勤務態度が悪い社員・遅刻を繰り返す社員への対応|段階的懲戒と解雇が有効になる条件【大阪の企業法務弁護士解説】

勤務態度が悪い社員・遅刻を繰り返す社員への対応|段階的懲戒と解雇が有効になる条件【大阪の企業法務弁護士解説】

和氣 良浩

監修:和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士|大阪弁護士会

大阪で20年以上、中小企業の企業法務・顧問弁護士サービスを提供。顧問先130社以上に透明性の高いリーガルサポートを実践している。

「何度注意しても遅刻が直らない」「勤務態度が悪く、周囲の士気が下がっている」——このような相談は、業種・規模を問わず多くの中小企業から寄せられます。ただし勤務態度不良や遅刻の繰り返しだけを理由に性急な解雇に踏み切ると、後日「解雇は無効」と争われ会社側が不利になることが少なくありません。

結論から言うと、勤務態度不良・遅刻を繰り返す社員への対応は、①「単なる素行の問題」と「業務への具体的支障」を切り分けて記録する、②口頭注意で終わらせず書面で証拠化する、③就業規則に沿って譴責・減給・出勤停止という段階を踏む、④それでも改善しない場合に初めて解雇を検討する、という順序で進めることが原則です。

本記事では、勤務態度不良・遅刻の典型例、証拠化の考え方、注意指導の記録化、段階的懲戒の進め方、そして解雇が有効と判断されるための条件までを、企業法務を扱う弁護士法人ブライトが、大阪の中小企業の相談実務を踏まえて解説します。

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勤務態度不良・遅刻を繰り返す社員の典型例と会社が抱えるリスク

まず、相談の多い問題行動と、放置した場合に会社が抱えるリスクを整理します。

典型的な問題行動

勤務態度不良・勤怠不良として相談を受ける行動には、遅刻・早退の繰り返し、無断での離席・長時間の休憩超過、勤務中の私語やスマートフォン操作、指示や報告連絡を怠る、他の社員への態度が高圧的である、といったものが典型です。単発であれば注意で済むものでも、繰り返されることで業務全体に影響を及ぼすようになります。

「性格の問題」として放置した場合のリスク

勤務態度不良を「本人の性格の問題」として放置すると、周囲の社員が不公平感を抱き、職場全体の士気低下や人材の離職を招きます。一方、記録を積み重ねないまま感情的に重い処分・解雇に踏み切ると、後日の紛争で「性急だった」「弁明の機会がなかった」と評価され不利になります。いずれの極端も避け、段階を踏んだ対応を粘り強く進めることが重要です。

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「単なる素行」と「業務への具体的支障」の切り分け

懲戒処分・解雇のいずれを検討する場合でも、出発点になるのは「本人の性格や素行が気に入らない」という主観ではなく、業務にどのような具体的支障が生じているかです。

業務への支障を特定の言葉で説明できるか

「態度が悪い」という抽象的な評価だけでは、懲戒処分・解雇のいずれの場面でも会社側の主張が弱くなります。遅刻の繰り返しで朝礼や引き継ぎに支障が出ている、離席の多さで電話・来客対応が滞っている、私語や指示無視で他の社員の業務効率が落ちている、といった形で、誰に・どのような支障が生じているかを具体的に説明できる状態にしておくことが必要です。

支障を証拠化する視点

実務上は、遅刻・早退・欠勤の回数と時間を記録した勤怠データ、業務ミスの内容と発生日、取引先や他部署からの苦情の記録、注意指導の日時と内容といった客観的資料を積み上げることが重要です。整理せずに判断を急ぐと、後日「具体的な支障が立証できていない」と評価されるリスクが高まります。まず就業規則・雇用契約書・タイムカードなど客観的資料の提出を求め、事実関係を正確に把握することが出発点になります。

私傷病や家庭の事情が背景にある場合の注意点

遅刻や欠勤の背景に、体調不良や家庭の事情など本人に責めがたい事情がある場合もあります。これを確認しないまま一律に懲戒処分の対象とすると、後日「配慮を欠いた対応だった」と評価されるおそれがあります。面談で事情を聴取し、必要に応じて勤務時間の調整や休職制度の案内など懲戒以外の選択肢も検討する姿勢が望まれます。

注意指導の記録化|口頭注意で終わらせない

勤務態度不良・遅刻への対応で、最終的に会社側の主張を支えるのは「記録」です。口頭での注意だけを繰り返していると、後日「そんな指導は受けていない」「指導内容が曖昧だった」と反論される余地を残します。

口頭注意のみで終わらせるリスク

口頭注意は即座に行える一方、いつ・どのような内容を伝えたかが記憶頼りになりやすく、証拠としての価値が低くなります。数ヶ月分の指導内容をまとめて後から記録しようとしても、日時や具体的なやり取りがあいまいになり、信用性の高い証拠にはなりません。注意指導を行った際は、その都度、書面やメールなど形に残る方法で記録することが基本です。

