監査役会と監査等委員会の違いを社長が知っておくべき理由――上場・IPOで後悔しない機関設計の選び方

監査役会と監査等委員会の違いを社長が知っておくべき理由――上場・IPOで後悔しない機関設計の選び方

「監査役を置いているけれど、これで上場審査に通るのだろうか」「監査等委員会というものに移行したほうがいいとは聞くが、何が違うのか正直わからない」——IPO準備を進める社長から、こういう声をよく聞きます。どちらも「会社を監視する仕組み」であることは何となく分かっていても、自分の会社にどちらが合っているのか、選択を間違えたらどうなるのか、そこまで見えている方は多くありません。

この記事では、監査役会と監査等委員会の違いを、できる限り法律用語を使わずに整理します。「知識として理解する」ではなく、社長が機関設計を選ぶ場面で判断を誤らないことを目的に書いています。

そもそも「監査」とは何をする仕組みなのか

会社が大きくなり、株主・取引先・投資家が増えてくると、「社長一人の判断でいいのか」という問いが生まれます。上場会社には特に、経営陣が法律や株主の利益に反した行動をしていないかをチェックする仕組みが求められます。それが「監査」の本質です。

日本の会社法は、この監査機能をどう担うかについて複数の選択肢を用意しています。代表的なのが、「監査役会設置会社」「監査等委員会設置会社」の2つです(もう一つ「指名委員会等設置会社」もありますが、大企業向けの制度であり、IPO準備段階で選ぶケースは少数です)。

どちらを選ぶかは、ガバナンスの「かたち」を決める経営判断です。株式上場審査でも問われますし、投資家や証券会社から説明を求められます。後から変更することは不可能ではありませんが、コストと手間がかかります。だからこそ、IPO準備の早い段階で方針を固めておくことが重要です。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

監査役会と監査等委員会、構造上の違いを整理する

【図解】そもそも「監査」とは何をする仕組みなのかへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

まず、2つの違いを「誰が何をするか」という観点から整理します。難しい条文の話より、会社の中の「人の配置と権限」として理解したほうが実用的です。

監査役会設置会社の場合

  • 取締役会と監査役会が完全に別の組織として存在する
  • 監査役は取締役会に出席して意見を述べることができるが、議決権はない
  • 監査役会は「外部から経営を監視する」専門機関として機能する
  • 監査役の独立性は高いが、取締役の選任・報酬に直接関与できない

監査等委員会設置会社の場合

  • 監査等委員は取締役として選任され、取締役会の議決権を持つ
  • 監査等委員会は取締役会の「内側」にある委員会として機能する
  • 取締役の選任・報酬について株主総会で意見陳述権を持つ
  • 社外取締役が監査等委員の過半数を占めることで、社外からのチェック機能を担保する

端的に言えば、監査役会は「外から見張る」、監査等委員会は「中から関与する」という設計思想の違いです。どちらが優れているかではなく、自社の規模・経営スタイル・投資家層によって、どちらの設計が合っているかが変わります。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

IPO準備で監査等委員会が選ばれる理由

2015年の会社法改正で監査等委員会設置会社が新設されて以降、IPO準備企業の多くがこの形式を選ぶようになっています。主な理由は次の3点です。

  1. 取締役の削減:監査役を別途選任する必要がなくなるため、役員人数を減らしやすい。特に人材確保が難しいスタートアップには実務上のメリットが大きい
  2. 社外取締役の活用:コーポレートガバナンス・コードへの対応として、社外取締役を実質的に経営判断に関与させやすい設計になっている
  3. 投資家へのメッセージ性:「社外取締役が内側からチェックしている」という構造が、機関投資家に受け入れられやすい

ただし、「監査等委員会設置会社のほうが上場しやすい」というわけではありません。監査役会設置会社を選んで上場している会社も多くあります。問題は、自社のガバナンス設計と選んだ機関形態が整合しているかどうかです。形だけ整えて実質が伴わない場合、上場審査でかえって厳しい指摘を受けることがあります。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

