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強風・悪天候のなかでの作業と会社の責任|作業中止義務と安全配慮義務違反

笹野皓平 弁護士

この記事の執筆者

笹野 皓平(ささの こうへい)

弁護士法人ブライト|労災事故部統括/パートナー弁護士

大阪弁護士会登録(登録2011年・修習64期)/労災の損害賠償請求を数多く手がける

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士

大阪弁護士会登録(登録2006年・修習59期)

この記事の結論

  • 労働安全衛生規則は、悪天候のときに作業を止めること自体を会社の義務として定めています。「風が強かった」ことは会社の免責事由ではありません
  • 作業中止義務を定める条文には、「風速◯メートル」という数値の基準が置かれていません。基準は「危険が予想されるとき」という規範です
  • 数値が出てくるのは、クレーンやエレベーターなどの機械そのものを倒壊・逸走から守る条文だけです。人を守る条文とは目的が違います
  • したがって「あの日は風速◯メートルだったから中止義務はなかった」という反論は、条文の建て付けからして成り立ちません
  • 実務で問われるのは、会社が「止める判断をする仕組み」を持っていたかです。現場の一人ひとりに判断を丸投げしていた体制自体が、安全配慮義務違反として問題になります

「今日は風が強いから危ないと思ったけれど、工期が押していて言い出せなかった」「上に確認したら、そのまま続けろと言われた」「中止するかどうかは現場の判断だと言われていた」——。

悪天候の日に起きた労災について、被災された方やご家族から伺うお話は、驚くほど共通しています。多くの方が抱えているのは、「危ないと分かっていたのに止められなかった自分にも責任があるのではないか」という思いです。

しかし、労働安全衛生法令の建て付けは、その思いとは逆向きです。悪天候のなかで作業を止める判断は、作業者ではなく、事業者(会社)が負う義務として定められています。

このページでは、弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士が、強風・悪天候のなかでの作業と会社の責任について、条文の原文に沿って解説します。

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悪天候時の作業中止は、会社の義務として条文に書かれている

労働安全衛生規則には、作業の種類ごとに「悪天候のときは作業を行わせない/中止する」旨の規定が置かれています。いずれも主語は事業者であり、作業者ではありません。

条文 対象作業 定められている内容
安衛則522条(悪天候時の作業禁止) 高さが2メートル以上の箇所での作業 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない
安衛則564条1項3号 つり足場・張出し足場・高さ2メートル以上の足場の組立て・解体・変更 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止すること
安衛則245条2号 型わく支保工の組立て・解体 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせないこと
安衛則517条の3第2号 建築物等の鉄骨の組立て等 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止すること
安衛則517条の11第2号 木造建築物の組立て等 同上(作業を中止すること)
安衛則517条の15第2号 コンクリート造の工作物の解体等 同上(作業を中止すること)
クレーン則31条の2(強風時の作業中止) クレーンに係る作業 強風のため、クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止しなければならない
クレーン則74条の3(強風時の作業中止) 移動式クレーンに係る作業 同上(作業を中止しなければならない)

本記事の法令は、労働安全衛生規則・クレーン等安全規則・民法・労働者災害補償保険法の現行条文(2026年8月時点)に基づいて記載しています。個別の事案にどの条文が適用されるかは、作業の内容・現場の状況によって異なります。

条文には「風速◯メートル」という基準が書かれていない

ここが、この論点の核心です。

上の表に挙げた作業中止義務の条文を通して読むと、ひとつも数値の閾値が置かれていないことに気づきます。書かれているのは一貫して「危険が予想されるとき」という規範だけです。

多くの記事は「強風とは風速10メートル以上を指します」と書いて終わります。しかし、その数値は作業中止義務の条文そのものには存在しません。条文が採用しているのは、数値の一律基準ではなく、その現場・その作業・その物の状態に照らして危険が予想されるかという判断枠組みです。

悪天候時の作業中止義務を定める労働安全衛生規則の条文には数値基準がなく、数値基準は機械の倒壊防止規定にのみ置かれていることを示した図解

数値が出てくるのは「機械を守る条文」だけ

では、風速の数値がまったく出てこないのかというと、そうではありません。クレーン等安全規則には、はっきりと数値を書いた条文があります。ただし、その目的は人ではなく設備を守ることです。

