執筆:松本 洋明 弁護士(弁護士登録2010年・修習63期・交通事故担当主任)
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表・弁護士歴平均13年以上の法律事務所)
この記事でわかること
- 開放骨折(複雑骨折)とはどのような状態か、閉鎖骨折との違い
- 感染症リスク・複数回手術により後遺障害が残りやすい理由
- 後遺障害等級(偽関節・変形障害・短縮障害・醜状障害等)の考え方
- 弊所実際の受任事例(大腿骨開放骨折案件の経緯・匿名化)
- 慰謝料の3基準(自賠責・任意保険・弁護士基準)シミュレーション
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(平日9〜18時)
交通事故で強い衝撃を受けると、骨折した骨が皮膚を突き破って外部と交通する「開放骨折(複雑骨折)」を負うことがあります。開放骨折は感染症のリスクが高く、複数回の手術や長期入院が必要になりやすいため、閉鎖骨折(単純骨折)に比べて後遺障害が残る可能性も高くなります。
本記事では、開放骨折の基礎知識から後遺障害等級の考え方、弊所で実際に取り扱った大腿骨開放骨折案件の経緯(匿名化)までを弁護士が解説します。偽関節(骨がくっつかない状態)の等級については 大腿骨偽関節・不全癒合の後遺障害等級と慰謝料 でさらに詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
開放骨折の治療中・後遺障害の見通しでお悩みの方へ
「何度も手術が必要と言われた」「骨がくっつかず不安」という方は、症状固定を迎える前に弁護士にご相談ください。
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開放骨折(複雑骨折)とは
開放骨折とは、骨折部の骨が皮膚(および皮下組織)を破って外部と交通した状態の骨折です。医学的には「開放性骨折」、一般には「複雑骨折」と呼ばれることもありますが、骨折の折れ方が複雑という意味ではなく、骨折部が外部の環境(空気・細菌)に触れている状態を指す点に注意が必要です。
これに対し、皮膚が破れておらず骨折部が体内にとどまっている状態を「閉鎖骨折(単純骨折)」と呼びます。開放骨折は創部から細菌が侵入しやすく、骨髄炎(骨の感染症)を発症するリスクがあるため、緊急手術(創部の洗浄・デブリードマン=壊死組織の切除)が必要になるのが通常です。
交通事故で開放骨折が起こりやすい理由
開放骨折は、転倒による軽微な外力では生じにくく、交通事故・高所からの転落など強いエネルギーが加わったときに発生しやすい骨折です。特に次のようなケースで多く見られます。
- バイク・自転車事故で下肢が車体やアスファルトに直接強打された場合
- 歩行者が車両に跳ね飛ばされ、路面に叩きつけられた場合
- 四輪車同士の事故で車体が大きく変形し、下肢が挟まれた場合
下肢(大腿骨・脛骨・腓骨)や上肢(前腕)で発生しやすく、骨盤骨折・頭部外傷など他の重傷と合併しているケースも少なくありません。
重症度分類の考え方(専門書によれば)
整形外科の専門書では、開放骨折の重症度を創部の大きさ・軟部組織損傷の程度・血管損傷の有無などにより段階的に分類する考え方(グスティロ・アンダーソン分類)が広く用いられています。創が小さく汚染が少ない段階から、広範な軟部組織欠損や血管損傷を伴う重度の段階まで幅があり、重度になるほど感染リスク・患肢温存の困難さが増すとされています。個別の重症度評価は主治医の診断によります。
治療の流れと後遺障害が残りやすい理由
開放骨折の治療は、受傷直後の救急対応から長期化することが一般的です。
緊急手術(デブリードマン)と創外固定
受傷直後は感染予防のため、汚染された組織を取り除く緊急手術(デブリードマン)が行われます。骨折部の安定化には、創外固定(体外からピンとフレームで骨を固定する方法)や、後日髄内釘・プレートによる内固定に切り替える方法が用いられます。
骨髄炎・偽関節のリスクと複数回手術
開放骨折は血流障害を伴うことが多く、骨がうまく癒合しない「偽関節(骨癒合不全)」に至るケースが閉鎖骨折より多いとされています。感染が生じた場合は骨髄炎の治療のために追加手術が必要になることもあり、初回手術から症状固定までに複数回の手術・入院を繰り返すことも珍しくありません。
治療が長期化している・複数回の手術が必要と言われた方へ
入院・手術が長引くほど、後遺障害の内容や慰謝料の算定も複雑になります。早い段階でのご相談をおすすめします。
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開放骨折で残りうる後遺障害と等級の考え方
