問題社員対応を弁護士に依頼すると何が変わるか|社長が自分でやった場合との違い【大阪・使用者側】

問題社員対応を弁護士に依頼すると何が変わるか|社長が自分でやった場合との違い【大阪・使用者側】


和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

「もう限界だ。あの社員をどうにかしたい」——そう思ってから、実際に弁護士へ相談するまでには、たいてい数ヶ月から一年の空白があります。その間、社長は自分でなんとかしようとします。呼び出して注意する。周りの社員から話を聞く。就業規則をめくる。それでも変わらないので、もう一度呼び出す。この繰り返しです。

問題は、その数ヶ月のあいだに「後で使える材料」がほとんど残らないことです。そして材料が無い状態から動くと、打てる手が一気に狭くなります。この記事では、問題社員対応を弁護士に依頼したときに、会社の実務が具体的にどう変わるのかを、社長が自分で対応した場合と並べて整理します。「弁護士に頼めば辞めさせられる」といった話ではなく、手順・記録・交渉窓口・出口の設計が、どの時点でどう変わるのかという実務の話です。

なお、顧問弁護士を入れること自体のメリットや活用シーンについては、問題社員対応で顧問弁護士を使うメリットで別途まとめています。本記事はその手前、「頼むと実務が何から何へ変わるのか」に絞っています。

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社長が自分で対応したときに、いちばん多く起きること

大阪の中小企業から問題社員のご相談をいただくとき、最初の面談でほぼ必ず確認するのが「これまで何をされましたか」です。ここで返ってくる答えには、はっきりした共通点があります。

「注意はした」が、記録として残っていない

もっとも多いのがこれです。社長も上司も、実際には何度も注意しています。ただ、それが口頭のみで、日時・場所・伝えた内容・本人の反応が残っていない。あとから「そんなことは言われていない」と否定されると、会社側には反証する材料がありません。

ここが重い理由は、解雇や懲戒の有効性が「積み重ねてきた指導の履歴」で判断される場面が多いからです。指導が無かったのではなく、指導したことを証明できない——この差が、後の選択肢の幅をそのまま決めます。

感情の応酬になり、争点が本筋から逸れる

社長が直接向き合うと、話は必ず感情を伴います。相手も身構えます。すると、本来の争点だった勤務態度や業務命令違反の話が、いつのまにか「言い方がきつかった」「他の社員と扱いが違う」という別のテーマにすり替わります。

実務でよく見るのが、指導された側が逆にハラスメントを主張する展開です。この段階に入ると、会社は「問題社員への対応」と「自社のハラスメント調査」の二つを同時に抱えることになり、負担が一気に増えます。

良かれと思った一言が、後から不利に働く

「君のためにも、他でやり直したほうがいい」「このままなら辞めてもらうことになる」。円満に収めようとして出た言葉が、後から「退職を強要された」「解雇を通告された」と評価されることがあります。社長にその意図が無くても、記録に残るのは言葉のほうです。

逆のパターンもあります。何も言わないまま長期間放置した結果、いざ処分しようとしたときに「これまで問題にしてこなかったではないか」と言われる。動いても止まっても不利になる——自力対応でいちばん苦しいのはこの構図です。

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弁護士に依頼すると、実務は6つの点で変わる

依頼後に起きる変化を、社長が自分でやった場合と並べると次のようになります。

場面 社長が自分でやった場合 弁護士に依頼した場合
事実の集め方 本人を呼んで問い詰めるところから始まる 本人に接触する前に、周辺の客観資料を先に確保する
ヒアリング 都合のつく人から順に、個別に話を聞く 誰から・いつ・どの順で聞くかを設計してから実施する
書面 社長名で、その場の判断で作成する 後で争われる前提の文面にし、名義も使い分ける
交渉窓口 社長・上司が直接やり取りを続ける 代理人が窓口になり、会社は業務に戻れる
処分の組み立て 一つの処分を選んで通知する 無効と判断された場合の受け皿まで含めて設計する
ゴール設定 「辞めてほしい」から逆算しない 着地点を先に決め、そこから手順を逆算する