なぜ判断ミスが起きるのか——よくある失敗の構造

弁護士法人ブライトには、IPO準備中の会社から機関設計に関する相談が寄せられます。そのなかで見えてきた「判断ミスのパターン」を3つ紹介します。

①「証券会社に言われたから」で選んだ

IPO準備では、主幹事証券会社や監査法人からアドバイスを受けることが多くなります。その際、「最近は監査等委員会が多い」「うちのお客さんはほとんどこちらです」という雰囲気で誘導されるケースがあります。

しかし、機関設計は会社の経営スタイルと不可分です。どういう社外取締役を招くか、創業者と経営陣の関係はどうか、株主構成はどうなるか——こうした要素と切り離して「流行りだから」で選ぶと、後から「形は整っているが誰もきちんと機能していない」という事態に陥ります。

②切り替えのタイミングを間違えた

「あとで変更すればいい」という考えで、最初は監査役会設置会社でスタートし、上場直前に慌てて監査等委員会設置会社に移行しようとするケースがあります。ところが、機関設計の変更には定款変更・株主総会決議・役員の再選任など、多くの手続きが必要です。上場審査が本格化したタイミングでこれをやろうとすると、証券会社・監査法人・取引所への説明コストが急増し、スケジュールが大幅に遅れます。

③「独立性」の要件を形式的にしか理解していなかった

監査等委員の過半数は社外取締役でなければなりませんが、「社外」の要件は会社法に厳格に定められています。過去に自社の業務執行者だった人、主要な取引先の関係者、親族——これらが社外取締役として認められない場合があります。「人脈があって頼みやすいから」という理由で選んだ人物が要件を満たさず、組みなおしを迫られることがあります。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

問題が起きる前にできること——機関設計を決める前の確認ポイント

機関設計は一度決めたら変更コストが高いため、最初の選択を慎重に行うことが最大の予防策です。以下のポイントを、専門家を交えて事前に確認しておきましょう。

  • 誰を社外取締役・監査役として招けるか:候補者リストと会社法上の要件の照合を早めに行う
  • 投資家が何を期待しているか:VCや機関投資家が多い場合、求められるガバナンスの水準が異なる
  • 創業者の権限をどこまで残すか:監査等委員会の設計によっては、社外取締役が経営判断に強く関与する場面が増える
  • 社内の体制が設計に追いついているか:内部統制・内部監査・情報開示の体制が形式的な機関設計と整合しているかを確認する
  • 上場予定時期から逆算したスケジュール:機関設計の変更が必要な場合、定款変更や役員交代にどれだけの時間が必要かを把握する

これらは、顧問弁護士が「外部法務責任者」として関与することで、証券会社・監査法人・取締役会の各視点を調整しながら確認できます。弁護士を「揉めてから呼ぶ人」ではなく、「判断の質を上げる人」として活用することが、IPO準備では特に重要です。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

うちの会社はどちらを選べばいいのか——判断の軸

最終的な答えは会社によって異なりますが、以下の問いへの答えが判断の軸になります。

  • 社外の人間に取締役会の議決権を持たせることへの心理的抵抗はあるか?——あるなら監査役会設置会社のほうがフィットしやすい
  • 社外取締役を経営の意思決定に積極的に関与させたいか?——そうであれば監査等委員会設置会社の設計思想と合う
  • 役員の人数を絞りたい事情があるか?——監査等委員会設置会社のほうが、監査役を別途確保しなくてよい分、人材確保の選択肢が広がる
  • 投資家・証券会社からどちらを推奨されているか?——ただし、これを最優先にしないこと。理由を理解したうえで採用する

選択に迷う場合は、「どちらが流行っているか」より「どちらが自社の経営スタイルに合っているか」を基準に考えることを勧めます。そして、その判断を一人でしないことが重要です。証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。機関設計も、上場後に問題が出てから急に変えられるものではありません。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

