監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。 取引先が代金を支払わない。督促しても無視される。こうした状況で最も恐ろしいのは、訴訟で勝訴判決を得ても、その時点で相手の財産がすでに処分されていることだ。 仮差押えは、この事態を防ぐための法的手段だ。判決が出る前の段階で、相手の財産を裁判所命令によって凍結できる。売掛金・銀行預金・不動産・動産など、相手が保有するあらゆる財産が対象になる。 大阪の中小企業が仮差押えを活用すべき最大の理由は、「勝訴後に財産がない」という最悪の事態を先手で防げることだ。手続きは裁判所への申立てから決定まで最短即日〜数日で完結する。担保金(供託金)の準備が必要だが、弁護士に依頼すれば迅速に対応できる。 この記事では、仮差押えの仕組み・申立てに必要な要素・費用・手続きの流れ・リスクまでを体系的に解説する。大阪地裁での実務情報も含めて、経営者が即座に動けるレベルの知識を提供する。 売掛金が回収できないままにしていませんか?弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。仮差押え申立てから強制執行まで、まずは無料でご相談ください。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る無料で相談する 仮差押えとは何か|仮処分・本案訴訟との違い 仮差押えの基本的な仕組み 仮差押えとは、金銭債権(売掛金・貸金・損害賠償請求権など)を保全するために、債務者の財産を暫定的に凍結する裁判所の命令だ(民事保全法20条)。 「暫定的」という点が重要だ。仮差押えは本案訴訟(通常の民事裁判)の確定判決が出るまでの間、相手が財産を処分・隠匿することを防ぐための保全措置にすぎない。それ自体で債権を回収できるわけではなく、あくまでも「財産を守っておく」手段だ。 仮差押え後は、本案訴訟を提起して勝訴し、その判決を債務名義として強制執行(差押え)を行うことで、はじめて実際の回収が実現する。 仮処分・本案訴訟との比較 手続き 目的 対象 担保金 仮差押え 金銭債権の保全 財産(不動産・預金・売掛債権等) 原則必要(請求額の10〜30%) 仮処分 金銭以外の権利の保全・地位の保全 特定の物件・地位 必要な場合あり 本案訴訟 権利の確定・強制執行の根拠取得 争いのある法律関係全般 不要 仮差押えは「相手の財産を事前に凍結する」手段であり、仮処分は「特定の行為を禁止・命令する」手段だ。売掛金回収のシーンで使うのは基本的に仮差押えとなる。 仮差押えが特に有効なケース 以下のような状況では、仮差押えを早急に検討すべきだ。 取引先が支払いを引き延ばし、財産隠しの疑いがある 取引先が倒産・廃業の噂がある、または資金繰りが悪化している 高額の売掛金が未回収で、本案訴訟を起こしても時間がかかりすぎる 相手が不動産・預金・売掛債権など仮差押え可能な財産を保有している 取引先の支払いが止まった。まずご相談を。弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の顧問弁護士チーム。仮差押えの要否判断から申立て書類の作成まで迅速に対応します。顧問先130社以上の実績・企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験でサポートします。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る無料で相談する 仮差押えの対象財産|不動産・預金・売掛債権 不動産の仮差押え 相手が土地・建物などの不動産を所有している場合、不動産仮差押えを申立てる。裁判所の決定後、法務局に嘱託登記がなされ、登記簿に仮差押えの記載が入る。これにより、相手は当該不動産を売却・抵当権設定することが実質的に困難になる。 大阪では大阪地裁が管轄する不動産に対して申立てが可能だ。大阪の中小企業が取引先の事業所や倉庫の不動産を把握している場合、有力な選択肢となる。 預金口座の仮差押え 相手の銀行預金を仮差押えする場合、申立て時に金融機関名と支店名を特定する必要がある(口座番号まで不要な場合が多い)。裁判所の決定が出ると、銀行は直ちに口座を凍結する。 取引先の振込元口座・請求書に記載の金融機関などから特定することが多い。複数の金融機関に同時申立てすることも実務上よく行われる。 売掛債権(第三債務者への債権)の仮差押え 取引先(債務者)が別の会社(第三債務者)に対して売掛金などの債権を有している場合、その債権を仮差押えすることができる。 