「事業の一部を譲渡しようと考えているが、従業員にいつ、何を、どう伝えればいいのか、まったく見当がつかない」——そんな不安を抱えたまま、交渉を進めている社長は少なくありません。 事業譲渡は、会社の未来を大きく動かす経営判断です。だからこそ、法律の問題だけでなく、一緒に働いてきた従業員の生活や心理にも直結します。「秘密裏に進めて、最後に一気に通知すればいい」という考え方は、後々の大きなトラブルの火種になりえます。 この記事では、事業譲渡における従業員への通知・合意取得の問題を、「なぜミスが起きるのか」という構造から整理し、社長が自分の判断を見直せるよう書きました。 事業譲渡と従業員の関係——まず「基本の構造」を押さえる 会社の合併(吸収合併・新設合併)や会社分割と異なり、事業譲渡は原則として従業員の雇用契約を自動的に引き継ぎません。 合併であれば、法律の規定によって従業員の雇用関係はそのまま新会社に移ります。ところが事業譲渡の場合は、「誰を、どの条件で引き継ぐか」を当事者間の契約で決める必要があります。 つまり、従業員一人ひとりについて、以下の問いに答える必要があります。 譲渡先に引き継いでもらうのか、それとも現在の会社に残るのか 引き継ぐ場合、労働条件は変わるのか・変わらないのか 従業員本人は、譲渡先への転籍に同意しているのか この「同意」が極めて重要です。従業員は、使用者が一方的に変わることを強制されません。転籍(雇用主の変更)には従業員本人の個別同意が必要であり、これを省略したまま事業を動かすことは法的なリスクを生みます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) なぜ判断ミスが起きるのか——社長が陥りやすい3つの思い込み 【図解】事業譲渡と従業員の関係——まず「基本の構への対応フロー ① 問題発生 → ② 事実確認・記録 → ③ 顧問弁護士に相談 → ④ 対応策の実行 ※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。 事業譲渡の現場で繰り返し見られる判断ミスには、共通した構造があります。 思い込み①「譲渡先が引き継ぐと言っているから大丈夫」 譲渡先との間で「従業員はそのまま引き継ぐ」と合意していても、それは会社間の約束に過ぎません。従業員本人が転籍を拒否した場合、強制的に移籍させることはできません。同意なき転籍を前提に事業を動かすと、後から雇用をめぐるトラブルが噴出します。 思い込み②「発表は直前でいい。情報が漏れると困る」 機密保持の観点から、従業員への通知を極限まで遅らせようとする社長は多くいます。しかし、通知が遅すぎると従業員は「自分たちは知らされなかった」という不信感を持ち、キーパーソンから先に退職していくという事態が起きます。情報管理と適切なタイミングの通知は、両立して設計しなければなりません。 思い込み③「合意は口頭でも問題ない」 「本人も同意していると思う」「面談で了解を得た」——こうした口頭・口約束での確認は、後に「聞いていない」「強制された」と争われたときに証拠として機能しません。転籍同意は必ず書面で取得し、日付・署名・内容を明確にしておく必要があります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題が起きる前にできること——通知・合意取得の設計 事業譲渡における従業員対応は、「問題が起きてから対処する」のではなく、スケジュールの段階から設計することが前提です。 一般的な流れとして、以下の順番を意識してください。 対象従業員の整理:誰を譲渡先に移すのか、誰を残すのかを事業譲渡契約の協議と並行して決める 労働条件の確認と設計:転籍後の給与・役職・勤務地などが変わるかどうかを明確にする。変更がある場合はその合理的な説明を準備する 通知のタイミングと内容の設計:いつ、誰が、何を伝えるかを事前に決めておく。キーパーソンには個別面談、その後に全体への周知という順番が多い 個別面談と同意取得:転籍対象者一人ひとりと面談を行い、書面で同意を取得する 残留者への配慮:譲渡先に移らない従業員についても、今後の処遇を明確に伝える このプロセスを漏れなく進めるために、事業譲渡契約書の締結と並行して、従業員対応の工程表を作ることを強くお勧めします。弁護士に入ってもらうなら、この設計段階からが最も効果的です。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 問題発生時の対応フロー——証拠の残し方を具体的に 仮に従業員から「同意していない」「説明が不十分だった」などの異議が出た場合、会社側に求められるのは「適切な説明と同意取得のプロセスがあったこと」を証明することです。 以下の証拠を残しておくことが、トラブルへの対応力を大きく変えます。 面談の記録:面談を行った日時・参加者・説明内容・本人の反応を、その日のうちに書面に残す(メモや報告書で可) 転籍同意書:転籍先・転籍日・労働条件・署名・日付が入った書面を個別に取得する 説明資料:従業員に渡した説明資料(新会社の概要・労働条件比較など)を保存しておく メール・チャットのやりとり:口頭説明の補足として使ったデジタル記録も証拠として有効 証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。問題が起きた瞬間ではなく、日常の対応の中で積み上げておくものです。「あのとき書面を残しておけば」という後悔は、現場で繰り返し見られます。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) 失敗事例の構造——なぜ相談が遅れたのか 実際に顧問先からの相談の中には、事業譲渡の交渉がほぼ完了した段階で従業員の問題が噴出し、弁護士に相談が来るケースがあります。その多くに、共通した構造があります。 「相談が遅れた理由」として最も多いのは、「事業譲渡の交渉に集中していて、従業員対応は後回しにしていた」というものです。社長にとって事業譲渡の交渉は極めてエネルギーを要する仕事であり、相手方との条件交渉・価格交渉が優先されます。その結果、従業員への説明や同意取得が「最後にやること」として後回しになりがちです。 「証拠がなかった理由」としては、「口頭で話したから大丈夫だと思っていた」「書面にするほどでもないと判断した」というケースが目立ちます。特に、長く信頼関係を築いてきた従業員に対しては、「書面を出すのは失礼」という感覚が働くことがあります。しかしその信頼感こそが、後になって「強制された」「同意していない」という主張を招くリスクを高めます。 また、介護事業の事例のように、事業譲渡の交渉中に相手方が従業員を直接引き抜くような動きをすることもあります。