「うちは業務委託でちゃんと契約を結んでいる。だから大丈夫なはず。」——そう思いながらも、どこかに引っかかりを感じている社長は少なくないはずです。フリーランスや外部の個人事業主に仕事を頼んでいるとき、「これってどこまで指示していいんだろう?」という疑問が頭をよぎったことはないでしょうか。 実は、この「引っかかり」こそが大事なサインです。契約書に「業務委託」と書いてあっても、業務の実態が伴っていなければ「偽装請負」と判断されるリスクがあります。そしてそのリスクは、労働局の調査・行政指導・未払い賃金の遡及請求・雇用義務の発生など、会社の経営を揺るがす問題につながりえます。 この記事では、偽装請負の判断基準をできるだけわかりやすく整理し、「自社の業務委託がどう評価されるのか」を社長自身が判断できるようにするための情報をお届けします。 なぜ「偽装請負」と言われてしまうのか 偽装請負が起きる根本原因は、「契約書の内容」と「業務の実態」が乖離していることにあります。この乖離は、悪意があるからではなく、多くの場合は「気づかないうちに」生じています。 典型的な流れはこうです。最初はきちんと「成果物を納品してもらう」つもりで業務委託契約を結ぶ。しかし一緒に仕事をするうちに、「ちょっとこっちでやってほしい」「今日はこれをお願い」という形で、発注者側の社員が直接指示を出すようになっていく。外部の人間が社内に常駐し、社員と同じ時間帯で同じ業務をしている——気づけば、契約は「請負」でも、実態は「派遣」に近い状態になっている。 法律上、労働者の派遣(他社の指揮命令の下で働かせること)を行うには労働者派遣法に基づく許可が必要です。許可なしにその状態を作り出すことが「偽装請負」であり、職業安定法・労働者派遣法の違反となります。 社長が「業務委託のつもり」で動いているにもかかわらず、実態が追いついていない。この構造的なギャップが、偽装請負の判断ミスを生む最大の原因です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 偽装請負の判断基準:「実態」で判断される7つのポイント 【図解】なぜ「偽装請負」と言われてしまうのかへの対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 偽装請負かどうかを判断する基準は、昭和61年に制定された「37号告示」(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)が根拠となっています。重要なのは、契約書の名称ではなく業務の実態で判断されるという点です。 以下の7つが、実務上の主なチェックポイントです。 ① 直接指示の有無:発注者の社員が、委託先の人間に対して「何を・いつ・どのように」やるかを直接指示していないか。 ② 出退勤・勤怠管理:発注者が委託先の人間の出退勤時刻を管理・把握していないか。 ③ 混在勤務:発注者の社員と委託先の人間が、同じ場所で同じ業務を混在して行っていないか。 ④ 業務の裁量:委託先が自分の判断で業務の順序・方法・手順を決められているか(発注者が細かく手順を指示していないか)。 ⑤ 設備・道具の使用:委託先が発注者の設備・PCなどを全面的に使用しており、自前の環境を持っていないか。 ⑥ 業務内容の特定性:「労働力の提供」になっていないか。成果物や専門役務として業務が明確に定義されているか。 ⑦ 一人請負の問題:受託者が自己の従業員を持たず、実質的に発注者の指揮の下で一人で稼働しているだけの状態になっていないか。 これらの要素が複数重なるほど、偽装請負リスクは高くなります。「どれか一つ当てはまれば即アウト」ではありませんが、複数該当している場合は早急に実態を見直す必要があります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること:予防的な契約・業務の見直し 偽装請負のリスクは、発覚してから動くのでは遅すぎます。発覚前に自社の業務委託関係を見直すことが、もっとも確実なリスク管理です。 契約書の見直し まず確認すべきは契約書です。業務委託契約書に「委託者(発注者)の指示に従い業務を行う」といった条項が入っていませんか。この一文だけで、偽装請負の実態を認める証拠になりかねません。 業務委託契約書には、以下を明記する必要があります。 委託業務の範囲と成果物を具体的に定義する 受託者が自己の判断・責任で業務を遂行する旨を明記する 発注者は成果物の検収は行うが、業務の方法・手順への指示はしない旨を明記する 損害賠償・業務上の責任は受託者が負う旨を定める 業務実態の確認 契約書を整えるだけでは不十分です。日々の業務の運用が契約内容と合致しているかを定期的に確認することが必要です。現場のマネージャーや担当者に対して「外部の委託先には直接指示を出さないこと」を明確にルール化し、社内に周知することが重要です。 