例えば、A社がB社(取引先・債務者)に対して売掛金を有しており、B社はC社に対して売掛金を有している場合、A社はB社のC社に対する債権を仮差押えできる。 仮差押えの決定が出ると、C社に「B社への支払いを停止するよう」通知が届く。これにより、B社への入金がストップし、B社は資金繰りに困窮することが多い。仮差押えによるプレッシャーで任意交渉・和解に至るケースも少なくない。 売掛債権の仮差押えについては、売掛債権の仮差押えに特化した解説記事も参照されたい。 動産の仮差押え 相手の事務所・工場にある機械設備・商品・在庫などの動産も仮差押えの対象になる。ただし、動産の場合は執行官が現地に赴いて実施するため、不動産・債権仮差押えと比べて手間がかかる。また、相手の事務所を特定・立入できることが前提だ。 仮差押えの前後にある手段(内容証明・支払督促・訴訟・強制執行)を含む全体の流れは「債権回収の全手順と弁護士活用法」で確認できます。 申立てに必要な3つの要素|被保全権利・保全の必要性・担保金 第1要素:被保全権利(保全される権利) 仮差押えを申立てるには、まず保全すべき権利(被保全権利)が存在することを疎明(そめい)する必要がある(民事保全法13条)。 「疎明」とは、証明よりも低い程度の心証形成で足りることを意味する。確実な証拠がなくても、一応確からしいと認められる程度の資料があれば申立てが認められる。 被保全権利の疎明に使う典型的な書類: 契約書(売買契約書・業務委託契約書など) 注文書・発注書・受注確認書 請求書・納品書・検収書 メール・チャットの履歴 売掛金台帳・入出金履歴 第2要素:保全の必要性 「このまま放置すれば判決が出ても強制執行ができなくなる」という事情も疎明しなければならない(民事保全法20条2項)。 典型的な疎明事情: 相手が財産を処分・隠匿しようとしている形跡がある 相手の資金繰りが悪化し、倒産の危機がある 相手がすでに支払を拒絶しており、任意の回収が見込めない 相手が所在不明・行方不明になりかけている 裁判所は申立書と疎明資料を審査し、保全の必要性を認めた場合に仮差押え決定を出す。審尋(相手方への意見聴取)を行わずに決定することが多く、これが仮差押えのスピードの源泉だ。 第3要素:担保金(供託金)の提供 仮差押えの決定を得るには、申立人が担保金(供託金)を法務局に供託しなければならない(民事保全法14条)。 担保金は、万が一仮差押えが不当だった場合に相手方が被った損害を賠償するための担保として設けられている。 担保金は本案訴訟で勝訴・和解が成立した後、または相手方の同意を得た後に取り戻すことができる。つまり一時的な預け金であり、最終的には返還される性質のものだ。 ⚖️ 仮差押えの根拠条文 民事保全法20条1項:仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる 民事保全法13条:保全命令は保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を疎明して申立てなければならない 民事保全法14条:保全命令の申立てを認容する裁判をするには、担保を立てさせることができる 根拠条文:民事保全法20条・13条・14条 担保金(供託金)の相場|請求額の10〜30% 担保金の算定基準 担保金の金額は裁判所が個別に判断するが、実務上は請求額(仮差押えする財産の評価額)の10〜30%程度が相場だ。仮差押えの対象財産や保全の必要性の強弱によって変動する。 対象財産 担保金の目安 備考 不動産 請求額の15〜25% 登記があり財産価値の特定が比較的容易 預金・売掛債権 請求額の10〜20% 最も低額になりやすい 動産 請求額の20〜30% 価値の変動が大きいため高め 担保金の準備・調達方法 担保金は現金または有価証券(国債等)を法務局に供託する方法が一般的だ。急いで現金を用意できない場合、銀行が発行する支払保証委託契約書(保証書)を提出する方法もある。 いずれにしても、仮差押えを申立てる前に担保金の準備をしておく必要がある。弁護士に相談する際には、手元の現金余力を確認しておくとスムーズだ。 費用の全体感(弁護士費用込み) 仮差押え申立て全体にかかる費用の概算は以下の通りだ。 裁判所への申立手数料:2,000円(収入印紙) 郵便切手費用:数千円程度 担保金(供託金):請求額の10〜30%(後日返還) 弁護士費用:着手金10〜30万円、報酬は弁護士・内容によって異なる 担保金は返還されるため、実質的な持ち出しコストは弁護士費用と申立手数料のみとなるケースが多い。ただし担保金の準備が難しい場合はあらかじめ相談することをすすめる。 申立てから決定までの流れ|即日〜数日で完結 仮差押えの手続きフロー 仮差押えは以下の流れで進む。