この記事の執筆弁護士
弁護士 松本 洋明(弁護士法人ブライト 交通事故主任)
大阪弁護士会所属(登録2010年・修習63期)。交通事故・後遺障害認定の実務を主任として統括。異議申立てによる等級獲得・等級アップの指揮を多数経験。
この記事の監修弁護士
弁護士 和氣 良浩(弁護士法人ブライト 代表)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ブライト代表。「みんなの法務部」コンセプトの提唱者。
最終更新日:2026年5月28日
この記事の結論(30秒でわかる)
- 後遺障害が 「非該当」または想定より低い等級 でも、異議申立てに回数制限はない。
- 等級獲得・等級アップの戦略は 3パターン:①医学的所見の追加 ②医師の意見書取得 ③陳述書・生活実態の客観化
- 異議申立てには 時効リスク がある(後遺障害分は症状固定日から3年)。並行して時効中断を進める。
- ブライトには 9級・12級・14級の異議申立て獲得実例 が複数あります。
「後遺障害は非該当でした」「想定していた等級より低い結果でした」——自賠責保険会社から届く認定結果通知は、被害者の方にとって受け入れがたいものです。しかし、認定結果は 最終確定ではありません。異議申立てによって等級獲得・等級アップを目指す道が残されています。
この記事では、弁護士法人ブライト交通事故主任の松本洋明弁護士が、異議申立てで結果を変えるための3つの戦略パターンと、ブライトが実際に経験した成功事例を解説します。詳しい後遺障害認定の全体像は 後遺障害認定の完全ガイド をご覧ください。
目次
異議申立てとは何か
異議申立てとは、自賠責保険会社(および損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所)が出した 後遺障害等級の認定結果に対して、再審査を求める手続き です。
最大の特徴は 回数制限がない こと。1回目の異議申立てで結果が変わらなくても、新しい資料を追加して2回目・3回目と申立てを続けることができます。ただし、後述する 時効リスク には注意が必要です。
異議申立てが認められるケースの特徴
異議申立てで結果が覆る案件には共通点があります。それは 「初回申請時に提出されていなかった情報・資料」を新たに提示できているかどうか。同じ資料で「もう一度審査してください」と言っても結果は変わりません。追加で何を出すか が勝負を分けます。
【CTA①】非該当通知が届いたら、まず弁護士へ
通知書を見せていただければ、「何を追加すれば等級が取れる可能性があるか」を初回相談(無料)で具体的にお伝えします。
非該当通知書を読み解く 3つのポイント
異議申立ての成否は、「非該当の理由書」を正しく読み解けるか で半分決まります。通知書には、自賠責損害調査事務所が「なぜ等級を認めなかったのか」が明記されています。ここから3つのポイントを確認します。
ポイント①:他覚的所見の評価
「画像所見上、明らかな異常を認めない」「他覚的所見に乏しい」などの記載がある場合、医学的所見の追加(戦略①)で対応する余地があります。MRIの追加撮影、別の医療機関でのセカンドオピニオン、神経学的検査の追加実施などです。
ポイント②:症状の一貫性・連続性
「通院が断続的」「症状の経過に変動が見られる」などの指摘は、陳述書・通院記録の補強(戦略③)で対応します。通院間隔が空いた理由(仕事の都合・体調悪化など)を客観化することで、症状の一貫性を立証できます。
ポイント③:事故との因果関係
「事故との因果関係について十分な所見を認めない」とある場合は、医師の意見書取得(戦略②)が有効です。主治医や専門医に、症状と事故の因果関係を医学的に明確化してもらいます。
戦略①:医学的所見の追加
最も効果が高い戦略です。初回申請時に提出していなかった画像・検査結果を追加して再審査を求めます。
追加できる医学的所見の例
- MRIの追加撮影:1回目で異常所見が明確でなかった場合、別の医療機関で再撮影。とくに頚椎・腰椎の神経圧迫所見を狙う。
- 神経学的検査:スパーリングテスト、ジャクソンテスト、SLRテストなどの結果を追加。
- 電気生理学的検査:神経伝導速度検査(NCV)、針筋電図(EMG)。末梢神経障害の立証に有効。
- 骨シンチグラフィ・サーモグラフィ:CRPS(複合性局所疼痛症候群)の立証に特殊検査。
