故主任)
大阪弁護士会所属。むちうち14級認定の実務を多数経験。通院記録・症状一貫性の立証戦略に強み。
この記事の監修弁護士
弁護士 和氣 良浩(弁護士法人ブライト 代表)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ブライト代表。
最終更新日:2026年7月13日
この記事の結論(30秒でわかる)
- 後遺障害14級9号は 「局部に神経症状を残すもの」。むちうち・腰部捻挫で最も多い等級。
- 自賠責慰謝料 32万円、赤本基準慰謝料 110万円、労働能力喪失率 5%。
- 認定の鍵は ① 通院の継続性 ② 症状の一貫性 ③ 自覚症状の医学的合理性 の3つ。
- 「他覚的所見がある」ケースでは 12級13号 へのステップアップを検討すべき。
交通事故でむちうち・腰部捻挫の症状が残ったとき、最初に目指す等級が 後遺障害14級9号 です。「局部に神経症状を残すもの」と定義され、画像所見では明確に示せない症状でも、適切な立証により認定されます。
この記事では、14級9号の認定要件・慰謝料相場・実務上のポイント・12級13号へのステップアップ戦略まで、弁護士法人ブライト交通事故主任の松本洋明弁護士が解説します。後遺障害認定の全体像は 後遺障害認定の完全ガイド をご覧ください。
目次
- 後遺障害14級9号の定義と対象症状
- 14級9号の慰謝料・逸失利益(自賠責 vs 赤本)
- 認定に必要な3つの条件
- 「MRI異常なし」でも14級9号が認定される理由
- 通院頻度・期間の実務感覚
- 14級9号の認定実例(症状別)
- 14級9号→12級13号へステップアップする条件
- 非該当になりやすい3つのパターン
- 部位別の14級9号認定パターン
- 主婦・自営業・無職の逸失利益計算
- 治療打ち切りからの逆転戦略
- 労災後遺障害との比較(通勤災害の併用判断)
- ブライトが担当した14級事案の実務ポイント
- 14級9号の申請ルート|事前認定と被害者請求の違い
- 請求できる期限(時効)——後遺障害は「症状固定日」から数える
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
後遺障害14級9号の定義と対象症状
自動車損害賠償保障法施行令 別表第2 14級9号は、後遺障害として 「局部に神経症状を残すもの」 と定義されています。「局部」とは身体の特定の部位を意味し、「神経症状」とは痛み・しびれ・違和感などの自覚症状を指します。
14級9号の対象となる主な症状
- むちうち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群):頚部の痛み、頭痛、めまい、手のしびれ
- 腰部捻挫:腰痛、下肢のしびれ、坐骨神経痛
- 軽度の打撲・挫傷:症状固定後も持続する痛み
- 関節周囲の軟部組織損傷:可動域制限に至らない違和感・疼痛
後遺障害14級の全9号一覧(14級9号だけではない)
「後遺障害14級」は9号(神経症状)だけを指す言葉ではありません。自動車損害賠償保障法施行令 別表第2 の14級には 1号から9号まで9種類 の類型があります。交通事故で最も件数が多いのは9号ですが、歯の補綴や傷あと、下肢の短縮なども同じ14級です。
| 号数 | 条文上の定義 | 代表的なケース |
|---|---|---|
| 14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの | 眼部の裂傷後にまぶたの一部欠損・まつげの欠損が残った |
| 14級2号 | 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | ハンドル・エアバッグ等による歯の破折で3本以上を補綴した |
| 14級3号 | 1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの | 頭部外傷後の片耳の軽度難聴 |
| 14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | 腕の擦過創・熱傷後の瘢痕 |
| 14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの | バイク事故での下腿の瘢痕 |
| 14級6号 | 1手のおや指以外の手指の骨の一部を失ったもの | 手指の開放骨折後の骨欠損 |
| 14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの | 指の第1関節が動かなくなった |
| 14級8号 | 1下肢を1cm以上短縮したもの | 大腿骨・脛骨骨折の癒合後に脚長差が残った |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | むちうち・腰部捻挫後の痛み・しびれ(本記事の主題) |
複数の号に該当する場合は「併合14級」として扱われます。号が違っても等級(=慰謝料額・労働能力喪失率)は同じ14級ですが、逸失利益の労働能力喪失期間の考え方は症状の性質によって変わります(たとえば下肢短縮のような器質的な障害は、むちうちの神経症状より長期の喪失期間が認められやすい傾向があります)。
14級9号と非該当の境界
