この記事の結論
- 遺族は、亡くなった方の損害賠償請求権を相続するとともに、遺族固有の慰謝料も請求できます
- 熱中症の死亡事案で争点になるのは、①救護・搬送の遅れ、②暑熱順化、③元請・派遣先の責任の3点です
- 労災保険の遺族(補償)給付だけでは、慰謝料と逸失利益の差額は埋まりません
- 会社側は基礎疾患による素因減額と本人の自己管理を主張してきます。反論の準備が必要です
- 熱中症の死亡は「初期症状の放置・対応の遅れ」が主因とされており、安衛則612条の2はまさにその点を義務化しています
職場で家族が熱中症で倒れ、そのまま亡くなった——このような事態に直面されたご遺族から、「会社は労災の手続はしてくれたが、それ以上のことは何も言ってこない」というお話をよく伺います。
労災保険の遺族(補償)給付は、あくまで公的な最低限の補償です。慰謝料は労災保険から一切支給されません。会社に安全配慮義務違反があった場合、遺族は会社に対して別途損害賠償を請求できます。
このページでは、弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士が、熱中症の死亡労災でご遺族が取るべき行動と、実際に争点となる論点を解説します。
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遺族が会社に請求できる損害
| 損害項目 | 内容 |
|---|---|
| 死亡慰謝料(本人分) | 亡くなった方の精神的損害。相続人が相続して請求します |
| 遺族固有の慰謝料 | 配偶者・子・父母等が、自らの精神的損害として請求できます(民法711条) |
| 死亡逸失利益 | 生きていれば得られたはずの収入。年齢・収入・生活費控除率をもとに算定します |
| 葬儀費用 | 社会通念上相当な範囲 |
| 死亡までの治療費・入院費 | 搬送後に入院期間があった場合 |
| 死亡までの慰謝料 | 意識不明のまま入院が続いた場合など |
労災保険からは遺族(補償)年金または一時金、葬祭料が支給されますが、慰謝料に対応する給付は存在しません。また逸失利益についても、遺族(補償)給付でカバーされるのは一部にとどまります。

熱中症の死亡事案で、実際に争点になる3つのこと
① 救護・搬送の遅れ
厚生労働省は、熱中症による死亡災害の原因の多くが「初期症状の放置、対応の遅れ」によるものだとしています。そのうえで令和7年6月1日施行の安衛則612条の2により、事業者に対して報告体制の整備・周知と重篤化を防ぐ措置の手順の作成・周知を義務づけました。
したがって、次の点が具体的な争点になります。
- 体調不良の申出を受ける連絡先・担当者が事業場ごとに定められていたか
- その体制が作業者に周知されていたか(周知の記録が残っているか)
- 作業からの離脱・身体冷却・救急搬送の手順が作成されていたか
- 実際に、異変が確認されてから救急要請までにどれだけの時間が経過したか
- 「少し休ませれば治る」という判断で、搬送が遅れなかったか
② 暑熱順化
ガイドラインは、暑熱順化(熱に慣れて環境に適応すること)の有無が発症リスクに大きく影響するとしたうえで、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を増やし、作業時間を調整して次第に長くしていく、計画的な暑熱順化プログラムを求めています。
そして次の場合は、通常、暑熱順化していないものとして扱う必要があるとされています。
- 梅雨から夏季にかけて、気温等が急に上昇した時期
- 新規入職者などが新たに当該作業を行う場合
- 長期間その作業から離れ、再び行う場合(連休明けを含む)
- いわゆるスポットワークなど、夏季に短期間就労する者
ガイドラインは、熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まり、3〜4週間後には完全に失われるとしています。入社直後・異動直後・連休明けの死亡事案では、この点が中心的な争点になります。
③ 元請・派遣先の責任
安衛則612条の2について、行政通達は、建設現場にみられるような混在作業で同一の作業場に複数の事業者がいる場合、元方事業者と関係請負人のいずれにも措置義務が生ずるとしています。
また、義務の対象となる「作業者」には、労働者だけでなく、同一の場所で当該作業に従事する労働者以外の者も含まれます。下請の作業員・一人親方・派遣労働者の熱中症死亡について、元請や作業場所を管理する事業者の責任を問える場合があります。
元請・派遣先を含めて、誰に請求できるかを整理します。
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ご遺族が早い段階で確保しておくべきもの
- 死亡診断書・死体検案書(死因と発症からの経過)
- 救急搬送の記録(119番の通報時刻・現場到着時刻・搬送先。消防への開示請求で入手できる場合があります)
- カルテ・入院記録(搬送時の深部体温・意識レベル・血液検査所見)
- 当日の勤務記録(タイムカード・作業日報・シフト表)
- 当日の気象記録(気象庁の観測値、環境省の暑さ指数)
- 同僚の証言(朝礼で体調確認があったか、異変にいつ気づいたか、誰に報告したか)
- 労基署の調査結果復命書(開示請求により入手できる場合があります)
会社が作成する災害調査報告書や、元請へ提出した事故報告書が存在することがあります。これらは時間の経過とともに入手が難しくなるため、早い段階での対応が重要です。
会社側が主張してくる減額の論理と、その反論
| 会社側の主張 | 反論の切り口 |
|---|---|
| 持病(高血圧・糖尿病・心疾患)があった | ガイドラインは、健康診断結果に基づく対応と、作業開始前の体調確認を事業者に求めています。持病を把握しながら配慮しなかったのであれば、むしろ会社側の落ち度です |
| 本人が水分を摂らなかった | 水分・塩分の摂取を指導し、摂取を確認するための表の作成や巡視での確認まで求められているのは事業者側です |
| 体調不良を申告しなかった | 申告しやすい報告体制を整備し周知することが、安衛則612条の2の義務そのものです |
