生成AIの業務利用と著作権侵害リスク|「入力」と「出力」で線引きが違う【弁護士解説】

生成AIの業務利用と著作権侵害リスク|「入力」と「出力」で線引きが違う【弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

広告のバナー、提案資料の挿絵、Webサイトのイメージ写真。生成AIで作った素材を業務に使う会社が一気に増え、同時に増えたのが「これは著作権侵害にならないのか」という不安です。この不安が解けない理由は、はっきりしています。生成AIの著作権リスクは、AIに何かを「入力」するときと、出てきたものを「出力」として使うときで、判断の枠組みがまったく違うからです。入力側は著作権法30条の4という権利制限規定の話、出力側は類似性と依拠性という従来どおりの著作権侵害の話。この2つをひとまとめに考えると、どこに線があるのか見えず、社内ルールも作れません。

本記事では、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)を軸に、入力側・出力側それぞれの線引きを整理します。そのうえで、広告・資料・Web制作の現場で何を決めればよいか、そして著作権侵害ではないのに問題になる「炎上」と景品表示法のリスクを、著作権とは別枠で切り分けます。AI開発から社内でのAI利用までを含めた全体像はAI開発・AI活用の法律問題 総合ガイドで俯瞰できます。

その生成AIの使い方、どこから侵害になるか説明できますか?

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生成AIの著作権リスクは「入力」と「出力」で判断の枠組みが違う

最初に全体像を共有します。ここを取り違えると、以降の議論がすべてずれます。

著作権法上の議論は「学習させる場面」と「出して使う場面」に分かれている

文化庁の考え方は、生成AIと著作物の関係を「開発・学習段階」「生成・利用段階」の2つに分けて整理しています。前者はAIに学習させるためにデータを集めて複製する場面、後者は生成物を出力して使う場面です。

これはAIを自社開発する会社を念頭に置いた区分けですが、業務でAIを「使うだけ」の会社にもほぼそのまま当てはまります。生成AIに何かを入力する行為は、文化庁の考え方でも「入力されたプロンプトを情報解析するもの」と位置づけられ、開発・学習段階と同じ著作権法30条の4の適用が検討されるからです。

業務利用の会社が押さえるべきは、結局この2点

整理すると、業務で生成AIを使う会社が押さえるべき論点は次の2つに絞られます。

場面 使う条文・枠組み 判断の勘所
入力側
プロンプトに何かを入れる/社内文書を読ませる/追加学習させる
著作権法30条の4(情報解析のための利用)/同47条の5(軽微利用) 「享受目的」があるかどうか。1つでも混ざれば30条の4は使えない
出力側
生成物を広告・資料・Webサイトに使う/納品する
従来どおりの著作権侵害の枠組み(類似性+依拠性) 既存の著作物と「似ているか」「たどり着いているか」。AI固有の特別ルールはない

ポイントは、入力側がセーフでも出力側がアウトになり得るし、その逆もあるということです。文化庁の考え方も、生成時の複製が権利制限規定の範囲内であっても、生成物の譲渡や公衆送信といった利用時には権利制限の範囲を超える行為として著作権侵害となる場合があるため留意が必要だと明記しています。

ご相談で多い誤解が「AIは学習に使ってよいのだから、AIで作ったものは自由に使えるはずだ」というものです。30条の4は入力・学習について許諾を不要とする規定にすぎず、出てきたものを使う行為を免責する規定ではありません

入力ルールと出力チェック、両方そろっていますか

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入力側の線引き|30条の4が働くのは「享受目的がない」ときだけ

まず入力側です。ここは条文から確認したほうが早いので、条文を引きます。

条文の確認|30条の4は何を許しているのか

著作権法30条の4は次のように定めています。

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(略)二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。……)の用に供する場合

(著作権法30条の4)

読みどころは3つです。①「享受することを目的としない場合」という入口の条件、②「情報解析の用に供する場合」がその一例として挙げられていること、③ただし書で「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は除かれること。この3つが入力側の判断軸そのものです。

プロンプトに他社の文章や画像を入れる行為は、原則として30条の4の検討対象

文化庁の考え方は、生成AIに対する入力について「生成物の生成のため、入力されたプロンプトを情報解析するものであるため、これに伴う著作物の複製等については、法第30条の4の適用が考えられる」としています。つまり、他社の文章や画像をプロンプトに入れた瞬間に著作権侵害になる、という話ではありません。要約させる、論点を洗い出させる、翻訳の下書きを作らせるといった使い方は、入力側については30条の4の射程で考えられます。

