仮差押えの担保金(保証金)の相場はいくら?供託の仕組みと判断基準を解説

仮差押えの担保金(保証金)の相場はいくら?供託の仕組みと判断基準を解説

「取引先が支払いを引き延ばしていて、このまま待っていたら財産を隠されそうで怖い」——そういった不安を抱えたまま、でもどこから手をつければいいか分からず、時間だけが過ぎていく。そんな状況に置かれた経営者の方は少なくありません。

仮差押えという手段があることは聞いたことがある。でも、お金がかかるらしい。いったいいくら用意すればいいのか。そもそも自社に向いている手段なのか。判断できないまま踏み出せずにいるケースが多くあります。

この記事では、仮差押えを申し立てる際に必要な「担保金(保証金)」の相場と決まり方、手続きの流れ、そして経営者が判断を誤りやすいポイントを順番に整理します。「自社でどう動けばいいか」が見えてくる記事を目指しています。

仮差押えとは何か——経営者が知っておくべき最低限の構造

仮差押えとは、裁判で勝訴判決を得る前の段階で、相手方の財産(銀行預金・不動産・売掛金など)を一時的に動かせなくする手続きです。「まず財産を凍結しておいて、後から訴訟で回収する」という順番です。

なぜこれが必要かというと、訴訟には数ヶ月〜1年以上かかることがあり、その間に相手が財産を隠したり使い果たしたりしてしまうリスクがあるからです。勝訴判決を得ても、相手に財産が残っていなければ回収できません。仮差押えはそれを防ぐための「先手」です。

ただし、仮差押えは相手方の財産を一方的に動けなくする強力な手続きです。そのため裁判所は、申し立てた側に「もし仮差押えが不当だったと後で判明した場合に、相手が被る損害を補償するための担保」を要求します。これが「担保金(保証金)」です。

担保金の相場——「債権額の何割」という見方が基本

【図解】仮差押えとは何か——経営者が知っておくべへの対応フロー

① 問題発生
② 事実確認・記録
③ 顧問弁護士に相談
④ 対応策の実行

※ 弁護士に早期相談することで、リスクを最小化できます。

担保金の額は法律で一律に決まっているわけではなく、各裁判所が申立ての内容を見て個別に決定します。ただし、実務では一定の相場観があります。

一般的な目安は以下の通りです。

  • 預金債権の仮差押え:被保全債権額(回収しようとしている金額)の20〜30%程度
  • 不動産の仮差押え:被保全債権額の15〜25%程度
  • 動産・売掛金の仮差押え:被保全債権額の20〜40%程度(対象の確実性や換価可能性によって幅がある)

たとえば、500万円の売掛金回収のために取引先の預金口座を仮差押えする場合、担保金は100万〜150万円程度を求められることが多いです。2,000万円台の不動産仮差押えであれば、担保金も数百万円単位になるケースがあります。

担保金の割合は、仮差押えが「不当だった」場合に相手方が被る損害の大きさを裁判所が推計して決めます。対象財産の種類、被保全債権の証明度合い、相手方が受けるダメージの見通しなどが総合的に考慮されます。

また、担保金は「消えてなくなる費用」ではありません。供託(法務局に預け入れる手続き)という形で一時的に積み立てるものであり、仮差押えの目的が達成されたり、訴訟で勝訴したりした後は原則として返還されます。ただし手続きには時間がかかるため、その間は資金が拘束される点は考慮が必要です。

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担保金をめぐって経営者が判断を誤りやすい3つのポイント

仮差押えの担保金について、経営者が誤解しやすいポイントがあります。事前に知っておくだけで、判断の精度が上がります。

① 「担保金が高い=仮差押えをやめる」は早計

担保金の額を見て「こんなに用意できない」と諦めてしまうケースがあります。しかし担保金は最終的に戻ってくることが多く、また供託する資金を一時的に工面する方法を検討する余地もあります。回収できる金額と天秤にかけて、費用対効果の判断をすることが重要です。「担保金が高いから無理」と決めつける前に、弁護士と数字を確認してください。