とくにIT業界のSES(システムエンジニアリングサービス)契約や、飲食業・製造業での外部スタッフ活用では、常駐型の業務委託が多く、偽装請負リスクが高くなります。「契約書は問題ないが現場の運用が実態に合っていない」というケースが非常に多いため、定期的な業務実態のモニタリングが欠かせません。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 偽装請負が問題になったとき:発生時の対応フロー 労働局から調査の連絡が入った、または委託先から「自分は労働者だ」と主張されたとき、どう動けばよいのでしょうか。 まず証拠を確認・保全する:業務委託契約書・発注書・納品書・メール・チャット履歴など、業務の実態を示す資料をすぐに集めます。「指揮命令の有無」を示す記録が最重要です。 現場の状況をヒアリングする:担当部署の社員に、委託先への日常的な指示の実態を聴き取ります。この段階で「実態が偽装請負に近い」と判断されるなら、早期に改善策を打つことが次のリスク回避につながります。 弁護士に相談して対応方針を決める:行政調査への対応、委託先との交渉、必要に応じた契約切り替えなど、法的な観点からの対応方針を弁護士と組み立てます。 行政への対応は弁護士を通じて行う:都道府県労働局(需給調整課)の調査には、答弁内容が後の法的判断に大きく影響します。単独で対応するよりも、弁護士が代理・サポートする形をとることが重要です。 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。日頃から業務の実態を記録しておくことが、いざというときの防衛線になります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造:なぜ問題が大きくなったのか 実際の相談事例(匿名)をもとに、偽装請負問題が深刻化するパターンを整理します。 「契約書を作れば大丈夫」という思い込み IT企業でSES契約を活用していた会社では、「業務委託契約書はある」という理由で安心していました。しかし現場では、発注元のプロジェクトマネージャーが委託先のエンジニアに直接タスクを振り、勤怠報告も発注元に送らせていました。委託先のエンジニアが「未払い残業代を請求したい」と主張したことで問題が表面化しましたが、そのとき社内に残っていた記録は「偽装請負の実態を示すもの」ばかりでした。 なぜ相談が遅れたのか:「契約書がある=法的に問題ない」という思い込みが、問題の早期発見を妨げました。 なぜ証拠がなかったのか:業務の実態(指示の方法・勤怠管理の実態)を記録する習慣がなく、問題発覚後に実態を示す資料を集めることができませんでした。 「現場に任せていた」の盲点 飲食グループを展開する会社では、店舗の運営を外部の業務委託業者に任せていました。現場の実態確認が不十分なまま委託関係が続き、委託先が「実質的に労働者だ」と主張。事業スキームの再構築を余儀なくされました。契約を解消するにも相手方との交渉が必要になり、解決まで相当の時間とコストがかかりました。 なぜ問題が大きくなったのか:経営者が現場の実態を把握しておらず、発覚が遅れました。また、不透明な委託関係(現金払い・確定申告なし等)が重なり、法的リスクだけでなく税務リスクも同時に発生していました。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか 業種や業務の内容によって、偽装請負リスクの高低と対処法は異なります。自社の業務委託をどの観点から見直すべきかを、以下に整理します。 IT・SES業(常駐型が多い業種) エンジニアが発注先の社内に常駐するケースは、偽装請負リスクが構造的に高い業態です。「誰が指揮命令するか」を契約書と現場の両方で明確にしておくことが必須です。とくに「作業指示は受託企業の責任者を通じて行う」という運用ルールを整備することが重要です。 飲食・サービス業(外部スタッフ活用が多い業種) セラピスト・スタッフを業務委託で活用しているケースでは、勤怠管理の実態が問題になりやすいです。シフト管理・出退勤記録が発注者側で行われていると、偽装請負の根拠になります。業務の裁量を委託先に持たせ、成果物(提供したサービスの件数・内容)で契約を設計することが有効です。 製造業(構内請負が多い業種) 工場内で受託業者の人員が働くケースは、製造業における偽装請負の典型です。「誰の工程指示に従うか」「誰が安全管理の責任者か」という点を明確に分離し、書面で証拠化しておくことが重要です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 再発防止策:継続的に「実態と契約の整合性」を確認する仕組みを 偽装請負の問題は、一度見直しただけでは終わりません。ビジネスが変化する中で、気づかないうちに実態が変わっていくからです。