ただし「似たものを出させる目的」で入れた瞬間、30条の4は使えない

ここが決定的な分岐点です。同じ文化庁の考え方は続けて、「生成AIに対する入力に用いた既存の著作物と類似する生成物を生成させる目的で当該著作物を入力する行為」には、情報解析の目的の他に「入力した著作物に表現された思想又は感情を享受する目的も併存する」ため30条の4は適用されないと整理しています。しかも「この複数の目的の内にひとつでも『享受』の目的が含まれていれば、同条の要件を欠く」と明言しています。享受目的は、他の目的と混ざっていれば足りるのです。

業務の現場に置き換えると、次のような使い方は入力側からしてすでに危ないということになります。

  • 競合他社のバナーやLPのスクリーンショットを入れて「これと同じ雰囲気で作って」と指示する
  • 他社のカタログ画像を入れて「この構図で自社商品に置き換えて」と指示する
  • 気に入ったイラストを入れて「このタッチで別のポーズを描いて」と指示する

いずれも「入力した著作物と類似する生成物を生成させる目的」がはっきりしています。しかも後述するとおり、この使い方は出力側でも依拠性が認められる典型例です。入力側と出力側の両方で不利になる、最も避けるべきパターンです。

社内文書を読ませる・RAGを組む場合の注意点

自社や外部の資料をデータベース化してAIに参照させる仕組み(検索拡張生成・RAG)を組む会社も増えました。文化庁の考え方は、RAG用にデータの内容をベクトルに変換したデータベースを作る行為についても整理しています。

  • 回答生成に際して元の著作物の創作的表現を出力することを目的としないのであれば非享受目的の利用として30条の4が適用され得る。逆に創作的表現の全部又は一部を出力することを目的としている場合は適用されない
  • 30条の4が適用されない場合でも47条の5第1項1号・2号(軽微利用)の適用が考えられるが、「軽微なもの」に限られ、かつ結果提供に「付随して」行われる必要がある。創作的表現の提供を主たる目的とする場合は対象外

実務でひっかかりやすいのは、他社の有料レポートや新聞記事を丸ごと取り込み、ほぼ原文どおりの長い要約を返す運用です。文化庁の考え方も、軽微利用の程度を超えて利用する場合は47条の5第1項は適用されず、原則として著作権者の許諾を得る必要があると整理しています。また、情報解析用データを取得できるAPIが有償提供されているのに、それを使わず同じサイトの閲覧用ページから機械的に複製する行為は、30条の4ただし書に該当して権利制限の対象外となる場合があり得るとされています。「公開されているから自由に取ってよい」とはなりません。

なお、契約書を生成AIに読み込ませてチェックさせる運用は、著作権とは別に取引先の秘密情報を扱う点で固有の注意が必要です。この点はAI契約書レビューの落とし穴|自動チェックで見抜けない交渉ポイントで整理しています。取引先から預かった資料をAIに入れている場合は、秘密保持契約側の制約も併せてご確認ください(法人間NDAひな形の選び方と修正必須5項目)。

自社のAI入力ルールを、5分で点検する

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出力側の線引き|類似性と依拠性の2つがそろって侵害になる

次に出力側です。ここは意外なほどシンプルで、AI固有の特別ルールはありません。文化庁の考え方も「従前の人間がAIを使わずに行う創作活動の際の著作権侵害の要件と同様に考える必要がある」としています。

類似性|「表現上の本質的な特徴を直接感得できるか」で判断される

類似性について、文化庁の考え方は既存の判例を踏まえ、「表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分について既存の著作物との同一性があるにとどまるものではなく、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるもの」について認められてきたと整理しています。AI生成物についても同じ基準で判断されるとしています。

実務的な言い換えをすると、「元の作品を知っている人が見て、あの作品だと分かるか」が出発点です。色使いや構図の傾向が似ている程度では足りませんが、特徴的な形状・模様・造形といった、その作品を成り立たせている部分が再現されていれば類似性は認められやすくなります。