条文 数値 何のための規定か
クレーン則31条(暴風時における逸走の防止) 瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が吹くおそれのあるとき 屋外の走行クレーンについて逸走防止装置を作用させる等、クレーンが逸走しないようにするための規定
クレーン則37条(暴風後等の点検) 瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が吹いた後 作業前にクレーン各部の異常の有無を点検する規定
クレーン則152条(暴風時の措置) 瞬間風速が毎秒35メートルをこえる風が吹くおそれのあるとき 屋外のエレベーターについて控えの数を増す等、倒壊を防止するための規定
クレーン則189条(暴風時の措置) 瞬間風速が毎秒35メートルをこえる風が吹くおそれのあるとき 建設用リフトについて控えの数を増す等、倒壊を防止するための規定

整理すると、こうなります。

  • 人を守る条文(作業中止義務)=数値の閾値なし。「危険が予想されるとき」で判断する
  • 機械を守る条文(逸走・倒壊防止、点検)=瞬間風速30m/s・35m/s という数値がある

この違いを押さえておくと、会社側の主張の当否を自分で判断できるようになります。

だから「風速◯メートルだったので義務はなかった」は成り立たない

労災の交渉で、会社側からこう言われることがあります。

  • 「気象記録では平均風速◯メートルで、基準を超えていない」
  • 「注意報も警報も出ていなかった」
  • 「他の現場も同じ日に作業していた」

しかし、作業中止義務の条文には、そもそも超えるべき「基準値」が置かれていません。問われるのはその作業について危険が予想されたかどうかです。同じ風でも、地上での荷降ろしと、高さのある型枠や仮囲いの近くでの作業とでは、危険の度合いがまったく違います。

また、注意報や警報の有無は、判断材料の一つにはなっても、義務の発動要件ではありません。ビル風や谷筋の吹き下ろしのように、観測所の数値と現場の実際の風が一致しないことは珍しくありません。

「行政解釈の目安を下回っていた」と言われたら

会社側から、行政解釈で示されている風速等の目安を引き合いに出して「その水準に達していなかったから中止義務はなかった」と反論されることがあります。

しかし、そうした目安は作業中止義務の条文の要件として書かれているものではありません。条文が求めているのは、あくまで「その作業の実施について危険が予想されるとき」に止めることです。目安を下回っていても、扱っている物の形状や重量、高さ、支持の状態によっては危険が予想されることは十分にあり得ます。

さらに、そもそも行政上の基準を守っていることは、民事上の安全配慮義務を尽くしたことを意味しません。行政法規は最低限の水準を示すものであり、民事の損害賠償では、その現場で具体的にどこまで配慮すべきだったかが問われます。

むしろ交渉で効くのは、「会社は何を見て判断していたのか」という問いです。気象情報を確認していなかった、確認した記録がない、現場に風速計がなく体感で判断していた——こうした事実が出てくると、会社は「危険は予想できなかった」と言い切れなくなります。

中止判断を現場任せにしていた体制そのものが問題になる

実務で最も多く見るのが、この形です。

会社は「危ないと思ったら中止してよいと言ってあった」と主張します。しかし現場では、工期・元請との関係・人員配置の都合から、作業者が自分の判断で止めることは事実上できません。これは制度の運用として破綻しています。

安全配慮義務の観点から問うべきなのは、次の点です。

  • 誰が中止を決める権限を持っていたのか(現場代理人か、作業主任者か、本社か)
  • その権限者は、その日その時間、現場にいたのか
  • 中止の判断基準は、あらかじめ文書で定められていたのか(施工計画書・作業手順書・KY記録)
  • 気象情報を確認する担当と手順は決まっていたのか
  • 過去に中止した実績はあるのか(一度も止めたことがない現場は、事実上「止めない運用」です)
  • 中止を申し出た作業者が不利益を受けていなかったか

「危ないと思ったら言ってくれてよかったのに」という会社の言い分は、止める仕組みを作らなかったことの言い換えにすぎない場合が少なくありません。

「自分が言い出せなかったのが悪い」と思う必要はありません。
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悪天候が過ぎた後にも、会社には点検義務がある