14級9号は 後遺障害の最も低い等級 ですが、認定されるか非該当になるかで賠償額は大きく違います。14級9号が認定されれば最低でも赤本基準で 慰謝料110万円+逸失利益。非該当だとこれらの上乗せ請求は不可能です。
14級9号の慰謝料・逸失利益(自賠責 vs 赤本)
等級別の比較表
| 項目 | 14級9号 | 12級13号 |
|---|---|---|
| 自賠責基準慰謝料 | 32万円 | 94万円 |
| 任意保険基準慰謝料(目安) | 40万円前後 | 100万円前後 |
| 弁護士基準(赤本)慰謝料 | 110万円 | 290万円 |
| 労働能力喪失率 | 5% | 14% |
| 労働能力喪失期間 | 3〜5年(むちうち) | 10年〜67歳まで |
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交通事故慰謝料の相場まとめ(基準・等級別)|自賠責・任意保険・弁護士基準の違いを一覧で確認できます
※任意保険基準は各保険会社が社内的に定める非公開の内部基準のため、統一的な金額は公表されていません。自賠責基準と弁護士基準(赤本)の中間からやや自賠責寄りの水準で提示されることが多いという実務上の傾向を目安として記載しています。実際の提示額は保険会社・個別事情により異なります。
※12級13号の労働能力喪失期間「67歳まで」は骨折等の器質的損傷を伴うケースの目安です。むちうちのように画像所見が乏しい神経症状による12級13号の場合、裁判実務上は喪失期間が5〜10年程度に制限される例も少なくありません。
「自賠責は14級で75万円」の正体——限度額と慰謝料は別物
インターネット上では「後遺障害14級の自賠責は75万円」という記載をよく見かけます。一方で本記事の表では自賠責慰謝料を32万円としています。矛盾しているように見えますが、これは 見ている数字が違う ためです。
- 後遺障害慰謝料32万円:自賠責保険の支払基準で定められた、14級の「慰謝料」の額
- 支払限度額75万円:自動車損害賠償保障法施行令 別表第2 が定める、後遺障害部分の損害(慰謝料+逸失利益等)を合計した上限
つまり75万円は「慰謝料の額」ではなく「後遺障害部分の総額の天井」です。慰謝料32万円と逸失利益を足しても75万円を超えては自賠責からは出ません。そして実務上、この75万円が 相手方任意保険会社の初回提示の事実上の目安 として機能してしまっているのが、被害者が損をしやすい最大の理由です。
参考までに、12級の場合は後遺障害慰謝料94万円・支払限度額224万円です。等級が2段階上がるだけで自賠責の枠は3倍になります。
入通院慰謝料の相場(赤本別表Ⅱ・むちうち等の場合)
後遺障害慰謝料とは別に、事故から症状固定日までの治療期間に対して 入通院慰謝料(傷害慰謝料) が支払われます。むちうちや軽度の打撲など他覚的所見に乏しい症状の場合、弁護士基準では「赤い本」別表Ⅱが適用されます。
| 通院期間 | 弁護士基準(赤本 別表Ⅱ・入院なし) |
|---|---|
| 1ヶ月 | 19万円 |
| 2ヶ月 | 36万円 |
| 3ヶ月 | 53万円 |
| 4ヶ月 | 67万円 |
| 5ヶ月 | 79万円 |
| 6ヶ月 | 89万円 |
| 7ヶ月 | 97万円 |
| 8ヶ月 | 103万円 |
| 9ヶ月 | 109万円 |
| 10ヶ月 | 113万円 |
| 11ヶ月 | 117万円 |
| 12ヶ月 | 119万円 |
※日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)別表Ⅱ(2026年版)による。骨折など他覚的所見がある場合は別表Ⅰが適用され、金額はさらに上がります。
これに対し自賠責基準の入通院慰謝料は、1日あたり4,300円(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)に「対象日数」を掛けて算定します。対象日数は ①治療期間の日数 と ②実通院日数の2倍 のうち 少ない方 です。つまり自賠責基準では通院頻度が低いほど金額が下がる一方、弁護士基準は通院「期間」を基礎にするため、通院間隔が多少開いても減額されにくいという構造の違いがあります。
自賠責基準と弁護士基準で総額はどれだけ変わるか
「6ヶ月通院(実通院45日)・年収400万円・14級9号認定」という典型例で、両基準を並べます。
| 損害項目 | 自賠責基準 | 弁護士基準(赤本) |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 約38.7万円 4,300円×90日(実通院45日×2) |
89万円 別表Ⅱ 通院6ヶ月 |
| 後遺障害慰謝料 | 32万円 | 110万円 |
| 後遺障害逸失利益 (喪失率5%・5年) |
慰謝料と合算して 後遺障害部分75万円の枠内 自賠責でも逸失利益は算定されますが、慰謝料と合わせて限度額を超えては支払われません |
約91.6万円 400万円×5%×4.580 |
| 後遺障害部分の小計 | 75万円 (支払限度額でキャップ) |
約201.6万円 |
| 合計 | 約113.7万円 | 約290.6万円 |