依拠性|文化庁が示した3つのパターン

もう1つの要件が依拠性、つまり「元の著作物にたどり着いて作ったのか」です。AI利用時にはここが最大の論点になります。文化庁の考え方は次の3パターンに整理しました。

パターン AI利用者の認識 学習データに元の著作物が 依拠性の考え方
元の著作物を認識していた 依拠性が認められ、AI利用者による著作権侵害が成立すると考えられる
認識していなかった 含まれていた 客観的にアクセスがあったと認められ、通常、依拠性が推認される(侵害になりうる)
認識していなかった 含まれていなかった 偶然の一致に過ぎず、依拠性は認められない(侵害は成立しない)

業務利用で最も気をつけるべきは①です。文化庁の考え方は①の例として、既存の著作物そのものを入力する場合(画像を入れて画像を生成させるいわゆるImage to Image)だけでなく、「既存の著作物の題号などの特定の固有名詞を入力する場合」を挙げています。つまり、作品名・キャラクター名・作家名をプロンプトに書き込む行為は、自分から①に踏み込む行為だということです。

②については、学習に用いられた著作物の創作的表現が生成・利用段階において出力される状態となっていないと法的に評価できる事情を、AI利用者側で主張することにより、依拠性がないと判断される場合もあり得るとされています。ただしこれは利用する側が通常は検証できない領域で、サービスの仕様を根拠に「うちは大丈夫」と言い切るのは現実的ではありません。

立証構造も押さえてください。文化庁の考え方は、権利者側は「既存著作物へのアクセス可能性があったことや、生成物に既存著作物との高度な類似性があること等を立証すれば、依拠性があるとの推認を得ることができる」としています。似すぎている、それ自体が不利に働きます。

「知らなかった」で守れる範囲と、守れない範囲

ここは経営判断に直結するので、正確に押さえてください。文化庁の考え方が整理する侵害時の措置は次のとおりです。

措置 成立に必要な主観 「知らなかった」場合
差止請求(掲載停止・生成物の廃棄など) 故意・過失を問わない それでも受ける
不当利得返還請求(使用料相当額など) 認められることがあり得る
損害賠償請求 故意又は過失が必要 認められないことがある
刑事罰 故意が必要 対象とならない

要するに、「AIが作ったもので、元ネタは知りませんでした」という説明で回避できるのは損害賠償と刑事罰までで、差止めと不当利得返還は残ります。広告を全面差し替えする、印刷済みのカタログを廃棄する、Webサイトから削除する。実際に会社の体力を削るのはむしろこちらです。なお刑事罰は著作権法119条1項で10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(併科もあり得ます)、法人には3億円以下の罰金刑(同法124条1項1号)と定められていますが、故意が要件であり、通常の業務利用が直ちにここに至るものではありません。

作風・画風が似ているだけでは著作権侵害にならない

逆側の線も明確です。文化庁の考え方は「作風や画風といったアイデア等が類似するにとどまり、既存の著作物との類似性が認められない生成物は、これを生成・利用したとしても、既存の著作物との関係で著作権侵害とはならない」としています。「なんとなく○○っぽい」は、それだけでは著作権の問題になりません。

ただし2つ留保があります。1つは、特定のクリエイターの少量の作品だけを追加学習させるような場合、その作品群がアイデアレベルの作風にとどまらず創作的表現が共通する作品群になっていることもあり、その場合は入力側で享受目的が併存し得るし、生成物に創作的表現が直接感得できれば侵害に当たり得るという点です。

もう1つは、著作権侵害にならない場合でも、その生成行為が故意又は過失によって第三者の営業上の利益や人格的利益等を侵害するものである場合には、不法行為責任や人格権侵害に伴う責任を負う場合があり得ると整理されている点です。著作権法でセーフ=法的に問題なし、ではありません。この点は後述します。

出力チェックの工程、まだ人の目だけに頼っていませんか

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業務で使うときの実務チェック|広告・資料・Web制作で決めること

ここまでの線引きを、現場が回せる形に落とします。弁護士法人ブライトが顧問先企業のAI利用を支援するときも、決めることは次の4つに集約されます。

①プロンプトに入れてよい素材・入れてはいけない素材を先に決める

入力側の享受目的、出力側の依拠性①。この2つを同時に防ぐ、いちばん費用のかからない対策です。素材に顧客の個人情報が含まれる場合は著作権とは別の判断軸が加わります(プロンプトに顧客情報を入れてよいか|生成AIと個人情報保護法)。