変化1|事実を集める順番が変わる

自力対応では、まず本人を呼びます。弁護士が入ると順番が逆になります。本人に接触した瞬間から証拠は消え始めるためです。実務では、社内チャットの履歴・勤怠データ・業務日報・貸与端末の使用状況など、後から改変されうるものを先に押さえてから、本人との面談日を設定します。

従業員の不正が疑われた事案では、本人が事情を察した直後にやり取りのグループを削除してしまうことが実際に起こります。順番を一つ入れ替えるだけで、手元に残る材料の量が変わります。

変化2|ヒアリングの設計が変わる

複数の社員が関係している事案では、誰から聞くかが結果を左右します。実務では、周辺の人物から外堀を埋めていく進め方だけでなく、最も抵抗が予想される中心人物から先に着手するという選択をとることがあります。相手に準備の時間を与えないためです。

関係者が複数いる場合には、口裏合わせを防ぐために呼び出しの時間差を組みます。一人の聴取が始まってからもう一人を呼び、物理的に接触できない状態を作る——実務ではここまで細かく段取りを決めてから当日を迎えます。社長が一人で同じことをやろうとすると、日程調整の段階で相手に伝わってしまいます。

変化3|書面の名義と文面が変わる

注意書・警告書・処分通知書は、後で第三者に読まれる前提で作ります。何を認定し、どの規定に当てはめ、次に何が起こるのかを、争われても崩れない書き方にする。ここが自力で作った書面ともっとも差が出るところです。

名義も使い分けます。社内で完結させたい段階では会社名義、相手が応じない段階に来たら代理人名義に切り替える。たとえば退職した社員が貸与品を返さず、会社からの連絡を無視し続けるようなケースでは、代理人名義の内容証明郵便に切り替えたところで動きが出ることがあります。

変化4|交渉の窓口が社長から代理人に移る

これは社長がもっとも実感しやすい変化です。相手からの連絡が会社に直接来なくなります。感情的なやり取りが業務時間を侵食していた状態から、会社は本業に戻れます。

実務では、ハラスメントを主張する社員との交渉で、直接対話を止めて代理人経由に切り替えたことで、請求額を大きく下回る水準での合意に至った例があります。窓口を変えるだけで金額が動くのではなく、感情のやり取りが止まると、争点が数字と規定の話に戻るからです。

変化5|処分の組み立てが二段構えになる

自力対応では「懲戒解雇にする」と決めて通知して終わりです。弁護士が入ると、その処分が後に無効と判断されたときにどうなるかまで含めて設計します。実務では、懲戒解雇を通知する際に予備的に普通解雇の意思表示も併せて行うという組み方をすることがあります。懲戒事由の認定で争われた場合の受け皿を残しておくためです。

同じ発想は懲戒以外にも使います。休職命令を出すかどうかで迷った事案では、「命令が無効とされた場合に会社が負うのは賃金の支払いにとどまる」というリスクの大きさを見積もったうえで、膠着状態を動かすために命令を出すという判断をしています。打つか打たないかではなく、外れたときの損失を測ってから打つ——これが依頼後の意思決定の形です。

変化6|出口から逆算するようになる

社長が一人で対応しているとき、ゴールはたいてい「辞めてほしい」です。弁護士が入ると、ここを具体化します。合意退職か、普通解雇か、配置転換で職場秩序だけ回復させるのか。金銭を支払うのか、支払わずに終えるのか。口外禁止の条項を入れるのか。

着地点が決まると、そこから逆算して今日やることが決まります。逆に言えば、着地点が決まっていない状態で注意や処分を重ねても、材料は増えるのに前には進みません。自力対応が長期化する原因の多くはここにあります。

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依頼しても変わらないこと——期待値の調整

相談前に知っておいていただきたい点も同じだけあります。ここを誤解したまま依頼すると、進め方への納得感が下がります。

すぐ辞めさせられるわけではない

弁護士が入っても、解雇のハードルそのものは下がりません。労働契約法上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされます(労働契約法16条)。弁護士がやっているのは、この基準に耐えられる状態まで会社側の材料と手順を整えることであって、基準を動かすことではありません。