見落とされがちですが、悪天候の影響は、風がやんだ後にも残ります。

安衛則567条2項は、強風・大雨・大雪等の悪天候、または中震以上の地震の後に足場での作業を行うときは、点検者を指名して、作業開始前に床材の損傷、緊結部・接続部・取付部の緩み、脚部の沈下・滑動、筋かい・控え・壁つなぎ等の補強材の取付状態などを点検させ、異常があれば直ちに補修しなければならないと定めています。同条3項は、点検の結果と点検者の氏名、補修等の措置を講じた場合はその内容を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまで保存することも求めています。つまり「誰が点検したか」まで記録に残っていなければならない建て付けです。

クレーン則37条も、瞬間風速30メートルを超える風が吹いた後、または中震以上の地震の後に作業を行うときは、あらかじめクレーン各部の異常の有無を点検しなければならないと定めています。

したがって、「風がやんだ翌日に事故が起きた」場合でも、悪天候は無関係ではありません。点検を行った記録が存在するか、点検者が指名されていたかは、必ず確認すべき事項です。記録の不存在は、それ自体が有力な事実になります。

会社の反論と、その崩し方

会社の主張 検討すべき反論の方向
「気象記録では基準の風速に達していない」 作業中止義務の条文に数値の閾値はありません。判断基準は「危険が予想されるとき」です。また、観測所の値と現場の風は一致しません
「注意報も出ていなかった」 注意報の発表は義務の発動要件ではありません。会社が何を確認して判断したかを問います
「危ないと思ったら止めてよいと伝えていた」 止める権限者・判断基準・手順が定められていたかを問います。過去に一度も中止した実績がなければ、実質的に止めない運用です
「本人が続けると言った」 作業者の同意は、事業者の義務を免除しません。工期や人間関係の下での「同意」がどこまで自由な意思だったかも問題になります
「不可抗力の突風だった」 予見可能性の問題です。当日の気象経過、周辺での類似事故、事前の指摘の有無を検証します。また、倒れたのが足場・仮囲い・塀など土地に接着した工作物であれば、設置または保存の瑕疵を問う工作物責任(民法717条)という別ルートがあります。この構成では、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が責任を負い、所有者には条文上の免責がありません
「風がやんだ後の事故だから天候は関係ない」 悪天候後の点検義務があります(安衛則567条2項・クレーン則37条)。点検記録の不存在は義務違反を示します

会社の反論に、条文で返すことができます。
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【ブライトのポリシー】

悪天候の労災でご相談に来られる方の多くが、まず「自分が止めなかったのが悪い」とおっしゃいます。しかし法令は、止める判断を作業者ではなく事業者の義務として書いています。私たちが最初にする仕事は、賠償額の計算ではなく、この責任の向きを、条文に沿って正しく置き直すことです。

「ブライトは「言い出せなかった本人の責任」で終わらせない。止める仕組みを作らなかった会社の責任として構成し直す。」

これが、ブライトが悪天候下の労災事故で一貫して大切にしている考え方です。

確保しておくべき証拠

証拠 何を示すか
当日の気象記録(気象庁の観測値) 後からでも取得できます。ただし観測所の値と現場の風は違うため、これ単体では足りません
現場の写真・動画 養生シートのはためき、資材の傾き、周囲の樹木の揺れなど、現場の実際の風況を示します
作業指示・朝礼の記録、KY(危険予知)記録 その日の風について何が議論されたか、あるいは何も議論されなかったかが分かります
施工計画書・作業手順書 中止基準と権限者が定められていたかが分かります。定めがないこと自体が重要です
点検記録(悪天候後) 安衛則567条3項は記録と保存を求めています。存在しなければ義務違反の可能性があります
同僚・他社作業員の証言 「あの日は危ないと皆が言っていた」「以前から風が強い日でも止めなかった」は予見可能性の核心です
会社とのやりとり(メール・チャット・録音) 「続けてくれ」という指示が残っていれば決定的です
労働者死傷病報告・労基署の調査記録 会社が事故原因をどう説明したかが分かります。行政文書の開示請求で入手できる場合があります

在職中の同僚は、時間が経つほど協力しにくくなります。会社に残る記録も、保存期間を過ぎれば廃棄されます。動く時期が結果を分けます。

記録が消える前に、確保すべきものを整理します。
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解決事例(抽象化)