区分 具体例 理由
入れない 他社のロゴ・商品写真・カタログ画像/競合の広告クリエイティブ/作品名・キャラクター名・作家名などの固有名詞 「類似する生成物を生成させる目的」と評価されやすく、依拠性①にも直結する
条件付きで入れる 取引先から預かった資料・図面・原稿 著作権とは別に、秘密保持契約や委託契約上の目的外利用制限がかかることが多い
入れてよい 自社が権利を持つ素材/権利者の許諾を得た素材/権利関係が確認できた有償素材 出所を説明できる。ただし利用するAIサービスの規約側の制約は別途確認が必要

実務では、この表を「AI利用の心得」のような抽象的な文書にせず、1枚の可否リストにして現場に配るほうが確実に機能します。判断を現場に委ねると、締切のある広告制作では必ず緩む方向に倒れます。この可否リストを社内規程に落とすときの注意点は生成AIの社内規程、ひな形をそのまま使うと危ない5つの論点で整理しています。

②出力物の類似検索を、公開前の工程に組み込む

依拠性②のリスクは、利用する側では事前に消せません。消せないので、出す前に「似すぎているもの」を落とすという工程で対処します。

  • 画像:逆画像検索にかける。特徴的なロゴ・マーク・キャラクターらしき造形が混ざっていないかを目視で確認する
  • 文章:特徴的な言い回しを抜き出して検索する。キャッチコピーや商品名は特に確認する
  • ロゴ・マーク:生成AIで作ったものをそのまま使わない。商標調査を別途行う前提で扱う

この工程を「担当者が気をつける」ではなくチェックリストと承認者を決めた工程にしておくことが要点です。前述のとおり、権利者は高度な類似性の立証で依拠性の推認を得られます。似すぎているものを世に出さないことが、実質的に唯一の防御になります。

③「誰がいつどう作ったか」を残す

記録は免罪符ではありません。認識していなくても差止めと不当利得返還は残ります。それでも記録を残す意味は2つあります。1つは、故意・過失が認められない場合に受け得る措置は差止請求に留まるという主張を支えられること(使用サービス・プロンプト・生成日時・チェック実施の記録)。もう1つは、指摘を受けたときに被害範囲を特定できることです。どの素材がAI生成でどこに使ったかが分からないと、全点回収しか選べません。

顧問先企業の運用を見ていると、うまく回っているのは高機能な管理ツールを入れた会社ではなく、素材台帳に「出所」列を1つ足しただけの会社です。撮影・購入素材・AI生成のどれかを書く。それだけで、指摘を受けたときの調査時間が桁で変わります。

④社内利用と対外公開を、素材の段階で区別する

文化庁の考え方は、生成と利用のそれぞれについて権利制限規定の適用を検討する必要があり、一方で適用される場合でも他方では範囲外となることがあると明記しています。企業・団体等の内部で生成物を生成することについては、検討過程における利用(著作権法30条の3)の適用が考えられるとも整理されています。つまり「社内の検討用に作ったものを、後から広告に転用する」運用がいちばん危ないということです。素材の保存段階で「社内限定/公開可」を分けておく。法務の話というより、フォルダ設計の話です。

現場が回るチェック工程まで、一緒に作れます

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「炎上」と「法的リスク」は分けて考える|広告に生成AI画像を使う場合

ご相談の場で必ず出てくるのが「著作権的にはセーフだと思うのですが、炎上しませんか」という問いです。この2つを分けないと、判断の責任者が決まりません。

3つの層に分けて考える

  1. 著作権侵害の層:類似性+依拠性で判断される。差止め・損害賠償・刑事罰・不当利得返還の対象
  2. 著作権以外の法的責任の層:著作権侵害にならなくても、故意又は過失によって第三者の営業上の利益や人格的利益等を侵害する場合は不法行為責任等を負い得る。商標権・意匠権・肖像権・パブリシティ権、そして景品表示法もここ
  3. レピュテーションの層:法的責任は生じないが、顧客や取引先の受け止め方の問題として損失が出る

3つ目は法務が答えを出せる問いではありません。「法的にはこう、レピュテーションは経営判断」と切り分けて示すことが外部法務部の仕事だと考えています。切り分けずに「やめたほうがいい」と言うと、会社は判断の理由を持てません。

