この記事の結論
- 会社が熱中症を労災として扱わず、健康保険や傷病手当金で処理させる行為は「労災隠し」にあたる可能性があります
- 労災申請は労働者本人が単独でできます。会社の事業主証明がなくても、その旨を申し添えて労働基準監督署へ提出できます
- 会社は、休業4日以上の労災について労働者死傷病報告を労基署へ提出する義務を負い、これを怠ると労災隠しとして送検されることがあります
- 労災隠しの事実そのものが、会社が熱中症対策を怠っていた(=安全配慮義務違反)ことの間接証拠になります
- 重篤な熱中症では、労災保険とは別に会社へ慰謝料・逸失利益を請求できる場合があります
「熱中症くらいで労災は大げさだ」「うちは労災を使わない方針だ」「健康保険で受診してくれ」——職場で倒れて搬送されたあとに、会社からこう言われて戸惑う方が少なくありません。
熱中症は、転落や機械への挟まれと違って「本人の体調管理の問題」に見せかけやすい労災です。そのため、会社が労災であることを認めず、健康保険や傷病手当金で処理してしまう例が実際に起きています。しかし、それは労働者にとって大きな不利益であるだけでなく、会社にとっても法令違反となりうる行為です。
このページでは、弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士が、熱中症の労災隠しの見抜き方と、そこから会社への損害賠償請求につなげる道筋を解説します。
労災専用フリーダイヤル:0120-931-501(平日9:00〜18:00)
「会社が労災にしてくれない」段階からご相談いただけます。
熱中症で起きる「労災隠し」の典型パターン
労災隠しは、あからさまな隠蔽よりも「善意の助言」の形をとることのほうが多いのが実情です。次のように言われた場合は、労災隠しを疑ってください。
| 会社から言われること | 実際に何が起きているか |
|---|---|
| 「健康保険証で受診して」 | 労災であれば健康保険は使えません。療養(補償)給付で自己負担なく治療できるはずが、3割負担になっています |
| 「傷病手当金を申請して」 | 本来は休業(補償)給付(給付基礎日額の6割+特別支給金2割)の対象です。傷病手当金(標準報酬日額の3分の2)に付け替えられています |
| 「有給休暇で処理して」 | 労災による休業を、労働者自身の有給を消費させる形にすり替えています |
| 「熱中症は労災にならない」 | 業務中に暑熱な場所で発症した熱中症は、業務上疾病として認定されるのが原則です |
| 「治療費は会社が出すから労災にしないで」 | 見舞金名目の少額支払いで、労災給付と会社への損害賠償の双方を放棄させる形になりがちです |
| 「労基署に報告するほどではない」 | 休業4日以上なら遅滞なく、休業1〜3日でも四半期ごとに労働者死傷病報告の提出義務があります。報告しないこと自体が違反です |

なぜ会社は熱中症を労災にしたがらないのか
会社側の動機を理解しておくと、交渉の見通しが立てやすくなります。実務上よく見られるのは次の理由です。
- 労働基準監督署の調査(臨検)が入ることを避けたい
- 元請や取引先に対する無災害記録が途切れることを避けたい(建設業・製造業で特に強く働きます)
- 労災保険のメリット制により、保険料が上がると考えている(実際には熱中症の1件で直ちに大きく上がるとは限りません)
- 熱中症対策を実施していなかった事実が、労基署の調査で明るみに出ることを恐れている
最後の点が、労働者側にとって重要です。会社が労災隠しに走る理由そのものが、「対策を怠っていた自覚がある」ことの表れである場合が少なくありません。
労災申請は、会社の協力がなくてもできる
労災保険の給付請求は、被災した労働者本人(死亡の場合は遺族)が労働基準監督署に対して行うものです。会社が代行してくれる運用が一般的なだけで、会社の同意は要件ではありません。
- 受診と診断書の確保:熱中症の診断名(熱中症・熱射病・熱疲労等)と、発症日・搬送の有無をカルテに残してもらう
- 請求書の入手:療養(補償)給付は様式第5号(労災指定医療機関の場合)、休業(補償)給付は様式第8号
- 事業主証明欄:会社が記入を拒む場合は空欄のまま、拒否された経緯を記した書面を添えて提出できます
- 労基署へ提出:会社を管轄する労働基準監督署へ。証明拒否があった場合、労基署が会社に事実確認を行います
- 調査結果復命書:労基署の調査結果は、後の損害賠償請求で有力な証拠になります
労災申請の書式・記入例については、労災認定・会社対応ハブもあわせてご覧ください。