② 担保金の算定根拠を交渉できる場合がある

裁判所が提示した担保金の額について、申立人側から意見を述べることができる場合があります。被保全権利の証拠が充実していて疎明度が高い場合や、対象財産の性質から相手方の損害リスクが低いと考えられる場合などは、担保金が引き下げられることもあります。弁護士の関与なしにこうした交渉をすることは現実的ではありません。

③ 担保金と弁護士費用・申立費用を混同しない

担保金以外にも、仮差押えの申立てには裁判所への手数料(印紙代)や予納郵便切手、弁護士費用などが別途かかります。担保金はあくまで「供託として積み立てる保証金」であり、弁護士費用とは別物です。全体的な費用感を最初に確認しておくことで、資金計画が立てやすくなります。

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担保金を供託する手続きの流れ

仮差押えを申し立てる場合、担保金の供託は以下のような流れで行います。

  1. 申立書の準備・提出:弁護士が被保全権利と保全の必要性を疎明する資料(契約書、請求書、通知書など)をそろえ、申立書とともに裁判所へ提出します。
  2. 裁判所による担保額の決定:裁判所が審理し、担保金の額を通知します。申立てから数日〜1週間程度で決定が出ることが多いです(案件によります)。
  3. 法務局への供託:指定された担保金を法務局に供託します。現金供託のほか、有価証券や銀行保証書で代用できる場合もあります。
  4. 仮差押え命令の発令:供託が完了すると、裁判所が仮差押え命令を発令します。
  5. 執行:銀行口座の仮差押えであれば銀行に通知が届き、不動産であれば登記がなされます。

このうち特に注意が必要なのがスピードです。相手方に仮差押えの動きを察知されると、その前に財産を移動されてしまうことがあります。申立て準備から執行までを迅速に進めることが、仮差押えの実効性を左右します。

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失敗事例の構造——なぜ仮差押えが間に合わなかったのか

実際の相談の中で、「もっと早く動いていれば」という状況は少なくありません。仮差押えが間に合わなかった、あるいは効果が薄かったケースには、共通した構造があります。

「もう少し様子を見よう」という判断が招く遅延

取引先からの支払いが遅れ始めたとき、多くの経営者はまず電話や交渉で解決しようとします。それ自体は正しい判断ですが、問題は「交渉しながら何ヶ月も待つ」という状況に陥ることです。その間に相手方の財産状況が悪化したり、財産が移動されたりすることがあります。

「相手も誠意を持って対応してくれていると思っていた」「強硬な手段を取ると関係が壊れると思っていた」——こうした理由で相談が遅れるケースが典型的です。しかし、仮差押えは「関係を壊す手段」ではなく、「回収の実効性を確保する手段」です。早期に法的な手段を検討し始めることと、相手方との交渉を続けることは、矛盾しません。

証拠が残っていなかった

仮差押えを申し立てるためには、「被保全権利の存在(相手に対してこれだけの債権がある)」を裁判所に疎明しなければなりません。契約書がない、請求書のやり取りがメールでしか残っていない、口頭の合意しかなかった——こうした状況では、疎明が困難になり、仮差押えが認められないか、担保金の額が高くなる可能性があります。

証拠は、紛争になってから急に作れるものではありません。取引の初期段階から契約書や発注書を整備しておくことが、回収局面での武器になります。

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自社ではどう考えればいいか——仮差押えを検討すべきタイミング

仮差押えはすべての未払いケースに向いているわけではありません。費用と手間がかかる手続きである以上、以下のような状況を判断基準として持っておくと良いでしょう。

  • 相手方の支払い能力に不安があり、財産を隠される可能性がある
  • 回収したい金額が一定以上あり、担保金を用意できる
  • 相手方の預金口座や不動産など、仮差押えの対象となる財産が把握できている(または特定できる可能性がある)
  • 訴訟で勝訴できる根拠となる契約書・請求書等の証拠がある

逆に、回収額が少額であったり、相手方の財産状況が著しく不明確であったりする場合は、費用対効果の面から仮差押え以外の手段(支払督促、少額訴訟など)の方が適切なこともあります。

「どの手段が自社のケースに合っているか」は、ケースの詳細を見ないと判断できません。「まず弁護士に状況を整理してもらう」というステップを踏むことが、判断の精度を上げる一番の近道です。