- 可動域測定の再実施:健側との比較・参考可動域との対比を明記。
「他覚的所見なし」→「12級13号」へステップアップする道
むちうちで「14級9号」に止まった、または非該当になったケースで、追加MRIによって神経圧迫所見が確認できれば 12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が見えてきます。等級が1つ上がるだけで、慰謝料は 110万円 → 290万円(赤本基準)、労働能力喪失率は 5% → 14% と大きく変わります。
戦略②:医師の意見書取得
後遺障害診断書だけでは伝えきれない医学的判断を、主治医または専門医の意見書 として補強します。
意見書で立証する3つの観点
- 症状と事故の因果関係:「事故前から症状があったのではないか」「他の原因ではないか」という反論を予防します。
- 労働能力への影響:症状が現実の労働・家事にどう影響しているかを医学的に説明。
- 将来の症状改善の見込み:「もう少し治療すれば治る」と判断されないよう、症状固定の妥当性を裏付けます。
意見書を依頼するときの注意点
意見書は医師に 有償で作成を依頼 するもので、相場は 5万円〜30万円 程度です。専門性が高い分野(高次脳機能障害・CRPS・PTSD等)は高額になる傾向があります。費用は最終的に賠償金から精算できる場合が多いですが、まず弁護士と費用対効果を検討するのが賢明です。
ブライトでは、既往症の影響を相手保険会社に主張された訴訟で医学的意見書を取得した事例 があります。Zoom協議を活用して効率的に意見書を取得しました。
戦略③:陳述書・生活実態の客観化
医学的所見が乏しいケースでも、症状による日常生活・労働への影響を客観化 することで、認定の判断材料を増やせます。
陳述書に書くべき内容
- 事故から症状固定までの経過:いつ・どこが・どのように痛むか。時期ごとの症状の変化。
- 日常生活への影響:朝起きるとき・通勤・家事・睡眠などの具体的な制限。
- 労働への影響:仕事内容で何ができなくなったか、業務効率の低下、休職の有無。
- 通院の継続理由:症状が続いている事実と、治療への意欲。
家族・職場からの陳述書も有効
本人だけでなく、家族・職場の上司・同僚 の陳述書も取得すると、客観性が増します。「事故前後で本人の動作・性格・仕事ぶりがどう変わったか」を第三者視点で証言してもらいます。とくに高次脳機能障害の認定では、家族の陳述書が決定打になることが多くあります。
日記・通院記録・家計簿による裏付け
陳述書の内容を裏付ける客観資料として、日記・通院記録・家計簿・職場の出勤簿 なども有効です。「症状による生活実態の変化」を数字とエピソードで示せれば、書面審査の説得力が増します。
【CTA③】陳述書の書き方が分からない方へ
陳述書は単に「困っています」と書くだけでは効果がありません。認定基準に合わせた構成 が必要です。ブライトが構成案をご用意します。
異議申立ての時効管理
異議申立てに回数制限はありませんが、自賠責保険の請求権には消滅時効 があります。2020年4月1日以降に発生した事故の場合、傷害分は事故発生日から3年・後遺障害分は症状固定日から3年 です。
時効を中断する3つの方法
- 時効中断申請書の提出:自賠責保険会社に書面で提出することで、時効を中断できます(自賠責保険会社所定の様式)。
- 裁判上の請求:相手方任意保険会社に対して訴訟提起することで、自賠責への時効も中断する場合があります(要弁護士判断)。
- 債務承認:相手方保険会社からの支払いや書面承認も時効中断事由になります。
ブライトの実例:9級認定後の時効管理
後遺障害9級10号で異議申立て2回失敗・時効管理事例 では、2028年7月の自賠責時効を念頭に、異議申立てと並行して時効中断手続きを進めました。「異議申立てを続けているうちに時効を逃す」 という最悪のシナリオを回避するのは、弁護士の重要な役割です。
【CTA④】事故から2年以上経過している方は要注意
時効が迫っている案件は、異議申立てより先に時効中断の手続きを優先する必要があります。まずはお電話ください。
ブライトの異議申立て成功事例
弁護士法人ブライトの異議申立て事例の一部を紹介します(すべて匿名化済み)。
- 9級10号で異議申立て2回失敗・時効管理(戦略①+②+時効中断)
- 14級9号認定・12級チャレンジ準備(戦略①医学的所見の追加)