以下は、複数のご相談内容をもとに構成した一般的な事例です。

事例 経過
風の強い日の高所作業中に被災。会社は「本人が安全措置を守らなかった」と主張し、当初は責任を否定 当日の作業指示書と同僚の証言から、悪天候下での作業継続が会社の指示によるものであったことを整理。後遺障害等級を踏まえた金額で示談
強風で仮設物が倒れ下敷きに。会社は「気象台の記録では大した風ではない」と反論 作業中止義務の条文に数値基準がないこと、中止権限者が現場に不在だったこと、施工計画書に中止基準の定めがなかったことを指摘して交渉
悪天候の翌日、緩んでいた足場材が落下して受傷。会社は「天候は無関係」と主張 安衛則567条2項の悪天候後の点検義務と、点検記録が存在しないことを指摘。点検体制の不備を安全配慮義務違反として構成

※上記は複数のご相談内容をもとに抽象化した一般的な事例で、実在の事件・実在の金額ではありません。同様の結果を保証するものではありません。

ご相談前と、ご相談後で変わること

Before(ご相談前) After(ブライトへのご相談後)
「危ないと言えなかった自分が悪い」と思い込んでいた 作業を止める義務が会社側にあることを条文で確認でき、責任の所在が整理できた
「気象台の記録では大した風ではない」と言われ、反論できなかった 作業中止義務の条文に数値基準がないことを踏まえ、争う土俵を作れた
会社の「危ないなら止めてよかったのに」に納得しかけていた 止める仕組み(権限者・基準・手順)の不在こそが問題だと分かった
天候が原因なら不可抗力で諦めるしかないと考えていた 悪天候は免責事由ではなく、会社の義務が発動する場面だと理解できた

※上記は一般的な相談内容を参考に抽象化したものです。個別の案件の結果を保証するものではありません。

着手金0円・完全成功報酬でご相談いただける理由

悪天候下の労災は、「本人にも落ち度があったのではないか」と評価されやすく、ご本人が請求をためらいやすい類型です。弁護士法人ブライトでは、経済的な負担を理由にご相談を諦めることがないよう、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています。

労災事故部統括の笹野皓平弁護士が、条文に沿った責任構成の設計から、証拠の確保、過失相殺への反論、賠償額の算定までを一貫して担当します。

相談料は何度でも無料・着手金無料です。何度でもご相談いただけますので、「まだ相談する段階ではないかもしれない」と迷われている段階でお声がけください。

※交渉・訴訟を行う際の実費(印紙代・郵送代・医学的意見書の作成費用等)は別途ご負担いただく場合があります。※事案の内容により、ご相談をお受けできない場合があります。※お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。

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よくある質問(FAQ)

Q1:労働安全衛生規則の「強風」とは、具体的に風速何メートルのことですか。

作業中止義務を定めた条文(安衛則522条・564条1項3号・245条2号・517条の3第2号など)には、風速の数値が書かれていません。条文の基準は「危険が予想されるとき」です。数値が出てくるのは、クレーン則31条(走行クレーンの逸走防止・瞬間風速30メートル超)や同152条・189条(エレベーター・建設用リフトの倒壊防止・瞬間風速35メートル超)など、機械そのものを守るための条文です。目的が違うため、これらの数値を「人の作業を止める基準」として持ち出すのは筋違いです。

Q2:注意報・警報が出ていなければ、作業を続けても問題ないのですか。

そうではありません。注意報や警報の発表は、作業中止義務の発動要件ではありません。気象情報は判断材料の一つですが、最終的には、その現場・その作業について危険が予想されたかどうかで判断されます。

Q3:「危ないと思ったら止めてよい」と言われていました。止めなかった自分の責任になりますか。

作業者側の判断が過失相殺として考慮されることはありますが、それによって会社の義務が消えるわけではありません。むしろ、止める権限者・判断基準・手順を定めず、実際に止められる状況を作らなかったこと自体が、会社側の問題として評価されるべき場面です。