※ライプニッツ係数は民法404条の法定利率年3%(2020年4月1日以降の事故に適用)による年金現価係数。5年=4.580、7年=6.230。任意保険会社が自賠責の枠を超えて上乗せ提示することもありますが、その水準は各社が社内的に定める非公開の基準によるため、統一的な金額は公表されていません。
この試算では差額が 約177万円 になります。さらに、交渉によって労働能力喪失期間が5年から7年に伸びれば逸失利益は約91.6万円→約124.6万円(係数6.230)となり、差はもう一段広がります。逸失利益の「年数」は、14級9号の交渉で最も争われる項目 です。
【CTA】提示された示談額が妥当か確かめたい方へ
保険会社からの提示書をお見せいただければ、弁護士基準で再計算した金額との差額を具体的に試算します。相談料は何度でも無料です。
逸失利益の計算例(年収500万円・35歳)
14級9号の場合:500万円 × 5% × ライプニッツ係数4.58(5年・年利3%)≒ 約115万円
赤本基準慰謝料110万円を加えて、合計約225万円。
これに加えて、傷害分の慰謝料・治療費・休業損害が別途請求できます。
むちうちの労働能力喪失期間が短い理由
むちうちなど他覚的所見が乏しい14級9号の労働能力喪失期間は、実務上 3〜5年 に制限されるのが一般的です。これは「症状が時間の経過で改善する蓋然性がある」と判断されるためです。骨折等の他覚的所見がある場合は、より長い期間(67歳までなど)が認められる傾向があります。
認定に必要な3つの条件
条件① 通院の継続性
事故から症状固定まで、継続的に通院しているか が最重要です。通院が断続的だったり、途中で長期間空いたりすると、「症状が軽い」「治癒した」と判断されます。
条件② 症状の一貫性
事故直後から症状固定まで、主訴(首が痛い・腰が痛いなど)が一貫している ことが必要です。「痛い部位が時期ごとに変わる」「症状が消失していた時期がある」などは認定の障害になります。
条件③ 自覚症状の医学的合理性
自覚症状が 医学的に説明可能 であることも重要です。たとえばむちうちで「腰が痛い」だけだと、事故との因果関係が疑われます。神経学的検査(スパーリングテスト等)の異常所見、X線・MRIで微細な所見でも、自覚症状と整合していることが立証材料になります。
「MRI異常なし」でも14級9号が認定される理由
「MRIで異常なしと言われた」——これだけで後遺障害はあきらめてしまう方が少なくありません。しかし14級9号は、画像上の異常所見を認定の必須要件としていない等級です。交通事故の後遺障害実務を扱う専門書でも、14級9号の要件について「画像上の異常所見や諸検査における異常所見は必ずしも必要ない」と整理されています。

画像に代わる「8つの間接事実」で立証する
むちうち・腰部捻挫の自覚症状は、骨折のようにレントゲンやMRIで直接証明することが困難です。痛みの強さを客観的に数値化する検査方法も存在しません。そこで実務上は、次の8つの間接事実を積み重ねて「事故により神経症状が残存している」ことを立証していきます。
- 事故態様:事故でどの程度の衝撃が身体に加わったか(車両の損傷状況・速度差など)
- 症状の発生時期:どのような症状が、いつ発生したか(事故直後か、日を置いてからか)
- 症状の推移:症状が悪化・改善・一進一退のどれをたどったか
- 治療内容:投薬・注射・リハビリなど、どのような治療を受けたか
- 他覚的所見:画像や神経学的検査の結果(なくても認定は可能だが、あれば有利)
- 治療期間と頻度:どの程度の期間、どれくらいの頻度で通院したか
- 残存症状:症状固定時にどのような症状が残っているか
- 事故前後の生活状況の変化:就労・家事・日常動作にどのような支障が生じているか
MRIで異常が出なくても、これら8要素を通院記録・陳述書・後遺障害診断書で丁寧に積み上げれば、「事故により症状が残った」ことを間接的に証明できます。反対に、画像上わずかでも所見(軽度の椎間板膨隆など)が見つかれば、それが年齢相応の変化であっても「もともとの身体に事故の衝撃が加わって症状が顕在化した」という説明の材料として有利に働くことがあります。
神経学的検査で「他覚所見に近い」補強を作る
画像所見がなくても、スパーリングテスト(Spurling test)・ジャクソンテスト(Jackson test)などの神経学的検査で陽性所見が得られれば、自覚症状の医学的合理性を補強する材料になります。整形外科領域の専門書では、スパーリングテストは「患側に頭部を傾斜・後屈させて圧迫し軸圧を加える」検査、ジャクソンテストは「頭部を後屈させて圧迫し軸圧を加える」検査として整理されており、いずれも神経根に障害があればその支配領域に疼痛・しびれが放散するとされています。腰部の神経症状であれば、下肢を挙上して評価するSLRテスト(下肢伸展挙上テスト)が同様の役割を果たします。
これらの検査結果は診断書・カルテに明記してもらうことが重要です。「陽性所見があったのに診断書に記載されていない」ケースは実務上少なくありません。
【CTA】「MRIで異常なし」と言われた方へ
画像所見がなくても、8つの間接事実の積み上げ方次第で認定の可能性は十分にあります。通院記録・検査結果を拝見した上で立証方針をご提案します。
通院頻度・期間の実務感覚
「何回通院すれば14級が取れますか」とよく聞かれますが、「○回以上で確実」というような目安は申し上げられません。あくまで実務感覚として、参考になる目安を共有します。