- 事前認定→被害者請求への切替判断(申請方法の戦略変更)
- 高次脳機能障害・MRI正常でも認定された立証パターン(戦略②+③)
- PTSD・うつ病で「後遺障害にならない」と言われた事案(戦略②+③)
【CTA⑤】自分のケースに近い事例を相談したい方へ
異議申立て申請書の構成と書き方
異議申立ては 「異議申立書」 という書面を自賠責保険会社に提出して行います。所定様式はなく、書き方の自由度が高い一方で、構成を間違えると審査官に読まれない という落とし穴があります。
異議申立書に必ず盛り込む7つの構成要素
- 表題と当事者情報:「異議申立書」「事故日」「自賠責証明書番号」「申立人氏名」を冒頭に明示
- 結論の明示:「初回認定(非該当 or 14級9号等)を取り消し、〇級〇号の認定を求める」と最初の1〜2行で結論を打ち出す
- 初回認定の理由書の引用と反論:自賠責損害調査事務所が示した「非該当(or 想定より低い等級)の理由」を引用し、何が事実と異なるか/何が見落とされたかを項目別に反論
- 追加資料の説明:今回新たに提出する画像・意見書・陳述書・検査結果を一覧化し、それぞれが等級認定にどう関係するかを簡潔に説明
- 医学的考察:症状と他覚的所見の解剖学的整合、事故との因果関係、症状の重さの定量化を医学用語で記述(医師の意見書と対応させる)
- 労働能力・日常生活への影響:自覚症状が「実際の生活でどう不利益を生じているか」を陳述書・日記等の客観資料と対応させて記述
- 結語と添付資料一覧:申立人の署名・押印、添付資料のリスト(番号付き)
審査官に読まれる書面にするための工夫
自賠責損害調査事務所には大量の申請が集まります。分量が多すぎる・構成が散らかっている書面は最後まで読まれない リスクがあります。実務的なコツは次のとおりです。
- 本文は A4で5〜8ページ 程度に収める(添付資料は別途)
- 各章に 見出し を入れて読み飛ばしを誘導
- 「初回認定理由 → ブライト側の反論」を 並列の表形式 で示す
- 医学用語は 正確に。曖昧な表現は信頼を損なう
- 感情論・批判的表現は避け、事実と医学的根拠 のみで構成
添付資料の整え方
添付資料は 番号付き+簡潔な表紙 で整理します。例:
- 甲1:追加MRI画像(撮影日:2026年〇月〇日、〇〇医院)
- 甲2:神経内科医○○医師の医学的意見書(2026年〇月〇日付)
- 甲3:本人陳述書(症状の経過と日常生活への影響)
- 甲4:家族陳述書(事故前後の生活変化)
- 甲5:勤務先からの陳述書(業務遂行困難の客観化)
結果が変わらないとき—紛争処理機構と訴訟
異議申立てを複数回試みても結果が変わらない場合、自賠責の枠を超えた次のステップがあります。
選択肢①:自賠責保険・共済紛争処理機構
「自賠責保険・共済紛争処理機構」は、自賠責保険の支払いに関する紛争を中立的に審査する国土交通省・金融庁所管の第三者機関です。無料・1回限り ですが、自賠責損害調査事務所とは別の医師・弁護士による調停的審査が受けられます。
紛争処理機構を使うメリット・デメリット
- メリット:①無料 ②中立的審査 ③自賠責事務所と独立した判断 ④書面審査で被害者の負担が比較的軽い
- デメリット:①1回限り ②結果は法的拘束力なし(保険会社が従わないこともある) ③申請から判断まで6ヶ月〜1年
紛争処理機構が向いている事案
異議申立てを2〜3回行っても結果が変わらない事案、自賠責事務所の判断に明らかな医学的見落としがある事案、訴訟まで踏み込むには至らない事案などで有効です。
選択肢②:相手方任意保険会社に対する訴訟提起
自賠責の認定とは独立に、裁判所が後遺障害等級相当の損害を認める 道があります。これは「自賠責で〇級が認定されているか」とは別に、訴訟の中で 裁判所自身が後遺障害の存否・程度を判断 する手続きです。
訴訟で後遺障害を主張する戦略
- 自賠責で非該当でも、訴訟で 14級相当 の損害賠償が認められた事例は多数存在
- 裁判所は自賠責認定に 事実上拘束されない(ただし重要な参考資料として参照する)
- 医師の証人尋問・専門家証人によって、書面審査では伝わらなかった症状の重さを示すことができる
- 勝訴判決が出れば、相手方保険会社は判決額を支払う法的義務を負う
訴訟のリスクと判断
訴訟は時間(1〜2年)・費用・心理的負担が大きく、結果が確実とは言えません。自賠責の異議申立て・紛争処理機構を尽くしたうえで、得られる賠償増額と訴訟コストのバランス を見て判断します。ブライトでは事案ごとに勝訴可能性と費用対効果を試算してご提案します。