再発防止策——仮差押えに頼らなくていい取引体制をつくる

仮差押えは「問題が起きてから使う手段」です。理想は、それを使わなくていい取引体制を作ることです。

  • 取引開始前の与信管理:新規取引先については、商業登記や決算公告、業界内の評判などを確認する習慣を持つ。
  • 契約書・発注書の整備:取引の内容、金額、支払条件、遅延損害金の定めを書面で残す。口頭合意に頼らない。
  • 支払い遅延の早期把握:入金管理を月次ではなく週次で確認する体制を整える。遅延が始まった初期段階で状況を把握できると、対応の選択肢が広がる。
  • 回収フローの明文化:「○日を過ぎたら督促状を出す」「○日を過ぎたら弁護士に相談する」というフローを社内で決めておく。

これらは「法律の知識がないとできない」というものではありません。しかし、整備する際に弁護士が関与することで、実際に紛争になったときに機能する体制を作れます。

【顧問弁護士との継続的な体制が持つ意味】

仮差押えのような手続きは、一度対応したら終わりではありません。取引先との問題は繰り返し発生しますし、「今まで問題のなかった相手でも、経営状況が変われば突然未払いが起きる」ことが現実です。そのたびにゼロから弁護士を探し、状況を説明し直すのでは、対応が遅くなります。仮差押えが必要になる前に「早期に相談する体制」が整っているかどうかが、回収の成否を分けます。弁護士法人ブライトでは、企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームが顧問先141社(実名公開)と継続的に向き合い、「問題が起きる前に相談できる関係」を「みんなの法務部」として提供しています。債権回収の初動から仮差押えの要否判断、証拠の整備まで、日常的に伴走できることが顧問弁護士の最大の強みです。

よくある質問

Q1. 担保金は最終的に必ず返ってくるのですか?

原則として、仮差押えの目的が達成された後(訴訟で勝訴して強制執行が完了した、または相手方との和解が成立したなど)に、担保取消しの手続きを経て返還されます。ただし、仮差押えが不当だったと認定された場合には、相手方の損害賠償に充てられることがあります。また、返還手続きには時間と費用がかかるため、事前に確認しておくことをお勧めします。

Q2. 担保金を現金で用意できない場合はどうなりますか?

現金供託のほか、有価証券(国債など)や銀行・保険会社が発行する支払保証委託契約書(いわゆる「銀行保証書」)による代用供託が認められる場合があります。ただし、裁判所が現金以外の方法を認めるかどうかはケースによります。資金繰りの制約がある場合は、早めに弁護士に相談することが重要です。

Q3. 仮差押えの対象となる財産が分からない場合はどうすればよいですか?

取引先の銀行口座や不動産が特定できないと、仮差押えの申立てができません。実務では、相手方のメインバンクを取引実績(振込先口座など)から推測する方法や、不動産については法務局で登記を調べる方法があります。特定が難しいケースでも、弁護士が調査手段を検討できる場合がありますので、「分からないから諦める」ではなく、まず相談してください。

Q4. 仮差押えを申し立てたことは相手方に知られますか?

仮差押え命令は、申立人の一方的な申立てに基づいて(相手方に通知せず)発令されます。ただし、執行(銀行への通知や登記)がなされると、相手方はその時点で知ることになります。申立てから執行までの期間が短いほど、相手方が財産を動かす余地が少なくなるため、迅速な手続きが重要です。

仮差押えや債権回収に関して継続的に相談できる顧問弁護士をお探しの方は、弁護士法人ブライト「みんなの法務部」にお問い合わせください。顧問先141社の実名を公開しており、企業法務部の弁護士歴平均14年以上の経験豊かな弁護士が対応します。企業法務窓口:06-4965-9590(平日9:00〜18:00)

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

「みんなの法務部」というブライトの考え方

中小企業の社長に「専属の法務部」を持っていただく——これがブライトの顧問サービスの基本姿勢です。社内に法務部を置けない規模でも、契約書・労務・債権回収・M&Aまで日常的に相談できる体制を、月額固定で。企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで、141社の顧問先と向き合っています。

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