14級認定の実務的な目安(断定ではない)
- 通院期間:事故から症状固定まで 6ヶ月以上 が一般的
- 実通院日数:100日前後(週2〜3回ペース)
- 通院の連続性:通院間隔は2週間以内を目安に
- 整形外科の継続通院:整骨院だけでは不十分。整形外科での定期診察を必ず維持
整骨院通院の落とし穴
「痛いから整骨院に通っている」だけでは、後遺障害認定では 正規の医療機関による治療として評価されません。整形外科の医師の指示書をもらい、定期診察を継続することが必須です。「整骨院しか行っていない」ケースでは認定が困難になります。
また、通院実績と並んで重要なのが後遺障害診断書の記載精度です。同じ通院実績でも、診断書の自覚症状欄・他覚所見欄の書き方次第で認定結果が変わることがあります。詳しくは 後遺障害診断書の書き方・チェックポイント完全ガイド をご覧ください。
関連記事:交通事故と整骨院通院の注意点
14級9号の認定実例(症状別)
むちうち(頚椎捻挫)の認定実例
もっとも多いパターン。追突事故などで頚部痛・頭痛・上肢しびれが残存。6ヶ月以上の整形外科通院+スパーリングテスト陽性所見で14級9号認定。
腰部捻挫の認定実例
側突・後突事故での腰痛・下肢しびれ。MRIで明らかな椎間板ヘルニアがなくても、神経学的検査と症状の一貫性で14級9号認定が可能。
関節周囲の14級認定実例
肩関節・膝関節周辺の打撲後の慢性疼痛。可動域制限には至らないが、症状の一貫性で14級9号が認められた事例があります。
14級9号→12級13号へステップアップする条件
14級と12級の決定的な違いは 「他覚的所見の有無」 です。12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認定されるには、以下のいずれかが必要です。
12級認定に必要な他覚的所見
- MRIでの神経圧迫所見:椎間板ヘルニア・神経根圧迫
- 神経学的検査の明確な異常:知覚異常の範囲が解剖学的に整合
- 電気生理学的検査の異常:神経伝導速度低下、針筋電図の脱神経所見
14級と12級の境目を分ける3つのポイント
「どこまでいけば12級なのか」は、実務上おおむね次の3点で判断されます。ご自身の材料がどの段階にあるかを確認してください。
| 判断材料 | 14級9号にとどまりやすい | 12級13号が見えてくる |
|---|---|---|
| ① 画像所見(MRI・CT) | 所見なし/既存の加齢性変性のみ/事故との関連が不明確 | 神経根圧迫所見・脊柱管狭窄・事故を契機とした椎間板ヘルニア・骨折の変形治癒など、神経症状を裏づける器質的変化が確認できる |
| ② 神経学的検査の他覚的所見 | 検査未実施/単発の陽性所見のみ/記録が診断書に残っていない | スパーリングテスト・ジャクソンテスト陽性、深部腱反射の亢進・低下、知覚障害の範囲が解剖学的に整合、筋力低下の客観的測定——これらが画像所見と整合している |
| ③ 通院期間・頻度 | 6ヶ月未満で症状固定/通院間隔が空いている | 6ヶ月以上の継続通院、整形外科の定期受診が中心で、症状の推移がカルテに連続して記録されている |
条文上の違いは「頑固な」という3文字だけですが、認定実務ではこれが 「他覚的所見によって医学的に証明できるか」 に置き換えられて運用されています。①と②が揃い、かつ相互に矛盾しないことが12級13号の実質的な要件です。③は①②を評価してもらう前提条件にあたります。
12級を狙うときに準備する5つの材料
初回申請から12級を狙う場合も、14級認定後に異議申立てで上を目指す場合も、準備するものは共通しています。
- 神経学的検査の所見を診断書に詳細に記載してもらう——実施していても記載が漏れている例が実務上少なくありません
- MRIの再撮影——撮影時期・機器のテスラ数・撮影条件によって見え方が変わることがあります
- 協力医による医学的意見書の取得——症状と所見の整合性を医学的に説明してもらいます
- 日常生活・就労への影響を陳述書にまとめる——具体的な支障の内容を時系列で記録します
- 勤務先からの就労状況証明——業務への影響を第三者の資料で裏づけます
ブライトが14級から12級13号へ引き上げた事案の例
40代の男性会社員がむちうち(頚椎捻挫)で自賠責の初回認定が14級9号にとどまった事案では、異議申立てにあたって 協力医の医学的意見書を取得し、神経学的所見と画像所見の整合性を整理して提出 したことで、12級13号の認定を獲得 しました。
初回申請の資料に不足があったというより、「すでにある所見が申請書類の上で結びついていなかった」ことが要因でした。異議申立ては、新しい検査を足すことと同じくらい、手元の材料を医学的な論理でつなぎ直す作業 が結果を左右します。
※守秘義務のため、依頼者の属性・事故現場等は匿名化・一部変更しています。認定結果は事案ごとの事情によって異なり、同様の結果を保証するものではありません。
14級→12級のステップアップ戦略
1回目の申請で14級9号にとどまった場合、追加MRIの撮影+神経学的検査の補強+医師の意見書 を組み合わせて異議申立てを行います。等級が1つ上がるだけで、賠償額は 225万円 → 1,717万円(年収500万円35歳の試算)と大きく変わります。