このような場合、交渉が決裂してから初めて従業員への影響が問題化するため、対応が一気に複雑になります。交渉段階から従業員の動きを把握し、機密保持義務の取り扱いも含めて弁護士と設計しておくことが、こうした事態への備えになります。 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料) うちの会社ではどう考えればいいのか——判断の軸を整理する 事業譲渡における従業員対応は、会社の規模・業種・譲渡の性質によって変わります。「正解の型」を当てはめるのではなく、以下の問いを自社に照らして考えることが出発点です。 今回の事業譲渡で、対象事業に関わる従業員は何人いるか その全員を譲渡先に移すのか、一部を残すのか、その判断基準は明確か 労働条件は実質的に変わるか(給与・役職・勤務地・雇用形態など) 従業員への通知・説明のタイミングと担当者は誰が決めるか 転籍を拒否した従業員が出た場合、どう対応するか(現会社での処遇、整理解雇の可否など) この問いに答えられない状態で事業譲渡を進めることが、後のトラブルの根本原因になります。逆に言えば、これらを事前に整理できていれば、従業員対応の多くの問題は予防できます。 次の一手として具体的に動けることは、まず「誰が対象従業員か」のリストを作ることです。そのリストをもとに、各人の雇用条件・転籍の要否・面談の優先順位を並べる。それだけで、弁護士との打ち合わせの質が格段に上がります。 再発防止策——次の事業譲渡を、より安全に進めるために 事業譲渡は一度経験すれば終わりではなく、成長の過程で複数回起こりえます。今回の反省を仕組みに落とし込むことが、次回以降の判断の精度を上げます。 M&A・事業譲渡の社内手続きルールを作る:誰が何をいつ決めるか、従業員対応のフローを明文化しておく 雇用契約書・就業規則に転籍・出向に関する規定を整備する:事前に整備しておくことで、転籍同意のプロセスが円滑になる 秘密保持契約(NDA)の対象に従業員も含める:事業譲渡の交渉中、一定の立場の従業員には守秘義務を明確にしておく 従業員対応の記録フォーマットを用意する:面談記録・同意書のひな型を事前に準備し、都度ゼロから作らない体制にする こうした仕組みは、「事業譲渡が決まってから急いで作るもの」ではなく、平時に整備しておくものです。「揉めてから弁護士を使うのではなく、揉めないように弁護士を使う」という発想が、会社を守る安全装置になります。 事業譲渡における従業員対応の問題は、スポットの法律相談で一度解決したからといって終わりではありません。雇用契約書・転籍同意書の書式整備、就業規則への転籍規定の盛り込み、次回の事業譲渡や組織再編への備え——これらは継続的に見直す必要があります。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、事業譲渡にとどまらず、日常の労務・契約・組織対応まで、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが顧問先として継続的にサポートします。顧問先130社以上の実名を公開しており、「困ったときに呼ぶ弁護士」ではなく、「日頃から一緒に判断を磨いていく法務パートナー」として機能します。相談すればするほど強くなる体制を、平時から整えておきましょう。 よくある質問 Q. 事業譲渡のとき、従業員への通知は義務ですか? 会社法上、事業譲渡自体の通知義務は株主・債権者向けが中心であり、従業員への通知を直接義務付ける明文規定はありません。ただし、転籍(雇用主の変更)には従業員本人の同意が必要です。同意を得るためには当然に説明・通知が不可欠であり、適切なタイミングでの通知を省略することは、法的・実務的なリスクに直結します。 Q. 転籍を拒否した従業員はどうなりますか? 転籍を拒否した従業員は、事業譲渡後も現在の会社(譲渡する側)との雇用関係が継続します。ただし、事業が移転してしまうと会社側での配置が難しくなる場合もあります。その後の処遇(継続雇用・配置転換・整理解雇の検討など)は、事業譲渡契約の設計段階から想定しておく必要があります。整理解雇には厳格な要件があり、安易に「拒否したから解雇」はできません。 Q. 従業員に事業譲渡を伝える前に、弁護士に相談する必要はありますか? はい、従業員への通知・説明を始める前の段階から弁護士に関与してもらうことをお勧めします。「誰に・いつ・何を伝えるか」の設計を誤ると、情報漏洩リスクや従業員の不信感、転籍拒否の多発などにつながります。通知の文書作成・面談の進め方・同意書の書式まで、事前に設計しておくことが後のトラブルを防ぐ最善策です。 Q. 事業譲渡後、譲渡先が労働条件を変更することはできますか? 転籍後の労働条件変更は、原則として従業員本人の同意が必要です。転籍同意と同時に新たな労働条件にも同意を得ておくか、または転籍後の変更については就業規則の合理的変更のルールに従う必要があります。「転籍させてから条件を下げる」という進め方は、後に労働トラブルの原因になりやすいため、条件の変更がある場合は転籍同意の前に明確にしておくことが重要です。 この記事の監修者 和氣 良浩(わけ よしひろ) 弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士 弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒 専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生 事業譲渡・組織再編・従業員対応など、経営上の課題を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先130社以上の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:0120-929-739(平日9:00〜18:00) 「みんなの法務部」というブライトの考え方 中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、130社以上の顧問先と向き合っています。 ▶ みんなの法務部とは(詳しく見る) 企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先130社以上を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。法務チェックリスト 無料ダウンロード顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る0120-929-739(みんなの法務部)LINE相談(無料)