| 高齢だった | 高年齢作業従事者については、作業時間の短縮・身体作業強度の低減を特に留意すべきとされています |
| 単独作業中で気づけなかった | ガイドラインは長時間の単独作業を避けるよう求めており、避けられない場合の状況確認体制まで言及しています |
会社側の主張にどう反論できるか、資料をもとに整理します。
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ご相談前と、ご相談後で変わること
| Before(ご相談前) | After(ブライトへのご相談後) |
|---|---|
| 会社から労災の手続だけ案内され、それ以上何を求められるのか分からなかった | 遺族固有の慰謝料を含む請求範囲を、損害項目ごとに把握できた |
| 「持病があったから」と言われ、諦めかけていた | 健康診断結果を踏まえた配慮義務の観点から、反論の組み立てができた |
| 下請だったので元請には言えないと思っていた | 混在作業における元方事業者の措置義務を踏まえ、請求先を検討できた |
※上記は一般的な相談内容を参考に抽象化したものです。個別の案件の結果を保証するものではありません。
着手金0円・完全成功報酬でご相談いただける理由
ご家族を亡くされた直後に、費用の心配までしていただく必要はありません。弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。
労災事故部統括の笹野皓平弁護士が、証拠の確保から、会社・元請の安全配慮義務違反の立証、逸失利益と慰謝料の算定、素因減額の主張への反論までを一貫して担当します。
相談料は何度でも無料・着手金無料です。何度でもご相談いただけますので、「まだ相談する段階ではないかもしれない」と迷われている段階でお声がけください。
※交渉・訴訟を行う際の実費(印紙代・郵送代・医学的意見書の作成費用等)は別途ご負担いただく場合があります。※事案の内容により、ご相談をお受けできない場合があります。※お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
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よくある質問(FAQ)
Q1:遺族が複数います。誰が請求できますか。
亡くなった方の損害賠償請求権は法定相続分に応じて相続人が承継します。加えて、配偶者・子・父母は民法711条により遺族固有の慰謝料を請求できます。兄弟姉妹等でも、事情によっては認められることがあります。
Q2:労災の遺族補償年金を受け取っています。会社への請求で差し引かれますか。
遺族(補償)年金は逸失利益など同じ性質の損害から控除されます(損益相殺)。ただし遺族特別支給金などの特別支給金は損益相殺の対象外です。慰謝料は労災保険に対応する給付がないため控除されません。
Q3:会社が「解決金」を提示してきました。応じてよいでしょうか。
署名の前に必ずご相談ください。死亡事案は損害額が高額になるため、提示額との差が大きくなりがちです。一度示談すると、後から追加請求することは原則としてできません。
Q4:亡くなった家族は下請の一人親方でした。労災も賠償も無理でしょうか。
一人親方でも特別加入していれば労災保険の対象になります。また、混在作業における措置義務は元方事業者にも生じ、義務の対象となる作業者には労働者以外の者も含まれます。請求先の検討は可能です。
Q5:会社を刑事告訴することはできますか。
業務上過失致死罪や労働安全衛生法違反として、告訴・告発を検討できる場合があります。刑事と民事は別の手続ですが、捜査で明らかになった事実が民事の立証に役立つことがあります。
Q6:熱中症の労災でも、損害賠償請求や労災申請に期限(時効)はありますか?
あります。労災保険給付そのものの請求期限は、療養(補償)給付・休業(補償)給付が2年、障害(補償)給付・遺族(補償)給付が5年です。会社への損害賠償請求権については、2020年4月以降に生じた損害の場合、安全配慮義務違反(債務不履行)または人身損害の不法行為に基づく請求は、損害及び加害者を知った時から原則5年が目安です。あわせて権利を行使できる時から20年という客観的な期間制限もあります。不法行為構成(民法724条2号)はもともと20年、安全配慮義務違反構成(民法166条1項2号)は本来10年ですが、人の生命・身体の侵害の場合は民法167条により20年に延長されるため、いずれの構成でも20年が目安になります。2020年4月より前の事案には旧法が適用される場合もあり、判断は事案ごとに異なります。熱中症は「治ったように見えて後から後遺症が分かる」ことがあるため、お早めにご相談ください。
Q7:弁護士に依頼する費用が心配です。
弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています(※実費等が発生する場合があります)。相談料は何度でも無料ですので、費用面の不安だけで相談を諦める必要はありません。ただし、事案の内容によりご相談をお受けできない場合があります。お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
まとめ
- 遺族は相続した請求権と遺族固有の慰謝料の双方を請求できます
- 熱中症の死亡は「初期症状の放置・対応の遅れ」が主因とされ、救護体制の不備が中心的な争点になります
- 暑熱順化(7日以上・連休明けは要注意)を怠っていたかどうかが問われます
- 混在作業では元方事業者にも措置義務が生じ、労働者以外の作業者も対象に含まれます
- 救急搬送記録・カルテ・気象記録・同僚の証言は、早い段階で確保してください
何から手をつければよいか分からない、という段階でご相談いただいて構いません。弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士にお問い合わせください。
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