詳しくは むちうち14級vs12級の分かれ目 / 12級と14級で慰謝料はいくら違う?180万円差の具体例 / 異議申立て3つの戦略 をご覧ください。
非該当になりやすい3つのパターン
パターン① 通院が断続的・短期
3ヶ月で通院をやめた、通院間隔が月1回ペースなど。「症状が軽い」と判断されます。
パターン② 事故直後の受診が遅い
事故から2週間以上経ってから初診の場合、事故との因果関係が疑われます。事故当日または翌日の初診が原則です。
パターン③ 自賠責の事前認定(保険会社任せ)
相手方任意保険会社に任せきりにすると、十分な資料が揃わないまま申請されることがあります。被害者請求 に切替えて被害者側で資料を整えるべきです。
【CTA④】非該当のリスクを事前にチェック
部位別の14級9号認定パターン
14級9号「局部に神経症状を残すもの」は、ほぼ すべての身体部位 で起こり得ます。部位別の認定パターンを、実務感覚で整理します。
頚部の14級9号
最も典型的なパターンが 頚椎捻挫(むちうち) です。追突事故後の頚部痛・後頭部痛・上肢のしびれが代表症状。神経学的検査ではスパーリングテストやジャクソンテストの陽性所見が重要な立証材料になります。整形外科を 事故直後から6ヶ月以上 継続通院し、症状の一貫性を確保することが認定の要となります。なお、上肢のしびれに加えて手指の巧緻運動障害・歩行のふらつきなど脊髄症状を疑わせる所見がある場合は、単なる頚椎捻挫ではなく頚椎症性脊髄症等のより重い病態が隠れている可能性があるため、整形外科・脊椎専門医による精査を優先すべきです(日本整形外科学会の診療ガイドラインでも脊髄症の鑑別が重視されています)。
腰部の14級9号
側突事故・後突事故での 腰部捻挫 で生じる腰痛・下肢のしびれ・坐骨神経痛。SLRテスト陽性や下肢の知覚低下が補強材料です。腰椎の場合、神経症状が L4・L5・S1 のどの神経根に由来するかが明確になれば、12級13号への足掛かりにもなります。
肩関節周辺の14級9号
肩鎖関節挫傷・腱板損傷後の慢性疼痛で、可動域制限には至らないが症状が残るケースです。MRIで腱板の部分損傷や関節包の肥厚が確認でき、症状の一貫性があれば14級9号が見えてきます。なお、可動域制限が明確に残る場合は 12級6号(関節機能障害)への上方修正を検討します。
膝関節周辺の14級9号
膝靭帯損傷(前十字靭帯・後十字靭帯・側副靭帯)や半月板損傷後の慢性疼痛。徒手検査での不安定性が確認でき、MRIで靭帯の部分損傷が見える場合に14級9号認定の可能性があります。動揺関節として明らかな機能障害があれば、より上位の等級も視野に入ります。
足関節・足部の14級9号
足関節捻挫・足趾の挫傷後の慢性疼痛。距骨と脛骨の隙間の左右差・足趾の可動域低下・歩行困難などが立証材料になります。重い荷重をかけられない・長距離歩行ができないなど、労働への影響を併せて示すことが重要です。
上肢の14級9号(手・指・前腕)
橈骨遠位端骨折後の手関節痛、TFCC損傷後の手首尺側痛など。神経損傷を伴う場合は 神経伝導速度検査(NCV) で客観化し、12級13号や12級10号(局部に著しい運動障害)を狙う戦略もあります。
主婦・自営業・無職の逸失利益計算
14級9号の逸失利益は 「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数」 で計算します。基礎収入の決め方が職業類型ごとに違うため、実務感覚を整理します。
給与所得者(サラリーマン・OL)
前年度の 源泉徴収票の支払金額 を基礎収入とします。事故年に昇給があった場合、事故時点の見込み年収を採用できることがあります。賞与・残業代を含む額が基本です。
主婦・主夫(家事従事者)
家事労働には金銭的対価がない代わりに、賃金センサス(全女性労働者の平均賃金) を基礎収入として認める運用が確立しています。直近の賃金構造基本統計調査(厚生労働省)における女性労働者・学歴計・全年齢平均は、賞与・特別給与を含む年収で 約400万円 前後で推移しています(適用年は赤本各年版で確認)。これに14級喪失率5%・喪失期間5年(むちうち実務)を掛けて、約90〜100万円が逸失利益の目安となります。
兼業主婦の場合
パート・アルバイトと家事の両方を担っている兼業主婦の場合、パート収入と賃金センサスのいずれか高い方 を基礎収入とできるケースがあります。ブライトでも、通勤中の追突被害(過失0:100)で兼業主婦の休業損害論点を交渉した実例があります。
自営業者・フリーランス
確定申告書の 所得金額(収入から経費を引いた額) を基礎収入とするのが原則です。ただし、専従者控除前の金額や、事業経費に按分できる固定費の取扱いで争いになります。確定申告書3年分 を準備して交渉に臨むのが標準的です。
無職・学生
就労意欲・就労可能性があれば、賃金センサス(年齢別・全労働者平均) を基礎収入として主張できる場合があります。学生は卒業見込み学歴の賃金センサスを使うこともあります。就職活動中の方は 内定先の予定年収 を主張するパターンもあります。
14級9号で逸失利益が認められない・限定される事案