注意指導書に残すべき項目

注意指導書には、指導の日時、対象となった具体的な問題行動、その行動によって生じた業務への支障、会社が求める改善内容と期限、改善が見られない場合の取扱いの見込みを明記します。「態度を改めるように」という抽象的な指導ではなく、「始業時刻に遅れず出勤する」「離席の際は上長に一声かける」など、本人が何をすればよいか具体的にわかる表現にすることが重要です。

改善の機会付与|一方的な処分にしない

注意指導の際は、本人に弁明や事情説明の機会を与えることも欠かせません。一方的に指導書を交付するだけでなく、面談で本人の言い分を聴取し、その内容も記録します。改善のための具体的な行動計画と期限を示し、期限到来時に振り返る機会を設けることで、「会社は改善の機会を十分に与えた」という経過を積み上げられます。

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段階的懲戒の進め方|譴責→減給→出勤停止

注意指導を重ねても改善が見られない場合、就業規則に基づく懲戒処分を検討する段階に進みます。ここでも、いきなり重い処分に踏み切るのではなく、軽い処分から段階的に行うことが原則です。

段階 内容 実務上のポイント
1. 口頭・書面注意 問題行動と改善内容を具体的に伝え、期限を示す 口頭で終わらせず、注意指導書として記録に残す
2. 譴責・けん責 始末書の提出を求め、将来を戒める処分 懲戒処分としては最も軽く、初回の処分として選ばれやすい
3. 減給 賃金の一部を減額する処分 労働基準法91条の上限(1回の額が平均賃金1日分の半額以内、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以内)を超えられない
4. 出勤停止 一定期間の出勤を禁止し、その間の賃金を支払わない処分 繰り返しの問題行動に対する重い処分として、解雇の一歩手前に位置づけられることが多い
5. 解雇 段階的な指導・処分を経ても改善しない場合の最終手段 普通解雇と懲戒解雇のいずれで臨むかを、これまでの記録を踏まえて慎重に検討する

就業規則の懲戒事由・懲戒手続との整合性を必ず確認する

懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒の種類とどのような行為が懲戒事由に該当するかをあらかじめ定め、周知しておくことが前提になります。定めのない種類の処分や、懲戒事由に該当しない行為を理由とする処分は無効と判断されるリスクがあります。勤務態度不良・遅刻の繰り返しを懲戒事由として明記しているか、事前に確認しておくことが重要です。

弁明の機会を必ず与える

懲戒処分を行う前には、本人に弁明の機会を与えることが望まれます。就業規則に弁明手続の定めがある場合はこれに従い、定めがない場合でも一方的に通知するのではなく、事情聴取のうえで処分内容を決定する手順を踏むことで、後日の紛争リスクを下げられます。

懲戒処分は繰り返しの有無を重視する

労働契約法15条は、懲戒についても、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合は権利濫用として無効になると定めています。単発の遅刻・勤務態度不良だけで重い処分に踏み切るのではなく、注意や軽い懲戒処分を重ねても改善しないという経過を記録として積み重ねることが、後の重い処分の正当性を基礎づけます。実務では、懲戒処分の通知書案について、後日の紛争に備えて証拠として通用する内容になっているかを弁護士がレビューし、必要な加筆修正を行うことがあります。

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懲戒処分の通知書、
そのまま出して大丈夫ですか?

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改善指導の機会付与と、休職制度との切り分け

段階的懲戒を進める過程では、単に処分を重ねるだけでなく、本人に改善の機会を具体的に付与し、その結果を記録することが欠かせません。

改善計画と期限の設定

懲戒処分の際には、今後どのような行動を、いつまでに、どの程度改善すべきかを明示した改善計画をあわせて示すことが有効です。期限到来時に改善状況を評価し、見られない場合は次の段階の処分を検討する材料とします。この記録が、後に解雇の有効性を判断する際の重要な基礎になります。

体調不良を理由とする欠勤・休職との切り分け

遅刻・欠勤が続く社員のなかには、体調不良を理由に休養を申し出るケースもあります。この場合、有給休暇の消化と就業規則に基づく休職とは法的性質が異なる点を、本人に誤解のないよう説明することが重要です。休職期間中は原則無給となる一方、健康保険から傷病手当金の支給を受けられる場合があることもあわせて説明しておくと、後日の不満を防げます。懲戒による対応と、健康上の配慮を要する対応とを混同しないことが重要です。

感情的な発言のみで重要な判断を確定させない

面談の場で本人が感情的に「辞めます」といった発言をすることがありますが、その場の発言だけを退職の確定的な意思表示とみなして手続を進めることにはリスクがあります。冷静な状態で改めて意思確認を行い、退職の意思が変わらない場合は退職届の提出を求めるなど、書面で確認する手順を踏むことが望まれます。

解雇が有効になる条件|労働契約法16条と指導記録の重要性

段階的な注意指導・懲戒処分を経ても改善が見られない場合、解雇を検討する段階に至ります。ここで最終的に問われるのが、労働契約法16条の要件です。

⚖️ 労働契約法16条(解雇権濫用法理)