相手方に知らせないまま裁判所が審査・決定するため、財産隠しを防ぐことができる。 ステップ1:弁護士への相談・方針決定どの財産を対象にするか、疎明資料が揃っているかを確認する。対象財産の選定と担保金の算定が最初の作業だ。 ステップ2:申立書・疎明資料の作成弁護士が仮差押命令申立書を作成する。被保全権利・保全の必要性を記載し、契約書・請求書・通信履歴など疎明資料を添付する。 ステップ3:裁判所への申立て大阪地裁(民事保全部)に申立書を提出する。申立手数料(収入印紙2,000円)・郵便切手を納付する。 ステップ4:裁判所による審査(審問・審尋)裁判所は申立人(弁護士)から事情を聴取し、疎明資料を審査する。申立てから最短当日〜数日で決定が出ることが多い。相手方への通知は決定前にはなされない。 ステップ5:担保金の供託裁判所から担保金の額が指定される。指定された金額を法務局に供託し、供託書を裁判所に提出する。 ステップ6:仮差押え決定・執行担保金の供託が完了すると、仮差押え命令が発令・執行される。不動産なら法務局への嘱託登記、預金・売掛債権なら第三債務者(銀行・取引先)への通知が行われる。 大阪地裁での仮差押え実務 大阪地裁には民事保全部が設置されており、保全事件を専担処理している。大阪地裁への申立ては、大阪市北区西天満に所在する大阪地方裁判所で行う。 大阪地裁では、申立て後に申立代理人(弁護士)との審問(電話審問を含む)が設定されることが一般的だ。審問で追加の疎明資料の提出を求められることもあるため、弁護士があらかじめ十分な資料を用意しておくことが重要だ。 大阪地裁の民事保全部での経験がある弁護士に依頼することで、審問対応・担保額の交渉など実務的なノウハウを活かした迅速な対応が可能になる。 大阪地裁での仮差押え申立て、弁護士に任せてください弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪地裁での保全申立て経験が豊富。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが最短スピードで対応します。まずは現状をご相談ください。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る無料で相談する 仮差押え後の動き|本案訴訟・和解・強制執行 本案訴訟の提起 仮差押えは保全処分にすぎないため、仮差押え決定後2週間以内に本案訴訟(または支払督促)を提起しなければならない(民事保全法37条1項)。正当な理由なく本案を提起しなかった場合、相手方から保全取消しの申立てをされるリスクがある。 本案訴訟では、被保全権利(売掛金・損害賠償請求権など)について正式に審理が行われる。証拠・証人・鑑定等を用いて権利の存否を争う手続きとなる。 和解による解決 仮差押えを実施すると、相手方に強いプレッシャーを与えることができる。口座が凍結されたり、取引先への通知が届いたりすることで、相手方が任意交渉に応じるケースが多い。 和解が成立した場合は、和解書に従って担保金の取戻し手続き・仮差押えの解除手続きを行う。担保金は相手方の同意書があれば返還申請できる。 強制執行(本差押え) 本案訴訟で勝訴判決・和解調書・支払督促の確定が得られれば、仮差押えした財産に対して強制執行(本差押え)を申立てることができる。不動産なら競売、預金・売掛債権なら取立て・転付命令等の手続きへ移行する。 SES(システムエンジニアリングサービス)の未払い報酬に対する仮差押えと強制執行については、SES未払報酬の仮差押え解説記事に詳しい実務情報がある。 また、不動産を対象とした差押え・競売の手続きについては、不動産差押え・競売の手続き解説も参照されたい。 失敗例とリスク|不当仮差押えの損害賠償責任 不当仮差押えとは 仮差押えは申立人(債権者)の主張のみに基づいて認められる暫定的な処分だ。そのため、後になって被保全権利が存在しないと判明した場合、または過剰な財産を仮差押えした場合は「不当仮差押え」として損害賠償責任を問われるリスクがある(民法709条)。 不当仮差押えによって相手方が被った損害(取引の停止・信用失墜・弁護士費用等)の賠償を請求されることがある。担保金はこの損害賠償に充当される設計になっている。 よくある失敗パターン 疎明資料が不十分で申立てが却下される:契約書・請求書・通信履歴が揃っていないと保全命令が出ない 対象財産の特定が不正確で執行できない:預金なら金融機関名・支店名、不動産なら登記情報が不可欠 保全の必要性が認められず却下される:相手方が健全な財務状況で財産隠しの事情がないと判断されるケース 担保金を準備できず手続きが止まる:供託金を即座に用意できず、タイムロスが生じる 本案訴訟を提起しないで保全取消しになる:仮差押え後の本案提起を失念するケース 弁護士に依頼すべき理由 仮差押えは申立ての段階では相手方に知らせないまま進むため、迅速さと正確さが求められる。