退職勧奨で違法と言われないための進め方|会社側が守るべきポイント 辞めてほしい社員がいる。でも「パワハラだ」「不当退職勧奨だ」と言われたくない。退職勧奨は適切に行えば合法ですが、やり方を間違えると大きなリスクを招きます。 退職勧奨と「強要」の境界線 退職勧奨は、会社が社員に対して自発的な退職を求める行為です。社員の同意を前提にしている点が、解雇とは異なります。 問題になるのは、この「勧奨」が「強要」に変わったときです。裁判例では、次のようなケースが違法退職勧奨と判断されています。 断っても繰り返し面談を求め続ける 「辞めなければ懲戒にする」と脅す 「お前のせいで職場が困っている」と感情的に追い詰める 長時間にわたって部屋に閉じ込めるような状況で説得する 複数名で1人を囲む形で圧力をかける これらの行為は「本人の自由な意思による退職」ではなく「強迫による意思表示」として、後から退職を無効にする根拠になります。 退職勧奨の適法性の核心は「本人が自分の意思で決める余地を残しているか」です。 面談の進め方|言葉と回数に注意する 退職勧奨の面談では、言い方が決定的に重要です。 使っていい言葉・フレーズ 「今後のキャリアについて率直にお話ししたい」 「現状の業務評価を踏まえて、今後の方向性を相談したい」 「退職という選択肢についても検討してほしい」 「返答はゆっくり考えてもらって構わない」 使ってはいけない言葉・フレーズ 「辞めないと困る」「辞めるべきだ」という断定的な表現 「このまま続けてもあなたのためにならない」という誘導 解雇や懲戒との条件付け 「他の人も困っている」という集団的な圧力 面談の回数については、明確な上限はありませんが、断られた後に執拗に繰り返すことがリスクになります。一般的には1〜3回程度、間隔を空けて行うことが望ましいと言われています。 録音されることを前提に進める 退職勧奨の面談は、録音されている可能性を常に念頭に置いてください。実際に、退職勧奨を「不当だった」と主張する社員が録音を証拠として提出するケースが増えています。 ある相談では、会社が退職を求めた社員に対して複数回の面談を行い、最終的に退職合意書を締結しました。しかし退職後、社員側代理人弁護士から「面談中の発言が強要にあたる」として連絡があり、面談の録音が証拠として提示されました。 会社側に面談の記録はなく、何を言ったか十分に確認できない状況になりました。 録音されても問題ない言葉で面談をすることが、会社を守る最善策です。裏を返せば、そういう面談ができていれば、録音されても恐くない。 合意書は必ず作成する 退職に同意を得られた場合、口約束で終わらせてはいけません。退職合意書を必ず作成します。 合意書に含めるべき主な内容は次の通りです。 退職日・退職の事由(合意退職) 退職金・解決金の有無と金額 雇用保険の離職事由の確認 清算条項(「互いに債権債務はない」という確認) 口外禁止条項(任意だが入れておくと安心) 清算条項は特に重要です。退職後に「やっぱり不当退職勧奨だった」「残業代が未払いだった」と追加請求が来るリスクを防ぐために、合意書で精算を完結させます。 合意書は弁護士に作成・チェックを依頼することを強くお勧めします。市販のひな形では、会社に不利な条項が抜けているケースがあります。 よくある相談例 業務上のミスや納期遅延が続いたマネージャー職の社員に対して、会社は面談で「今後の待遇を変更する可能性がある」と伝えました。本人は「検討します」と言って持ち帰りました。 数週間後、弁護士から「不当な退職勧奨だった」という通知が届き、解決金を求める内容でした。 確認すると、面談の内容を記録した書類はなく、「何をどう伝えたか」が曖昧な状態でした。会社側は「退職を勧めた事実はない」と主張しましたが、証明できる材料が揃っていませんでした。 この種の相談では、面談の内容を事前に整理し、言葉を選んで記録を残しておくことの重要性を痛感します。 退職勧奨を始める前に、まず弁護士に相談を 退職勧奨はやり方次第で合法にも違法にもなります。始める前に弁護士に相談して、面談の進め方・言葉の選び方・合意書の内容を確認することが最も安全です。 問題社員対応・退職勧奨のご相談はこちら 「辞めてもらいたい社員がいる」を仕組みで解決する 退職勧奨を行う前提として、「なぜ辞めてほしいのか」を説明できる記録が必要です。業績評価・指導記録・面談の履歴が整っていることで、退職勧奨の正当性が高まります。 また、問題社員への対応は退職勧奨だけではありません。就業規則の整備・懲戒処分の活用・異動・降格など、状況に応じた選択肢があります。「辞めてほしいから退職勧奨」という単純な構図では、必ずどこかで問題が起きます。 弁護士と一緒に、問題社員への対応体制を整えることが会社を守ります。 まずは相談から始めましょう 「この社員にどう対応すればいいか」「退職勧奨を始めてもいいか」という段階から、弁護士への相談が役立ちます。 みんなの法務部では、退職勧奨・問題社員対応を顧問業務としてサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。 みんなの法務部のサービスはこちら 電話でのご相談:0120-929-739(受付時間 9:00〜18:00) 関連記事 解雇と退職勧奨の違い・正しい進め方 解雇前に会社が残すべき証拠 パワハラと言われない注意指導の方法 よくある質問 Q. 退職勧奨を断った社員をその後解雇することはできますか? A. 退職勧奨を断ったこと自体を理由とした解雇は、不当解雇と判断されるリスクが高くなります。解雇を検討する場合は、別途解雇の合理的理由が必要であり、段階的な対応記録が求められます。弁護士にご相談ください。 Q. 退職合意書を作らずに口頭で退職に合意した場合、問題はありますか? A. 口頭合意だけでは「言った・言わない」の争いになりやすく、後から「強要された」「解雇だった」と主張されるリスクがあります。退職に合意を得たら必ず書面(退職合意書)を作成することが一般的です。 Q. 費用はどのくらいかかりますか? A. 事案の内容・複雑さによって異なります。みんなの法務部では初回相談無料でご案内しています。 監修:弁護士法人ブライト 大阪・神戸を拠点に企業法務・顧問弁護士サービスを提供。みんなの法務部として中小企業の法的リスク対応を日々サポートしています。 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の対応については弁護士にご相談ください。 よくある質問 Q. 退職勧奨で何度まで面談してもいい? A. 明確な上限はありませんが、一般的には1〜3回程度、間隔を空けて行うことが望ましいとされています。断られた後に執拗に繰り返すことは「強要」と判断されるリスクが高まるため、慎重な対応が必要です。弁護士にご相談ください。 Q. 退職勧奨を始める前に弁護士に相談する必要はある? A. 退職勧奨はやり方次第で違法と判断されるため、開始前の相談が最も安全です。面談の進め方・言葉の選び方・合意書の内容を事前に確認することで、後のトラブルを大きく防ぐことができます。 Q. 退職勧奨の相談にかかる費用はどのくらい? A. 事案の内容や複雑さによって異なります。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では初回相談無料でご案内しており、詳細なお見積りについてはお気軽にお問い合わせください。