以下の3点を「継続的な仕組み」として組み込むことが再発防止の核心です。 業務委託契約の定期レビュー:少なくとも年に一度、業務委託先との契約内容と業務実態を照合する。契約更新のタイミングをレビューの機会として使う。 現場ルールの明文化と周知:「委託先への直接指示の禁止」「成果物による評価・管理」を社内規程に明記し、管理職・現場担当者に定期的に周知する。 業務実態の記録化:業務委託先との打ち合わせ・指示のやりとりについて、「誰が何を指示したか」が後から確認できる形で記録を残す(メール・議事録等)。 これらの仕組みがあれば、問題が生じたときに「うちは適切に管理していた」という証拠を示せる状態を維持できます。 偽装請負リスクの管理は、単発の契約書レビューで終わらせるべき問題ではありません。業務委託を活用している企業であれば、日常的に「実態と契約の整合性」を確認できる体制こそが、もっとも効果的な安全装置になります。弁護士法人ブライトの顧問サービス「みんなの法務部」では、契約書の整備にとどまらず、業務実態のモニタリング方法や現場ルールの整備まで継続的にサポートしています。顧問先 140社 の実名を公開し、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが、社長の判断の質を上げるパートナーとして機能します。偽装請負リスクを「気になっているが手をつけられていない課題」のままにしないためにも、ぜひ継続的な相談体制の構築をご検討ください。 よくある質問 Q. 業務委託契約書があれば偽装請負にはならないですか? いいえ。法的な評価は契約書の名称ではなく業務の実態で決まります。「業務委託契約書」が存在していても、発注者が委託先の人間に直接指示を出している・勤怠管理をしているなどの実態があれば、偽装請負と判断されるリスクがあります。 Q. フリーランスへの発注でも偽装請負になりますか? はい。フリーランス・個人事業主への発注でも、業務実態が雇用に近い場合は偽装請負(または雇用関係の成立)と判断されることがあります。とくに常駐型・長期継続型の個人委託は注意が必要です。 Q. 偽装請負が発覚したとき、会社はどんなペナルティを受けますか? 行政指導・是正勧告のほか、悪質なケースでは職業安定法・労働者派遣法違反として罰則(懲役・罰金)が科されることがあります。また、委託先の労働者から直接雇用申込みのみなし(派遣法40条の6)が適用されたり、未払い残業代・社会保険料の遡及請求がなされるリスクもあります。 Q. 偽装請負リスクが高いと気づいたら、まず何をすべきですか? まず、現在の業務委託契約書と業務の実態(誰が指示を出しているか・勤怠管理の実態・業務場所・設備の使用状況)を照合してみてください。乖離があると感じたら、早急に弁護士に相談して契約書の見直しと運用ルールの整備を行うことをお勧めします。「揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないために弁護士を使う」という考え方が、最終的にコストを低く抑えます。 当事務所が参考にした実務書 当事務所では本テーマに関する最新の実務書を継続的に確認し、顧問先企業のリスク評価に反映しています。本記事の作成にあたり特に参考にした書籍を以下に紹介します。 『詳解 労働者派遣法(第5版)』 — 三井正信/信山社/2019年7月/分類:条文逐条解説書 『労働者派遣・請負の法律実務(第5版)』 — 向井蘭・岸田鑑彦/労働調査会/2022年10月/分類:Q&A形式の実務解説書 『企業のための偽装請負・労働者性の判断と対策』 — 弁護士法人AZX Professionals Group/第一法規/2023年9月/分類:業種特化型実務書 『フリーランス・業務委託の法務と税務』 — 古川和典・荒木邦彦/中央経済社/2024年3月/分類:Q&A形式の実務解説書 『実務解説 労働者派遣法』 — 労働政策研究・研修機構(JILPT)/労働政策研究・研修機構/2021年3月/分類:公的機関のガイドライン・Q&A ※ 書籍内容は引用しておらず、書誌情報のみ表示しています。本記事は弁護士法人ブライトが監修・執筆しています。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 偽装請負リスクへの対応・業務委託契約の見直しなど、経営上の法的課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先 140社 の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、140社の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先140社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料)