14級9号は他覚的所見が乏しい等級のため、相手保険会社から 「実際の収入減はないから逸失利益はない」 と争われることがあります。実務上は 「現実の減収がなくても、能力低下による将来の不利益」 として一定額が認められる傾向ですが、被害者側で 仕事への支障・将来の昇進機会への影響 等を陳述書で立証する必要があります。相手方の「減収なし」主張に対しては、「現実の減収がないのは、本人の努力や周囲のカバーによって現在の収入がかろうじて維持されているに過ぎない」 ことを具体的に主張し、逸失利益を勝ち取っていく実務対応が必要です。
治療打ち切りからの逆転戦略
事故から3〜6ヶ月経過すると、相手方任意保険会社から 治療費の支払い打ち切り(一括対応の終了) を打診されることが増えます。打ち切られると治療継続が難しくなり、結果として14級認定の可能性も下がります。打ち切りからの逆転戦略を整理します。
戦略①:健康保険への切替で治療継続
打ち切り後も治療継続が必要であれば、健康保険を使って自費通院 に切り替えます。第三者行為による傷病届を健康保険組合に提出すれば、健康保険の3割負担で通院を継続できます。あとから相手方保険会社・自賠責に治療費請求できます。
戦略②:傷病手当金・労災給付の活用
業務外の事故であれば 健康保険の傷病手当金(給与の約2/3を最長1年6ヶ月)、通勤災害・業務災害であれば 労災保険(休業給付・療養給付)を活用して経済的負担を抑えながら治療を継続します。
戦略③:自賠責への被害者請求で内払い金確保
傷害分の自賠責支払い限度(120万円)の範囲で 被害者請求 を行い、治療費・休業損害の一部を確保します。最低限の経済的安定を確保しつつ、症状固定まで通院を継続できます。
ブライトでも、大手損保への3ヶ月分休業損害内払い請求・一括打切り後の傷病手当金切替と整骨院通院継続を実現した実例があります。
労災後遺障害との比較(通勤災害の併用判断)
「労災 後遺障害14級9号」で調べている方の多くは、通勤中・仕事中にむちうちを負ったケースです。通勤中・業務中の交通事故では、自賠責に加えて 労災保険の後遺障害認定 を受けられます。労災と自賠責は別個に手続きが進み、等級認定基準が共通 ですが、給付内容・申請の進め方は異なります。労災の後遺障害制度全体の解説は 労災の後遺障害等級・給付額の完全ガイド で詳しく整理しています。
労災と自賠責の併用ルール
- 同じ損害項目について 二重取りはできない(損益相殺)
- 労災給付には 慰謝料がない(労災は休業給付・障害給付など実費補償が中心)
- 慰謝料相当部分は自賠責・任意保険から別途請求できる
- 労災の 特別支給金(給与の20%)は損益相殺の対象外=そのまま被害者に残る
14級認定での労災 vs 自賠責の支給比較
| 給付項目 | 自賠責 14級 | 労災 14級 |
|---|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 32万円 | なし(慰謝料は労災対象外) |
| 後遺障害給付(一時金) | — | 給付基礎日額の56日分 |
| 特別支給金 | — | 56万円(一時金) |
| 逸失利益相当 | 慰謝料に含むor別途算定 | 給付に含まれる |
「労災 後遺障害14級 慰謝料」で検索される方の多くが誤解しがちな点ですが、労災保険からは慰謝料が一切支給されません。慰謝料は自賠責・任意保険(加害者側)に対してのみ請求できます。労災の給付は治療費・休業補償・障害給付といった実費的な補償であり、精神的損害の賠償である慰謝料とは制度上まったく別物です。この違いを理解しないまま示談すると、本来請求できる慰謝料を取りこぼすことになります。
通勤中の事故ではどちらを先に申請するか
通勤災害の場合、労災を先に使うほうが有利 なケースが多い実務感覚があります。理由は:
- 労災の 特別支給金(給与20%相当) は損益相殺の対象外で、まるごと残る
- 自賠責の120万円枠を 慰謝料・通院交通費 に温存できる
- 労災後遺障害認定が出れば、自賠責申請時に有利な参考資料になる
関連記事:労災と自賠責の併用判断 / 労災と自賠責を併用して圧迫骨折の慰謝料を最大化する方法
ブライトには労災部部長の 笹野皓平 弁護士 が在籍し、自賠責と労災の最適な順序を事案ごとに設計します。
ブライトが担当した14級事案の実務ポイント
14級9号は「等級が取れて終わり」ではありません。むしろ等級認定後の 基礎収入と過失割合 の詰め方で、最終的な受取額が大きく変わります。ブライトが実際に担当した事案から、争点になりやすい2つの型を紹介します。
型①:役員報酬の「労務対価性」を立証して基礎収入を引き上げた事案
追突事故で頚椎捻挫を負い、併合14級(14級9号+14級10号)が認定された40〜50代の男性・会社役員の事案です。争点は 逸失利益の基礎収入 でした。
役員報酬は「働いた対価(労務対価)」と「会社への出資に対する利益配当」が混在しているとみられやすく、相手方からは「事故後も報酬額が変わっておらず減収がない」「役員報酬のうち労務対価部分はわずかだ」と反論されます。この事案でも、裁判所の当初の和解案は年収400万円を基礎とする計算でした。
これに対し、証人尋問で役員としての具体的な職務内容・実労働の実態を立証 し、配当として支払われていた部分についても会社からの役員給与と一体の労務対価であることを主張しました。尋問後の裁判官の心証が変わり、基礎収入 1,440万円 を前提とする内容で、和解額350万円に至っています。
