この記事の結論
- 重症熱中症(熱射病)は、高次脳機能障害・腎機能障害・体温調節障害などの後遺症を残すことがあります
- 高次脳機能障害は外から見えにくく、「性格が変わった」で片づけられてしまうことが最大の落とし穴です
- 画像所見が乏しくても、神経心理学的検査と日常生活状況報告で立証できる場合があります
- 後遺障害が残ると、逸失利益が損害額の中心になります。労災給付だけでは足りません
- 会社側は基礎疾患・加齢による素因減額を主張してきます。医学的な反論の準備が必要です
熱中症は「涼しいところで休めば治るもの」と思われがちです。しかし意識障害を伴うIII度(重症・熱射病)では、深部体温の上昇により中枢神経や腎臓が障害を受け、回復後も恒久的な後遺症が残ることがあります。
そして高次脳機能障害は、指の切断や失明と違って外から見えません。「怒りっぽくなった」「同じことを何度も聞く」「仕事の段取りが組めなくなった」という変化を、周囲が性格の問題や気の緩みとして受け取ってしまう——これが、適正な補償にたどり着けない最大の理由です。
このページでは、弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士が、熱中症の後遺障害の類型と、会社への損害賠償請求の組み立て方を解説します。
労災専用フリーダイヤル:0120-931-501(平日9:00〜18:00)
「後遺症といえるのか分からない」段階でご相談いただけます。
重症熱中症の後に残りうる後遺障害
| 後遺症の類型 | 現れ方 | 評価の着眼点 |
|---|---|---|
| 高次脳機能障害 | 記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害(易怒性・意欲低下) | 神経系統の機能又は精神の障害として、意思疎通能力・問題解決能力・持続力持久力・社会行動能力の程度から等級を検討します |
| 腎機能障害 | 急性腎障害からの慢性腎臓病への移行、透析導入 | 腎機能の低下の程度や透析の要否に応じて、じん臓の障害として等級を検討します |
| 体温調節障害・発汗障害 | 暑熱環境に耐えられない、汗をかけない | 従前の職種への復帰可否に直結するため、労働能力喪失の実質面での主張が重要になります |
| 神経症状 | 頭痛・めまい・倦怠感の持続 | 他覚的所見の有無により評価が分かれます |
| 醜状障害・瘢痕 | 横紋筋融解に伴う処置後の瘢痕等 | 部位と面積により別途評価されます |
後遺障害等級は、労災保険の障害等級表に基づき、症状固定後に労働基準監督署が認定します。個別の等級は症状の程度と検査結果によって異なるため、上表は着眼点を示すものです。

高次脳機能障害が見逃されやすい理由
- 本人に自覚がないことが多い(病識の低下そのものが症状です)
- 会話が成立するため、初対面では気づかれない
- 画像検査(MRI・CT)で明らかな異常が出ないことがある
- 熱中症は「一過性のもの」という先入観があり、脳外傷ほど疑われない
- 急性期の意識障害の記録が残っていないと、重症度の裏づけが取りにくい
したがって、ご家族が「事故の前と何かが違う」と感じている場合、その違和感こそが最も重要な出発点になります。
立証に必要な資料
- 急性期の記録:搬送時の意識レベル(JCS・GCS)、深部体温、血液検査所見
- 画像検査:MRI・CT。異常所見が乏しい場合でも、撮影しておくこと自体に意味があります
- 神経心理学的検査:WAIS(知能)、WMS-R(記憶)、TMT・かなひろい(注意)など
- 日常生活状況報告:ご家族が記載する、発症前後の変化の具体的な記録
- 職場からの聞き取り:復職後にどの業務ができなくなったかの具体例
- 後遺障害診断書:記載内容が不十分だと等級が下がります
とくに日常生活状況報告は、ご家族にしか書けない資料です。「毎日メモを見ないと予定が思い出せない」「同じ買い物を繰り返す」「些細なことで激高する」など、抽象的な評価ではなく具体的な出来事を書き残しておいてください。
MRIで異常が出ない場合の考え方については、高次脳機能障害でMRI異常なしと言われた場合の賠償請求でも解説しています。
後遺障害診断書を書いてもらう前にご相談いただくと、記載してもらうべき項目を整理できます。
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後遺障害が残ったときの損害額の中心は「逸失利益」
後遺障害が残ると、損害額の中心は慰謝料ではなく逸失利益になります。逸失利益は、基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数、という枠組みで算定するのが一般的です。
熱中症の高次脳機能障害では、次の点が実務上の争点になります。
- 減収がないから損害もない、と言えるか:職場の配慮で給与が維持されているだけの場合、将来の昇給機会の喪失や転職市場での不利益を主張します
- 労働能力喪失期間:症状固定時から67歳までが原則ですが、高次脳機能障害では争いになりにくい部類です
- 将来介護費:重度の場合、生涯にわたる介護費用が損害額の最大項目になります
- 素因減額:基礎疾患や加齢の寄与を会社側が主張してきます
この点は労災の後遺障害と逸失利益|給料が減っていなくても請求できるかでも詳しく解説しています。
会社の責任を問う際の中心的な争点
重症熱中症に至った経緯そのものが、会社の落ち度を示す事実になります。
| 確認する事項 | 根拠 |
|---|---|
| WBGT値を把握していたか | ガイドラインはWBGT指数計による随時把握を基本とし、冷房設備がなく風通しの悪い屋内作業等は実測が必要としています |
| 暑熱順化の期間を設けていたか | 7日以上かけて身体的負荷を増やす計画的なプログラムが求められ、新規入職者・連休明けは特に留意すべきとされています |
| 水分・塩分の摂取を確認していたか | 指導するだけでなく、摂取確認表の作成や巡視での確認まで求められています。安衛則617条は塩・飲料水の備付けを義務づけています |
| 作業中の巡視をしていたか | 健康状態を確認し、兆候が現れた場合に速やかに作業を中断させることが求められています |
