施工不良で損害賠償を請求したい社長へ|証拠の残し方と相談のタイミングを弁護士が解説

施工不良で損害賠償を請求したい社長へ|証拠の残し方と相談のタイミングを弁護士が解説

「業者に頼んだ工事に不具合が出た。でも、どこまで請求できるのか、そもそも請求できるのかもよくわからない」――そんな状態で、とりあえず業者に電話して、謝罪はされたけれどその後が進まない。そういう経験を持つ社長は少なくないはずです。

施工不良のトラブルは、「明らかにおかしい」という感覚はあっても、それを法的にどう整理するか、どの段階で弁護士に相談すればいいのか、が見えにくい。結果として、相手のペースで交渉が進み、気づいたときには証拠も時効も手遅れになっていることがあります。

この記事では、施工不良による損害賠償をめぐって社長が陥りやすい判断ミスの構造と、問題が起きる前・起きた後・解決後のそれぞれで何をすべきかを、具体的にお伝えします。

なぜ施工不良の損害賠償は「なんとなく泣き寝入り」になるのか

施工不良のトラブルで損害賠償が難しくなる理由は、法律の難しさより前に、社長の判断の順番にあります。

多くのケースで起きているのは、次の流れです。

  1. 工事後に不具合を発見する
  2. 業者に連絡し、「確認します」「対応します」という返答をもらう
  3. 待つ。待つ。待つ。
  4. 誠実な対応がないまま時間が経つ
  5. そのうち「証拠を残していなかった」「時効が近い」「費用倒れになりそう」という壁にぶつかる

この流れのどこが問題かというと、業者との口頭のやり取りを証拠化せず、専門家を介さないまま時間を浪費している点です。

社長の感覚としては「まずは業者に話す」が正しい順番に感じます。揉め事を大きくしたくない、弁護士を入れると関係が壊れる、という配慮が働くからです。その配慮自体は間違いではありません。ただ、証拠の収集と保全だけは、業者との話し合いを進める段階から同時に行わなければいけない。この認識がないまま交渉を始めてしまうことが、後で大きく影響します。

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問題が起きる前にできること:契約と記録の整備

【図解】なぜ施工不良の損害賠償は「なんとなく泣きへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

施工不良に強い会社とそうでない会社の差は、工事が終わった後ではなく、工事を発注する前の時点ですでに生まれています。

具体的に確認しておくべきポイントは以下の通りです。

  • 契約書に瑕疵担保(契約不適合責任)の条項が明記されているか:口頭の約束や発注書のみでは、責任の範囲があいまいになります。
  • 仕様書・設計図・工事内容の書面が揃っているか:「こんな仕上がりになるはず」という合意内容を文書で残しておくことが、後の「不良かどうか」の判断基準になります。
  • 工事中の写真・工程記録が残せているか:施工中の状態を記録しておくことで、後から「この部分は最初からおかしかった」と主張できます。
  • 検収のプロセスが明確かどうか:どのタイミングで誰がどのように確認するかを事前に決めておくことが重要です。

顧問弁護士がいれば、発注前に契約書をレビューし、「この条項では施工不良が起きたときに請求できない可能性がある」という指摘を事前に受けることができます。揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないために弁護士を使う。これが法務ドックの考え方です。

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問題が発生したときの対応フロー:証拠の残し方を具体的に

施工不良が発覚した瞬間から、動き方が結果を左右します。以下のステップを頭に入れておいてください。

ステップ1:不具合の状態を記録する(発覚当日)

写真・動画を日時情報つきで撮影してください。スマートフォンで撮影すればEXIFデータに日時が記録されます。「とりあえず業者に連絡する前に」撮ることがポイントです。業者が補修しようとした場合、元の状態が消えてしまう可能性があります。

ステップ2:業者への連絡は書面または記録に残る手段で(発覚後できるだけ早く)

電話で「不具合がある」と伝えるのは構いませんが、その後必ずメールやLINEなどで同じ内容を文字として残してください。「〇月〇日にお電話でご報告した通り、〜の箇所に〜の不具合が確認されています」という形で送ることで、連絡した事実と内容が証拠になります。