Q4:風がやんだ翌日の事故です。天候は関係ないと言われました。

関係します。安衛則567条2項は、悪天候や中震以上の地震の後に足場での作業を行うときは、点検者を指名して作業開始前に点検させ、異常があれば直ちに補修することを求めています。同条3項は記録と保存も義務づけています。クレーンについても、クレーン則37条に同趣旨の点検義務があります。点検記録が存在しないことは、それ自体が有力な事実になります。

Q5:元請から「今日は作業を進めてくれ」と言われていた場合、元請にも責任を問えますか。

問える場合があります。現場を統括管理する立場にある元請が、危険が予想される状況で作業の続行を指示していたのであれば、責任を検討する余地があります。詳しくはとび職・鉄筋工の転落で元請に損害賠償請求|重層下請け構造で責任を問う方法をご覧ください。

Q6:労災保険がおりました。それでも会社に請求できるのですか?

できます。労災保険は国が行う無過失の補償で、会社に落ち度があったかどうかを問いません。これに対して会社への損害賠償請求は、会社の落ち度(安全配慮義務違反など)を問う民事の請求で、制度が別です。とくに慰謝料は労災保険から一切支給されませんので、この請求でしか回収できません。休業損害についても差額が残ります。会社に請求できる休業損害から差し引かれる(損益相殺される)のは休業(補償)給付の6割部分で、社会復帰促進等事業から支給される休業特別支給金の2割部分は、損害を填補する性質のものではないため、原則として差し引かれません。この点は誤解されやすいところです。なお、同じ性質の損害について二重に受け取ることはできず、重なる部分は調整されます。

Q7:労災で長期に休んでいます。会社から解雇されないか不安です。

労働基準法19条1項は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇してはならないと定めています。したがって、その期間の解雇は原則として認められません。ただし、同項ただし書により、使用者が労働基準法81条の打切補償を支払う場合や、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(この場合は行政官庁の認定が必要です)は例外とされています。退職を勧められている、休職期間の満了を告げられているといった段階でも、結論を急がずにご相談ください。

Q8:会社への損害賠償請求や労災申請に、期限(時効)はありますか?

あります。しかも制度ごとに年数が違うので、ひとまとめに考えないでください。労災保険給付そのものの請求期限は、労働者災害補償保険法42条により、療養(補償)給付・休業(補償)給付・葬祭料・介護(補償)給付が2年、障害(補償)給付・遺族(補償)給付が5年です。これとは別に、会社への損害賠償請求権は、2020年4月1日以降に生じた人身損害であれば、不法行為構成で損害および加害者を知った時から5年(民法724条の2)、安全配慮義務違反(債務不履行)構成でも権利を行使できることを知った時から5年(民法166条1項1号)が目安です。あわせて20年という期間制限もありますが、起算点が構成によって異なります。安全配慮義務違反(債務不履行)構成は権利を行使することができる時から20年(民法166条1項2号・167条)、不法行為構成は不法行為の時から20年(民法724条2号)です。2020年4月より前の事案には旧法が適用される場合があり、判断は事案ごとに異なります。いずれにしても、時効よりずっと手前で証拠のほうが先に失われますので、お早めにご相談ください。

Q9:弁護士に依頼する費用が心配です。

弁護士法人ブライトでは、労災の会社への損害賠償請求について着手金0円・完全成功報酬制で対応しています(※交渉・訴訟の実費等が発生する場合があります)。相談料は何度でも無料ですので、費用面の不安だけで相談を諦める必要はありません。ただし、事案の内容によりご相談をお受けできない場合があります。お電話でのご相談の受付は平日9:00〜18:00です。

まとめ

  • 悪天候時の作業中止は、作業者ではなく会社(事業者)の義務として条文に書かれています
  • 作業中止義務の条文には風速の数値基準がありません。基準は「危険が予想されるとき」です
  • 数値が出てくるのは、クレーン・エレベーター等の機械を倒壊・逸走から守る条文だけです
  • 実務で問われるのは「止める判断をする仕組み」を会社が持っていたかです
  • 悪天候の後には点検義務もあります(安衛則567条2項・クレーン則37条)。記録の不存在は重要な事実です

「あの日、止めていれば」というお気持ちを、会社の責任という形に置き直すところからご一緒します。弁護士法人ブライトの労災事故部統括・笹野皓平弁護士にご相談ください。

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笹野 皓平

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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