過去に作ってしまった記録は消せない

「辞めろ」と言ってしまった録音、感情的なメール、他の社員には注意していないのに本人だけ注意した履歴。これらは依頼後も残ります。実務ではその前提で組み立て直しますが、無かったことにはできません。相談が早いほど選べる手が多いというのは、この意味です。

就業規則に無い処分は打てない

懲戒処分は、就業規則に定めた事由と種類の範囲でしか行えません。規定が無ければ処分は打てず、規定が実態と食い違っていれば争われます。実務では、賃金規程上の管理監督者の定義と実際の勤務実態が乖離していたために、退職交渉の途中で未払い賃金の問題が浮上したケースがあります。問題社員対応は、途中で自社の労務管理の弱点が表に出る場面でもあるということです。

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依頼するタイミングで、選べる手が変わる

同じ相談内容でも、どの段階で相談されるかで打てる手はまったく違います。

相談の段階 会社の状態 この時点で選べる主な手
まだ本人に何も言っていない 記録は無いが、失点も無い 指導記録の設計から着手できる/配置転換・業務指示の見直し/就業規則の点検
口頭注意を繰り返している 指導の事実はあるが証明が難しい ここから書面化を開始/段階的な懲戒の設計/退職勧奨の準備
書面で警告済み 履歴が残っている 懲戒処分/退職勧奨/条件を詰めた合意退職の交渉
本人が弁護士・労働組合を立てた 相手のペースで進む 代理人対応に切替/交渉での着地/労働審判・訴訟を想定した防御
解雇後に争われている 選択の余地が狭い 手続の適法性の再確認/和解条件の交渉/損失を確定させる判断

表を上から下へ進むほど、会社が主導権を持てる範囲は狭くなります。相談のタイミングとして望ましいのは1段目か2段目です。ただ、実際にご相談をいただくのは3段目以降が多いのが現実です。手遅れという意味ではありません。段階が下がれば、そのぶん出口の設計を現実的に切り替えるだけです。

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弁護士が実際にやっていること——大阪の企業法務の現場から

ここまでの内容を、実務の動き方としてもう少し具体的に書きます。いずれも個別の事案を特定できない形に抽象化しています。

処分通知に「不服の受け皿」を書き込む

休職命令や懲戒処分の通知書に、不服があれば弁護士が面談して事情を聴く旨をあらかじめ書き添えることがあります。狙いは二つあります。一つは、後から「言い分を聞いてもらえなかった」と主張されるのを防ぐこと。もう一つは、その場で異議を述べなかったという事実を残すことです。処分を出すこと自体より、出し方の設計で紛争の芽が減ります。

相手の背景を確認してから面談に臨む

実務では、聴取の前に相手の状況を可能な範囲で把握します。損害賠償を検討する事案であれば、回収可能性の見立てが後の方針を左右するからです。準備をせずに面談だけ行っても、その場で聞ける話の深さが変わります。

金銭を払わずに終える着地も選択肢に入れる

従業員側から高額の賠償を請求されている一方で、会社側にも相手方に対する請求権がある——そうした状況では、双方が互いの請求権を放棄して終わらせるという形の合意が選択肢になります。実務でも、相手方からの高額請求に対し、会社側の請求権と相殺する形で双方支払なしの合意に至った例があります。「請求されたら払うしかない」という前提から一度離れることで、着地の幅は広がります。

合意書に、その後を守る条項を入れる

退職の合意ができても、書面の中身が甘いと後に尾を引きます。清算条項、口外禁止、貸与品の返還、競業や情報の取扱い。実務では、金額の交渉と同じ重さでこれらの条項を詰めます。合意書は紛争の終わりではなく、次の紛争を防ぐ設計図だからです。

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費用と期間は、どう考えればよいか

費用の考え方

問題社員対応の費用は、事案の複雑さ・関係者の人数・相手が代理人を立てているかどうかで変わるため、一律の金額はご案内していません。ただ、判断の軸ははっきりしています。比べるべきは「弁護士費用」と「対応しなかった場合に生じうる損失」です。