景品表示法は著作権とは別のハードル

生成AI画像を広告に使うとき、著作権より先に問題になることがあるのが景品表示法です。生成AIは「実物より良く見せる」ことが技術的に簡単だからです。

景品表示法5条は、事業者が自己の供給する商品・役務の取引について次の表示をしてはならないと定めています。1号は、商品・役務の品質・規格その他の内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)。2号は、価格その他の取引条件について実際のものより著しく有利であると誤認される表示(有利誤認表示)。措置命令・課徴金の対象になるほか、同法48条は優良誤認・有利誤認にあたる表示をした者を100万円以下の罰金に処すると定めています。

実務上ひっかかりやすいのは、①商品の質感・色・形状をAIで生成した画像が実物と違って見える場合(食品の盛り、素材の光沢、部屋の広さなど)②施工事例・完成予想図をAIで作ったが、実際には提供できない仕様が写り込んでいる場合③AIで作った「体験談風」のコンテンツを実在の利用者の声のように見せる場合(一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示は、同法5条3号に基づく指定告示の対象です)、といった場面です。

ここで大事なのは、「イメージ画像です」という注記と「AIで生成した画像です」という表示は、目的が違うということです。前者は実物との差についての誤認を防ぐための注記、後者はAI利用の透明性のための表示です。両方を1行にまとめると、どちらの目的も果たさない曖昧な注記になります。何のために書く注記なのかを決めてから文言を作ってください。

顧問先から実際に届く相談|AI生成画像の広告利用と「注記」の設計

弁護士法人ブライトにも、この論点のご相談が実際に届いています。個別の会社名は挙げられませんので、抽象化してご紹介します。

  • 広告・Web制作も手がける関西のスタートアップ企業(顧問先)から、生成AIで作成した画像を広告に利用する際の著作権法・景品表示法上のリスクと、それを回避するための注記方法についてご相談をいただきました
  • 別の顧問先からは、「AI生成画像における景品表示法」という切り口の法解釈についてもご相談をいただいています
  • 一方で、AIとはまったく関係のない相談として、「取引先のロゴや商品写真を自社サイトに載せてよいか」「制作したWebサイトの著作権を自社に残すか、クライアントに譲渡するか」という相談が、年単位で繰り返し届いています

この3つ目を並べたのには理由があります。現場で起きているのは、AI特有のまったく新しい問題ではありません。「その素材の出所を説明できるか」という昔からある問題が、生成AIによって説明しにくくなったのです。だから対策も、素材台帳や可否リストという古典的なところに落ちます。派手な話ではありませんが、ここを整えた会社は指摘を受けたときの立ち直りが明らかに速いです。

広告に使う前に、リスクの当たりをつけておく

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AI生成物に自社の著作権は発生するか|納品物・二次利用でつまずく論点

もう1つの論点が「AIで作ったものに、自社の著作権はあるのか」です。侵害する側ではなく、権利を持てるかどうかの話です。

指示がアイデアにとどまれば、著作物性は認められない

文化庁の考え方は、著作権法上「著作者」は「著作物を創作する者」と定義され、AIは法的な人格を有しないためこれに該当し得ないと整理しています。そのうえで、生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合には著作物性は認められないとしています。判断要素として、詳細な指示は創作的寄与があると評価される可能性を高めるが長大でもアイデアにとどまる指示は影響しない、試行回数が多いこと自体や単なる選択行為自体は影響しない、という整理が示されています。一方、人が創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には通常著作物性が認められます

著作物性がない前提で、契約と運用を組む

ここが受託制作の会社に直撃します。成果物にAI生成物が含まれているとき、契約書に「著作権はすべて委託者に譲渡する」と書いても、そもそも著作権が発生していない部分は譲渡できません。実務では、①AI生成物を用いた範囲を特定できる状態にしておく②第三者の権利を侵害していないことの表明保証と違反時の責任分担を定める③「独占的に利用できるとは限らない部分がある」ことを発注者と事前に共有する、の3点を押さえます(受託開発の知的財産帰属条項はSaaS・IT企業の法務とも重なります。AI生成コードを含む成果物の権利処理は生成AIを組み込んだ受託開発と著作権で扱っています)。なお文化庁の考え方は、著作物に当たらないものを著作物であると称して流通させる行為は、取引の場面で行った場合に債務不履行責任を生じさせるほか、詐欺行為として不法行為責任や刑法上の詐欺罪に該当する可能性も考えられると整理しています。