再発防止策——機関設計を「形だけ」にしないために

どちらの機関形態を選んでも、重要なのは「実質的に機能しているか」です。形式だけ整えて中身が伴わない場合、上場後に投資家や株式市場から厳しい評価を受けます。以下の点を継続的に確認してください。

  • 監査役・監査等委員が定期的に内部監査部門・会計監査人と意見交換しているか
  • 社外取締役・社外監査役が会議で実質的な発言をしているか(議事録に記録されているか)
  • 取締役会の付議基準が明確に定められ、重要な経営判断が適切に取締役会に諮られているか
  • 内部通報制度が形骸化していないか
  • 毎年、機関設計の機能評価(取締役会評価など)を実施しているか

上場後にガバナンスの問題が発覚した場合、経営責任を問われるだけでなく、株価・取引先・採用に広範な悪影響が及びます。機関設計は「上場するための手続き」ではなく、「上場後に会社を守る仕組み」として機能させることが本質です。

機関設計の見直しや内部統制体制の整備は、スポット相談で対応できるものではありません。IPO準備の段階から上場後のガバナンス運営まで、継続的に法的な観点からチェックできる体制が必要です。弁護士法人ブライトの「みんなの法務部」では、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の弁護士が、顧問先141社の実名を公開するかたちで、IPO準備から上場後のガバナンス整備まで継続的にサポートしています。機関設計の選択・役員候補の要件確認・定款整備・社内規程の見直しなど、社長一人で判断するには難しい問題を、外部法務責任者として一緒に考えます。

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

よくある質問

Q1. 非上場の中小企業でも監査等委員会設置会社を選べますか?

A. 法律上は可能です。ただし、監査等委員の過半数を社外取締役にする必要があるなど、一定の体制整備が求められます。非上場段階で選ぶメリットがあるかどうかは、IPOの計画や投資家構成によります。顧問弁護士と自社の状況を整理したうえで検討することをお勧めします。

Q2. 監査役会から監査等委員会設置会社に移行するのは難しいですか?

A. 定款変更(株主総会の特別決議)と役員の再選任が必要で、時間・コストがかかります。特にIPO審査中に移行しようとするとスケジュール全体に影響します。移行を検討しているなら、IPO準備の初期段階で専門家に相談して方針を固めることが重要です。

Q3. 社外取締役・社外監査役の「社外性」の要件を満たしているか、どうやって確認すればいいですか?

A. 会社法には社外取締役・社外監査役の要件が詳細に定められており、過去の業務執行の経歴・親族関係・取引関係などが問題になります。候補者が決まった段階で弁護士に確認させることが最も確実です。「大丈夫だろう」で進めて後から要件を満たさないと判明するケースが実際に起きています。

Q4. 監査等委員会設置会社にすると、社長の権限が弱まりますか?

A. 設計次第です。監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外でない限り、重要な業務執行の決定を代表取締役などに大幅に委任できる「権限委譲」の仕組みが使えます。むしろ意思決定のスピードが上がる場合もあります。社長の権限がどうなるかは、どんな定款設計にするかによって変わりますので、事前に確認が必要です。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

機関設計の選択・IPO準備のガバナンス整備・上場後の取締役会運営など、会社の根幹に関わる法的判断を継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先141社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

「みんなの法務部」というブライトの考え方

中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、141社の顧問先と向き合っています。

▶ みんなの法務部とは(詳しく見る)

企業法務のご相談は弁護士法人ブライトへ

弁護士法人ブライト「みんなの法務部」は大阪の中小企業の外部法務部。顧問先141社を実名公開・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

法務チェックリスト 無料ダウンロード

顧問弁護士サービス「みんなの法務部」を見る

06-4965-9590(みんなの法務部)LINE相談(無料)

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
  • 記事カテゴリ
  • 成功事例
    インタビュー
契約
人事労務
債権回収
消費者
炎上
会社運営