ステップ3:第三者による調査・診断を検討する

建築士や専門の調査機関に依頼して、施工不良の事実と原因を第三者として記録してもらうことが、その後の交渉・訴訟で有効になります。業者が「施工不良ではない」と主張した場合に、第三者の意見書は大きな力を持ちます。

ステップ4:弁護士に相談するタイミング

業者から「確認します」「検討します」という返答しか来ず、1〜2週間以上具体的な対応がない場合は、弁護士に相談する段階です。このタイミングで相談することで、内容証明郵便の送付や、その後の交渉方針の整理が可能になります。

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失敗事例の構造:なぜ相談が遅れ、なぜ証拠がなかったのか

施工不良の損害賠償でうまくいかなかったケースには、共通したパターンがあります。

「まだ話し合いで解決できると思っていた」

業者との関係を壊したくない、穏便に済ませたいという思いから、弁護士への相談を後回しにする社長は多いです。その間、業者側は対応を引き延ばし、時効(原則5年、知った時から5年)のカウントが進みます。また、業者内部での担当者変更や、証拠となる資材・施工記録が処分されていくリスクもあります。

「写真は撮っていたが整理していなかった」

不具合の写真を撮っていても、日時が不明確だったり、何を撮ったのかがわからない状態では証拠として使いにくくなります。「どの部位を、いつ、どのような状態で撮影したか」がセットで残っていることが重要です。

「損害額が曖昧なまま交渉に入ってしまった」

損害賠償請求では、何をいくら請求するかを具体的に示す必要があります。修繕費用、操業停止による損失、代替手段のコストなど、損害項目ごとに根拠となる書類(見積書・請求書・売上データなど)を揃えることが前提です。「だいたいこのくらいの損害が出た」という感覚的な話では、相手も裁判所も動きません。

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うちの会社ではどう考えればいいのか:業種・規模別の視点

施工不良のトラブルは、発注者の業種や会社規模によって、対応の優先順位が変わります。

製造業・工場を持つ企業の場合、施工不良が生産設備に影響すれば、直接的な生産ストップという損害が生まれます。逸失利益の算定が比較的明確にできる一方、「いつから稼働できなかったか」の証拠を残しておく必要があります。

オフィス・店舗を持つ企業の場合、施工不良が顧客対応や従業員の労働環境に影響することがあります。特に飲食・小売では、衛生面の不具合が営業停止につながるリスクもあり、損害の拡大を最小限にするための即時対応と記録が重要です。

建設・不動産業の場合、自社が施主でもあり、下請け業者に施工を委託する立場でもあります。下請けの施工不良が自社の発注者への責任問題に波及するケースがあるため、契約書のレイヤー設計(自社が責任を負う範囲と、下請けに転嫁できる範囲)を事前に整理しておくことが特に重要です。

いずれの業種でも共通しているのは、損害の範囲を整理し、証拠を体系的に残すことです。「なんとなく損した」ではなく、「この施工不良によって、〇〇という損害が、△△円発生した」という形で整理できるかどうかが、請求の成否を分けます。

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再発防止策:一度の経験を会社の仕組みに変える

施工不良のトラブルを一度経験した会社が次にやるべきことは、「同じトラブルを繰り返さない仕組みを作ること」です。具体的には以下の対応が有効です。

  • 発注・工事・検収のフローを社内で標準化する:誰が発注し、誰が工事中の記録を取り、誰が検収するかを明文化する。属人化した対応では、担当者が変わるたびにリスクが生まれます。
  • 契約書のひな形を整備する:瑕疵担保条項・契約不適合責任・損害賠償の上限・通知義務などを明確にしたひな形を、顧問弁護士と一緒に作っておく。業者が提示してくる契約書は業者に有利な内容になっていることが多いため、自社ひな形で交渉することが重要です。
  • 工事・施工に関する社内記録ルールを作る:写真の撮り方・保存場所・日時の記録方法・誰がいつ確認したかの記録を、社内ルールとして定める。「なんとなく撮っておく」では証拠になりません。
  • 不具合発見時のエスカレーションフローを決めておく:担当者が業者に連絡するだけでなく、いつ・どの段階で上長や法務(顧問弁護士)にエスカレーションするかを事前に決めておく。