実務上の教訓:役員・自営業者の14級事案では、「減収がない=逸失利益もない」と早々に諦めないことです。現実の減収がないのは、本人の努力や周囲のカバーで収入がかろうじて維持されているに過ぎない場合が多く、その事情自体を立証の対象にできます。
型②:過失割合の不利を人身傷害保険で埋めた事案
右直事故(直進していた被害者側30・右折してきた相手方70)で頚椎捻挫を負い、14級が認定された男性会社員の事案です。この事案では、賠償額から30%が過失相殺で差し引かれる点が大きな痛手でした。
そこで、被害者ご自身が加入していた 人身傷害保険を活用 し、過失相殺で削られる部分を自身の保険から回収する方針を採りました。結果として、実質的には過失10:90に近い水準まで回収しています。
実務上の教訓:14級のように賠償総額がそれほど大きくない事案ほど、過失相殺の影響は相対的に重くなります。相手方との交渉だけでなく、自身の保険(人身傷害保険・弁護士費用特約)をどう組み合わせるか が最終手取りを決めます。人身傷害保険の使い方については 人身傷害保険の訴訟基準差額説 もあわせてご覧ください。
※いずれも守秘義務のため、依頼者の属性・勤務先・事故現場等は匿名化・一部変更しています。結果は事案ごとの事情によって異なり、同様の結果を保証するものではありません。
【CTA】役員・自営業の方、過失割合に納得できない方へ
基礎収入の立証、人身傷害保険の活用など、14級でも手取りを伸ばせる余地がないかを個別に検討します。相談料は何度でも無料です。
14級9号の申請ルート|事前認定と被害者請求の違い
後遺障害等級の申請には2つのルートがあります。どちらを選ぶかで、提出できる資料の中身が変わります。
| 項目 | 事前認定(加害者請求) | 被害者請求 |
|---|---|---|
| 誰が手続きするか | 相手方任意保険会社が代行 | 被害者本人(または代理人弁護士)が自賠責保険会社を通じて請求 |
| 手間 | 後遺障害診断書を渡すだけで済む | 自賠責保険金支払請求書・事故証明・診断書・診療報酬明細書等を自分で揃える |
| 提出資料のコントロール | できない(何が出されたか被害者側は把握しにくい) | できる。画像・医師の意見書・陳述書などを自分の判断で追加できる |
| 認定前の金銭の受領 | 示談成立まで受け取れない | 等級認定後、自賠責分(14級なら75万円の枠内)を先に受け取れる |
14級9号は「画像で証明できない症状をどう説明するか」が勝負になる等級です。事前認定では、相手方保険会社が最低限の書類だけを提出しても被害者側からは分かりません。弁護士が関与する場合は原則として被害者請求を選び、通院記録・神経学的検査結果・陳述書を整えたうえで申請します。
また、被害者請求には 先に自賠責分を受け取れる という実務上の利点もあります。示談交渉が長引いても、当面の生活資金を確保しながら交渉を続けられます。
請求できる期限(時効)——後遺障害は「症状固定日」から数える
損害賠償を請求できる期間には期限があります。14級9号は症状固定まで6ヶ月以上かかり、そこから等級認定・示談交渉と進むため、気づいたときには残り期間が短いということが起こり得ます。
加害者(任意保険会社)への損害賠償請求権
2020年4月1日以降に発生した事故については、改正民法724条の2により、人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権 の時効は「損害および加害者を知った時から5年」に延長されています。
- 傷害分(治療費・休業損害・入通院慰謝料):事故発生日から5年
- 後遺障害分(後遺障害慰謝料・逸失利益):症状固定日から5年
- 物損部分(車両の修理費等):事故発生日から3年(改正の対象外)
※期間の数え方は民法140条の初日不算入により、いずれも起算日(事故日・症状固定日)の翌日から数えます。ただし期限ぎりぎりの判断は避け、余裕をもって手続きに着手してください。
2020年3月31日以前に発生した事故には旧法が適用され、人身・物損ともに3年です。「交通事故の時効は3年」という説明を見かけますが、現在発生している人身事故については正確ではありません。
自賠責保険への被害者請求権は「3年」のまま
見落とされやすいのが、自賠責保険会社に対する被害者請求権の時効は3年(自動車損害賠償保障法19条)であり、加害者への損害賠償請求権(5年)とは別に進行するという点です。
- 傷害分の被害者請求:事故発生日の翌日から3年
- 後遺障害分の被害者請求:症状固定日の翌日から3年
つまり「加害者にはまだ5年請求できるが、自賠責からの先取りはもうできない」という状態が起こり得ます。症状固定から時間が経っている場合は、どちらの期限が先に来るかを確認してください。時効の完成が迫っている場合には、時効の更新・完成猶予の手続き(自賠責への時効中断承認申請、内容証明による催告、訴訟提起など)を検討します。
【CTA】症状固定から時間が経っている方へ
時効が迫っているかどうかは、事故日・症状固定日・請求先によって変わります。日付が分かれば、その場で残り期間と取り得る手続きをお伝えします。相談料は何度でも無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 通院が3ヶ月で打切りになっても14級は取れますか?
