業務委託契約で揉めやすい条項|締結前に確認すべき5つのポイント 「契約書を交わしたのに、後から『こんな約束はしていない』と言われた」「完成品を納品したのに、検収が通らないと言われ続ける」——。 業務委託契約をめぐるトラブルは、ほぼ例外なく締結前に放置された曖昧な条項が原因です。 サービスや制作物を発注するとき、相手を信頼して契約書を簡略化したくなる気持ちは分かります。しかし、信頼関係が壊れたときに頼れるのは契約書だけです。 締結前に必ず確認すべき5つのポイントを解説します。 ポイント1|成果物の定義 業務委託契約で最初に確認すべきは、「何を納品すれば完了なのか」が明確かどうかです。 「ウェブサイトの制作」「マーケティング支援」「システム開発」——これだけでは何が完成形なのかが分かりません。 成果物を定義する際に明記すべき事項は次のとおりです。 納品物の具体的な内容(仕様書・設計書のレベルまで落とす) 納品ファイルの形式(PDF・PSD・Figmaなど) 修正・改修の対応回数と範囲 成果物の定義が甘いと、発注者から「これは求めていたものと違う」と言われたとき、受注者側は反論できません。また、発注者からすれば「言ったのに無視された」という状況になります。どちらにとっても不幸なトラブルの入口がここにあります。 ポイント2|検収条件と期間 納品後、発注者がいつまでに・どのような基準で「完成」と認めるかを定める条項です。 揉めやすいパターンは2つあります。 パターンA:検収基準が「当社の合理的な判断による」 → 基準が曖昧なため、発注者が何度でも不合格を言える状態になる。受注者は代金を請求できない期間が続く。 パターンB:検収期間の規定がない → 発注者が何ヶ月も検収を放置しても、契約上問題ない状態になる。 修正すべき方向:検収基準は「仕様書に記載された要件を満たしているか」など具体的に。検収期間は「納品後○営業日以内に検収通知を行う。期間内に通知がない場合は検収完了とみなす」と明記する。 ポイント3|著作権・知的財産権の帰属 成果物に関する著作権が、受注者(制作者)と発注者(依頼者)のどちらに帰属するかを定める条項です。 明記がない場合、著作権は原則として制作者(受注者)に帰属します(著作権法の原則)。発注者は「お金を払ったのだから自分のものだ」と思っていても、法律上は違います。 フリーランスや制作会社との業務委託では、よく問題になる論点です。 確認すべき事項は次の3点です。 著作権の帰属(受注者帰属か、納品時に発注者へ移転するか) 著作者人格権の不行使(改変・修正を可能にするための取り決め) 既存素材・ライブラリの扱い(オープンソース等の利用範囲) 修正すべき方向:報酬に著作権譲渡の対価を含む場合は「代金支払い完了をもって著作権を発注者へ譲渡する」と明記する。著作者人格権の不行使特約も合わせて入れておく。 ポイント4|再委託の禁止・制限 発注者が委託した業務を、受注者がさらに別の業者に委託することを「再委託」と言います。 再委託に関するトラブルは、次のようなケースで発生します。 発注者が「スキルのある会社に依頼した」と思っていたら、実際の作業は別の会社が行っていた 再委託先の品質が低く、成果物に問題が出た 再委託先が情報漏洩を起こした 再委託禁止を明記しない場合、受注者は自由に再委託できます。機密情報を扱う業務委託では、この点が特に重要です。 修正すべき方向:「事前の書面承諾なく再委託を行ってはならない」と明記する。再委託を認める場合も「再委託先の情報は事前開示」「再委託先にも同等の守秘義務を負わせること」を条件とする。 ポイント5|損害賠償の範囲と上限 業務委託で問題が起きたとき、どこまで賠償責任を負うかを定める条項です。 受注者にとって最大のリスクは、損害賠償上限が設定されていない場合です。制作費用が50万円の案件でも、発注者に生じた損害が数千万円に及べば、それ全額を請求されるリスクがあります。 損害賠償条項で確認すべき点は次のとおりです。 賠償責任の上限額(「本契約の受領報酬額を上限とする」が一般的) 間接損害・逸失利益の賠償を除外するか否か 免責事由(天災・自然現象・発注者の帰責事由等) 修正すべき方向:賠償上限を「当該委託料の金額」に設定する。間接損害・逸失利益は双方ともに免責する条項を入れる。 よくある相談例 あるシステム開発会社が、業務委託契約書に「成果物の検収基準は発注者の合理的判断による」との条項が入った状態でサインしました。開発完了後、発注者から「要件を満たしていない」として検収を繰り返し拒否され、数ヶ月にわたって代金を受け取れない状態が続きました。 弁護士に相談した結果、改めて仕様書に基づく検収基準を協議・合意することで解決しましたが、締結前に仕様を確定させていれば防げたトラブルでした。 また、SNSコンテンツの制作をフリーランスに委託した会社が、著作権帰属の条項を入れていなかったために、後から「著作権は私のもの」と主張され、コンテンツの使用継続に追加報酬を求められたケースもあります。 > 業務委託契約書の作成・チェックのご相談はこちら > 弁護士法人ブライト 企業法務 締結後に揉める前に、弁護士のチェックを 業務委託契約のトラブルは、「締結後に争う」段階になると解決コストが跳ね上がります。 弁護士によるリーガルチェックは数万円から依頼できます。顧問契約があれば、日常的な契約書チェックを随時依頼できる体制になります。 弁護士法人ブライトでは、業務委託契約書の作成・チェックから、締結後のトラブル対応まで対応しています。 > 無料相談・顧問契約のご案内 > 弁護士法人ブライト 企業法務サービス > 電話:0120-929-739(受付時間 9:00〜18:00) まず一度、ご相談ください。 関連記事 取引先から提示された契約書の6つのチェックポイント 契約書なしで取引を始めた場合のリスク 下請・業務委託で代金減額を求められたときの対応 よくある質問 Q. 業務委託契約書がなくても、口頭合意で仕事を始められますか? A. 法律上は口頭でも契約は成立します。ただし、成果物の定義・検収条件・報酬額などが書面で明確になっていないと、後からトラブルになった場合に証明が難しくなります。業務委託では必ず書面で整備することが一般的です。 Q. フリーランスへの業務委託でも同じ条項を確認する必要がありますか? A. はい。フリーランスとの業務委託でも、著作権帰属・検収条件・損害賠償の上限は特に重要な確認ポイントです。2024年施行のフリーランス新法により、業務委託者側の義務も強化されています。弁護士にご相談ください。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 事案の内容・複雑さによって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法的情報の提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な状況については弁護士にご相談ください。 よくある質問 Q. 業務委託契約で最も揉めやすい条項は何ですか? A. 成果物の定義と検収条件が最も揉めやすいです。「何を納品すれば完了か」「いつまでに・どの基準で検収するか」が曖昧だと、発注者が何度でも不合格を言える状態になります。締結前に具体的に明記することが重要です。 Q. 業務委託契約書のチェックにはいくらかかりますか? A. 弁護士によるリーガルチェックは事案の複雑さで異なりますが、一般的には数万円から依頼できます。初回相談を無料で実施している事務所もありますので、まずは相談されることをお勧めします。 Q. フリーランスとの契約でも弁護士のチェックは必要ですか? A. フリーランスとの業務委託でも、著作権帰属・検収条件・損害賠償の上限は特に重要です。2024年施行のフリーランス新法により業務委託者側の義務が強化されているため、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。