「開放骨折」自体に固有の等級があるわけではなく、治療後にどのような症状が残ったかによって等級が変わります。代表的なパターンは以下のとおりです(自賠責施行令別表第2に基づく代表例。実際の等級は個別の症状・部位によって異なります)。
| 残存した症状 | 代表的な等級 | 後遺障害慰謝料(赤い本) |
|---|---|---|
| 偽関節(骨癒合不全) | 7級10号/8級9号 | 1,000万円/830万円 |
| 下肢の短縮(3cm以上等) | 10級8号/13級8号 | 550万円/180万円 |
| 関節の運動障害(可動域制限) | 8〜12級相当 | 830万〜290万円 |
| 創部の醜状(傷あと) | 14級相当 | 110万円 |
| 神経症状(痛み・しびれが残存) | 12級13号/14級9号 | 290万円/110万円 |
血管損傷を伴う重度の開放骨折で患肢の温存が困難だった場合は、欠損障害としてさらに上位の等級(1〜7級相当)に該当することもあります。複数の症状が併存する場合は「併合」により等級が繰り上がることもあるため、後遺障害診断書の記載内容を弁護士・協力医が精査することが重要です。
慰謝料・損害賠償のポイント
開放骨折は入院・手術が長期化しやすいため、後遺障害慰謝料に加えて傷害慰謝料(入通院慰謝料)も高額になりやすい点が特徴です。慰謝料には3つの算定基準があります。
| 算定基準 | 特徴 |
|---|---|
| 自賠責基準 | 法律で定められた最低限の補償。等級ごとの金額が定額(例:8級331万円、12級94万円) |
| 任意保険基準 | 各保険会社が独自に設定。自賠責基準よりやや高いが、弁護士基準より低いことが多い |
| 弁護士(裁判)基準 | 裁判例の蓄積に基づく基準(赤い本)。3基準の中で最も高額になるのが一般的 |
開放骨折で複数回の手術・長期入院が必要だった場合、入通院慰謝料は「重傷用」の算定表(赤い本別表Ⅰ)が適用されるため、通院期間が同じでも軽傷のケースより高額になります。保険会社からの提示額が自賠責基準や任意保険基準に近い場合は、弁護士基準への引き上げ交渉により増額できる可能性があります。

保険会社の提示額が適正か不安な方へ
提示された慰謝料が弁護士基準に基づいているとは限りません。示談前に一度、金額の妥当性をご確認ください。
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弊所受任事例(匿名化):過失割合と解雇の因果関係が争点になったケース
事例:40代男性Aさん — バイク事故による大腿骨開放骨折・骨盤骨折
バイクで走行中、歩道から後退してきた四輪車と衝突し、右大腿骨開放骨折・骨盤骨折を負ったAさん(40代男性・個人事業主兼派遣社員)の案件です。初回手術後もレントゲンで骨がくっつかず、プレートによる再固定手術を受けました。
この案件では2つの点が大きな争点になりました。1つは過失割合です。相手方は「Aさんの進路変更にも原因がある」として一定の過失を主張しましたが、松本弁護士は相手方が歩道から車道へバックで進入してきた点を重視し、当方の過失を最小限に抑える主張を組み立てました。
「開放骨折のような重傷事案では、過失割合が数%変わるだけでも賠償額に数百万円単位の差が生じます。実況見分調書やドライブレコーダーの映像だけでなく、事故現場の道路状況・相手方車両の進入経路を丁寧に精査し、基本の過失割合表をそのまま当てはめるのではなく、修正要素を主張することが重要です。」
もう1つの争点は、事故と解雇の因果関係でした。Aさんは長期の療養により派遣先を解雇されており、解雇理由証明書に「交通事故による出勤停止」が明記されていた点を踏まえ、休業損害・逸失利益の算定において事故と収入減少との因果関係を具体的に主張しました。開放骨折のように治療が長期化する傷病では、休業損害や解雇に至った経緯の立証が賠償額を左右する重要な要素になります。
交渉の結果、相手方が歩道からバックで車道へ進入した経緯を重視した過失割合の主張が認められ、当初相手方が主張していた割合よりも当方の過失は大きく圧縮されました。解雇と事故との因果関係についても、解雇理由証明書と就労状況の資料をもとに休業損害・逸失利益の算定に反映させることができ、保険会社からの当初提示額を上回る内容で示談に至っています(偽関節の等級評価をめぐる異議申し立ての経過は、大腿骨偽関節の記事で詳しく解説しています)。
症状固定のタイミングと治療費打ち切りへの対応