疎明資料の選定・申立書の記載・担保額の交渉・審問対応まで、法的知識と実務経験が不可欠だ。 企業法務の弁護士チームに依頼することで、申立てから執行・本案訴訟・強制執行まで一括して対応してもらうことができる。特に、普段から顧問弁護士として契約している場合は、取引書類・契約書の管理が整備されており、有事の際の対応速度が格段に上がる。 顧問弁護士が債権回収・仮差押えをサポートするケースについては、和解金の仮差押え・強制執行の解説も合わせて参照してほしい。 仮差押えの要否判断・疎明資料の確認をお任せください弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は、契約書管理から仮差押え・強制執行まで一貫してサポート。顧問先130社以上の実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが迅速に動きます。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る無料で相談する よくある質問 仮差押えと差押えの違いは何ですか?差押えは確定判決・和解調書・公正証書などの「債務名義」を取得した後に行う強制執行の一手続きです。一方、仮差押えは判決を得る前の段階で財産を暫定的に凍結する「保全処分」です。仮差押えは財産の処分を防ぐための準備段階であり、実際の回収は本案訴訟で勝訴した後の強制執行(差押え)で実現します。大阪でも、勝訴後に相手の財産がなくなっているケースを防ぐため、訴訟前の仮差押えが重要な戦略になります。 仮差押えの申立てから決定まで何日かかりますか?大阪地裁では、申立てが受理されてから最短当日〜3営業日程度で仮差押え命令が発令されるケースが多いです。ただし、疎明資料の不備・裁判所からの追加資料要求・審問の日程調整などで1〜2週間かかることもあります。担保金の供託も決定後に速やかに行う必要があるため、事前に弁護士と準備を整えておくことで、手続き全体を短縮することができます。 担保金(供託金)はいつ返ってきますか?担保金の取戻しは、①本案訴訟で勝訴して相手方の同意が得られた場合、②和解が成立して相手方の同意書(担保取消同意書)を取得した場合、③仮差押え決定が取り消された場合などに可能です。相手方の同意なしに取り戻すには裁判所への申立て(担保取消申立て)が必要で、一定の審査期間がかかります。通常は本案の終結後に手続きを行います。 相手の財産が不明な場合でも仮差押えはできますか?仮差押えを申立てるには、対象財産をある程度特定する必要があります。預金であれば金融機関名・支店名、不動産であれば所在地・登記情報が最低限必要です。財産が全く不明な場合は申立て自体が困難になります。ただし、取引先の請求書・振込元口座・登記情報(法務局で確認可)などから特定できる場合も多いため、まず弁護士に相談することをおすすめします。大阪では財産調査の実務についても顧問弁護士が対応できます。 仮差押え後、相手と和解したい場合はどうすればよいですか?仮差押えによるプレッシャーをきっかけに、相手方が交渉に応じるケースは実務上よくあります。和解が成立した場合は、和解書の作成・担保金の取戻し(相手方の同意書取得)・仮差押え執行の解除手続きを行います。弁護士が仲介して和解交渉を進めることで、迅速かつ有利な条件での解決が期待できます。和解条件(分割払い・一括和解金など)の設定も、法的効力のある書面で確保することが重要です。 売掛金回収・仮差押えのご相談はブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業向け外部法務部。顧問先130社以上に、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが仮差押えから強制執行まで一貫サポートします。顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る無料で相談する 関連情報・ご相談▶ 【債権回収】完全ガイド(まとめ記事)を読む▶ 売掛金・未払い回収を弁護士に相談 → 売掛金・未収金・報酬の未払いでお困りの経営者の方へ 弁護士法人ブライト(大阪)は、内容証明による請求から保全・訴訟・強制執行まで、債権保全・回収を一貫してサポートしています。 → 売掛金等の債権保全・回収サービスの詳細→ 債権回収の弁護士費用の相場と総額目安