  • 客観的に合理的な理由:勤務態度不良・遅刻の繰り返しが、注意指導・懲戒処分を経ても改善されなかったという具体的な経過
  • 社会通念上の相当性:問題行動の程度に対して、解雇という手段が重すぎないか(段階を踏んでいるか)

根拠条文:労働契約法16条/同法15条(懲戒権濫用の禁止)

累積した指導記録が解雇の有効性を左右する

勤務態度不良や遅刻の繰り返しを理由とする解雇では、単発の問題行動ではなく、注意指導・懲戒処分を重ねても改善されなかったという「累積した経過」が、解雇の合理性・相当性を判断する中心材料になります。注意指導書や懲戒処分の通知書が整理されていなければ、実際には繰り返し問題行動があったとしても解雇の場面で立証が難しくなります。日頃の記録の積み重ねが、いざという場面での会社側の立場を大きく左右します。

普通解雇と懲戒解雇の使い分け

解雇を検討する際は、就業規則の定め・労働契約法16条の要件・具体的な事実へのあてはめという順序で整理します。懲戒解雇は退職金の不支給など効果が重い分、要件のハードルも高くなるため、指導・処分の経過を踏まえ、まずは普通解雇の可否から検討する進め方が実務上取られることがあります。いずれを選ぶかは記録の内容によって左右されます。

解雇通知前に必ず確認すべきこと

解雇に踏み切る前には、就業規則上の解雇事由に該当するか、指導・処分の記録が時系列で整理されているか、改善の機会を十分に与えたか、解雇予告手当など労基法上の手続を満たしているかを確認します。これを怠ると解雇自体が無効と判断され、会社側の負担がかえって大きくなるおそれがあります。

弁護士に相談すべきタイミング

次のいずれかに該当する場合は、対応方針を決める前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。

  • 注意指導を繰り返しているが、記録が口頭中心で書面化できていない
  • 懲戒処分・解雇を検討しているが、就業規則の懲戒事由・手続に沿っているか自信がない
  • 遅刻・欠勤の背景に体調不良や家庭の事情がある可能性がある
  • 懲戒処分の通知書・解雇通知書の内容が、後日の紛争に耐えられるか不安がある
  • 対応が長期化し、他の社員への影響が懸念される(モンスター社員への対応方法はこちら

弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」は、大阪の中小企業130社以上との顧問契約を通じて、勤務態度不良・遅刻を繰り返す社員への対応を含む労務トラブルの相談実績を積み重ねています。弁護士歴平均14年以上のチームが、注意指導書の作成段階から懲戒処分・解雇の最終判断まで対応しています。懲戒処分の全体像はこちらの記事、問題社員対応の全体像はこちらで解説しています。

よくある質問

遅刻を繰り返す社員はすぐに解雇できますか?

注意指導や懲戒処分の段階を経ていない即時の解雇は、労働契約法16条により無効と判断されるリスクが高いといえます。まずは注意指導を書面で記録し、改善が見られなければ譴責・減給など軽い懲戒処分から段階的に進めることが基本です。

勤務態度が悪いという理由だけで懲戒処分にできますか?

就業規則に定める懲戒事由に該当し、かつ処分内容が問題行動の程度に照らして相当であれば、有効と判断される可能性があります。ただし「態度が悪い」という抽象的な評価だけでは足りず、業務への具体的な支障を記録として示せることが前提になります。

口頭で何度も注意しているのに改善しない場合、どうすればよいですか?

口頭注意のみでは、後日「指導を受けていない」と反論される余地が残ります。今後は注意指導書として書面で記録し、改善内容・期限を明示したうえで、改善しなければ懲戒処分を段階的に検討する流れに切り替えることをおすすめします。

減給処分にはどのような制限がありますか?

労働基準法91条により、減給の制裁は1回の額が平均賃金1日分の半額を超えてはならず、複数回の減給がある場合でも総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないと定められています。この上限を超える減給は無効になるため、事前の確認が必要です。

大阪の企業ですが、勤務態度不良の社員対応を弁護士に相談できますか?

弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、顧問先130社以上・弁護士歴平均14年以上のチームで労務トラブル対応をサポートしています。「みんなの法務部」として、注意指導書の作成段階からの相談にも、懲戒処分・解雇を検討する段階の相談にも対応していますので、お気軽にご相談ください。

勤務態度不良・遅刻を繰り返す社員への対応は、「性格の問題」として放置すれば士気低下を招き、記録を残さず性急に解雇へ踏み切れば紛争リスクを高めます。業務への具体的支障を記録し、注意指導・懲戒処分・解雇という段階を丁寧に踏むことが、後の紛争リスクを抑えることにつながります。弁護士法人ブライトは、企業法務トップページ(企業法務コンテンツ一覧はこちら)でも実務記事を公開しています。対応に迷う場合は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。

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