| 報告体制と重篤化防止の手順があったか | 安衛則612条の2(令和7年6月1日施行)が体制整備・手順作成とその周知を義務づけています |
重症化して後遺障害が残ったという結果自体が、「早期発見・重篤化防止の仕組みが機能していなかった」ことを推認させる事情になりえます。
会社に何を求めるべきか、資料の有無から整理します。
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ご相談前と、ご相談後で変わること
| Before(ご相談前) | After(ブライトへのご相談後) |
|---|---|
| 「熱中症は治るもの」と言われ、後遺症として扱われていなかった | 神経心理学的検査を含む立証の道筋を、症状固定前に整理できた |
| 給与が維持されているため損害はないと思っていた | 減収がなくても逸失利益を主張しうる枠組みを踏まえ、資料を準備できた |
| 家族が感じている変化を、どう伝えればよいか分からなかった | 日常生活状況報告に書くべき具体例の整理ができた |
※上記は一般的な相談内容を参考に抽象化したものです。個別の案件の結果を保証するものではありません。
着手金0円・完全成功報酬でご相談いただける理由
後遺障害が残る事案は、立証に時間と費用がかかる一方、回収できる損害額も大きくなります。弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。
労災事故部統括の笹野皓平弁護士が、症状固定前の検査計画から、後遺障害診断書の記載内容の確認、等級認定への対応、会社側の素因減額主張への反論までを一貫して担当します。すでに等級が出ている場合の妥当性確認(セカンドオピニオン)にも対応しています。
相談料は何度でも無料・着手金無料です。何度でもご相談いただけますので、「まだ相談する段階ではないかもしれない」と迷われている段階でお声がけください。
※交渉・訴訟を行う際の実費(印紙代・郵送代・医学的意見書の作成費用等)は別途ご負担いただく場合があります。※事案の内容により、ご相談をお受けできない場合があります。※お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
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よくある質問(FAQ)
Q1:熱中症で本当に高次脳機能障害が残ることがあるのですか。
重症熱中症(熱射病)では深部体温の上昇により中枢神経が障害を受けることがあり、意識障害を伴った事案では回復後に記憶障害・注意障害等が残る可能性があります。急性期に意識障害があったかどうかが、重要な手がかりになります。
Q2:MRIで異常がないと言われました。それでも認定されますか。
画像所見が乏しくても、急性期の意識障害の記録、神経心理学的検査の結果、日常生活状況報告を組み合わせて立証できる場合があります。画像だけで諦める必要はありませんが、資料の準備には計画が必要です。
Q3:症状固定と言われました。もう何もできませんか。
症状固定は損害額を確定させるタイミングであり、むしろここからが損害賠償請求の本番です。ただし後遺障害診断書の記載内容が等級を左右するため、作成前にご相談いただくのが理想です。
Q4:腎臓が悪くなり透析が必要になりました。労災の対象ですか。
熱中症に伴う横紋筋融解から急性腎障害を経て慢性腎臓病に至る経過が医学的に説明できれば、業務起因性が認められる可能性があります。透析導入は損害額が大きくなるため、早期のご相談をお勧めします。
Q5:復職はしていますが、以前の仕事ができません。損害になりますか。
なりえます。給与が維持されていても、職務内容の変更、将来の昇進・昇給機会の喪失、転職市場での不利益といった形で労働能力の喪失を主張できる場合があります。
Q6:熱中症の労災でも、損害賠償請求や労災申請に期限(時効)はありますか?
あります。労災保険給付そのものの請求期限は、療養(補償)給付・休業(補償)給付が2年、障害(補償)給付・遺族(補償)給付が5年です。会社への損害賠償請求権については、2020年4月以降に生じた損害の場合、安全配慮義務違反(債務不履行)または人身損害の不法行為に基づく請求は、損害及び加害者を知った時から原則5年が目安です。あわせて権利を行使できる時から20年という客観的な期間制限もあります。不法行為構成(民法724条2号)はもともと20年、安全配慮義務違反構成(民法166条1項2号)は本来10年ですが、人の生命・身体の侵害の場合は民法167条により20年に延長されるため、いずれの構成でも20年が目安になります。2020年4月より前の事案には旧法が適用される場合もあり、判断は事案ごとに異なります。熱中症は「治ったように見えて後から後遺症が分かる」ことがあるため、お早めにご相談ください。
Q7:弁護士に依頼する費用が心配です。
弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています(※実費等が発生する場合があります)。相談料は何度でも無料ですので、費用面の不安だけで相談を諦める必要はありません。ただし、事案の内容によりご相談をお受けできない場合があります。お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
まとめ
- 重症熱中症は高次脳機能障害・腎機能障害・体温調節障害を残すことがあります
- 高次脳機能障害は外から見えず、性格の問題として片づけられやすいのが最大の落とし穴です
- 画像所見が乏しくても、神経心理学的検査と日常生活状況報告で立証できる場合があります
- 後遺障害が残ると逸失利益が損害額の中心になり、労災給付だけでは足りません
- 後遺障害診断書を書いてもらう前にご相談いただくのが、最も効果があります
ご家族が感じている「前と何かが違う」という違和感は、重要な情報です。弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士にご相談ください。
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