会社が事業主証明を拒んでいる場合も、労災申請は進められます。
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労働者死傷病報告の不提出=労災隠しとして送検されることがある
会社は、労働者が業務上の負傷・疾病により死亡または4日以上休業したときは、遅滞なく労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生法100条、安衛則97条1項)。休業が1〜3日にとどまる場合も、四半期ごとにまとめて報告する義務があります(同条2項)。熱中症も業務上の疾病であり、いずれもこの報告義務の対象です。
この報告を提出しない、あるいは虚偽の内容で提出する行為は労災隠しと呼ばれ、労働安全衛生法違反として司法処分(送検)の対象になります。厚生労働省・各労働局も、労災隠しについては司法処分を含め厳正に対処する方針を繰り返し示しています。
労災隠しは、会社への損害賠償請求にどう効くか
ここが、労働者側にとって最も実利のある論点です。労災隠しは単なる手続違反にとどまらず、民事の損害賠償請求における「会社の落ち度」を裏づける事情として機能します。
| 労災隠しの態様 | 損害賠償請求で持つ意味 |
|---|---|
| 死傷病報告を提出していない | 法令遵守意識の低さを示す事情。安全配慮義務の履行水準を争ううえで不利な事実として働きます |
| WBGT値の記録が存在しない | 作業環境の把握義務を果たしていなかったことの端的な証拠になります |
| 健康保険での受診を指示した | 会社が「業務起因性を認識していた」ことの裏返しと評価されうる場面があります |
| 体調不良の申出を受けながら作業を継続させた | 安衛則612条の2が求める報告体制・重篤化防止措置の不履行に直結します |
| 見舞金で示談を求めてきた | 適正な賠償額との差額が明らかになれば、示談の効力を争う余地が生じます |
つまり、労災隠しに遭ったこと自体が、あなたの損害賠償請求を有利にする材料になりえます。泣き寝入りせず、事実を記録に残すことが重要です。
いま、証拠として確保しておくべきもの
- 発症当日の気温・WBGT値(会社に記録がなければ、環境省の熱中症予防情報サイトや気象庁の観測値で当日の状況を残す)
- 作業日報・タイムカード・シフト表(連続作業時間と休憩の実態)
- 会社とのやりとり(「健康保険で」「労災にしない」と言われたメール・LINE・録音)
- 診断書・救急搬送記録・カルテ(重症度の判定に直結します)
- 同僚の証言(朝礼で体調確認があったか、水分補給の時間が取れていたか)
- 休憩場所・空調設備の写真(冷房が故障していた、日陰がなかった等)
会社の管理下にある資料は、時間が経つと廃棄されることがあります。弁護士が介入すると、証拠保全や文書提出命令といった手続を検討できます。
労災隠しの証拠は、時間が経つほど失われます。
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ご相談前と、ご相談後で変わること
| Before(ご相談前) | After(ブライトへのご相談後) |
|---|---|
| 「健康保険で受診して」と言われ、治療費を3割自己負担していた | 労災であることを整理し、療養(補償)給付への切替えを検討できた |
| 傷病手当金で処理され、休業補償との差額に気づいていなかった | 休業(補償)給付と特別支給金の水準を踏まえ、不足分を把握できた |
| 会社が労基署に報告していないことを「そういうものだ」と思っていた | 報告義務違反という事実を、損害賠償請求の材料として位置づけられた |
※上記は一般的な相談内容を参考に抽象化したものです。個別の案件の結果を保証するものではありません。
着手金0円・完全成功報酬でご相談いただける理由
熱中症の労災隠しは、被災された方が「会社と揉めたくない」という気持ちから声を上げにくい類型です。弁護士法人ブライトでは、経済的な負担を理由に相談を諦めることがないよう、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。
労災事故部統括の笹野皓平弁護士が、労災申請の立て直しから、会社の安全配慮義務違反の立証、慰謝料・逸失利益の算定までを一貫して担当します。ブライトは企業側の法務も担っているため、会社がどのような防御を組み立てるかを踏まえた対応が可能です。