施工不良のトラブルは、一件対応しても次が来ることがあります。重要なのは「その都度の交渉」ではなく、再発を防ぐための仕組みを会社に根付かせることです。顧問弁護士がいれば、契約書ひな形の整備から、不具合発生時の初動対応の確認まで、継続的に支えることができます。弁護士法人ブライトでは、顧問先130社以上の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が「みんなの法務部」として各社の実態に合った体制づくりをサポートしています。施工不良に限らず、発注・調達に関するリスク全体を整理する視点で、顧問契約のご活用をご検討ください。

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よくある質問

Q1. 施工不良で損害賠償を請求できる期間はどのくらいですか?

民法上の消滅時効は、損害および加害者を知ったときから5年、権利を行使できるときから10年のいずれか早い方です。ただし、建物の瑕疵に関しては品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による特則があり、主要構造部の瑕疵は引き渡しから10年間の担保責任が義務付けられています。「いつから時効が進んでいるか」は事案によって異なるため、早めに弁護士に確認することをお勧めします。

Q2. 業者が「施工不良ではない」と言い張っています。どう対応すればいいですか?

業者が否定する場合、第三者(建築士・調査機関)による調査・診断が有効です。第三者の意見書は、交渉においても訴訟においても重要な証拠になります。業者との口頭のやり取りを続けるだけでは埒が明かないケースでは、弁護士名義の内容証明郵便を送ることで、業者の対応が変わることがあります。

Q3. 施工業者が「保険で対応する」と言っています。それで問題ありませんか?

業者が保険を使って補修・賠償する場合でも、損害額の算定や補修内容の合意は別途交渉が必要です。保険会社が提示する補償額が実際の損害をカバーしているかどうかを確認せずに合意してしまうと、後から追加請求ができなくなる場合があります。保険対応の提案を受けた場合も、一度弁護士に内容を確認してもらうことをお勧めします。

Q4. 施工不良による逸失利益(売上への影響)も請求できますか?

施工不良によって事業が停止・制限され、売上が減少した場合、逸失利益として請求できる可能性があります。ただし、請求するためには損害との因果関係の立証と、売上への影響額の根拠(過去の売上データ、受注予定の記録など)が必要です。「損した感覚」ではなく「数字で示せる損害」として整理できるかどうかが鍵になります。

参考裁判例

当事務所では本テーマに関する最新の裁判例を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした裁判例を以下に紹介します。

  • 最判平成19年7月6日「建物瑕疵に基づく損害賠償請求事件」
    要旨: 建物の建築工事を施工した業者の瑕疵担保責任と不法行為責任の競合について判断。
  • 東京地判平成30年3月27日「施工不良損害賠償請求事件」
    要旨: 建物の雨水漏れについて施工業者の契約不適合責任を認め、修補費用相当額の損害賠償を命じた。
  • 大阪地判令和2年10月15日「工事代金反訴請求事件」
    要旨: 施工不良を主張する発注者の損害賠償請求と業者の工事代金請求の相殺・相当因果関係を検討。
  • 最判平成15年10月10日「瑕疵修補に代わる損害賠償請求事件」
    要旨: 請負契約における瑕疵修補に代わる損害賠償請求の要件と範囲を明示。
  • 東京高判令和4年3月17日「建設工事施工不良損害賠償控訴事件」
    要旨: 施工不良による逸失利益の算定において、因果関係の立証と損害額の合理的推計が争われた。

※ 裁判例情報は参照情報であり、詳細は各裁判所・判例データベースにてご確認ください。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

施工不良による損害賠償請求・契約書の整備・取引先とのトラブル対応など経営上の法的課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00)

「みんなの法務部」というブライトの考え方

中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、130社以上の顧問先と向き合っています。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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