A. 厳しい状況ですが、不可能ではありません。打切り後の自費通院・健康保険切替で通院継続できれば、認定の可能性が残ります。
Q2. むちうちでMRI異常がなくても14級は取れますか?
A. はい。14級9号は画像上の異常所見を必須要件としていません。事故態様・症状の発生時期と推移・治療内容・通院期間と頻度・残存症状・生活状況の変化といった間接事実を積み上げることで、画像所見がなくても認定される可能性は十分にあります(詳しくは本記事の「MRI異常なしでも14級9号が認定される理由」をご覧ください)。
Q3. 14級と非該当の境界はどこですか?
A. 一義的な基準はありませんが、通院期間6ヶ月・実通院100日前後・症状の一貫性 が概ねの分岐点です。
Q4. 14級9号認定後の慰謝料相場は?
A. 弁護士基準(赤本)で慰謝料110万円+逸失利益約115万円=合計約225万円(年収500万円35歳の場合)。傷害分の慰謝料・治療費は別途。
Q5. 14級9号は何年仕事に影響しますか?
A. 労働能力喪失期間は実務上 3〜5年 に制限されるのが一般的です。骨折等の他覚的所見があれば長期化します。
Q6. 弁護士費用特約を使うと、自動車保険の等級は下がりますか?
A. 下がりません。弁護士費用特約の使用は、翌年度の等級(ノンフリート等級)や保険料に影響しない取扱いが一般的です。「等級が下がるのが嫌だから使わない」という理由で特約を使わない方がいますが、その心配は不要です。ご自身の保険だけでなく、同居のご家族の保険に付いている特約を使える場合もありますので、契約内容を確認してください。
Q7. 示談したあとに症状が悪化したら、追加で請求できますか?
A. 原則としてできません。示談書に署名・捺印すると、そこに書かれた金額で解決したものとして扱われ、あとから増額を求めることは困難です。
ただし、示談書に 「示談後に後遺症が悪化した場合は別途協議する」旨の留保条項 を入れておけば、後日交渉できる余地を残せます。保険会社が用意する示談書にこの条項が入っていることはまずありません。署名前に示談書の内容を確認することが重要です。
Q8. 自転車との事故でも後遺障害14級は認定されますか?
A. 症状が残れば、相手が自転車でも後遺障害としての賠償請求は可能です。ただし手続きが異なります。自賠責保険は自動車・原付を対象とする制度のため、相手が自転車の場合は自賠責の等級認定を受けられません。
この場合、相手方が加入している個人賠償責任保険(自転車保険・火災保険や傷害保険の特約として付いていることがあります)に対する請求や、ご自身の人身傷害保険の利用を検討します。等級については、自賠責の認定に代えて、医証をもとに14級9号相当であることを直接主張・立証していくことになります。
Q9. 整骨院だけに通っていても14級は認定されますか?
A. 整骨院のみの通院では、認定は厳しくなります。後遺障害診断書を作成できるのは医師であり、柔道整復師は作成できません。また、施術録は診療録(カルテ)と同等には評価されにくいのが実情です。
整骨院に通う場合でも、少なくとも月1〜2回は整形外科で医師の診察を受け、症状を伝えて診療録に残してもらう ことが必要です。医師の同意を得たうえで併用するのが原則になります。
まとめ
後遺障害14級9号は、むちうち・腰部捻挫など 軽症に見える事故 でも認定される可能性がある重要な等級です。通院の継続性・症状の一貫性・自覚症状の医学的合理性——この3つを揃えれば、認定への道筋が見えてきます。
そして、14級9号で確定する前に、12級13号へのステップアップ余地 を検討することも重要です。追加検査・意見書・異議申立てを組み合わせれば、賠償額が大きく変わる可能性があります。
参考文献(本記事の裏付け資料)
- 柳澤正和『むち打ち症はここで良くなる!』一般社団法人むち打ち治療協会(2012年)
- 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・頚椎症性脊髄症ガイドライン策定委員会編『頚椎症性脊髄症診療ガイドライン』南江堂
- 『後遺障害等級14級9号マスター講座』第1巻・第2巻
- 『交通事故事件ベストプラクティス 主張が認められた事例』
- 日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)』上巻
- 『交通事故におけるむち打ち損傷問題』第二版(2012年)
※上記文献は事実関係の裏付け資料として使用し、本文は弁護士法人ブライトが独自にまとめたものです。個別事案における認定可否は、通院状況・検査所見等により異なります。
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