弁護士に相談したほうがよいケース

ご相談いただいたほうが早いのは、次のような場面です。

  • 広告・販促物への生成AI利用を全社に広げる前:入力可否リストと出力チェック工程を先に作ったほうが、後から止めるより安く済みます
  • 受託制作の成果物に生成AI生成物が含まれる場合:契約書の著作権譲渡条項と現実がずれているケースが少なくありません
  • 現場で「この画風で」「あの作品みたいに」という指示が使われている場合:入力側でも出力側でも不利になる使い方が定着している状態です
  • 権利者から警告書・削除要請が届いた場合:差止めは故意・過失を問わず認められるため、「知らなかった」という説明だけでは掲載継続の根拠になりません
  • 広告表示に「イメージです」「AI生成画像です」の注記を入れるか迷っている場合:目的が違う2つの注記を切り分けて設計する必要があります

弁護士法人ブライトは、大阪で中小企業の企業法務を専門に扱う「法務部がない会社の、外部法務部」です。顧問先130社以上を実名で公開し、IT・広告・製造・小売など業種を問わず、生成AIの導入から運用ルールの整備までを継続的にご支援しています。顧問より一歩、会社の中に入って伴走するのが私たちのやり方です。企業法務のサービス全体もあわせてご覧ください。

まず5分で、自社のAI利用リスクを把握する

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よくある質問

生成AIで作った画像を広告に使うと、著作権侵害になりますか?

AIで作ったこと自体が侵害になるわけではありません。文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、AI生成物についても既存の著作物との類似性と依拠性の両方が認められる場合に侵害となるという従来どおりの枠組みで判断されると整理しています。既存の作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるものが出ていなければ侵害にはなりません。逆に、特定の作品名や作家名をプロンプトに入れて似たものを出させた場合は依拠性が認められやすくなります。

プロンプトに他社の画像や文章を入れるのは違法ですか?

入力そのものは著作権法30条の4(情報解析のための利用)の適用が検討される行為で、直ちに違法になるわけではありません。ただし文化庁の考え方は、入力した著作物と類似する生成物を生成させる目的で入力する行為には享受目的も併存するため30条の4は適用されないとしています。「この広告と同じ雰囲気で」「このイラストのタッチで」といった使い方が、その典型です。加えて取引先から預かった資料の場合は、秘密保持契約上の制約の確認も必要です。

AIが作ったものが他社の作品に似ていると知らずに公開してしまいました。責任を問われますか?

損害賠償請求や刑事罰は、故意又は過失が認められない限り対象とならないと整理されています。ただし差止請求は故意・過失を問わず認められ、さらに使用料相当額として合理的に認められる額等の不当利得の返還が認められることがあり得るとされています。つまり「知らなかった」で回避できるのは損害賠償と刑事罰までで、掲載停止や生成物の廃棄、使用料相当額の支払いは残り得ます。指摘を受けた時点で公開を止め、事実関係を整理してから対応方針を決めてください。

AIで作った画像やロゴに、自社の著作権は発生しますか?

AIは法的な人格を持たないため著作者にはなり得ず、AIを利用して著作物を創作した人が著作者になると整理されています。そのうえで、生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合には著作物性は認められないとされています。プロンプトの分量が多いだけ、試行回数が多いだけ、複数の候補から選んだだけでは創作的寄与の判断に影響しません。受託制作では、著作権譲渡条項と実際の権利状況がずれていないかをご確認ください。

大阪の中小企業でも、AI生成物のチェック体制は必要ですか?

規模ではなく、対外的に出すものに生成AIを使っているかで決まります。大阪で顧問先130社以上のご相談を受けている実感としても、AI利用の相談が届くのはIT企業だけではありません。広告制作、不動産、小売、製造と業種を問わず届きます。まずは「プロンプトに入れてはいけない素材の1枚リスト」と「公開前に類似検索をする担当者を決める」の2つから始めるだけでもリスクは下がります。詳細な規程づくりはその後で構いません。

大阪の中小企業のAI利用リスクを、無料で診断します

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なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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