戦略の組み合わせ別ケーススタディ
異議申立てで結果が変わった事案は、ほとんどが 戦略①②③の組み合わせ によるものです。代表的な組み合わせパターンを紹介します。
ケースA:戦略①+② → 非該当から14級認定(むちうち事案)
初回申請で非該当だったむちうち事案で、追加MRI(戦略①)と 整形外科専門医の医学的意見書(戦略②)の組み合わせで14級9号認定を獲得したパターンです。MRIで頚椎椎間板の軽度膨隆所見を再確認し、意見書で「症状と所見の解剖学的整合」を示しました。
ケースB:戦略①+③ → 14級から12級ステップアップ(神経症状)
初回14級9号認定後、電気生理学的検査(戦略①の追加検査)と 本人・家族・職場からの陳述書(戦略③)を組み合わせて12級13号にステップアップした事案。神経伝導速度の低下を客観化し、生活実態への影響を多面的に立証しました。
ケースC:戦略②+③ → 高次脳機能障害の認定(精神系)
当初「事故と症状の因果関係が不明」とされた高次脳機能障害事案で、神経心理学的検査の追加実施・脳神経外科医の意見書(戦略②)に加えて、家族からの陳述書(戦略③)で事故前後の人格変化・生活変化を客観化して認定された事案です。
ケースD:戦略①②③の全部投入 → 重度後遺障害の等級アップ(脊髄損傷)
脊髄損傷で初回9級認定の事案で、3戦略すべて を投入して7級にステップアップした事案。MRI追加撮影、脳神経外科専門医の意見書、本人・家族の陳述書、職場の出勤記録、リハビリ記録など、立証材料を網羅的に積み上げました。
失敗パターン:同じ資料で「もう一度審査を」
逆に、異議申立てが 確実に失敗するパターン もあります。それは 「初回と同じ資料で、ただ感情的に再審査を求める」 申立てです。自賠責事務所は同じ資料からは同じ結論しか出しません。必ず 「初回になかった新材料」 を加えてください。
【CTA】自分のケースに近い戦略を相談したい方へ
よくある質問(FAQ)
Q1. 異議申立てに何回まで挑戦できますか?
A. 回数制限はありません。新しい資料を追加して2回目・3回目と続けられます。ただし時効リスクがあるため、長期化しすぎないよう戦略的に進める必要があります。
Q2. 異議申立てで等級が下がることはありますか?
A. 自賠責の異議申立てでは、すでに認定された等級が 引き下げられることは原則ありません。安心して申立てが可能です。ただし紛争処理機構・裁判では別途検討が必要です。
Q3. 異議申立てにかかる期間は?
A. 通常 3〜6ヶ月 程度です。複雑な事案や追加資料が多い場合は半年以上かかることがあります。
Q4. 異議申立てが何度も失敗したら、他に手段はありますか?
A. はい。自賠責保険紛争処理機構への申請、または 訴訟提起 という選択肢があります。とくに紛争処理機構は中立的な第三者機関で、自賠責の判断を再評価する制度です。
Q5. 異議申立ては自分でできますか?
A. 制度上は可能ですが、非該当の理由書を読み解いて適切な追加資料を組み立てる には専門知識が必要です。ブライトでは異議申立て専門のチェックリストで対応します。
Q6. 弁護士費用はどのくらいかかりますか?
A. 弁護士費用特約 をご利用の場合、自己負担はほぼゼロです。特約がなくても、賠償金からの精算が一般的です。詳しくは初回相談で具体的にご説明します。
まとめ
後遺障害認定の結果に納得がいかないとき、異議申立て3つの戦略——医学的所見の追加・医師の意見書取得・陳述書による生活実態の客観化——を組み合わせれば、等級獲得・等級アップの可能性は十分にあります。
ただし、異議申立てには 時効管理 という重要な実務的論点があります。「諦めない」ことと「時間を浪費しない」ことの両立が、戦略の本質です。
非該当通知書を受け取った方、想定より低い等級で困っている方は、通知書到着から1ヶ月以内 を目安に弁護士へご相談ください。早いほど取れる戦略が増えます。
【CTA⑥】異議申立て 無料相談
大阪・梅田の弁護士法人ブライト 交通事故主任 松本洋明 弁護士が初回相談を担当します。
※弁護士特約をお持ちの方は自己負担なしで弁護士に依頼できる場合があります。
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