  • 解雇が無効とされた場合、争っている期間分の賃金支払いが問題になりうる
  • 未払い残業代の請求が併せて出てくると、対象は本人だけにとどまらないことがある
  • 対応の遅れによって、周囲の社員が先に退職する(採用・教育コストの再発生)

金額の話は、これらの見立てとセットでご説明します。逆に言えば、見立てを出さずに金額だけを比べても意味がありません。

期間の考え方

期間も事案によりますが、実務上の感覚として、退職に向けた交渉で合意に至るまでには数ヶ月単位の時間がかかることが一般的です。相手が代理人を立てて争う姿勢を見せている場合は、さらに長期化します。「今週中に辞めさせたい」という前提では、選べる手はほぼ残りません。逆に、数ヶ月の時間を見込めるなら、手順を踏んだうえで無理のない着地を狙えます。

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相談だけなら顧問契約がなくてもできます

「顧問契約をしていないと相談できないのでは」というお問い合わせをよくいただきます。ご相談の段階では、顧問契約は不要です。現状を伺い、いま何が問題で、どの段階にいて、次に何をすべきかを整理するところまでは、契約の有無にかかわらずお受けしています。

そのうえで、弁護士が代理人として交渉や書面の名義に入る段階になると、継続的に会社の内部事情を把握している必要が出てきます。就業規則・雇用契約・過去の指導履歴・他の社員とのバランス——これらを都度ゼロから確認していては、判断の質もスピードも落ちるためです。そのため、代理人として動く段階では、顧問プラン、または会社の法務状況をまとめて点検する法務ドックとあわせてご案内しています。

弁護士法人ブライトは大阪を拠点に、法務部を持たない中小企業の「外部法務部」として動いています。問題社員の相談は、その中でも件数の多いテーマです。全体像から確認したい方は問題社員対応の特化ページ、対応手順そのものを知りたい方は問題社員への対応手順の解説記事もあわせてご覧ください。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 大阪以外の会社でも相談できますか。

ご相談いただけます。弁護士法人ブライトは大阪を拠点としていますが、問題社員対応の相談・打ち合わせはオンラインでも実施しており、大阪府外の会社からのご相談も受けています。実際に聴取へ立ち会う必要がある場面など、対面が望ましいケースについては、日程と方法を事前にご相談のうえ決めています。

Q2. すでに本人が弁護士を立ててしまいました。今から相談しても意味はありますか。

意味はあります。相手に代理人がついた時点で、会社が直接やり取りを続けることの負担とリスクは大きくなります。この段階での相談は、逆転を狙うというより、どこを守り、どこを譲り、どの水準で終わらせるかを決める作業になります。争点が増えるほど時間もコストもかかるため、着地の設計を早く固めることに価値があります。

Q3. 就業規則が古いまま/そもそも整っていません。この状態でも相談できますか。

できます。むしろ、その状態であることを前提に方針を決める必要があります。規定が実態と合っていない場合、打てる処分の範囲が変わりますし、交渉の途中で相手からその点を指摘されることもあります。実務では、目の前の一人への対応と並行して、規程の手当てをどこまで先にやるかを整理します。

Q4. 社内で調査を進めてから相談したほうがよいですか。

調査の設計そのものが結果を左右するため、本人に接触する前に一度ご相談いただくほうが、選べる手は多く残ります。特に、聴取の順番・タイミング・記録の残し方は、やり直しがききません。すでに聴取を済ませている場合でも、その内容をどう位置づけ直すかから整理します。

Q5. 相談したら、必ず解雇や退職勧奨に進むことになりますか。

そうではありません。配置転換や業務分掌の見直しで職場秩序が回復するなら、それが会社にとって損失の小さい解決になることも多くあります。実際、指導の枠組みと評価の運用を組み直すことで収まる事案もあります。方針は、会社の目的とリスク許容度を伺ったうえで一緒に決めます。

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※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律アドバイスではありません。具体的な問題については弁護士にご相談ください。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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