相談料は何度でも無料・着手金無料です。何度でもご相談いただけますので、「まだ相談する段階ではないかもしれない」と迷われている段階でお声がけください。
※交渉・訴訟を行う際の実費(印紙代・郵送代・医学的意見書の作成費用等)は別途ご負担いただく場合があります。※事案の内容により、ご相談をお受けできない場合があります。※お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
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よくある質問(FAQ)
Q1:会社に「労災にすると迷惑がかかる」と言われました。断ってよいのでしょうか。
労災保険は労働者のための制度であり、給付を受けることは正当な権利です。労災申請は労働者本人が単独でできますので、会社の同意は必要ありません。申請したことを理由とする不利益取扱いは許されません。
Q2:すでに健康保険を使って治療してしまいました。今から労災に切り替えられますか。
切替えは可能な場合があります。加入している健康保険の保険者に労災であった旨を連絡し、いったん医療費を精算したうえで労災保険へ請求する流れになるのが一般的です。手続が煩雑になるため、早めにご相談ください。
Q3:傷病手当金と休業(補償)給付はどちらが有利ですか。
一般に労災の休業(補償)給付のほうが手厚くなります。休業(補償)給付は給付基礎日額の6割に加え、社会復帰促進等事業から休業特別支給金2割が上乗せされます。両者を重複して受けることはできません。
Q4:会社が「見舞金10万円で示談してほしい」と言ってきました。
署名する前に必ずご相談ください。重篤な熱中症では、慰謝料・逸失利益を含めた適正な賠償額が見舞金と大きく異なることがあります。一度示談書に署名すると、後から追加請求することが難しくなります。
Q5:労災隠しを労基署に相談すると、会社に自分だと分かってしまいませんか。
労働基準監督署への申告について、申告を理由とする解雇その他の不利益取扱いは労働基準法104条2項で禁止されています。匿名での情報提供を受け付ける運用もあります。不安がある場合は、弁護士を通じて進める方法もご検討ください。
Q6:熱中症の労災でも、損害賠償請求や労災申請に期限(時効)はありますか?
あります。労災保険給付そのものの請求期限は、療養(補償)給付・休業(補償)給付が2年、障害(補償)給付・遺族(補償)給付が5年です。会社への損害賠償請求権については、2020年4月以降に生じた損害の場合、安全配慮義務違反(債務不履行)または人身損害の不法行為に基づく請求は、損害及び加害者を知った時から原則5年が目安です。あわせて権利を行使できる時から20年という客観的な期間制限もあります。不法行為構成(民法724条2号)はもともと20年、安全配慮義務違反構成(民法166条1項2号)は本来10年ですが、人の生命・身体の侵害の場合は民法167条により20年に延長されるため、いずれの構成でも20年が目安になります。2020年4月より前の事案には旧法が適用される場合もあり、判断は事案ごとに異なります。熱中症は「治ったように見えて後から後遺症が分かる」ことがあるため、お早めにご相談ください。
Q7:弁護士に依頼する費用が心配です。
弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています(※実費等が発生する場合があります)。相談料は何度でも無料ですので、費用面の不安だけで相談を諦める必要はありません。ただし、事案の内容によりご相談をお受けできない場合があります。お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。
まとめ
- 熱中症を健康保険・傷病手当金・有給で処理させる行為は労災隠しの疑いがあります
- 労災申請は労働者本人が単独でできます。事業主証明の拒否は障害になりません
- 休業4日以上の労働者死傷病報告を怠ることは労働安全衛生法違反であり、送検事例もあります
- 労災隠しの事実は、会社の安全配慮義務違反を裏づける材料として損害賠償請求に活かせます
- 証拠(WBGT記録・作業日報・会社とのやりとり)は、早い段階で確保してください
「会社が労災にしてくれない」という段階からご相談いただけます。弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士にお問い合わせください。
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