開放骨折は骨癒合の経過を長期間見守る必要があるため、保険会社から症状固定・治療費打ち切りを打診されるタイミングが、実際の治療の必要性より早すぎることがあります。偽関節の認定には、これ以上治療を続けても骨癒合が見込めない状態であることを、一定期間の経過観察(目安として受傷から6か月〜1年程度)を経て医学的に示す必要があるとされています。骨がまだ完全にはくっついていない段階で経過観察が不十分なまま症状固定に応じてしまうと、骨癒合プロセスが停止したことの立証が不足し、本来認定されるべき等級(偽関節等)が認められないおそれがあります。
打ち切りを打診された場合の対応は、腰椎圧迫骨折のケースと共通する部分が多くあります。交通事故の治療費打切りを通告されたときの対処法も参考にしてください。主治医との連携により症状固定時期を適切にコントロールすることが、後遺障害等級の適正な認定につながります。
治療費打ち切りを打診されている方へ
症状固定のタイミングは慰謝料・後遺障害等級に直結します。示談書にサインする前にご相談ください。
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弁護士に依頼するメリット
- 後遺障害診断書の記載内容を精査し、偽関節・変形障害等の見落としを防ぐ
- 症状固定のタイミングについて主治医と連携し、早すぎる打ち切りを防ぐ
- 過失割合について実況見分調書・ドライブレコーダー等を精査し、適正な割合を主張する
- 休業損害・解雇との因果関係など、複雑な争点を整理して立証する
- 慰謝料を自賠責基準・任意保険基準から弁護士基準へ引き上げる交渉を行う
よくある質問(FAQ)
Q. 開放骨折は必ず後遺障害が残りますか?
A. 必ず残るわけではありません。治療が奏功し、骨癒合や機能回復が良好であれば後遺障害が残らないケースもあります。ただし、感染症や偽関節のリスクが閉鎖骨折より高いことは事実であり、経過観察と適切なタイミングでの症状固定が重要です。
Q. 手術痕(傷あと)だけでも後遺障害として認められますか?
A. 露出面(上肢・下肢)に手のひら大以上の傷あとが残る場合、醜状障害として後遺障害等級が認定される可能性があります。手術で複数回切開している場合は、傷あとの大きさ・部位を写真で正確に記録しておくことが重要です。
Q. 症状固定後に骨がくっついた場合、等級はどうなりますか?
A. 症状固定後に再手術等で骨癒合が成立した場合、偽関節としての等級評価はなくなる可能性があります。ただし、可動域制限や神経症状が残れば、別の後遺障害として認定されることがあります。再手術のタイミングは弁護士・主治医と相談しながら判断することをおすすめします。
Q. 事故から何年以内に請求すればよいですか(時効)?
A. 2020年4月1日以降に発生した人身事故については、改正民法により時効期間が5年に延長されています(傷害部分は事故発生日から、後遺障害部分は症状固定日から起算するのが実務上の扱いです)。ただし物損部分は3年のままです。早めに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
Q. 弁護士費用特約がなくても依頼できますか?
A. 弁護士法人ブライトでは交通事故案件について完全成功報酬型の費用体系をご用意しています。費用の詳細は無料相談でご説明します。
Q. 労災(通勤中・業務中)の事故でも対応してもらえますか?
A. 通勤中・業務中の交通事故では、労災保険と自賠責保険(相手方への損害賠償請求)を併用できる場合があります。弊所では労災事故部とも連携し、両制度を踏まえた最大限の賠償を目指します。
開放骨折の後遺障害認定・賠償請求は弁護士法人ブライトへ
交通事故専任の松本洋明弁護士(弁護士登録2010年・修習63期)が等級認定から示談交渉・訴訟まで一貫してサポートします。
交通事故専用フリーダイヤル:0120-927-113(平日9〜18時)
まとめ:開放骨折で弁護士に相談すべき理由
- 開放骨折は感染リスク・偽関節リスクが高く、複数回手術による入院長期化で傷害慰謝料も高額になりやすい
- 残存する症状(偽関節・短縮障害・運動障害・醜状障害)によって後遺障害等級が変わる
- 症状固定のタイミングが早すぎると、本来認定されるべき等級を逃すおそれがある
- 過失割合・休業損害(解雇との因果関係を含む)など、争点が複雑になりやすい
- 慰謝料は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、弁護士基準が最も高額になりやすい
開放骨折・大腿骨骨折の後遺障害は弁護士法人ブライトへ
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